初恋怪人スイカ

美野哲郎

読切(脚本)

初恋怪人スイカ

美野哲郎

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初恋怪人スイカ
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〇掲示板の前
  町内会のお知らせ──
  注意 近隣地域に於いて
  夕方過ぎに一人でいるお子さんの
  失踪事件が相次いでいます
  日が暮れたら 子ども一人では
  外を出歩かないように

〇飲み屋街
  ねえアレじゃない?
  ほら奥 奥の方

〇テクスチャ
  怪人よ! 月下ノ怪人!

〇SNSの画面
  空に月が出る日
  奴が現れると子どもが一人消えるんだ
  今の流れだと 次に現れるのは

〇通学路
  ──星影町

〇団地
  星影町・裏山団地

〇玄関内
レンタの母「それじゃいい? レンタ お母さん出かけるから」
レンタの母「くれぐれも一人で出たりしないこと いいわね?」
レンタ「はいはい わかりましたよ」
レンタの母「お母さん遅いんだからね もしレンタに何かあったって 助けてあげられないんだから」
レンタの母「本当にわかってる!?」
レンタ「わかってるってば ていうか さっき仕事から帰ってきて、また仕事?」
レンタの母「そうよ お母さん レンタの為にとっても頑張ってるの エラいでしょ」
レンタの母「褒めてくれてもいいのよ」
レンタ「はいはいエラいエラい じゃ 行ってらっしゃーい」
レンタ「──仕事 ね」

〇公園の砂場
レンタ「・・・愛人と会ってるだけのくせに」
ミハル「お父さん亡くなって何年経つの? 恋くらいしたっていいじゃない」
レンタ「お父さんが入院してた頃からもう お母さんあの人と会ってたんだ」
ミハル「そう、なんだ・・・」
ユウキ「あー、なんだ でもよ」
ユウキ「大人も考えたもんだよなー 月下ノ怪人なんて」
「──」
ユウキ「噂ひとつで警戒する人は警戒するし 信じた子どもだって早く帰るだろ」
ユウキ「ミハルんチと違って 俺らみたいに 団地暮らしの貧乏な家は」
ユウキ「共働きか片親か ともかく 忙しくて子どもを見てられない」
ユウキ「それでいて 町の治安も──」

〇通学路

〇公園の砂場
レンタ「じゃあ 怪人の噂 大人たちが 口裏合わせてるっていうの?」
ユウキ「お前マジで信じてるのか? 怪人なんて」
ミハル「レンタは可愛いなー」
レンタ「そっか そうだよね 怪人なんかいないよね」
レンタ「ニチアサの見過ぎかな」
ユウキ「ま これがニチアサだとしたら──」
レンタ「あ いた スイカ!!」

〇幻想

〇公園の砂場
ミハル「うげ あのコだ」
ユウキ「彼女こそ都市伝説だよな・・・」
レンタ「スイカー こっち来て いっしょに遊ばない?」
スイカ「おまえは誰だ?」
レンタ「レンタだよ この間も自己紹介したじゃん」
スイカ「ふうん 私には 子どもの顔は全部同じに見える」
レンタ「一人でいると 月下ノ怪人にさらわれちゃうよ?」
スイカ「私はずっと一人だが さらわれてはいないぞ」
スイカ「それじゃ 探し物があるのでな」
レンタ「あっ 待ってよ ぼくも行く」
ミハル「あーっ レンタってば もう」
ユウキ「学校には来ない 大人の目をすり抜ける そもそもスイカって本名か?」
ユウキ「確かにあのコで無事なら 月下ノ怪人恐るるに足らずだな」
ミハル「怪人だって さらう子どもは選ぶんじゃない?」

〇歩道橋
レンタ「スイカってばどこ行くの?」
スイカ「うん? そうだな 月下ノ怪人とやらを探している」
レンタ「今思いついたじゃん、それ」
レンタ「しょうがないな 危ないからついてってあげるよ」
スイカ「ほお それなら・・・えっと?」
レンタ「レ・ン・タ!!」
スイカ「レンタは私の家来だな よし覚えたぞ レンタ」

