パンイチ冒険者ケンイチ

紅月桜

第十話 パンイチ死す(脚本)

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紅月桜

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〇城壁
  第十話 パンイチ死す
ヒカリン「ケンイチ君を強くするのは簡単、 武器と防具を装備するだけや」
ケンイチ「いやそれが・・・グンマァのしきたりが」
ヒカリン「何言うてんの? パーティー解散したんやろ?」
ケンイチ「そうだった!」
ケンイチ「いや、でも・・・」

〇児童養護施設
オータ「グンマァの戦士、己の肉体、恥じナイ オマエ、見どころアル 俺達のパーティーに加わるカ?」

〇洞窟の深部
スノー「その姿に誇りを持ってるんですね」

〇城壁
ケンイチ「・・・・・・」
ヒカリン「強くなりたいんやろ?」
ケンイチ「も、もちろん!」
ケンイチ(そもそもキャラメイクをミスっただけ! 裸族パーティーに加わる気もなかった!)
ケンイチ「・・・・・・」
ケンイチ「一番いい装備を頼む!」

〇鍛冶屋
ヒカリン「ほな防具からいくでー」
ヒカリン「何はともあれ革靴! 氷河も溶岩もあるダンジョンで 裸足なんて正気の沙汰やないで?」
ケンイチ「やっぱり?」
ヒカリン「さて防具言うたら何といっても甲冑やろ! 最高の防御力!チャチな剣で切りつけても 折れるのは剣のほうや」
ケンイチ「いや、いくら何でも重すぎる・・・ 歩くたびにガシャンガシャン鳴るから すぐ気づかれるし」
ヒカリン「敏捷と気配消しを優先するなら 布鎧(クロースアーマー)やな。 暗殺者なんかが着るやつや」
ケンイチ「布の服かぁ・・・ 防御力はないよなぁ」
ヒカリン「布いうても丈夫やで? 岩場で転げまわっても擦り傷もできん」
ケンイチ「でも殴られたら普通に痛いし・・・ 軽さはいいんだけど」
ヒカリン「なら綿鎧(コットンアーマー)はどうや? よく詰めた綿は立派な緩衝材や。 確実にダメージを減らせるで?」
ケンイチ「う~ん・・・ 分厚くて動きづらくなるわりに 防御力はそうでもないような」
ヒカリン「なら軟革鎧(ソフトレザーアーマー)や。 良くなめした革はしなやかで強靭。 軽戦士の定番や」
ケンイチ「いい感じかも・・・ これ、刃物は防げるのかな」
ヒカリン「防刃は硬革鎧(ハードレザーアーマー) がええと思うで? 蝋と脂で煮固めた革は鉄みたくカチコチや」
ケンイチ「硬っ!?光沢があって金属に見えるけど 見た目よりずっと軽い ・・・でも動きづらいなぁ」
ヒカリン「硬革は部分鎧にすればええやろ? 籠手、胸当て、肩当て・・・ 気になるとこだけ着けたらええ」
ケンイチ「戦士っぽくなってきた! これなら剣で斬られても大丈夫かな?」
ヒカリン「ギルド支給の安物とならええ勝負やけど 剣の切れ味と相手の腕がよかったら 真っ二つやろなぁ」
ケンイチ「えぇ・・・こんなに硬いのに」
ヒカリン「金属には勝てん。なら鋲鎧(スタテッド アーマー)やな。硬革の外側に鋲を 細かく打ち込むんや、重くならん程度に」
ケンイチ「なるほど・・・ 最初の布鎧より重くなっちゃったけど」
ヒカリン「金属鎧に比べたらうんと軽いで?」
ヒカリン「そしてマント! これは外せんやろ!」
ケンイチ「えぇ・・・要るの?」
ヒカリン「主な役割は防寒、防暑、防雨、防塵やけど 飛び道具を防いだり、敵の長柄武器を 絡め取ったり、」
ヒカリン「マントで相手の視界をふさいで 死角から攻撃したりもできる。 そして何より、」
ヒカリン「マントはかっちょいい! 気になるあの娘もメロメロや!」
ケンイチ「!!」
ケンイチ「ど、どうかな・・・?」
ヒカリン「おー! ええ感じやないか! 見違えたで!」
ケンイチ「今までブリーフ一枚でだったのが 信じられない!」
ケンイチ(ブリーフなんて──)
ヒカリン「ん?どしたん?」
ケンイチ「いや何でもない!」
ヒカリン「さてお待ちかね! 武器選びや!」
ケンイチ「武器の貯蔵は充分か!」
ヒカリン「ケンイチ君は今まで何使ってきたんや?」
ケンイチ「え・・・何も」
ヒカリン「まさかナイフの一本も持っとらん?」
ケンイチ「うん・・・」
ヒカリン「冒険の必需品やろ!魔物を解体したり 調理したり!木を削ったり縄を切ったり! ふところに忍ばせてグサリとやったり!」
ケンイチ「パンツの中にナイフを忍ばせるのは ちょっと・・・」
ヒカリン「もうパンイチやないやろ。 ナイフくらい持ってなあかんで? 冒険者ナメ過ぎや」
ケンイチ「ご、ごめん・・・?」
ヒカリン「ナイフだけじゃリーチは素手と変わらん。 遠距離武器も要るやろ。 オススメは投石紐(スリング)やな」
ケンイチ「えっ・・・これただのヒモ?」
ヒカリン「そいつを石ころに巻いて頭の上で回して 遠心力をつけて投擲するんや。普通に 投げるより威力も射程もうんと伸びるで?」
ヒカリン「弓と違うて持ち運びも便利やし 石ころは現地調達やから矢筒も要らんし 弾切れの心配もない」
ケンイチ「ううん・・・命中率が心配だけど」
ヒカリン「遠距離攻撃手段の有無は大違いや。 サブウエポンとしてのコスパはええ」
ヒカリン「さて肝心のメインウエポンやけど」
ヒカリン「剣や!」
ケンイチ「剣・・・!」
ヒカリン「理屈はどうでもええ、男の子には剣! いい感じの棒を拾って振り回した 小学生時代を思い出すんや!」
ケンイチ(現役小学生だけど!)
ヒカリン「グレートソードやバスダードソードは ロマン溢れるけど、ま、軽戦士なら このぐらいのショートソードやな」
ケンイチ「これが俺の剣・・・!!」
ヒカリン「剣を握った瞬間、 自然と笑みがこぼれるやろ? それが男の子の冒険心なんや!」
ケンイチ「なんだか力が湧いてきた!」
ヒカリン「ケンイチ君の新たな門出を祝して 今日のお代はサービスしとくで!」
ケンイチ「いいの!?」
ヒカリン「かまへん、かまへん、 ワイは弱いもんの味方やから」
ヒカリン(ここにある装備なんて どれも二束三文のガラクタやし)
ケンイチ「ありがとうヒカリン! ホントにいい奴だったんだな!」
ヒカリン「あったりまえやん。 ついでに忠告やけど五階層はやめとき」
ヒカリン「原因不明のアバターロスト事件が頻発。 ベテラン冒険者達がわけもわからんまま デスペナルティになっとるんやて」
ケンイチ「わ、わかった」
ケンイチ(けど明後日にはシンにクリアされちゃう。 今すぐ最下層を目指すしかない)
ヒカリン「では・・・コホン」
ヒカリン「パンイチ冒険者は死んだ! 真の冒険の始まりや! さぁ往くがええ、冒険者ケンイチ!」

