星売りのメテオシスター

オカリ

6.スクープトラブル(脚本)

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〇山中の坂道
  ──結局のところ
  見つけた肉体はコレだけだった
  車に積んでいたポリ袋に
  腕を入れ、口をしばる
  一方、長岡茉莉から探すよう
  頼まれた天体望遠鏡は・・
粟島研究員「ダメだ、それっぽい破片しかない レンズも三脚もバラバラだ」
粟島研究員「・・ある分だけ拾っとくか」
  と、要はゴミしか見つからなかった
  最低限の義理は果たせただろう
  持ち主不明の片腕を拾った以上・・
粟島研究員「のんびり調査ってワケにもいかないよな」
粟島研究員「ウチの研究所で解析を・・」
粟島研究員「──いや、仮にも人の腕なら 地学でも天文学でもない」
粟島研究員「アポ無しだけど・・ 久々に訪ねてみるか」
  第6話
  スクープトラブル

〇田んぼ

〇高速道路

〇おしゃれな大学
粟島研究員「ふぁ〜あっ・・・ ねむっ・・・」
粟島研究員「もう少し仮眠とっとけばよかった・・」
粟島研究員「────さて、と」
粟島研究員「アイツは東能大理学部の・・ 人類科学科だったっけ?」
粟島研究員「とりあえず持って行くか」

〇研究所の中
  骨考古学研究室
  通称「魚沼研」
  魚沼ひかり准教授
魚沼准教授「んおっ!?」
学生「魚沼先生、お客さんが いらっしゃったみたいです・・」
魚沼准教授「客ぅ?おかしいな 今日は予定ないハズだ」
魚沼准教授「ワタシのマインドワンダリングを 邪魔した罪は重いぞぉ?」
学生「マインドワン・・何ですかそれ とにかくお客さんです」
学生「粟島さん・・という方らしいですよ 「面白い」研究材料を持参、とのこと」
魚沼准教授「あわしまぁ!? あの粟島くんかい!?」
学生「いや、どの粟島くんか 知らないっスけど・・」
魚沼准教授「アイツの「面白い」は 当てにならん!」
魚沼准教授「映画もドラマも小説も! 全てワタシの感性に合わなかった!」
魚沼准教授「ただ・・・」
魚沼准教授「こと研究に関してはアイツが 「面白い」とのたまって・・」
魚沼准教授「ワタシを落胆させた前例はないな」
魚沼准教授「いいだろう!この部屋まで 入れてあげなさい!」
学生「はーい」
学生「前口上が長いんだよなぁ 魚沼先生は・・・」
魚沼准教授「き、聞こえてるぞぉ〜・・ 文句はもっと小声にしろぉ〜・・」

〇研究所の中
粟島研究員「お気遣いどーも」
魚沼准教授「なに、カフェインの一杯や二杯 遠慮なく飲みたまえ」
粟島研究員「しかし・・」
粟島研究員「30代前半でもう准教授か 一国一城のあるじは羨ましいね」
粟島研究員「僕もはやく自分だけの 研究室を持ちたいよ」
魚沼准教授「ワタシの実績なら当然だ むしろ遅すぎるほどにね」
粟島研究員「・・変わんないな その調子じゃ教授昇格もすぐか」
魚沼准教授「あぁ、その話は断った」
粟島研究員「へぇ、断った・・」
粟島研究員「断った? マジで打診あったの!?」
魚沼准教授「内々の話でチラッとね まだ未熟ゆえ・・って辞退したよ」
魚沼准教授「教授になると会議が増えるだろ?」
魚沼准教授「管理職は真っ平ゴメンだ 准教授あたりがちょうどいい」
魚沼准教授「研究に邁進するには、ね」
粟島研究員「は〜スゴイな さすが同期の出世頭だ・・」
魚沼准教授「それより、このワタシが ワザワザ時間を作ったんだ」
魚沼准教授「研究材料を持ってきたって? はやく見せなさい」
魚沼准教授「もし面白くなければ縁切るぞ?」
粟島研究員「そう気軽に絶交してると 友人いつか消えるぞ・・」
粟島研究員「・・コレだよ」
魚沼准教授「ほほぅ、なるほど」
魚沼准教授「女の腕だな 10代後半から20代前半、と見た」
魚沼准教授「ふむ」
魚沼准教授「粟島くんの元カノかい? 動機は痴情のもつれかな」
魚沼准教授「バラバラに処理するなら横着せず もっと細かく切ってだな・・」
粟島研究員「いや死体隠しの相談じゃないよ! 誰も殺してないからな!」
魚沼准教授「冗談だよ」
魚沼准教授「ではでは言葉通り お手を拝借・・」
魚沼准教授「・・・ふぅん」
粟島研究員「どうだ?」
魚沼准教授「──粟島くん」
魚沼准教授「面白すぎるな、コレは」
魚沼准教授「断面が見たい オートプシー・イメージングだ」
魚沼准教授「CTとMRIにかけて丸裸にしよう えーっと・・」
魚沼准教授「お〜い学生!学生はいるか!? さっきのヤツ出てこい!」
学生「どしたんスか魚沼先生 珍しく大声ですね」
魚沼准教授「ワタシのテンションは気にするな いつもの機材準備しといてくれ」
学生「う〜っす!」
粟島研究員「いや、『学生』って呼ぶの? 研究室のメンバーだよな?」
粟島研究員「苗字とか名前で呼んでやれよ・・」
魚沼准教授「ん?ああ、問題ない 微妙なアクセントで使い分けてるのさ」
魚沼准教授「それよりさっきの片腕だ」
魚沼准教授「そもそも・・どこで見つけた?」
粟島研究員「魚沼は知ってるかな 先週、隕石が落ちた・・」
魚沼准教授「ああ!隕石少女か! テレビのニュースで見たな」
魚沼准教授「最近も週刊誌で見かけたぞ またちょっと話題になってて・・」
魚沼准教授「・・・まさか、隕石の 落下地点にあったのかい?」
粟島研究員「察しが良くて助かるよ そのまさかだ」