〇幻想
  たぶん ぼくだけが気づいてる

〇月夜
  スイカこそ──
  ──怪人の正体だ

〇街中の階段
スイカ「こっちこっち」

〇マンションの非常階段
スイカ「ここは抜け道になってそうだな」

〇入り組んだ路地裏
スイカ「すげー ここ出るんだ」

〇Bunkamura
スイカ「駅の近くに繋がってたな」
スイカ「いいのか? こんな遅くまで」
レンタ「え? ってもうこんな時間!?」

〇バスの中
  ヤバイ お母さん帰ってくる

〇Bunkamura
レンタ「いい? スイカ 僕は家来なんだから」
レンタ「これからは僕なしで 一人で出歩いちゃダメだよ」
スイカ「変な子どもだな~」
スイカ「・・・さて」

〇大きな木のある校舎

〇教室の教壇
ユウキ「お前~ 夜中までスイカに付き合ったな おばさんに嘘つく身にもなれよ」
レンタ「本当にごめん! ありがとう」
ミハル「レンタは どうしてそこまで スイカにこだわるの?」
レンタ「ホラ 僕の席って窓際じゃん?」
レンタ「授業中によく見えたんだ あのコが一人で外歩いてるところ」
レンタ「だから だからね」
レンタ「見間違える筈がないんだ──」


〇教室の教壇
レンタ「お母さんとバスに乗って帰る途中 橋の上にたしかに怪人の影があって──」

〇黒背景

〇宇宙空間
  月が雲に隠れて
  暗闇に包まれたかと思うと

  怪人の姿が消えて そこにはー

〇ゴシック
  ──スイカが

〇教室の教壇
レンタ「あの赤い目で、スイカはジッと 月に目を凝らしているようだった」
レンタ「そんなスイカを見てたら めちゃくちゃ胸がドキドキしたんだ」
レンタ「絶対おかしい」
レンタ「月下ノ怪人の正体は」
レンタ「──スイカだ!!」
「・・・・・・」
ユウキ「そ、そうだな それは怪しいな」
ミハル「そうだね たしかにスイカは──」
ミハル「レンタの怪人さんだね」

〇大きな木のある校舎
レンタ「あれ? ・・・校舎の中 スイカが歩いてたんだけど」
ユウキ「掃除当番してるミハルと 見間違えたんじゃないの?」
レンタ「アレはスイカだ 一体何して」

〇学校の廊下

〇教室
レンタ「スイカ!? いるの!?」

〇教室の教壇
スイカ「あ 家来」
ミハル「・・・」
レンタ「そ、そこで倒れてるの、ミハル?」
スイカ「心配するな このコは寝てるだけだ」
レンタ「ミ・・・ミハルに何した」
スイカ「いや私は何も」
レンタ「ス、スイカ おまえ 本当は──」
レンタ「怪人なんだろ!? 正体を現せ」
スイカ「怪人? 私が? ・・・ふん」
ミハル「ん うう・・・」
スイカ「レンタの友達は目を覚ましたようだな」
スイカ「やはり 私に学校は合わん じゃあな また──」
レンタ「あ・・・」

〇一戸建て

〇可愛い部屋
ミハル「月下ノ怪人が目の前に来て──」
ミハル「気を失う寸前に ドアが開いたのは覚えてる」
ユウキ「そのドアを開いたのが スイカにせよ レンタにせよ」
ユウキ「怪人は子ども一人に逃げ出した訳か」
ミハル「言われてみれば・・・奇妙だね」
ユウキ「本当に スイカが怪人・・・?」

〇玄関内
レンタの母「聞いたわよ レンタ あんたがあの変な子といたって」
レンタの母「今日からお母さん夜は出かけない アンタのこと 見張ってるからね」
レンタ「い、いいの? 愛じ・・・恋人と会えなくて」
レンタの母「・・・知ってたの」
レンタの母「そうね じゃ話が早いわ」
レンタの母「今日から あの人がうちに来るから」

〇団地
  レンタ、ただいま ちゃんと家いるわね?
  ──って、ちょっとコラ!!

