第1話 修羅の道へ(脚本)
〇清潔な浴室
向日葵(ひまわり)「パパー!! 一緒におふろ入ろ!」
パパ「はっはっは! おてんば娘が来たな!」
ママ「向日葵(ひまわり)! パパはお仕事で疲れてるんだから・・・」
パパ「いいんだよ、百合(ゆり)」
パパ「ほら、おいで向日葵!」
向日葵(ひまわり)「やたー!!」
ママ「この子ったら・・・ じゃああなた、お願いね」
ママ「冷蔵庫にビール冷やしてあるからね」
パパ「おっ!気がきくね ありがとう、百合」
ママ「ふふ・・・」
パパ「よし、向日葵 パパと洗いっこするか」
向日葵(ひまわり)「するー!!」
パパ「ほら、ゴシゴシゴシ〜!」
向日葵(ひまわり)「うひゃ〜!くすぐったいよ」
パパ「・・・」
向日葵(ひまわり)「どしたのパパ?」
パパ「向日葵は腰に大きなアザがあるよね・・・」
向日葵(ひまわり)「うん? でも普段は見えないから大丈夫だよ!」
パパ「そうだね・・・ でもいつか誰かに見せるときが来る」
向日葵(ひまわり)「お風呂とか?」
パパ「それもそうだが・・・」
パパ「その、結婚する人とかには 見せることになるんだ」
パパ「ありのままの向日葵を受け入れて くれる素敵な人を見つけるんだぞ」
向日葵(ひまわり)「え〜!? ひまはパパと結婚するもん!!」
パパ「はっは!まいったなこりゃ」
向日葵(ひまわり)「ダメなの~!?」
パパ「わかったわかった!」
パパ「向日葵は大きくなったら パパと結婚しようね」
向日葵(ひまわり)「やた~!!」
〇黒
──21年後
〇山道
菫(スミレ)「はぁ・・・はぁ」
菫(スミレ)「ぐすっ・・・くそっ!」
???「泣いてるのか? 後悔するくらいならこんなこと・・・」
菫(スミレ)「後悔なんかしない」
これがすべてを捨てて選んだ──
私の道だから
〇黒
──数時間前
〇ホストクラブ
店長「え~、今月もNo.1はスミレちゃん」
店長「はい、みんな拍手~」
菫(スミレ)「・・・」
同僚キャバ嬢B「またあいつかよ」
同僚キャバ嬢A「『ウリ』上がりの汚いおばさんだかんね」
同僚キャバ嬢A「金積めばすぐ抱けるって タヌキオヤジどもが噂してた」
同僚キャバ嬢B「マジ!?ウケル~! おばさん必死すぎ」
同僚キャバ嬢A「いくらNo.1でもああいう風には なりたくないわ」
菫(スミレ)「・・・」
〇ライブハウスの控室
店長「お、スミレちゃん 今日もお疲れ様」
菫(スミレ)「・・・お疲れ様です」
店長「裏にお客さん来てたよ、若い男の子 カレシかな?」
菫(スミレ)「? そんなのいませんけど」
店長「あ~冗談ね、冗談!」
菫(スミレ)「そうですか、それじゃ」
店長「あのさ!」
店長「若い子たちはいろいろ言ってる けど気にしないで」
店長「スミレちゃん、ギャンブルから政治までよく勉強してるから話してて楽しいって評判だし」
店長「キレイで、気配りもしっかり してるからさ・・・」
店長「No.1は順当だよ」
菫(スミレ)「ありがとうございます・・・」
店長「せめてお客さんの前以外でも もうちょっと愛想よくしてくれればな」
〇ビルの裏
菫(スミレ)(お客さん・・・誰? アフターのお誘い?)
菫(スミレ)(でも、今日は若い人なんて・・・ しかも裏口から?)
???「よお、あんたがスミレ?」
菫(スミレ)「?」
???「こう呼んだ方がいいかな?」
〇黒
『向日葵』ちゃん
〇ビルの裏
菫(スミレ)「!!?」
菫(スミレ)「う・・・ぐっ!!」
菫(スミレ)(何この匂い・・・クスリ!?)
菫(スミレ)(やば・・・意識・・・)
〇幻想
・・・り
ひ・・・わり
〇菜の花畑
向日葵、僕と・・・
〇黒
???「向日葵!!」
〇ボロい倉庫の中
菫(スミレ)「・・・!!」
菫(スミレ)(ここは!? 私はいったい・・・)
???「向日葵!! よかった、目が覚めたんだな!」
〇菜の花畑
〇黒
〇ボロい倉庫の中
菫(スミレ)「・・・!!!」
菫(スミレ)(蓮(れん)!!? なんでこんなところに!!?)
