枯れる若葉と暗い闇への糸口(脚本)
〇草原
桜花 「優樹くん、なんで魔導具を投げ捨ててるの?」
優樹「この魔導具の良くも悪くも戦況を左右するから・・・賭けに出るしか無いのさ」
桜花 「なかなかの黒い魔力があふれだしているね・・・」
遠目で見ただけで魔力の質を見極めたのか・・・さすが歴戦の魔導「師」と呼ばれるだけある
優樹「やっぱり囲まれてるじゃねーか!」
〇基地の広場(瓦礫あり)
鶴翼の翼が閉まり綺麗な円に包囲されている、しかしその円が狭まる気配がまるで見えない
優樹「踏み込みと剣速が半端じゃない・・・比武の時は加減してやがったな」
桜花 「もしあの領域を相手にする時は、刀を線として捉えて身体の重心や表情から次の動きを予測するしか無いね」
この不安定な情勢だ・・・何がきっかけで敵味方が分かれるかわかったもんじゃない
魔界に共通の敵も居るし、恩を売る事で今後の立ち回りで有利になるはずだ
桜花 「風の精よ、万能を司る我が命ず、我かの者に大地を駆ける羽を授けよ!」
優樹「だああああ!」
急に足が軽くなった、それでいて踏み込む力は先程より強い!
桜花 「お待たせ!」
守姫「この数に臆せずきた・・・!?」
優樹「一番槍がよく言うわ」
包囲を破り目を合わせると本陣へ向け突っ込む
〇戦場
守姫「士気はあまり高くないようだな」
優樹「所詮烏合の衆よ」
桜花 「大将討ち取ろう!」
優樹「場合によっては生け捕りにしたい」
第3陣第4陣を破ると本陣と思われる前を後詰めが詰め寄せる
さすがにこの辺になると親近者で固めているのだろう、誰も背中を見せず前向きに倒れていく
優樹「後ろの奴らが詰めて来ないのだけが幸いだな」
守姫「あの羽織は・・・楠王!!」
桜花 「ちょっとずるいけど、この人数差なら仕方ないよね!」
左右に巨大な氷塊が見る見る形成され直線上の僅かな本体兵と若葉の国の王が相対する
〇雪山
左右に巨大な氷塊が見る見る形成され直線上の僅かな本体兵と若葉の国の王が相対する
凍てつく冷気が周辺環境を著しく変容させる
優樹「俺と桜花で兵士は抑える、功名を立てて見せろ!」
守姫「恩に着る!」
隊を束ねる手練れの小隊長に手練れを配置しているらしく、なかなかの剣技を披露される
優樹「むっ!!」
時々受けきれない業が切り傷を増やす
桜花 「大地の守護者よ、長き悠久の時を見守りし豊穣の精霊よ、我を包む厚き盾となれ!」
分厚い土の層が彼女の身を包む
同時に彼女に近く居る部隊が丸ごと鎌倉のように盛り上がった表土で覆われ無力化される
均衡の崩れた猛者達を挟撃し捕縛していく
剣姫の様子を見れば青く輝く刃の切っ先が枯れ落ちそうな葉へ向けられている
守姫「これで我々の勝利だ」
桜花 「桜の樹の王を保護したよ!」
優樹「よし、終戦の法螺貝を吹かせるぞ!」
氷塊が崩れ若葉の王の指示で撤退命令を告げさせる
〇貴族の応接間
若葉の王と桜の樹の王との話し合いで進言をする
優樹「友好の証としてあの猛者を桜の樹の国へ仕えてもらうのが如何か?」
楠「うむ、若葉の国の剣技を是非我が国で披露して欲しく思う」
人質を確保すると言う意図を読み取ったのか王は同意する
小隊長の中に居た優秀な猛者が若葉の樹の国の王の息子だ
養子として武官に迎える事が決まる
〇荒廃した教会
城内の最低限の機能の回復を手伝う
優樹「この瓦礫はなかなかに重いな・・・」
桜花 「この後はどうするの?」
