週末カウンセラー はっちゃん

笑門亭来福

第八話(美井さんの悩み…名古屋城編)(脚本)

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〇エレベーターの中
子供は風の子「こんにちは、風の子です」
子供は風の子「前回は、6話分のあらすじを」
子供は風の子「一気に話したので、さすがに息切れました」
子供は風の子「その後、はっちゃんと美井さんは」
子供は風の子「嫌なことがあった時どうするかで問答となり」
子供は風の子「美井さんは、自分の中に別の自分を作って」
子供は風の子「やり過ごすみたいな、分身の術?」
子供は風の子「・・・じゃなくて・・・」
子供は風の子「そうそう、多重人格みたいな話しになって」
子供は風の子「またもや、頑じぃとの記憶がモヤモヤし」
子供は風の子「今回のお城での話となります」
子供は風の子「頑じぃの記憶って、何でモヤモヤするの?」

〇城
美井(びい)さん「やっぱ、男は黙って名古屋城だねー」
頑じぃ「ですねー・・・でも、まさか」
頑じぃ「「推しお城」が、同じとは!」
美井(びい)さん「びっくりだよねー」
頑じぃ「マニアには、意外と人気が低いんです」
美井(びい)さん「無いわー、金鯱(キンシャチ)なのに」
頑じぃ「まぁ、金鯱は、大阪城にも居ますけど・・・」
美井(びい)さん「しかし、頑ちゃん、お城に甲冑は最強!」
美井(びい)さん「♪ 周りも、ザワついてるよー」
通行人1「えっ? スカイプじゃないの?」
通行人2「ママー、あの人なんでブツブツいってるの?」
通行人3「だめよ、しーっ! こっちに来なさい!」
美井(びい)さん「ん? あれ? お寺での反応と違うなー」
美井(びい)さん「・・・それはそうと、休暇よく取れたね?」
頑じぃ「和尚さんと結ちゃんの、広い心に感謝です」
頑じぃ「美井さんこそ、よく取れましたね」
美井(びい)さん「たまにはねー、結局取らずじまいになるから」
頑じぃ「使われなかった休暇が、成仏しますように」
頑じぃ「・・・あのー、そう言えば、以前・・・」
美井(びい)さん「ん?」
頑じぃ「僧侶の肉食の是非の問答、覚えてます?」
美井(びい)さん「あー、初対面だったねー、あの時」
頑じぃ「はい。・・・あの時」
頑じぃ「結婚の是非の問いじゃなかった・・・」
美井(びい)さん「結ちゃんの前で、その話はねー」
美井(びい)さん「でも、今のご時世、坊さんが結婚しても」
美井(びい)さん「誰も不思議に思わないんじゃない?」
美井(びい)さん「この話って、何だか変に力が入って扱われるよねー」
美井(びい)さん「一番人間らしいことなんだから」
美井(びい)さん「等身大で語り合えないかなーって・・・」
美井(びい)さん「男と女が補完関係なら」
美井(びい)さん「補完されときゃいいじゃない」
美井(びい)さん「♪ 伊勢は津で保(も)つー」
美井(びい)さん「津は伊勢で保つー ♫」
美井(びい)さん「🎶 尾張名古屋は、城で保つー」
頑じぃ「民謡ですか?」
美井(びい)さん「伊勢音頭。檀家にゃ年寄りが多いから・・・」
頑じぃ「持ちつ、持たれつ、か・・・」
頑じぃ「🎶 白いバラには、白いハート」
頑じぃ「♫ 黒いバラには、黒いハート」
美井(びい)さん「おっ、なんだなんだ?」
頑じぃ「実は、恋を・・・してるらしいんです」
美井(びい)さん「えらい急やなー」
頑じぃ「その人の唄を思い出して・・・」
頑じぃ「その人のことが、いつも頭から離れず」
頑じぃ「自分を見失い、自分が溶けて無くなりそうで」
頑じぃ「怖くて、逃げ出して、気づいたら」
頑じぃ「和尚さんのところに来てました」
頑じぃ「恋は代理が効かないから」
頑じぃ「しばらく、寺で、人と話をする中で」
頑じぃ「他人の煩悩を観察してみたら、と」
美井(びい)さん「恋は煩悩ちゃう、恋は恋や」
頑じぃ「本能的に、異性にブレーキかけちゃうんです」
美井(びい)さん「そうか、それで観察して、何か見えてきた?」

