托卵む〜たくらむ〜

ゆきんこ

第三話 葦雀の習性(脚本)

托卵む〜たくらむ〜

ゆきんこ

今すぐ読む

托卵む〜たくらむ〜
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇CDの散乱した部屋
未来(みらい)「オギャア!オギャア!オギャア!」
雛(ひな)「パバ〜、早く助けて!!」
雛(ひな)「ミルクもあげたし、オムツも替えたのに、泣き止まないよ〜!」
雛(ひな)「コッチが泣きたいくらい!」
百寿(もず)「どれ、未来。 パパが抱っこしてあげるよ」
雛(ひな)「ウソでしょ? もう笑ってる!」
百寿(もず)「昔の雛と一緒だ!」
百寿(もず)「未来は人肌が恋しくなっただけだろう。 ちょっと抱っこするだけでも、安心して落ち着くんだよ」
雛(ひな)「ふーん。 なるほどね!」
雛(ひな)「決ーめた! いつか私も子供ができたら、パパに托卵しちゃうわね!」
百寿(もず)「オイッ! 托卵はもう勘弁してくれよ!!」
雛(ひな)「フフフフ! それにしても、あの時はよく葦雀さんに、未来を引き取ると申し出たわよね!」
雛(ひな)「誰の子供かも分からないのにさ」
百寿(もず)「誰の子供か、分からないからだよ」
百寿(もず)「俺の踏んだ轍を、また葦雀さんが踏むところは、見たくなかったんだ」
百寿(もず)(結局、葦雀さんの子供では無かったしな)
雛(ひな)「パバは本当に、優しいね・・・!」
雛(ひな)「あら、葦雀さんからメール!? 何だろう・・・」
雛(ひな)「・・・!」
百寿(もず)「雛、どうした?」
雛(ひな)「ママが、意識を取り戻した・・・!!」
百寿(もず)「そ、そうか」
百寿(もず)「手術後、半年も意識不明だったが・・・良かったな!」
雛(ひな)「あんなに酷い人、死ねば良いと思っていたのに・・・涙が出る」
百寿(もず)「頭では拒否していても、カラダは郭子が母親だと認めているのかもな」
百寿(もず)「雛だけでも、会いに行ってみるか?」
雛(ひな)「・・・考えておくわ」
雛(ひな)(アッ、そういえば明日は・・・)

〇病室のベッド
雛(ひな)「ママ」
郭子(かっこ)「・・・何よ。 死に損ないの様子でも見てこいって、パパに言われた?」
雛(ひな)「パパがそんなこと言うわけないでしょ。 辛口叩けるなら、元気になったみたいね」
郭子(かっこ)「元気じゃないわよ」
郭子(かっこ)「頭の手術で縫ったところは、洗うだけでも違和感あるし〜傷の部分は髪が生えないから隠さなきゃならないし〜」
郭子(かっこ)「おまけに左半身が、痺れているのよ」
郭子(かっこ)「生きているだけで地獄だわ」
郭子(かっこ)「ま、赤ちゃんが流れたのに、葦雀が私の面倒見てくれるって言ってくれたのは、色々ラッキーだったわね〜!笑える」
雛(ひな)(葦雀さん、未来は流産したことにしたんだ)
雛(ひな)(未来のためにも、それで良いのかも)
雛(ひな)「今日はただ、顔を見に来ただけだから、もう帰るね」
雛(ひな)「ママ、誕生日おめでとう」
郭子(かっこ)「雛は小さい時からアタシの誕生日に花を贈ってくれていたのよね〜」
郭子(かっこ)「昔はお金がないから折り紙の花だったけど、今は生花が買えるなんて」
郭子(かっこ)「子供って、いつの間にか大きくなっているわ」
葦雀(よしきり)「その分、君も年を重ねているんだよ」
郭子(かっこ)「葦雀〜待っていたわよ。 ねえ、アタシが退院したら、海外に引っ越さない?」
葦雀(よしきり)「唐突だね」
郭子(かっこ)「だって〜事故起こしたから、ご近所さんに白い目で見られるし、あの部屋に帰ったら思い出しちゃうよ〜」
郭子(かっこ)「結婚したら、本当にアナタの赤ちゃんも欲しいし、環境は整えたいのよね〜!」
葦雀(よしきり)「郭子、君のことは愛しているし、事故の責任は僕にもあるから、死ぬまで面倒を見るとは言ったけれど」
葦雀(よしきり)「結婚は出来ないんだ。 ゴメンね」
郭子(かっこ)「──ッ」
葦雀(よしきり)「君に隠し事があったように、実は、僕にもまだ君に言っていないことがあってね」
葦雀(よしきり)「君に紹介したい人たちが居るんだ」
葦雀の女②「信じられな〜い! 自殺未遂して葦雀に結婚を迫るなんて、ねえ3号さん?」
葦雀の女③「言うな! そのパターン、私が過去にやっているから、もう効かないよ」
葦雀の女①「はじめまして。 私たちは、葦雀が籍を入れずに事実婚をしている愛人たちよ」
葦雀の女①「葦雀には事実婚の女が5人、認知済の子供たちが8人居て、葦雀が持っているあのマンションで、みんな生活しているの」
葦雀の女①「アナタだけが抜けがけすることは、私たちが許さないわ!」
葦雀の女②「それに忙しい葦雀に代わって、退院後のアナタの世話も、私たちがやることになるわ〜」
葦雀の女③「フフ、左半身麻痺だなんて、お気の毒さま。タダでさえ愛人間は寵愛争いが激しいから、意地悪されなきゃ良いけど〜」
葦雀の女①「ということだから、子供作るのは良いけど、遺産は期待しないほうが良いわよ」
葦雀(よしきり)「俺はみんなが幸せに暮らしてくれれば、他に望むことはないよ」
  な
  ん
  でなんでなんで
  いつもアタシは幸せになれないの?