優樹「手掛かりが欲しいからね、噂のダンジョンへ行こうと思う」
守姫「魔界への入り口を見つけたら教えてくれ、国を挙げての助力を楠王から取り付けた」
優樹「それは助かる、見つけたら魔界ごとあの外道を共に攻め込む約束宜しく頼む」
桜花 「だいぶ片付いたね、あたし達はもう十分働いたと思うなっ」
汗だくで疲れ切った桜花、携帯している手ぬぐいで何度か拭ってあげる
桜花 「ここも拭って~」
上着をまくり色白な背中に細かい水滴が付き滴りかけている
優樹「ま、まあ背中なら・・・」
あれだけの戦闘の後で少なからず冷や汗も掻いたに違いない、丁寧に拭き取る
吹き終わりを小さな手で動かし器用に確認すると、上着をめくったままこちらを向く
優樹「ちょ、そっちは自分で拭けるだろ?」
桜花 「いっぱい頑張ったから、可愛がってくれなきゃやだ!!」
守姫「!?」
優樹「おおい!おいおいおい!!」
未知に遭遇した顔をする剣姫を尻目に、桜花をお姫様抱っこして復興現場を去る
〇古民家の居間
華奢な軽さなのに色々な意味で押されっぱなしだ
抱き上げられたお姫様は不満そうに小言を漏らす
桜花 「あの娘にあたしの優樹くんだって事を知らしめたかったのに・・・」
優樹「いやいや、俺は誰の物でも無いよ~」
桜花 「今日の優樹くんの接客-200点」
そんなこんなしてる内に仮宿に着き、丁寧に椅子に腰かけさせる
桜花 「ダンジョンもおぶって連れて行って~♪」
優樹「・・・!そうか、仇敵を葬る為の体力作りを手伝ってくれてるんだね!」
桜花 「え、ぁ~・・・うん!そうそう!」
お姫様抱っこで半分移動し後半はおんぶしてダンジョンへ連れて行く事が決まる
全てはあの畜生を仕留める為!
優樹「善は急げだ、さっそく行こう!」
桜花 「この情熱をぶつけてくれれば、あたしはいつでも受け入れるのに・・・」
この前のワンピースに着替え終えるのを待つ
細く柔らかい手で背筋を伸ばしながら所々隠せていない視界の中で桜花が着替える
この器用さと、欲を掻かず耐久心を鍛えて挑めと言う事か!
何か恥ずかしがり俯いていてはっきりと聞き取れない
詮索するのも野暮だ
何故か頬がいつもより赤い少女を抱いて長めのスカート丈と髪を靡かせながら、仮宿を離れ特製の鍛錬法を実践する
桜花 「昨日まで賑わっていたのに・・・」
優樹「あの人間達なら、きっと再興させてくれるよ」
おんぶに体勢を変えてギルドの入り口を潜る
・・・仕掛けた計略が斜め上に進み過ぎたが、若葉の樹の国の協力も得られるので外交としては優秀な結果だ
ギルドに着くといつもとまではいかないまでも、他国の者を中心に賑わいを見せる
〇西洋風の受付
桜花 「優樹くん、あの・・・」
優樹「二名でお願いします」
桜花 「皆が見てる・・・」
優樹「闇水と隠し扉発見副報酬と希少種の生態調査のサブクエストの発注もお願いします!」
桜花 「だから・・・」
桜花 「・・・もうこのままで良いよ・・・」
胸に回される腕の力は強くなり、押し付けられる感触と高熱が強く背中に伝わる
桜花 「これも・・・強くあたしの体重をかけて・・・足腰を鍛えさせてるだけ・・・だよ?」
優樹「う、うん・・・ちゃんとわかってる」
桜花 「・・・ほんとかなぁ?」
話し方と声色を集中して聴くが秘めた想いは前を向く僕には推し量れない
優樹「・・・見つけに行こう」
桜花 「・・・優樹くんならできるよ」
〇魔法陣
魔法陣が二人を淡く包んでゆく・・・