〇日本家屋の階段
頑じぃ「『煩悩は、依存に比例する』」
頑じぃ「・・・ということでしょうか」
頑じぃ「依存しているものが、無くなりそうになる時」
頑じぃ「人は、最も、煩悩の火が強くなるようです」
美井(びい)さん「・・・依存しているものが、なくなりそうになる時・・・」
美井(びい)さん「・・・なぁ、頑ちゃん」
頑じぃ「・・・」
美井(びい)さん「オレのこと、実験台にしてみんか?」
頑じぃ「・・・じ、実験台?」
美井(びい)さん「うん」
頑じぃ「罪深い恋愛に手を染めているんでしょうか」
美井(びい)さん「いやいや、そうじゃなくて」

〇街の全景
美井(びい)さん「依存している・・・未だに」
頑じぃ「・・・」
美井(びい)さん「依存を断とうとしてきた・・・何度も」
頑じぃ「・・・」
美井(びい)さん「もう何年も裁判が続いててね・・・」
頑じぃ「お知り合いの方ですか?」
美井(びい)さん「娘のね・・・」
頑じぃ「・・・」
美井(びい)さん「いい子だったんだぁ・・・」
美井(びい)さん「シングルファーザーだったけど」
美井(びい)さん「お互い助けあって、思いあって」
美井(びい)さん「一緒に居れる時間は多くなかったけど」
美井(びい)さん「でも、交換日記ずっと続けて・・・」
美井(びい)さん「ひどい反抗期もなく、グレもせず・・・」
美井(びい)さん「なんでも、話してくれて・・・」
美井(びい)さん「いつ頃からかなぁ、口数が少なくなって」
美井(びい)さん「目を合わせなくなった」
美井(びい)さん「おはよう、の挨拶さえしなくなって」
美井(びい)さん「自分の部屋から出てこなくなった」
美井(びい)さん「SNSで知り合った、そいつと」
美井(びい)さん「ウマがあったんだろうな」
美井(びい)さん「一日に何時間話しても、飽きないみたいで」
美井(びい)さん「結局、SNSのやり取りだけで」
美井(びい)さん「最後まで、直接会えんかったらしい・・・」
美井(びい)さん「情けない話、供述調書で知ったんだけどね」
美井(びい)さん「わからんのよー、会ったことのないモンに」
美井(びい)さん「夢中になれるもんかなー?」
美井(びい)さん「いつ頃からか、家に郵便やら宅配やら」
美井(びい)さん「なんだか荷物がどんどん届いて」
美井(びい)さん「あの子の部屋が荷物だらけになって・・・」
美井(びい)さん「無理してでも、聞き出せばよかった・・・」
美井(びい)さん「その内、電話がかかってきて」
美井(びい)さん「お宅の娘さんに騙されたって・・・」
美井(びい)さん「それが1件や2件じゃなくてね・・・」
美井(びい)さん「そのSNSで知り合った奴の片棒を」
美井(びい)さん「担がされたんだな・・・悔しいよ」
美井(びい)さん「結局、なんの力にもなれんかった」
美井(びい)さん「何がキッカケなんだろうって」
美井(びい)さん「もう一度やり直したい」
美井(びい)さん「考え出すと、眠れなくなるんだ」
美井(びい)さん「考えても、しょうがないのにね」
美井(びい)さん「だから、依存という言葉には」
美井(びい)さん「過剰反応してしまう・・・」
頑じぃ「美井さん・・・」
頑じぃ「もう一度、やり直しましょう」
美井(びい)さん「もう一度?」
頑じぃ「もう一度!」
美井(びい)さん「やり直す?」
頑じぃ「やり直す!」

〇SHIBUYA SKY
美井(びい)さん「・・・もう一度?」
美井(びい)さん「・・・やり直す?」
美井(びい)さん「もう一度?・・・もう一度!」
管理人さん「すんません」
美井(びい)さん「・・・もう一度・・・」
美井(びい)さん「ん?」
管理人さん「悪いけど、閉館じゃ」
美井(びい)さん「えっ?」
管理人さん「ずーっと、ブツブツ言いよったのぉ」
美井(びい)さん「ぶつぶつ・・・? 独り言・・・?」
管理人さん「もう一度、もう一度って」
美井(びい)さん「・・・お恥ずかしい」
美井(びい)さん「あれ? 頑ちゃんは?」
管理人さん「・・・」
美井(びい)さん「甲冑着た、武将のような人見ませんでした?」
管理人さん「甲冑?」
美井(びい)さん「・・・えぇ」
管理人さん「そこの展示のことかね?」
美井(びい)さん「テンジ?」
美井(びい)さん「えぇーっ!」
美井(びい)さん「か、甲冑が・・・ある・・・甲冑だけ?」
管理人さん「見事なもんじゃろ」
管理人さん「まるで、飛び出してきそうじゃ」
管理人さん「ふわはははは・・・さぁ閉館じゃ」
管理人さん「ありがとな、また」
美井(びい)さん「・・・はぃ・・・どうも・・・」

