身代わり人形

333×

幼き日のキュラ(脚本)

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〇貴族の応接間
  豪奢な居間
  幼い女の子が、部屋の隅に隠れていた
キュラ「どうして・・・」
キュラ「どうして?どうしたらいいの・・・」
  廊下を踏む靴の音に、女の子は顔を上げた
  袖で涙を拭い、拭い、開かれた扉の方を向く
ミミ「ここにいたの、キュラ」
ミミ「戻りましょう?」
ミミ「お腹すいたでしょう?昼食が出来て──」
キュラ「嫌だ!」
キュラ「あいつがいるから戻りたくない! あの『身代わり人形』が来たから──」
キュラ「みんな私のこと、どうでもよくなった! ・・・私は見捨てられたのよ!?」
  キュラの目からボロボロと涙がこぼれ落ちた
キュラ「あんなやつ、あいつさえいなければ!!」
ミミ「キュラ、気持ちはわかるけれど」
キュラ「口先だけでなだめないで!」
キュラ「ふぇえ・・・ぐすっ」
  ミミはキュラを抱き上げて庭へ出た

〇華やかな裏庭
  館の庭園 中庭
  花壇のすみに座り込んで動かないキュラ
  ミミは、泣きじゃくるキュラに寄り添った
キュラ「なんで『身代わり人形』なんて来るの?」
キュラ「新しい娘だって・・・私が居るのに!!」
キュラ「あんなやつ消えちゃえばいいんだ!」
キュラ「うわぁぁああん!!」
  かける言葉の無いミミ
ミミ「ねえ、キュラ」
ミミ「紅茶を飲みましょう。取って置きのお菓子も一緒に」
ミミ「ね?」
キュラ「いやだ!やだやだやだぁ!!」
  キュラは泣きじゃくりながら駆け去った
ミミ「待ってキュラ!」

〇城の廊下
  館の中 豪奢な廊下
  何度も窓の外を見る女性
アデラ「キュラはどこにいったの?マザー」
オパール「しゃんとなさい、アデラ」
オパール「旦那様はアデラを選んだ。『ラピス家の娘』の身分はもうお前のものだ」
オパール「『身代わり人形』たるもの、勤めを果たすんだよ」
  この世では、オーダーに合わせた外見の人形が作り出される
アデラ「身代わり人形・・・マザーまでそんなふうに呼ぶ」
  それらは、誰かの代わり、あるいは理想の体現として重宝された
  人形にまつわる一切の技術は秘匿され、独占されている。ゆえに、人形を贖えるのは、一握りの裕福な者だった
アデラ「私が身代わりに・・・この家の娘になってどうするの」
アデラ「もう実子(キュラ)がいるのに」
オパール「さあね。娘の理想がアデラだったってことだ」
アデラ「あの子(キュラ)ではだめなの?人形(わたし)でなければだめなの?」
アデラ「私に優しくしてくれた・・・お茶を淹れてくれて、お砂糖もたくさん──」
オパール「金持ちの家だ。物が余ってしょうがないんだろう」
  豪奢な館を見渡したアデラ
アデラ「だからって・・・人も余るの?」
オパール「あの子がどうなるかは、おまえ次第さ」
オパール「せいぜいあの子の居場所になってやりなさい」
  アデラは、窓の外に走るキュラを見つけた
アデラ「可愛そうなキュラ」
  アデラは、窓越しに走り去るキュラを見送って、そっとため息をついた
アデラ「でも・・・」
アデラ「嫌だと言える貴方がうらやましいよ」

〇貴族の応接間
館の主「やあ、よくきてくれました!」
  ラピス家当主 館の主
館の主「歓迎します、アデラ」
アデラ「ありがとうございます」
館の主「今日からここがアデラの家ですよ」
アデラ「あの」
アデラ「私が養子に入るということは」
アデラ「キュラは私の妹になるのですよね?」
館の主「キュラ?」
館の主「ああ、そうなるね」
  近くでキュラの泣き声がした。
館の主「うるさいぞ!」
アデラ「・・・子どもは・・・泣くものですよ」
館の主「失礼」
館の主「キュラは癇癪もちなのか泣きわめきまして」
館の主「うるさいったらない」
館の主「貴女のような優秀な淑女ならいいんですがね」
館の主「そう考えていたら貴女と出会えた!おまけに娘になってくれるなんて」
館の主「なんと幸運なんだろう」
  仕事があるから、と言い残し、退室する背中を目で追うアデラ。そっとため息をつく。
アデラ「奥様とも疎遠だというけれど、なるほどね」