〇玄関内
  レンタ チェーンを開けなさい!
  あの人連れてきたから
  ちゃんと話をしましょう
  お母さんの為じゃない 少しでも 
  あなたを一人にしない為なの
レンタ「・・・一人だったよ」
レンタ「お母さんがお父さんを裏切ってるって 知った時から ずっと」

〇アパートのダイニング
レンタ「窓に石がぶつかって・・・」

〇空き地
スイカ「おーい」
  ──スイカ!?
スイカ「行くぞ レンタがまだ 私の家来ならな」
  い、行くってどこへ
スイカ「そんなに気になるなら 本物の怪人を見せてやろう」

〇アパートのダイニング
  ──ああ そうか

〇空き地
  この怪人は
  ぼくをさらおうとしているんだ

〇アパートのダイニング
  いいよ 連れてってくれ

  あの月の向こうまで

〇空
スイカ「ベランダから伝い降りるとは なかなかやるなー レンタ」
レンタ「それで どこへ連れてってくれるの?」
スイカ「とうとう 怪人の目星をつけたのだ」
レンタ「えっ!?」

〇けもの道
  ──裏山
スイカ「ほれ あの秘密基地に男が」

〇お化け屋敷

〇けもの道
レンタ「あはは あそこは 町内の集会場になってる古い教会で」
レンタ「あの人は近所の大学生 奧森さんだよ」
スイカ「その大学生が 妙な姿に変身してるぞ」
レンタ「えっ!?」

〇お化け屋敷

〇けもの道
レンタ「更に森の奧へ・・・いったい何しに」
スイカ「追うぞ、家来」

〇宇宙空間
  この冒険が──
  ──永遠に続けばいいのに

〇空き地
スイカ「う~ん 見失ってしまった」
レンタ「スイカごめん きみのこと 怪人だなんて疑って」
スイカ「うん? まあ気にするな」
スイカ「レンタは どうして私のこと 怪人だと思った?」
レンタ「だって きみはあまりに強くて・・・」
レンタの母「レンタ!!」
レンタ「お母さん」
レンタの母「いい加減にしなさいっ!! こんな時間までどこを──」
スイカの母「スイカ」
スイカ「あ・・・ママ・・・」
スイカの母「父親に似てバカなガキだよ こっちへ来なさい」
スイカ「ひっ」
スイカの母「このっ!?!!」
スイカの母「自分の人生台無しにするのは勝手だけどね よそさまの家の子まで連れ回して」
スイカ「う・・・」
スイカ「うわあ~ん」
「・・・」
  そうして連れて行かれたスイカは
  どこまでも ただの子どもだった

〇ゴシック
  スイカ ぼくだけの怪人

〇幻想
  おねがい どうか泣かないで

〇団地

〇玄関内
ユウキ「おばさん 任せてください レンタは一緒にゲームするだけです」
ユウキ「絶対 一人にはしませんから」
レンタの母「──」
レンタの母「そう じゃ、任せたわね」

〇公園の砂場
ユウキ「おばさん騙すの胸が痛い!」
レンタ「ありがとう、ユウキ じゃあ ぼく行ってくる」
ユウキ「行くってどこに スイカの為か?」
レンタ「スイカは 普通の女の子だった」
レンタ「きっと貧乏なぼくらの中でも さらにうんと 貧乏くじを引いただけの」
レンタ「せめてスイカが探してた怪人の正体 僕が突き止めてやる」
ユウキ「──」
ミハル「あ、いたっ ねえレンタは?」
ユウキ「どうした? ミハル」
ミハル「私のせいで妙な噂が広まったとしたら 申し訳ないなと思って 私 スイカの家、訊ねてみたの」
ミハル「そうしたら、住所の団地はとっくに 潰れてなくなってた」
ユウキ「──は?」
ミハル「スイカのお母さんに会ったって? レンタ、それ何か騙されてない?」
ユウキ「──っ!!」

〇お化け屋敷

〇けもの道
レンタ「・・・」
月下ノ怪人「レンタくんかい?  そこで一体何をしてるんだ?」
レンタ「わあああああ」
月下ノ怪人「ああ ごめんごめん 今脱ぐよ」
奥森「これはコスプレ」

