托卵む〜たくらむ〜

ゆきんこ

第四話 四十雀のお節介(脚本)

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〇古いアパートの一室
百寿(もず)「家が、こんなにスッキリしたのは 初めてだ!」
雛(ひな)「私も、物心ついた時から家が散らかっていたから、片付けることを思いつかなかったわ!」
雛(ひな)「四十雀さんは、天才ね!」
雛「これなら未来がハイハイするようになっても、大丈夫!」
四十雀(しじゅうから)「ご飯の用意が出来たので、ダイニングに来てくださ〜い!」

〇ダイニング
百寿(もず)「こっ、これは!」
雛(ひな)「お店みたい! お店みたいね、パパ!!」
四十雀(しじゅうから)「大袈裟ですよ! さあ、卵溶いてあげますから、食べましょう」
百寿(もず)「いただきま〜す」
百寿(もず)「うまあああっ! な、なんだコレ!?」
百寿(もず)「舌が、喜んでいるのが分かる!」
雛(ひな)「からの〜白飯!」
雛(ひな)「まさに、飯テロォォ〜!! 最強の組み合わせね! 間違いない!!」
四十雀(しじゅうから)(異常なまでに喜んでくれている・・・! これって、まさか・・・)
四十雀(しじゅうから)「もっ、もしや室長のお宅では、あまり自炊をしないのですか?」
百寿(もず)「恥ずかしながら、カップ麺か弁当のバリエーションしかないなあ」
雛(ひな)「たまに私がレトルトカレーとお茶漬け作るくらいかな 未来はまだミルクだしね」
四十雀(しじゅうから)「まだ体が出来ていない高校生と、赤ちゃんがいる家庭での食事が、弁当とカップ麺・・・」
四十雀(しじゅうから)「許せない・・・」
百寿(もず)「四十雀さん?」
四十雀(しじゅうから)「室長、炊飯器は使えますよねッ!?」
四十雀(しじゅうから)「私が週末におかずの作り置きしますから、室長はお米研ぐのとタイマーだけ、お願いします!!」
百寿(もず)「ハアアッ!? いや、そこまでしなくても・・・」
四十雀(しじゅうから)「そこまでしますッ! 食を甘く見ないでください。 私、管理栄養士の資格持ってますから!」

〇古いアパートの一室
百寿(もず)「四十雀さんが、あんなにパワフルな女性だったとは! 驚いたな〜」
百寿(もず)「しかも、毎週末料理をしてくれるだなんて。迫力に負けて、つい、OKしてしまったけど」
百寿(もず)「雛が嫌なら断るから」
雛(ひな)「私は大丈夫だよ。 また、四十雀さんの美味しいご飯食べたいし」
雛(ひな)「でも、私たちを本気で心配してくれる人なんて、初めてね! ちょっとお節介だけど」
百寿(もず)「確かに、お節介オバサンだったな! 亡くなったお袋もあんな感じだったな〜」
雛(ひな)(パパ、いつもより楽しそう・・・)
雛(ひな)(私も、四十雀さんが言ってくれた言葉が嬉しかったなあ)

〇アパートのダイニング
四十雀(しじゅうから)「ヤダー! 2人とも、そっくり!」
雛(ひな)「エーッ、 今までパバと私が、似ているなんて言われたこと、一度もないんですけど!?」
四十雀(しじゅうから)「笑い方とか、すき焼きの具を取る順番とか・・・いっぱいありすぎですよ〜♪ 本当にそっくりです〜!」
四十雀(しじゅうから)「さすが親子ですよね♪」

〇幼稚園の教室
保育士「雛ちゃんパパ、まだ連絡取れないのー? 40℃近くまで熱あるよ」
保育士「前から思っていたけど、 雛ちゃん、お母さん似なのかな?」
保育士「雛ちゃんパパはイケメンだけどさあ、雛ちゃんて・・・正直ゴリラ顔だし似てないよね」
保育士「やっぱり自分に似てるトコロないと、可愛いがれないよね。 別れた奥さんに似ているなら、尚更・・・」
  昔から、周りの人たちには誰1人として、私とパパが似ているなんて、言われなかったのに・・・

