阿鼻獄の女

高山殘照

1.地獄が生まれた日(脚本)

阿鼻獄の女

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〇豪華なリビングダイニング
岳尾 貴美子「探偵の 主な仕事って知ってる?」
岳尾 雄「人探しかな」
岳尾 貴美子「浮気調査よ」
岳尾 貴美子「毎日のように 依頼が入ってるみたい」
岳尾 貴美子「私も、利用してみたの」
岳尾 貴美子「あなたと一緒に 写ってる人は、誰?」
岳尾 雄「・・・・・・アンナという人だ」
岳尾 貴美子「浮気相手なの」
岳尾 雄「ああ」
岳尾 貴美子「否定しないのね 潔いわ」

〇シックなバー
岳尾 貴美子「探偵さん こっちこっち」
調 達也「だいぶ飲んでますね」
岳尾 貴美子「一緒に飲みなさい 奢るから」
調 達也「浮気調査成功のお祝い」
調 達也「なんて雰囲気じゃ なさそうですね」
岳尾 貴美子「あの人 あっさり認めたわ」
調 達也「どれくらい 問い詰めたんです?」
岳尾 貴美子「言い訳もなにも 一切なし」
岳尾 貴美子「そういう人なのよ」
岳尾 貴美子「いつだって腹を切れる 昔のサムライみたいに」
岳尾 貴美子「そんなところが 好きだったんだけどね」
調 達也「じゃああとは 離婚するだけですね」
調 達也「提携している弁護士、 紹介しましょうか?」
岳尾 貴美子「なんで 別れなきゃいけないのよ!」
岳尾 貴美子「私はね あの人を愛しているの」
岳尾 貴美子「心から、今でも!」
調 達也「浮気したのに?」
岳尾 貴美子「ええ、浮気は許せない でも幻滅したからじゃない」
岳尾 貴美子「私以外の女を見ているのが 許せないと言ってるの!」
岳尾 貴美子「ねえ どうしたらいいと思う?」
岳尾 貴美子「2度と浮気なんかさせず ずっと私だけの彼でいてくれるには」
調 達也「俺を呼んだのは そのためですか」
調 達也「なら、 とっておきの方法がありますよ」
調 達也「浮気調査オプション 『依存誘導』プラン」
調 達也「誰にだって 『社会的な椅子』ってもんがあります」
調 達也「基盤、拠り所が椅子の足になって 人間を支えているわけです」
調 達也「要はあなたが唯一の拠り所となるよう 働きかけるわけです」
調 達也「これが 依存誘導プランです」
岳尾 貴美子「面白いわね 具体的に教えてくれる?」
調 達也「シラフのときにしましょう 明日はどうです?」
岳尾 貴美子「ええ じゃあ、仮契約で」
「乾杯」

〇綺麗な病室
岳尾 貴美子「母さん、元気?」
佐東 法子「今日は早いのねえ 仕事はいいの?」
岳尾 貴美子「午後からよ 面会時間外だけど来ちゃった」
岳尾 貴美子「最近、顔色いいじゃない」
佐東 法子「ふふふ 退院できるかも」
岳尾 貴美子「ずっと待ってるのよ 部屋も用意してるし」
佐東 法子「そういえば 雄さんの具合はどうなの?」
岳尾 貴美子「・・・・・・ええ 今日も元気に仕事よ」
佐東 法子「なら、いいけど 気をつけなさいよ」
佐東 法子「普段は健康そうでも デリケートな体なんだから」
岳尾 貴美子「わかってる」
佐東 法子「雄さんの職場って あの大きなビルでしょ」
佐東 法子「すごいわね」
岳尾 貴美子「ごめん、母さん ちょっと電話してくるね」

〇病院の待合室
調 達也「どうしました?」
岳尾 貴美子「本当に 大丈夫なんでしょうね」
調 達也「ご心配なく 計画どおり進んでますから」
調 達也「昨晩の準備も、 問題なく終わったんでしょう?」
岳尾 貴美子「ええ、計画の第一歩は」
岳尾 貴美子「雄さんのUSBメモリを すり替える」

〇オフィスのフロア
大橋「あれ、岳尾さん まだ始業前ですよ」
岳尾 雄「早めに やっとこうかなって」
大橋「真面目だなあ」
  ば、爆発した!
  パソコンが爆発したぞ!
  岳尾さん!
  しっかりしてください!
  誰か、救急車!