〇城門の下(ログスポットあり)
ケンイチ「【開門】――四階層へ!」

〇炎
ケンイチ(目指すは七階層! 四階層くらい速攻でクリアしなきゃ!)
ケンイチ(いきなりバルログ!?)
ケンイチ(逃げるか・・・?)
ケンイチ(いや、一度は倒した相手だ! 装備を整えた今の俺なら!)
ケンイチ「地震!?」
ケンイチ「地面が裂ける!?」

〇黒背景
ケンイチ「足場が崩れ・・・ うわああああああ!」

〇黒背景
ケンイチ「うぅ・・・」
  どのくらい滑落した?
  百メートル?
  一キロメートル?
  沼にはまったのか・・・
  口や耳の中まで泥だらけだ
  口の中がジャリジャリする・・・
  泥の食感まで再現しなくていいのに
  でも水面に落ちて助かった
  ダメージはあるけど足は折れてない
  マントが泥を吸って重い・・・
  革靴の中まで泥が入り込んでる
  湿気がすごいけど暑くはない・・・
  四階層から五階層に落ちたのか?
  とにかく灯りを
  よし、火口箱の中は濡れてない

〇森の中の沼
ケンイチ「なぁオータ、 火付け上手くなったよな俺」
ケンイチ「・・・・・・」
ケンイチ(いや・・・何を言ってるんだ俺は。 しっかりしろ)
ケンイチ(そもそもソロプレイでGFを始めたんだ。 グンマァなんておかしな集団、 入りたくなかったんだ)
ケンイチ「ここからが俺の本当の物語だ!」
ケンイチ「トロール・・・!!」

次のエピソード:第十一話 本当は、ずっと

コメント

  • 「パンイチじゃないケンイチはケンイチじゃない!」全国から嘆きの声が続々とあがっています。以上現場からでした!

  • ケンイチのアイデンティティーが失われたァ😭
    この心の寂しさを埋めるために、次回は自分がパンイチになって読みます(なんでだよ)

  • ……誰?

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