〇古いアパートの一室
百寿(もず)「何だよ、雛、 ニヤニヤして」
雛(ひな)「えへへ」
雛(ひな)「パバと四十雀さんが、くっつかないかなあと思って!」
百寿(もず)「あのなぁ、あんな若い子がオッサン相手にするわけないだろ! どうせ料理も仕事の点数稼ぎだよ!」
雛(ひな)「ハイハイ、じゃ先に寝るね! おやすみなさい」
百寿(もず)「──ったく」
百寿(もず)「んなワケ、ないだろ」

〇ネオン街

〇校長室
興信所の男「お待たせしました。 お客様の元ご主人、百寿さんとその娘さんの素行調査結果です」
興信所の男「勤務態度は生真面目、賭け事もしない、夜の店にも行かない。娘も優踏生。学校と家の行き来で寄り道もしない」
興信所の男「まるでお手本のような、清貧親子ですね」
興信所の男「ただ気になるのは、生後半年くらいの赤ん坊と通い妻の存在です」
郭子(かっこ)「意外だわ! 百寿にそんな甲斐性があったなんてね〜」
興信所の男「これがまた、不思議な話でして」
興信所の男「普通ですと、百寿さんに通い妻が認められた後で隠し子発覚、というのがセオリーなのですが、」
興信所の男「時系列に直すと、子供が生まれてから、通い妻が出来たようなのです」
郭子(かっこ)「つまり、赤ん坊はその通い妻が産んだ子供ではないということね〜!」
郭子(かっこ)(生後半年・・・まさかね・・・)
興信所の男「通い妻と子供の件も調べるなら、別料金を頂きますが・・・」
郭子(かっこ)(がめついわね〜 でも、お金の関係が1番信用出来るわ!)
郭子(かっこ)「そうね、子供だけ調べてもらおうかしら。引き続き宜しく〜」
興信所の男「毎度!」

〇教室
同級生「雛〜!」
同級生「ウチら帰りにかき氷専門店行くけど〜、雛もたまに付き合ってよ!」
雛(ひな)「今日はパバが遅いから、保育園に親戚の赤ちゃんのお迎えに行かなきゃならないんだよね」
同級生「ヤングケアラーってやつ? 大変だね!」
同級生「じゃ、また次誘うわ!」
雛(ひな)「最近、友達と遊んでないなあ・・・」

〇古いアパートの一室
雛「未来〜ミルクだよ〜」
雛(ひな)「あ〜!もう、誰? タイミング悪いなあ」
雛(ひな)「ハイ、今ミルク中だから・・・」
雛(ひな)「ママ? 電話なんて、珍しいわね」
雛(ひな)「私は元気よ。パパもね。 うん、うん」
雛(ひな)「あー、四十雀さん? そう、まだ彼女ってわけじゃないけどね。 パパにもようやく春が来そうだよ」
雛(ひな)「え・・・」
雛(ひな)「確かに、私みたいなデカい娘が居たら、恋路の邪魔にはなるかもだけど・・・」
雛(ひな)「ママと暮らす──?」
未来(みらい)「オギャアオギャア!!」
雛(ひな)「ごめん、パパの親戚の赤ちゃん預かっていて、今手が離せないの」
雛(ひな)「今度、私から電話する。 うん、じゃあね」
雛(ひな)「・・・」
雛(ひな)「・・・ねえ、未来」
雛(ひな)「私が居ない方が、お父さんは再婚とか考えられるのかな?」
雛(ひな)「私の存在が、お父さんの幸せの邪魔しているのかな?」
未来(みらい)「ブブブ」
雛(ひな)「ウウッ・・・悲しいよ・・・」