〇病院の待合室
岳尾 貴美子「はい」
大橋「ああ、奥さん! 失礼、大曲商事の大橋ですが」
岳尾 貴美子「ご無沙汰しております」
大橋「いいですか、 落ち着いてください」
大橋「旦那さんが、 怪我をして搬送されました」
岳尾 貴美子「どちらに?」
大橋「市立の・・・・・・」
岳尾 貴美子「そうなんですか ちょうど、そちらにおりますので」
大橋「ああ、そうなんですか!」
岳尾 貴美子「わざわざ ありがとうございます」
岳尾 貴美子「はい、はい、では失礼します」
岳尾 貴美子「やった・・・・・・!」

〇病室
岳尾 雄「まさか、お義母さんと 同じ病院なんてね」
岳尾 貴美子「不幸中の幸いってやつね でも、本当に大丈夫?」
岳尾 雄「破片で額を切っただけだよ 出血は派手だったけどね」
岳尾 貴美子「よかった」
岳尾 雄「心配してくれるのかい」
岳尾 貴美子「当たり前でしょ」
岳尾 貴美子「喉乾いてない? お茶買ってきたんだけど」
岳尾 雄「いただくよ」
岳尾 貴美子「開けてあげる」
岳尾 雄「うん」
岳尾 雄「変わった味だなあ」
岳尾 貴美子「新発売だって」
医師「こんにちは、 岳尾さん、奥さん」
岳尾 雄「ああ、先生」
岳尾 貴美子「主人が お世話になっております」
医師「なに、こんなに手のかからない 患者さんは珍しいくらいで」
医師「ただ基礎疾患もありますから 1泊だけ、検査入院しましょうか」
岳尾 雄「はい」
岳尾 貴美子「じゃあ、 下着持ってくるから」
岳尾 貴美子「このお茶、まだ飲む?」
岳尾 雄「いや、もういいよ」
岳尾 貴美子「じゃあ 持って帰るわね」
岳尾 貴美子「それでは、失礼します」

〇応接室
調 達也「どうでした?」
岳尾 貴美子「無事、病院送りよ 軽症だけどね」
岳尾 貴美子「ねえ、 いったいどうやったの?」
調 達也「雄さんのUSBメモリに ウイルスを仕込んだんですよ」
調 達也「パソコンが異常動作するタイプ 20年前に流行ったんですけどね」
岳尾 貴美子「今どきそんなものが 通用するの?」
調 達也「ちょっと改造はしましたけど 普通、通用なんかしませんって」
調 達也「ただ、セキュリティがザルな会社は 結構多いので」
岳尾 貴美子「賭けだったってこと?」
調 達也「ダメでも、手を替え品を替え 何度でもやるつもりでしたが」
岳尾 貴美子「恐ろしいことするのね」
調 達也「依頼したのは あなたですよ」
岳尾 貴美子「わかってる 今更、手を引くつもりもないから」
岳尾 貴美子(待ってて、雄さん)
岳尾 貴美子(壊してあげる あなたが頼りにしている全部)
岳尾 貴美子(愛してあげる 私だけが、あなたを)

〇空

次のエピソード:2.柔らかな毒

コメント

  • こんばんは!奥さん計画的で旦那さんは気づくのか、それとも奥さんが仕留めるほうが先か、怖いけど続きが気になる展開でした!
    変な味のお茶が…不穏です💦

  • 壮絶な始まり方でした……こんなビジネスあったら怖いわぁ……、
    浮気はダメですね、一度限りでも身を滅ぼす。
    憎しみと歪んだ愛のヒロインも怖かったです。

    スチルの使い方がとてもお上手ですね!縦読み漫画を意識されてるんだろうなと伝わってきました。すごいです!

  • アビジョにはまるアビジョビジョが巷に溢れる予感がします。斬新です。楽しみです。

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