後日談 銀二の漫画2(脚本)
〇古いアパートの一室
よしお「よし、間に合った!」
足塚おさむ「どうした急に掃除なんてして」
よしお「今日は編集者さんが来るんすよ」
足塚おさむ「おー、そうだったか」
よしお「こういうの初めてだから ドキドキするなぁ」
よしお「きた!」
よしお「どうぞどうぞ」
周防「・・・」
よしお「初めまして」
周防「初めまして、周防です」
よしお「周防さん、女性だったんですね」
周防「誠って男の名前みたいですもんね」
よしお(微塵も笑わない人だなぁ)
足塚おさむ(引っ込んでおくか)
周防「なんか今気配がしましたが・・・ 猫でも飼っているのでしょうか?」
よしお「え・・・何も飼ってないので、 野良猫とかじゃないっすかね」
よしお(まさか霊感がある人!?)
周防「えと・・・」
よしお「みんな俺のことはよしおって呼んでます」
周防「よしおさん まずは連載の準備についてですが・・・」
よしお(いきなり本題に入ったな)
周防「だいたい1年ほどかけて準備を行います」
よしお「まずはキャラ設定と 5話分のネームですよね」
周防「はい、うちの場合、 それをもとに連載会議にかけます」
よしお「通らなかったら・・・」
周防「連載はできません」
よしお(賞を獲ったところで 確実に連載できる訳じゃないんだな)
周防「よしおさんの実力であれば、 ちゃんとやれば通りますよ」
よしお「ありがとうございます!」
周防「ちなみに連載時の原稿料ですが・・・」
よしお(こっちからは切り出しにくいから助かる)
周防「新人は1ページ8000円 1週あたり20ページです」
よしお(月64万円か)
よしお(高給な気もするけど、 アシスタント代とかも考えると・・・)
周防「1話目だけは例外で 多い人は60ページくらい描きます」
よしお「1話目で読者の心を掴めるかどうか・・・ ですもんね」
周防「はい、2話が1話目の読者数を 超えることはありません」
周防「1話目でいかに多くのファンを作れるか それが大事です」
よしお「勉強になります!」
よしお(つかみどころがない人だけど、 頼りになりそうだ)
周防「ちなみに出版時の印税は10%です 初版部数は人気に応じて変動します」
周防「新人なら2~3万部いけば いいほうでしょう」
よしお(人気作品だと1000万部とか売れてるよな 一体いくらもらっているんだ・・・!)
周防「というわけで、詳しい契約に・・・」
〇古いアパートの一室
足塚おさむ「どうだった? すごい美人だったけど」
よしお「愛想はなかったですが、 頼りになりそうな人でした!」
足塚おさむ「ふむ」
足塚おさむ「よい編集者とはどんなものか分かるか?」
よしお「え・・・と 漫画に詳しいとか話しやすいとかですか?」
足塚おさむ「売ってくれる編集者だ」
足塚おさむ「売れなければ続かない 多くの読者にも届かない」
足塚おさむ「性格がひん曲がってようが、 売ってくれる編集者が一番だ」
よしお「なるほど・・・」
足塚おさむ「・・・と言いたいところだが」
よしお「違うんですか?」
足塚おさむ「人間関係だからやはり相性は よいほうがいい」
よしお(先生も色々とあったんだろうな)
足塚おさむ「契約が落ち着いたのなら、 銀二の様子でも見てきたらどうだ?」
よしお「そうですね、伝言もありますし」
銀二「呼びました?」
よしお「お前はいつも急だな!」
よしお(張ってるのか!?)
よしお「金一さん、 銀二の勝負を受けるって言ってたよ」
銀二「絶対に負けないっすよ!」
銀二「・・・と言いたいところっすけど、 正直、今のままじゃ勝てないっす」
よしお「改めて読んだけど、 金一さんの漫画すごいからなぁ」
銀二「まず画力 これは一朝一夕じゃ勝てないっす」
よしお「綺麗な絵を描くというよりは、 センスがある絵だよね」
銀二「つけいる隙があるとすれば話っすけど、 これもうまいんすよね」
よしお「演出もうまいんだよね」
足塚おさむ「金一はコマとコマの間に キャラクターの仕草を入れているんだよ」
よしお「なるほど・・・」
銀二「どうしたんすか?」
よしお「あ、ほら・・・金一さんの漫画、 仕草を細かく描いてるだろ?」
銀二「あー、コマとコマの間に小さいコマ 足して目の動きとか描いてますね」
よしお「あれで微妙なキャラの心情を 読者に伝えられてるんじゃないかって」
足塚おさむ「高橋ツトムンやたつきんは多様している まるで映像を見ている感覚になる」
銀二「ま、まずは自分でどうにかしますよ」
銀二「あのクソ兄貴の吠え面 絶対に見てやるっす」
よしお「応援しているぞ がんばれ!」
〇テーブル席
周防「・・・」
周防(よしおさん いい人そうだった・・・)
周防(漫画も大好きで、私に担当させて ほしいって無理言ったけど・・・)
周防(この破裂しそうな愛 ちゃんと伝わったかな!?)
周防(愛想がないってよく言われるから、 今日は頑張ったし大丈夫だよね?)
周防(すっごく仲良くなれたし、 阿吽の呼吸で漫画作れそう!)
周防「がんばるぞ・・・(小声)」
周防(そろそろ時間だ・・・)
周防(次は銀二先生・・・)
〇屋敷の門
周防「・・・」
周防(大きな家だ!)
金一「待たせてすまないな」
周防「いえ」
金一「そして、さらに申し訳ないことに ここに銀二はいないんだ」
金一(あいつ住所は実家にしてたのかよ)
周防「そうでしたか・・・」
金一「あぁ、俺か?」
金一「俺は金一 銀二の兄だ」
周防「はぁ」
金一「近いから俺が連れて行ってやんよ」
周防「ありがとうございます」
〇川に架かる橋
周防(家系って何だろう?)
金一(俺の腹をジッと見つめるこの瞳・・・)
金一(恋してるな・・・)
金一(やれやれ)
周防「銀二さんのお兄さんも 漫画描かれてるんですか?」
金一「あぁ、銀二と勝負することになってよ」
金一「本気でボコボコにするつもりだ」
周防「はぁ」
金一「この狭い道でスピード出してやがる」
金一「危ないなぁ」
金一「危ねぇ!!」
金一「うぅ・・・」
周防「金一さん!! 何で私を庇って・・・!!」
金一「女性を守るのは・・・」
金一「俺の役目なんだよ」
周防「はぁ・・・」
周防「っていけない! 早く救急車を!!」
金一(この血の量は・・・ ちとマズいかもな)
周防「大丈夫ですか!? 今救急車呼んだので持ち堪えてください!」
金一「傷は浅い・・・大丈夫だ」
金一(と、カッコつけたものの・・・)
金一(どうやらダメらしいな・・・)
金一(典型的な脂肪フラグだ・・・)
金一(脂肪じゃなくて死亡か・・・)
金一(銀二・・・)
つづく
まさかの恋バナ〜!
この展開は思いつきませんでした😊
このまま一気に読了させてもらいます!
業界の話、勉強になります!
金一のムーブがかなりイケメンですねぇ。ドラマティックな展開…いったいどうなっちゃうんだ…