臆病な恋

伊東ゆうか

1.約束(脚本)

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〇女の子の一人部屋
  休日の朝、
  綺麗なブイの字を描いて飛ぶ鳥たちを見て
  ふとある映像が思い浮かんだ。
  (あの人は・・・・・・)
  (あの何気ない
  数秒間の海の動画を送ってきた人の名前は・・・・・・──)
  少し考えて思い出した。
  彼の名前は眞幌(まほろ)だった。
  知り合ったときは本名を知らなかったから、SNS上の名前である「yomo」と呼んでいた。
  その時の私は、
  長年付き合っていた彼との関係が崩れ、
  最悪な時期だった。
  食事は一人で食べるのが当たり前。
  気晴らしと言えば、SNSで見知らぬ人と繋がっていることだった。
  Yomo くんとは
  実際に会おうなんて思っていなくて、
  ただ誰かに私の存在を確認しておいて欲しかった。
  そうでなければ
  消えてしまいそうな・・・・・・
  生きている感覚が危ういと思うほど
  弱りきっていた。
眞幌「『つかれてんね。寝不足?』」
鈴音「『少し。どうして?』」
眞幌「『なんとなく。まぁ、今日は早く寝なよ』」
  彼はなぜか会ってもない私の状態を、よく言い当ててきた
  試しに尋ねてみても、だいたい返ってくる言葉は「なんとなく」。
  でもこの「なんとなく」には、
  理路整然としたものよりずっと深い何かを感じさせた。
  (yomoくんは私を理解してくれてる)
  そんな気がして、私は少しずつ彼との交流にのめり込んでいった。
  ・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・
  ある日
  
  ほんの出来心でボイスメッセージを聞きたいとリクエストした。
  すると難なく彼は短く声を入れたものを送って寄越した。
眞幌「『yomoでーす。俺の声、そんなに聞きたかった?』」
  しっかりとした低めの囁くような男性の声。
  この短いメッセージは、私の心を乱すに十分な破壊力があった。
  虚しい時間の小さな希望。
  私はその短いボイスメッセージを、何度も何度も聞き返した。

〇テーブル席
  いよいよ会いたい気持ちが膨らんだのは、彼が冗談のように送ってきた動画だった。
  そこはどこかの海で、波に紛れて浮いたり沈んだりしているサーファーを数秒撮影したものだった。
鈴音「(ウミドリかと思ったけど、あれ、人なんだ・・・・・・随分いるなあ)」
  そんな感想を抱いた直後、彼のおかしそうに笑いながら話す声が聞こえた。
眞幌「『遠くから見たら黒い鳥かと思った。あれ、人だね』」
鈴音「(同じこと考えてる!?)」

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