〇一軒家の玄関扉
雛(ひな)「パパ、お帰・・・」
百寿(もず)「ただいまッ! 四十雀さんが、焼肉しようだって!」
四十雀(しじゅうから)「明日は休みだし、雛ちゃんは若いのに、作り置きばっかりも飽きるかなと思って!」
百寿(もず)「よく言うよ。 ちゃっかりビール入れてたの見たぞ!」
四十雀(しじゅうから)「焼肉にはビール! 雛ちゃんはあと2年待ってね♡」
雛(ひな)(お似合いだなあ。 パパ、良かったね)

〇川のある裏庭
四十雀(しじゅうから)「へーきれす、へーきれす! しっちょ! わらひ、ひとりでかえれまふって!」
百寿(もず)「その千鳥足で外に出たら、職質されて、派出所に一泊コースだぞ!」
雛(ひな)「家には部屋余ってるから、泊まったら?」
四十雀(しじゅうから)「そんなゴメーワクは、かけりゃれにゃいのれふッ! じぶん、まだヨメイリまえれふし!」
百寿(もず)「雛、彼女を家まで送ってくるから、未来のお風呂頼むな」

〇土手
四十雀(しじゅうから)「うわあ! まんまるおつきしゃまだ! しっちょ!みてみて!」
百寿(もず)「ホントだ。 久しぶりに月なんか見た気がするよ」
四十雀(しじゅうから)「がんばりしゅぎだから〜しっちょ! たまには〜あまえていいんでひゅよ〜」
百寿(もず)「甘えられる人がいないから、しょうがないなあ・・・四十雀さんはさあ、何でそんなに俺たちに良くしてくれるの?」
百寿(もず)「若いんだし、金曜の夜なら、合コンとかあるんじゃないの?」
四十雀(しじゅうから)「わらひのじっかあ、じゅーにんかぞくなんれふ」
四十雀(しじゅうから)「しかも、とーちゃんはしっちょとおなじ、しんぐるふぁーざーで」
四十雀(しじゅうから)「とーちゃんのかわりにいえのてつだいしゅるのがあ、あたりまえになってて・・・ つい、よけーなオセッカイを・・・」
四十雀(しじゅうから)「ご迷惑、でしたよねッ!」
百寿(もず)「突然の、泣き上戸!!」
百寿(もず)「め、迷惑じゃない。 むしろ、有り難いし、助かっているよ!」
百寿(もず)「実はつい最近まで、雛との関係もあまり良く無かったんだ。 口を開けば喧嘩したりね」
百寿(もず)「でも四十雀さんが、家に来てくれるようになって、雛も明るくなったし、君に料理習ったり」
百寿(もず)「まるで、母親みたいだよね」
百寿(もず)「男親だけじゃ、限界があるんだなと、つくづく思ったよ」
百寿(もず)「ありがとう。感謝しているよ」
四十雀(しじゅうから)「しっちょーさえよかったらあ、アタシホントにひにゃちゃんにょ・・・マ・・・に」
百寿(もず)「ごめん、電車の音で最後聞き取れなかったけど、何?」
四十雀(しじゅうから)「わらひ、ママに、なりまふっ!」
百寿「顔面から倒れた! シジュウカラさーん!!!!」

〇部屋のベッド
雛(ひな)「私の荷物なんて、こんなものしか無いわね」
雛(ひな)「パパ、17年間、ありがとうございます」
雛(ひな)「今度こそ、幸せになってね!」

次のエピソード:第五話 雛の巣立ち

コメント

  • 雛ちゃ~ん!出ていっちゃった…😥
    百寿さんは、四十雀さんとくっつくの?
    気になります~😆

  • 酔っ払った四十雀さんが可愛すぎますね!呂律の回らない様がステキです(笑) シジュウカラなのに千鳥足とはこれ如何に、とコッソリ笑ってしまいました^^;

  • 雛は出て行ってしまったけれど、
    未来はどうなったのかな…?
    まさか、未来をつれて…?
    郭子さんの狙いが気になりますね💦

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