第三話 アイツの本性を突き止めろ(脚本)
〇生徒会室
私と相楽先輩のことは瞬く間に噂になってしまい、私は生徒会室で時の人となっていた。
由比一真「やあ、樋渡さん」
樋渡花音「かかかか、一真先輩っ!!」
樋渡花音(ひゃああああっ、はじめて先輩から声かけられちゃった)
由比一真「聞いたよ。宗吾とつきあっているんだって?」
樋渡花音「え!? あ、いや、そのっ!」
由比一真「あいつ、見た目で誤解されやすいけどいいヤツだから・・・よろしく頼むね」
樋渡花音「は、はいっ! お任せくださいっ」
樋渡花音(し、しまった! 先輩に笑顔でお願いされちゃってつい、いい返事してしまったあああ)
樋渡花音「あの、一真先輩・・・相楽先輩と仲がいいですよね」
由比一真「うん。幼なじみで、僕の一番の理解者だよ。宗吾には、昔から助けられてばかりだ」
樋渡花音「え? 一真先輩が助けてるんじゃなく・・・?」
由比一真「そう見える?」
樋渡花音「はい」
由比一真「ふふふ」
一真先輩はつややかな笑顔を残して席へ戻っていった。
樋渡花音(はあああ、緊張した。こんな至近距離で話せるなんて・・・)
樋渡花音(それにしても、一真先輩、相楽先輩のことすごい信頼してるっぽい・・・どう見ても釣り合いとれてないのに)
樋渡花音(昨日一緒に過ごして、それほど悪い人じゃないのはわかったけど・・・でも、見た目もアレだし、女グセも悪そうだし)
生徒会室に、相楽先輩が入って来た。目が合ったので、慌てて頭を下げる。
相楽宗吾「一真、書類」
由比一真「ありがとう」
並んでいる姿を見ると、やはり違和感がある。
樋渡花音(相楽先輩の居場所を、一真先輩が作ってあげてるって感じ)
そこで、私はハッとした。
樋渡花音(一真先輩・・・相楽先輩に脅されてるんじゃ・・・!?)
樋渡花音(ヤンキーでも、生徒会長と仲良ければ色々有利だもんね)
樋渡花音(親友って立場を悪事に利用するつもりなんだ)
樋渡花音(・・・一真先輩! 一真先輩の笑顔は私が必ずお守りしますっ!)
相楽宗吾「おい、樋渡?」
樋渡花音「え、は、はい!」
いつの間にか、すぐ隣に相楽先輩が立っている。
相楽宗吾「お前、また何かしょーもないこと考えてんだろ」
樋渡花音「ひいっ、何のことでしょう!? 私は何も・・・」
相楽宗吾「まあいい。今日の帰りは・・・」
樋渡花音「すすす、すみません。私、今日はどうしてもどーしても外せない用事がございまして」
相楽宗吾「そうか」
相楽先輩は意外にもあっさり引き下がった。
樋渡花音(・・・よかった、何とか断れた! きっぱりとフラれるためにも、一真先輩に相楽先輩の本性を知らしめるためにも・・・)
樋渡花音(私はもっと相楽先輩のことを知らなくちゃ)
〇市街地の交差点
相楽宗吾「・・・・・・」
百合ちゃんに相談し、私服とメイク道具を借りて変装した私は、こっそり相楽先輩の後を追っていた。
樋渡花音(一緒にいるとなかなか尻尾を出さないから・・・)
樋渡花音(こういう時は、やっぱり尾行! こっそり後をつけて相楽先輩の悪事と本性を暴いてやる!)
〇公園の入り口
相楽宗吾「・・・・・・」
樋渡花音(・・・今のところ怪しい動きはないな)
相楽先輩は昨日掃除した公園へと入っていく。
〇広い公園
相楽宗吾「何やってんだ、こんなとこで」
???「・・・・・・」
相楽宗吾「親父さん、帰ってんのか?」
???「ん」
樋渡花音(あれ、あの子・・・たしか昨日ゲーセンで相楽先輩のこと見てた子だ)
相楽先輩は、少年の頭を優しく撫でている。
樋渡花音(え? ちょっと待って。妙に距離が近くない!?)
樋渡花音(もしや、ただならない関係ってやつじゃ・・・)
樋渡花音(そういえば、一真先輩ともアヤシイって噂になってた!)
樋渡花音(あの男、女慣れしてると思ったけど、実は・・・ゲイ?)
樋渡花音(そういうことなら、私の告白を受け入れたことも納得できる・・・カモフラージュってやつだ!!)
樋渡花音「なんだ、そっかあ。なるほどね・・・」
相楽宗吾「・・・おい」
樋渡花音「ひゃあああっ!」
相楽宗吾「何やってんだ、オマエ」
相楽宗吾「なんだその恰好。また何か阿呆なこと考えてんのか!?」
樋渡花音「またって何ですか! 私はただ・・・」
樋渡花音「あっ! 相楽先輩ってそっちの人だったんですね」
相楽宗吾「あん?」
???「・・・・・・」
樋渡花音「相楽先輩がつき合ってるのって、一真先輩じゃなくってその子だったんだ!」
相楽宗吾「はああああ!?」
???「ぶっ」
相楽宗吾「おい、お前、今何つった!?」
樋渡花音「え? あ・・・あの、大丈夫です、誰にも言いません。その代わり──」
相楽宗吾「アホか、テメエは!!」
相楽宗吾「大丈夫じゃねえ! お前の妄想癖ヤバすぎんだろ!」
樋渡花音「え? ええええ!? 違うんですか?」
相楽宗吾「ぜんっぜん違う。そもそも俺はゲイじゃねし、コイツは・・・」
???「由比・・・カズキ」
少年はボソボソと小さな声で言う。
樋渡花音「え!? 由比って・・・もしかして」
由比カズキ「一真の・・・弟」
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