〇病室のベッド
郭子(かっこ)「どうしよう・・・考えなきゃ、私の人生ゲームオーバーになる」
郭子(かっこ)「私の最後の武器・・・上手く利用しなきゃ」

〇オフィスビル前の道

〇オフィスのフロア
「百寿さん!」
四十雀(しじゅうから)「この前、間違えて百寿さんの顧客にアポイント取ったみたいで、スミマセンでした!」
四十雀(しじゅうから)「新規かと思ってサービス給油の話もしてしまって・・・」
四十雀(しじゅうから)「自分の確認不足です」
百寿(もず)「いいんだよ。 よくあることだし。 気にしないで!」
百寿(もず)「全部後処理は俺がやるから、大丈夫」
四十雀(しじゅうから)「あっ、ありがとうございます!」
OL「さすが仏の百寿〜! 普通なら、後処理はコッチがやらなきゃならないよ〜」
OL「前は優しくても陰気な感じだったけど、最近は爽やかだよね〜! ホレてまうやろ〜♡」
四十雀(しじゅうから)「分かるわ・・・」
「お?」

〇オフィスの廊下
四十雀(しじゅうから)「室長! 今日のお詫びに晩ご飯、奢らせてください!」
百寿(もず)「気持ちは嬉しいんだけど、まだ子供が小さくて。 外回り後は直帰したいんだよね」
四十雀(しじゅうから)「アレッ!? 娘さん、高校生でしたよね?」
百寿(もず)「それが、赤ちゃんが居る親戚が病気になってしまってね。 家で預かっているんだよ」
四十雀(しじゅうから)「シングルファーザーなのに、赤ちゃんのお世話まで!? メチャクチャ大変じゃないですかっ!!」
四十雀(しじゅうから)「分かりました! 自分、家事だけは得意なので!!」
四十雀(しじゅうから)「お宅ですき焼き作らせて下さいッ!!」
百寿(もず)(し、四十雀さんて、こんなに積極的な子だったっけ!?)
百寿(もず)「お、お願いします!」

〇一戸建て
百寿「ただいまー」

〇CDの散乱した部屋
雛(ひな)「パパ、今日は早かったね・・・ エエッ!」
雛(ひな)「か、彼女さん?」
四十雀(しじゅうから)「やっ、あの〜」
百寿(もず)「雛、誤解だ!」
百寿(もず)「こちらは会社の部下で四十雀さんだよ。 今日は色々あって、晩御飯を作りに来てくれたんだ」
雛(ひな)「怪しい〜! ただの会社の部下が、何で上司の家で手料理振る舞うのよ〜」
四十雀(しじゅうから)「まー、それはともかく・・・ 一言良いですか?」
四十雀(しじゅうから)「家の中、汚すぎです!!」
四十雀(しじゅうから)「半年くらいの赤ちゃん居るんですよね!? そろそろ寝返りしたり、欲しい物に手を伸ばしたりする時期じゃないですか!」
四十雀(しじゅうから)「ご飯の前に、掃除! 掃除させてもらいます!!」
「お、お願いします!!」

次のエピソード:第四話 四十雀のお節介

コメント

  • おおぅ、よしきりさん、そうだったの😳
    かっこは、まだ何か企むんでしょうか?
    続き読みます!

  • なんとなくいい方向に向かっているような、そうでもないような…。郭子の動きが恐いです…

  • 郭子…生きとったんかワレ!!😳
    いやー驚きました。あと登場人物に鳥の名前がついてて、その習性にあった行動をしてるんですね。
    ということはネタバレしないためには鳥を調べないほうが良いのかも。

コメントをもっと見る(6件)

成分キーワード

ページTOPへ