〇森の中
レンタ「やっぱり・・・町内会が 怪人の噂をでっち上げてたんだ」
奥森「ははは なるほど そういう解釈も出来るんだ」
レンタ「へ?」
奥森「見せてあげるね 本当の姿」
水星怪人「──」
レンタ「・・・!! か、怪人」
水星怪人「正確にいうと、宇宙人だね」
水星怪人「僕らの故郷の星は 深刻な後継者不足に 悩まされていてね」
水星怪人「地球ではせっかくの子どもたちを 粗末に扱っているだろう?」
水星怪人「だから もうこの星にいたくない子を 故郷まで案内しているんだ」
レンタ「い、イヤだ・・・帰して」
水星怪人「本人がイヤだと言えば キチンと帰してあげてるさ」
レンタ「え?」
水星怪人「どうだい? 円盤ならそこの池だ 一度僕らの故郷に 見学だけでも」
水星怪人「君は どうしてもこの星に居たいのかい?」
レンタ「それは・・・」

〇玄関内

〇空き地

〇ゴシック

〇森の中
レンタ「・・・」
水星怪人「宇宙は広い 地球に居場所がなくたって この世界のどこかには君の居場所がある」
水星怪人「君は どうしたい?」
レンタ「・・・」
レンタ「もう一人 女の子を いっしょに連れていってくれるなら」
水星怪人「・・・いいとも」
水星怪人「さあ おいで」
水星怪人「ハッ!!」
水星怪人「ど、どこから!?」
スイカ「ここだよ 目線下げろ水星人」
スイカ「私の格好して悪評広めようなんて 随分こすい真似してくれたじゃん」
スイカ「その割りに 小学校では私の気配だけで 逃げ出したようだけど」
水星怪人「こ 子供!?」
スイカ「ま 月光が無いと変身出来ないのは 我々宇宙人に等しく課せられた枷だな」
レンタ「スイカ?」
スイカ「ゴメンなレンタ 嘘の別れまで演出して」
スイカ「お前の勇気を見誤ってたよ」
水星怪人「まさか 月下ノ怪人の正体は」
スイカ「子供が狙われているなら 子供を送り込めばいいだけの話」
スイカ「それが銀河治安維持機構 ムーン・パトロールのやり方だ」
月下ノ怪人「少女はヒーローじゃないと 誰が決めた?」
レンタ「!!!!!!!!」
月下ノ怪人「ったく、何度空振ったことか この国には怪しい大人が多すぎる」
水星怪人「こ この子の幸せは  我が星にあるかも知れないのだ!!」
月下ノ怪人「そうなのか? レンタ」
レンタ「・・・スイカも 怪人なの?」
月下ノ怪人「バカ言うな 私は宇宙を守る ムーン・パトロールの一員──」
月下ノ怪人「正義のヒーローだゾ」
レンタ「・・・僕は」
レンタ「スイカのいない星に 用は無い!」
月下ノ怪人「よく言った家来!!」
水星怪人「クソッ!!」
月下ノ怪人「フン」
レンタ「跳んだ!?」

〇宇宙空間
月下ノ怪人「喰らえ」
月下ノ怪人「ジャイアント──」
月下ノ怪人「──インパクト!!」

〇森の中
水星怪人「う・・・」
  ──
レンタ「倒し・・・た?」
月下ノ怪人「じゃあなレンタ お別れだ 私は今からコイツの故郷に行って」
月下ノ怪人「地球の子供たち助けてこなきゃ」
月下ノ怪人「──少しの間だったけどな 家来のいる生活 悪くなかった」
レンタ「・・・」
月下ノ怪人「レンタ?」
レンタ「・・・言ったでしょ スイカ」
レンタ「僕は スイカのいない星に用は無いんだ」
月下ノ怪人「・・・一緒に行く? 円盤に乗って」
レンタ「──うん!!」

〇コックピット
  宇宙の彼方にだって 連れてってくれ

〇宇宙空間
  ぼくの怪人!
  ──fin.

コメント

  • 主人公がスイカちゃんに惹かれていく描写が凄く好きです。ミステリアスな雰囲気もいいですね!面白かったです!

  • SF映画を一本見たかのような満足感!ミステリー要素もあり、最後までたっぷり楽しませてもらいました。
    ラストは切ない別れが待っているパターンかな?と思いきやまさかの展開。さらなる大冒険が待っていることを感じられたのも、すっごく良かったです^^

  • 面白かったです!
    .+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.
    テンポよく切り替わっていくシーンの演出も飽きずに読めて楽しかったですし、不思議な女の子とのボーイミーツガール的なストーリーもワクワクしました!
    自分的にはまさかの終わり方でしたが…家出エンド?
    結果的には宇宙人に拐われているのでは(笑)
    ((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

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