菫(スミレ)(それより・・・)
菫(スミレ)(なんで、私の顔がわかって・・・)
桐島 蓮(きりしま れん)「『こんなに整形したのに何で私の ことがわかるのか』って顔だな」
桐島 蓮(きりしま れん)「わかるさ・・・ 寝顔はぜんぜん変わってない」
桐島 蓮(きりしま れん)「4年前、婚約した直後に行方不明 になってそれから必死で探してた」
桐島 蓮(きりしま れん)「本当に・・・向日葵が、 生きててよかった・・・」
菫(スミレ)「蓮・・・ごめん」
桐島 蓮(きりしま れん)「教えてくれないか? 4年前、向日葵に何があったのか」
桐島 蓮(きりしま れん)「顔と名前を変えてまで何を しようとしてるのか・・・」
菫(スミレ)「蓮・・・あのね」
???「はい、はい、はい!!」
「・・・!!!」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「感動の再会のところ申し訳 ございませんね、と!!」
桐島 蓮(きりしま れん)「やはりお前か・・・ 神宮寺紫苑(じんぐうじ しおん)!!」
菫(スミレ)「こいつが・・・!!」
〇手
金融会社リリィ・ファイナンス──
その実態は指定暴力団『竜胆会(りんどうかい)』のフロント企業
その社長兼竜胆会会長の
神宮寺龍志(じんぐうじ りゅうじ)
その息子が、この神宮寺紫苑──
〇ボロい倉庫の中
桐島 蓮(きりしま れん)「!!? 向日葵、こいつを知ってるのか!?」
桐島 蓮(きりしま れん)「いったいキミは・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「お前ら、オヤジの周りをコソコソ 嗅ぎまわってるみてぇじゃねえか」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「なあ、『組織犯罪対策部捜査4課』の 桐島蓮(きりしま れん)警部補殿!」
桐島 蓮(きりしま れん)「くっ・・・!」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「まぁ、組対(ソタイ)の刑事はともかく」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「問題はお前だぜ、女」
菫(スミレ)「・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「鈴木 菫(すずき すみれ)・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「いや、戸籍を偽造する前の名は 『ヒマワリ』とか言ったな」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「なぜキャバ嬢が身分を偽り、顔も 変えて、ヤクザもんを嗅ぎまわる?」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「お前、ただのキャバ嬢じゃねえな 何が目的だ?」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「回答次第じゃ、今後の処遇が 変わってくるぜ」
桐島 蓮(きりしま れん)「おい、やめろ!」
菫(スミレ)「私の目的は──」
菫(スミレ)「あんたの父親、神宮寺龍志会長の 『正妻』になること」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「ほぉ~う」
桐島 蓮(きりしま れん)「向日葵、な・・・にを!!?」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「なるほど、そういうことか」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「しかし、あの人が女を囲うとは 聞いたことがない」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「なぜオヤジにこだわる? 羽振りのいいヤクザは他にもごまんといるぜ」
菫(スミレ)「それは・・・」
菫(スミレ)「あいつ・・・神宮寺龍志が」
〇花模様2
私の・・・
実の『父親』だから
〇ボロい倉庫の中
「!!??」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「ひゃっははは!!! こいつはケッサクだぜ!!」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「そうか、あんたがオヤジが昔 捨てたっていう・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「自分を捨てた実の父親に身も心も 捧げようってか!!」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「あ~面白ぇ・・・ なんだか知らんが目的は金って わけじゃあなさそうだな」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「気に入ったぜ、女」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「いや、『スミレ姉さん』」
桐島 蓮(きりしま れん)「そんな・・・向日葵!! キミは何をしようと・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「てめぇは黙ってろ 『きょうだい』感動の対面なんだよ」
桐島 蓮(きりしま れん)「がっ・・・!!」
菫(スミレ)「蓮!!」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「ウチの系列のキャバで働いてんのも オヤジに近づこうって魂胆だったか」
菫(スミレ)「・・・」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「したたかな女だぜ」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「なあ、お前の目的に俺も協力 してやってもいい」
菫(スミレ)「なんで・・・ 私たちが目障りだから消そうとしたんじゃ」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「気が変わった」
神宮寺 紫苑(じんぐうじ しおん)「こうして俺が接触してきたのも、 ある意味計算のうちってわけだろ?」
菫(スミレ)「・・・」
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予選通過おめでとうございます!遅くなりましたが読ませていただきました。
いやー、怖い。平気で蓮を打てちゃう菫。その前のほのぼのシーンが見事に崩れ落ちました😱
父に対する執着心、こうなるまでに何があったのか――お母さんのことも関係してるのかな? 続きも読ませていただきますね!
す、すごい……ここに至るまでに何があったんでしょうか😱悪に振り切る胆力が圧巻です。
ブルブルおののきつつ怖いもの見たさの気分。まさにホラーですね……!
面白すぎて、一気に読んでしまいました。
主人公の過去との決別っぷりが潔くて凄くカッコいいですし、他のキャラクターも早く見たい!とにかく先が気になります。
アイテムや音の使い方もとても勉強になりました。
ハラハラする時間をありがとうございました!