〇エレベーターの中
子供は風の子「こんにちは、風の子です」
子供は風の子「何と言ったらいいのか」
子供は風の子「・・・都市伝説?」
子供は風の子「美井さん、ふわふわと宙に浮いたように」
子供は風の子「なんとか、帰宅はできたようだけど」
子供は風の子「あまりにも不思議なので」
子供は風の子「はっちゃんのオンラインバーに駆け込みます」

〇個人の仕事部屋
はっちゃん「あ、美井さん・・・どしたの?」
美井(びい)さん「うん、ふわふわで、フラフラした感じ」
はっちゃん「ちょっと、大丈夫!?」
美井(びい)さん「記憶もぼんやりなので、記録してみた」
はっちゃん「どゆこと?」
美井(びい)さん「不思議なことも起こるんで、日記つけてみた」
はっちゃん「へぇ・・・前の時、お城がどうとかって」
美井(びい)さん「そうそう、ソレソレ」
はっちゃん「・・・」
美井(びい)さん「頑ちゃんと、どっかのお城に行って・・・」
はっちゃん「頑ちゃん!? そんな仲なの??」
はっちゃん「ま、まあ、それは置いといて・・・」
美井(びい)さん「頑ちゃん、うちのお寺さんに修行に来てて」
はっちゃん「えぇーっ!」
美井(びい)さん「そんで、伊勢音頭唄ったら・・・」
美井(びい)さん「突然・・・僕、恋してるんですって」
美井(びい)さん「自分が分からなくなって、逃げて来たって」
はっちゃん「そ、それで?」
美井(びい)さん「煩悩は依存と深く関係してるんだと・・・」
美井(びい)さん「依存を断ち切る時に、煩悩はMAXになると」
はっちゃん「そうかも」
美井(びい)さん「他人の観察で、煩悩を知りたいって」
美井(びい)さん「じゃあ、オレを実験台にしたらと勧めた」
はっちゃん「実験台?」
美井(びい)さん「娘の話をした・・・」
はっちゃん「美井さん、娘さんがいたんだ」
美井(びい)さん「うん、親独り子独りでね」
美井(びい)さん「お互い寄り添って生きて来たと思ってた」
美井(びい)さん「いつ頃からか、SNSにハマってね」
美井(びい)さん「一度も会ったことがない相手の・・・」
美井(びい)さん「詐欺の片棒を担いじゃった・・・」
美井(びい)さん「気づいたら、裁判所で傍聴してたんだ」
美井(びい)さん「悔しいことに、そこで娘のことを知った」
美井(びい)さん「何の力にも、なれなかった・・・」
美井(びい)さん「悔しくて、情けなくて、申し訳なくて」
美井(びい)さん「何でこんなことになったんだろうって」
美井(びい)さん「何がいけなかったんだろう・・・」
美井(びい)さん「どこで、やり直せたんだろう・・・」
美井(びい)さん「考え始めると、何も手がつかず、眠れない」
はっちゃん「やり直す?」
美井(びい)さん「やり直す!」
はっちゃん「もう一度?」
美井(びい)さん「もう一度!」
はっちゃん「・・・」
美井(びい)さん「・・・」
はっちゃん「会えない人を好きになっちゃったことが」
はっちゃん「恋に恋しちゃったこが、キッカケよね」
はっちゃん「その時、別の道があれば」
はっちゃん「別の運命が待ってたのかも・・・」

〇エレベーターの中
「こんにちは、風の子です」
子供は風の子「人生のやり直しを祈る、美井さん」
子供は風の子「美井さんの気持ちを受け取った」
子供は風の子「はっちゃん、と頑じい」
子供は風の子「何かをしてあげたい気持ちは一緒だけれど」
子供は風の子「次回予告」
子供は風の子「『天と地と』」
子供は風の子「見てね! きっとだよ!」

次のエピソード:第九話(天と地と)

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