〇城の廊下
  廊下で鉢合わせになった
  キュラは、怒りに任せて力いっぱい扉を閉めて、駆け出した
  背後から、怒鳴り声が響く
館の主「言いたいことがあるなら」
館の主「はっきり言えよ!!」

〇貴族の応接間
キュラ「ふぇ・・・ぐす」

〇城の廊下
  夜になっても帰ってこないキュラ。ミミは屋敷中を探し歩いていた。
アデラ「見つからないのですか、キュラは」
ミミ「アデラさん」
ミミ「旦那様が帰るといつもこの調子で」
ミミ「旦那様は子どもの扱いが分からないし、キュラもどうしていいか分からないしで」
アデラ「おまけに、身代わり人形がきた、のですね」
ミミ「あの子は、聡い子です。旦那様が養育に時間をかけるより」
アデラ「完成品を買うことを選んだと分かっているのですね」
ミミ「アデラさん、私は人形という存在も、その善悪も分かりかねます。でも」
ミミ「キュラは、貴女自身を嫌いでは無いのです」
アデラ「身代わり人形の妹に、なってくれるかしら」
ミミ「人形の妹・・・」
ミミ「『アデラさん』にならきっと」
  頷いたアデラは、中庭の茂みを指さした
アデラ「キュラは茂みに居るみたい」
アデラ「誰に見つけて欲しいのか、私には分からなくて」
アデラ「貴女になら分かるかしら」

〇華やかな裏庭
ミミ「キュラ?どこにいるの?」
  灌木の影からはみ出した小さな脚が、きゅっと丸まったのがわかった
ミミ「こんなところに隠れていたのね」
ミミ「お腹すいたでしょう?ご飯食べよう?」
ミミ「こっそり、ケーキも食べてしまおう?」
キュラ「・・・うん」
  ありがとう、ミミ

〇芸術
  でもね私は
  私は・・・あいつを許さない
  嫌い嫌い嫌い嫌い
  見返してやる!見下してやる!
キュラ「そうよ」
キュラ「私が、理想の人になればいいんだ」
キュラ「私が身代わり人形になればいいんだ!」
キュラ「そうしたら、誰からも置いて行かれない!」
キュラ「そうしたら──」
  みんなが私を必要としてくれるでしょう?

〇外国の駅のホーム
  駅のホーム
  入れ替わり立ち替わり人の波が押し寄せるホームを、一人の少女が歩いていた
  すれ違った駅員が、はたと立ち止まり、少女を呼び止めた
マリーベル「失礼」
マリーベル「これは、貴女の?」
  大きなモコモコのぬいぐるみを差し出す駅員。どうやらホームに落ちていたようだ
  少女の旅券を改め、駅員の顔がほころんだ
マリーベル「首都発・・・リーベリー城塞行ですか」
マリーベル「これは長旅だ」
マリーベル「よろしければ、人形を貨物で預かりますよ」
  少女はぬいぐるみを受け取り、やんわりと申し出を断った
  ありがとう。でも一緒に座ります

〇外国の駅のホーム
キュラ「私の初めての作品ですもの」
キュラ(いよいよ、出発だわ)
キュラ(手始めはリーベリー城塞 身代わり人形の噂があった街)
キュラ(・・・私は、理想の人になるんだ!)
  その時、けたたましいアナウンスが流れた
キュラ「──え!?なに?」

次のエピソード:2 初めての一人旅

コメント

  • 「身代わり人形」の理想の状態はずっと持続するものなんだろうか。キュラが家名にふさわしい優秀な人間に成長してアデラの存在を上回ったら、今度はアデラの方が捨てられたりしないんだろうか。でも成長したキュラが人形になる旅に出たということは、「お前はもういらない」と子供の頃に言われた心の傷は相当深かったんですね。

  • タイトルから色々な物語を想像させられ、とても効果的でした。アデラのような自分の化身を目にして抵抗しまくっているキュラは少し気の毒ですが。同じようにアデラの内面を心配してしまいました。

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