#9 愛のダイアリー(前編)(脚本)
〇商店街
本間猛(ほんまたけし)が暗い顔をして歩いている。
本間猛(カフェ、犬、飛行機雲・・・。何を見ても、美沙のことを思い出しちまう・・・)
〇リサイクルショップ
本間猛(『自分の気持ちを押し付けないで』それが、別れ際のあいつの言葉だった。美沙がいなくなって、これからどうすりゃ・・・)
本間猛(ん? リサイクルショップ・・・?)
〇リサイクルショップの中
本間猛(いろんなものがある・・・。ま、今の俺には、美沙のほかに欲しい物なんてないけどな・・・)
本間猛「・・・・・・」
天海愛「それ、きっとあなたの役に立つと思いますよ」
本間猛「えっ?」
本間猛(店員、めっちゃ可愛いな。まぁ、新しい恋なんかできる気分じゃないけど・・・)
天海愛「良かったら、ぜひ」
〇古いアパートの部屋
猛は部屋で一人ビールを飲みながら、日記帳を手にしている。
本間猛「日記なんか書くガラじゃねえけど・・・店員に勧められて、つい買っちまった」
猛が日記帳を開くと、そこには何かが書いてある。
本間猛「何だよこれ! もう書かれてんじゃねぇか!」
猛はじっと、日記の記載を読む。
そこには、『美沙と犬の散歩へ行った』、『一緒に映画をみて泣いている美沙』など、二人で過ごした日々が綴られている。
本間猛「えっ・・・これって・・・嘘だろ?」
猛は次々にページをめくっていく。
本間猛「間違いねぇ・・・。これ、俺と美沙の事が書いてある・・・!」
本間猛「な、何の嫌がらせだよ! あいつの事を思い出させて、俺を苦しめるなんて! ふざけんな!」
猛は怒りに任せて記載のあるページをすべて、破り捨てた。
本間猛「ちくしょう! どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって!」
〇古いアパートの部屋
翌朝──
本間猛「ん、朝か・・・」
本間猛(何だろう。ものすごくスッキリした気分だ。昨日までの俺と、違うような・・・)
猛は日記を手に取り、破れたページを不思議そうに見つめた。
本間猛(昨日破いたこの部分、何が書いてあったんだっけ・・・?)
〇商店街
本間猛(なんか、世界が俺を肯定してくれているみたいに感じられる。あ~、幸せな気分だ)
本間猛(一つだけ足りないとしたら・・・)
本間猛(恋! 燃えるような恋愛がしたい・・・・・・!)
〇リサイクルショップ
本間猛(あっ! そういえば、ここのリサイクルショップの店員は・・・・・・)
〇リサイクルショップの中
猛が入店すると、棚を整えている愛が目に入った。
本間猛(いた! やっぱめっちゃ可愛いッ!)
天海愛「いらっしゃいませ。あ、昨日の・・・」
本間猛「あ、あの!」
天海愛「?」
本間猛「俺、あんたのことが、めちゃくちゃ気になってんだ。今日でも明日でもいい。俺とデートしてくれ!」
天海愛「えっ・・・」
本間猛「本気なんだよッ! 頼むよッ!」
〇リサイクルショップの中
天海愛「あの人、もの凄い勢いだった・・・」
ピーチ「あの日記を破いて、過去の恋愛の記憶を消したんだろう」
ピーチ「全部吹っ切って、新しい恋をする気になったらしい」
ピーチ「・・・何にせよ、愛に声をかけるとは、物好きな奴だ」
天海愛「何それ、どういう意味よ?」
ピーチ「そのまんまの意味さ」
天海愛「・・・失礼な奴。ま、一回くらい、デートしてこよっかな。たまにはいいよね」
ピーチ「はぁ? 正気かよ。あんな奴と」
天海愛「ピーチには関係ないでしょ? それとも行って欲しくないの?」
ピーチ「ケッ! 勝手にしやがれ!」
〇おしゃれなレストラン
本間猛「違うって! 愛さんはオムライスを頼んだんだ! なんでハヤシライスが出てくる!?」
店員「も、申し訳ございません」
本間猛「どうなってるんだよ! この店の教育は」
天海愛「ちょっと! 私は別にハヤシライスでもいいから、そんなに言わなくても・・・」
本間猛「愛さんは遠慮しなくていいの! すぐ取り換えてくれるよ。な?」
店員「・・・はい。すぐにお取替えいたします」
本間猛「へへへ、愛さんのために、男らしくガツンと言ってやったよ!」
天海愛「・・・・・・」
〇水中トンネル
本間猛「ほら、愛さん! すっげ~デカいサメがいるよ!」
天海愛「・・・あぁ、ホントね」
本間猛「あ~、水族館最高。いや、愛さんが最高なのか」
天海愛「それは・・・どうも、ありがとう」
本間猛「愛さんは、どの動物が一番好き?」
天海愛「う~ん、ペンギンかな」
本間猛「オッケー! お土産屋でペンギンのぬいぐるみ買ってやるよ」
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