〇牢屋の扉（鍵無し）
ケイト「ハンスが・・・２人？」
ケイト「一体、何がどうなってるんだ」
ハンス「この部屋への入口は用意していないはずだが」
ハンス「いけない。お前たち。早く逃げろ！」
クリス「どういうことだ」
ローレン「みんなよく聞け。本物のハンスはこっちだ」
　　と、白衣のハンスを指さす。
ローレン「そいつは、ハンスなんかじゃない！」
「?」
ケイト「そんなのどっちだっていい！」
ケイト「そんなことより、姉さんはどこにいるんだよ!?」
クリス「あなたが本物のハンス。 では、あいつは一体・・・」
ハンス「説明はあとだ。この場所はいけない。 今はとにかくここから逃げるんだ」
ハンス「お前たちは知りすぎてしまった。 その記憶、抹消させてもら──」
　　パーン
　　額を撃ち抜かれたハンスが消えた。
「!」
ニーナ「あいつが悪者でいいんだよね？」
ハンス「無駄だ。そんな物では奴は倒せない。 今のうちに早く」
　　ハンスがその場に再び現れる。
ケイト「!」
ハンス「行儀の悪いやつがいるようだな」
クリス「β版のギアか!?」
ハンス「ん？ そうか。お前たちのギアは・・・」
ローレン「ここは一旦引くぞ」
　　ダダダダッ
　　銃を乱射するローレン。
　　キーン
　　ハンスに当たるが鉄のように弾を弾く。
ローレン「なにっ！」
ハンス「正規ユーザではない貴様らに容赦はいらないな」
　　目に追えない速さで動くハンス。
ニーナ「わあ！」
　　ニーナの後ろにハンスが回り込み、ニーナを捕らえる。
ケイト「ニーナ！」
ニーナ「うう。放せ！」
ハンス「1人目」
ニーナ「駄目だ。外せない」
ハンス「β版の記憶消去はここではできない。 お前たちには海を渡ってもらうことになる。それまで大人しくしていろ」
ニーナ「ベーだ」
　　あっかんべーをするニーナ。
ハンス「β版は脳への負担がかかりすぎるからやりたくなかったが。自業自得だな」
ハンス「止めろ！ 彼らに罪はない」
ハンス「困るんだよ。ゲームの邪魔をされては」
クリス「! お前、ゲームマスターか」
ケイト「え？」
ハンス「だったらどうする？」
ローレン「ニーナ！ 早くログアウトしろ！」
ニーナ「うん。Ｈｉ ＨＩＭＡＨＡＮ-Ｚ」
　　ホログラムは出ない。
ニーナ「あれ？」
ハンス「無駄だ」
ハンス「ああ、何と言うことだ」
ケイト「なんで・・・」
ローレン「なあ親父。ひょっとしてここって」
ハンス「ここは意識を閉じ込める部屋だ。 ログアウトはできない」
クリス「現実世界で本人ではない誰かがギアを外した場合、意識はどうなる？」
ハンス「この部屋を出てからログアウトしない限り、この世界に取り込まれたままだ」
ローレン「やっぱり」
ケイト「そんな」
ハンス「ここに来たお前たちが悪い」
ニーナ「この！ この！」
　　ニーナがハンスを蹴る。
　　しかし、ハンスは微動だにしない。
ハンス「さて」
クリス「来るぞ」
ローレン「みんな、後ろを取られるな！」
　　ハンスが瞬間移動を始める。
　　皆、ハンスのスピードについていけない。
クリス「くっ」
　　クリスはハンスに掴まれる。
ケイト「クリス！」
ハンス「そうか。思い出したぞ。 お前はポルティアの時の裏切者か」
　　ニーナやケイトを見る。
ハンス「なるほど。お前たちもあの時の」
クリス「なんて力だ」
　　ハンスはクリスに手錠をはめる。
ハンス「2人目」
ニーナ「どうしよう。クリス」
クリス「・・・・・・」
ローレン「まずいな」
クリス「お前の目的は何だ！ 何のためにゲームマスターが戦争など起こす必要がある」
ハンス「目的？ ゲームマスターの目的など１つに決まっているだろう」
クリス「?」
ハンス「私の目的はこのゲームに人を集めること」
ハンス「一番手っ取り早いのが戦争を起こすことだった。ただそれだけのことだ」
ケイト「そんなことのために」
クリス「人を集めるのは記憶を取り込むためか？」
ハンス「?」
クリス「知っているぞ。 お前たちはギアを使って人々の記憶をＨＩＭＡＨＡＮ-Ｚに移植している！」
ローレン「何！？」
ハンス「・・・貴様の記憶は大幅に消去しないとならないようだな」
クリス「記憶を集めてどうするつもりだ！」
ハンス「どうせこの記憶も抹消されるんだ。 知る必要はない」
ハンス「さて、残りは・・・」
ローレン「来るぞ」
ハンス「ラルフ。奴とまともに戦おうとするな。 逃げることだけ考えるんだ」
ケイト「大丈夫。僕に任せて」
　　ケイトは目に追えない程のスピードでハンスに近づく。
ニーナ「行けー！ ケイト！」
ハンス「彼は？」
ローレン「あいつもインチキできるみたいだぜ」
ハンス「そのスピードとパンチ力。 チート行為は見逃せないな」
ケイト「そっちこそ」