後日談 銀二の漫画3(脚本)
〇病院の診察室
医者「・・・」
金一「先生、覚悟はできてる」
金一「言ってくれ・・・」
医者「打撲ですね」
金一「・・・」
医者「打撲した腰は当分 安静にしてくださいね」
金一(また、俺だけが 生き残ったということか・・・)
金一(そういう星に生まれたんだろうな)
〇大きい病院の廊下
周防「あ、あの・・・大丈夫でしたか?」
金一「あぁ、別にどうってことはないよ」
金一「それよりキミに怪我はないか?」
周防「お陰様で・・・」
金一「良かった」
周防「その・・・」
周防「ありがとうございます」
金一「いいってことよ!」
金一「ただ、ちょっと用事思い出したから 銀二のところは一人で行ってくれるかな?」
周防「はい」
周防「・・・」
周防(とってもカッコイイ人だった!)
周防(まるで漫画の王子様!!)
周防「って、いけない」
周防「銀二さんの家に行かなくちゃ!」
〇古いアパート
周防(遅くなっちゃった・・・)
周防「ってあれ?」
周防「ここって・・・」
周防(よしおさんとお隣さんだったんだ)
〇古いアパートの一室
銀二「・・・」
銀二「・・・」
周防「ドア・・・開いてる・・・?」
銀二「うわっ!」
周防「す、すみません 驚かせて・・・」
銀二「こちらこそすいません 集中してて」
銀二「もしかして周防さん?」
周防「はい、編集者の周防です」
銀二「あー、契約の話かぁ」
銀二「今月はちょっと待ってもらえないっすか?」
周防「どうかなさったんですか?」
銀二「今、兄貴と漫画で競ってて・・・」
銀二「それ落ち着いたから 連載準備に入りたいんです」
周防「そうなんですね・・・」
周防「・・・」
周防「分かりました、大事な闘いなんですね」
周防「燃えます」
銀二「分かってもらえたっすか!」
銀二「じゃ、そういうことで、 よろしくお願いしやっすー」
周防「はい、よろしくお願いします」
銀二(って、やべぇ 電気もつけずに対応してしまった!)
〇古いアパートの一室
銀二(描いた・・・)
銀二「描き終えた!!」
銀二「これなら・・・兄貴に勝てるかもしれない」
銀二「いや・・・」
銀二「勝つ!!」
銀二「思えば俺は兄貴の背中ばかり 追いかけてきた・・・」
銀二「それで、よしおさんにも 迷惑かけたんだよなぁ」
銀二「でも、これで終わらせる」
銀二「絶対に兄貴に勝つ!!」
そして、決着の日──
〇古いアパートの一室
銀二「はいっすー!」
よしお「おっす」
銀二「いよいよっすね!」
よしお「あぁ、金一さんとの 勝負の結果が分かるな」
銀二「今回自信アリっすよ!!」
銀二「あの兄貴を満を辞してボコボコっす」
よしお「俺も読ませてもらったけど、 あれならいい勝負できると思う」
銀二「じゃ、見るっすよ」
銀二「・・・」
銀二「え?」
よしお「どうした?」
よしお「これは・・・」
よしお「銀二が大賞で・・・」
よしお「金一さんは準大賞・・・」
よしお「いい結果じゃないか?」
銀二「いや・・・」
銀二「よく見るっす」
よしお「この漫画は・・・」
よしお「絵が・・・下手?」
銀二「こんなの兄貴の全力じゃねぇ」
銀二「まさかあの野郎・・・!!」
よしお「おい、銀二!!」
〇旅館の和室
銀二「てめぇ!!」
金一「いたっ!!」
金一「何だよ、急に!!」
銀二「てめぇ、手抜きやがって!!」
金一「月例賞のことか?」
金一「俺は全力を出した」
金一「それで負けたんだ」
金一「お前は俺を超えたんだよ」
銀二「・・・」
銀二「何でだよ・・・」
銀二「そんなに俺が小物に見えるのか?」
金一「いや、お前の漫画はおもしろかった」
銀二「じゃあ、何で全力出さなかったんだよ!」
金一「・・・」
金一「何度でも言う あれが俺の全力だ」
銀二「お前は兄貴でも何でもねぇ!!」
銀二「人の心が分からないクズだ!」
銀二「死んでしまえ!!」
金一「・・・」
金一「いけねぇ・・・足がもつれた」
金一(ショックを受けてるのか?)
金一(いや、でも・・・ 仕方ないか・・・)
〇CDの散乱した部屋
よしお「兄貴とは話をしたのか?」
銀二「あんなやつ兄貴でも何でもねぇっすよ」
よしお「手を抜いたのは・・・ 銀二のためじゃないのか?」
銀二「勝たせてもらって嬉しいやついますか?」
銀二「俺は嫌っす」
よしお「そうだよな・・・」
よしお(金一さん、何でこんなことを・・・)
銀二「あんなやつ、絶縁っすよ絶縁」
よしお「家族のことだから首突っ込まないけど 仲直りして欲しいな」
銀二「絶対に無理っすね!」
よしお(仲違いして終わるなんて・・・)
よしお(何も力になれないのか・・・)
つづく