〇源泉
粟島研究員「正確にはクレーターの外だけどね おそらく爆発の衝撃で吹っ飛んだ」
魚沼准教授「ふーん、にしては随分と キレイにもげたモノだよ」
魚沼准教授「腕以外は? 他になかったのかい?」
粟島研究員「周囲を根こそぎ ひっくり返したけどな・・」

〇研究所の中
粟島研究員「なかったよ その片腕だけだ」
魚沼准教授「隕石少女の腕・・ではないよね 彼女、テレビでピンピンしてたし」
魚沼准教授「兄弟か、親か、それとも友人か・・ 最初から死体があった、という 線もアリかな?」
粟島研究員「一応、長岡茉莉の事前情報では 両親は2年前に他界したらしい」
粟島研究員「長岡花陽という年の離れた妹が1人、 ただしずっと入院中とのことだ」
魚沼准教授「おや、ますます謎の腕・・・」
魚沼准教授「ん?まさかキミ」
魚沼准教授「彼女本人の腕とでも 思ってるのかい?」
粟島研究員「ありえない、よな」
粟島研究員「スマン、最近慣れない仕事続きで 参ってるらしい」
粟島研究員「突飛な妄想ばかり浮かんじまう」
魚沼准教授「別にいいじゃないか」
魚沼准教授「論理の飛躍は時に 意外な発見をもたらす」
魚沼准教授「もしあの腕が隕石によって 型取られたモノだとしたら・・」
魚沼准教授「フフッ、ワタシもキミの妄想が 伝染したようだよ」
粟島研究員「ふっ、はは」
魚沼准教授「それに・・その可能性を潰す 検証自体は容易だ」
魚沼准教授「長岡まつり・・ちゃん?だったか 彼女の唾液でもあればいい」
魚沼准教授「腕の体組織と比較すれば検証完了 古き良きDNA鑑定ってね」
粟島研究員「なるほど、それもそうか」
粟島研究員「そうだよな、研究者たるもの 不安があるなら検証すればイイ」
粟島研究員「ハハハ・・」
粟島研究員「・・・ん?唾液?」
粟島研究員「ただでさえ隕石を強奪できないか 計画中なのに・・・」
粟島研究員「その上、唾液も回収する?」
粟島研究員「・・なんなんだ、今のオレ 本当に研究者の姿か・・?」
魚沼准教授「ま〜若い女の子の唾液を 取るって難易度高いか!」
魚沼准教授「粟島くんオッサンだしな!」
魚沼准教授「あ、髪の毛とかで妥協するなよ? ウチの設備ではムリだからな!」
魚沼准教授「いずれにせよ、あの腕の 解析には時間がかかる」
魚沼准教授「なにか分かったら連絡するよ 携帯の番号は変わってないだろうね?」
粟島研究員「ああ、大学の頃と同じだ」
魚沼准教授「よろしい ならば吉報を待ってなさい」
粟島研究員「ありがとう 僕も唾液の採取・・」
粟島研究員「・・・は厳しいけど 既に2回通報されかけたし・・」
粟島研究員「とにかく、何か分かったら連絡するよ」
魚沼准教授「なら携帯番号を教えておこうか」
魚沼准教授「ほら、ワタシの番号だ」
  小千谷ひかり
  080-xxxx-・・・
粟島研究員「登録名・・「小千谷ひかり」? 魚沼じゃなくて?」
魚沼准教授「仕事以外は夫の姓で生活してるからな」
粟島研究員「あっ・・・そっか そうだったな」
粟島研究員「「魚沼」が自然すぎて忘れてたよ そういえば既婚者だったか」
魚沼准教授「ちなみに稼ぎはワタシの方が上だ」
魚沼准教授「彼、小千谷君にはいつか専業主夫に なってもらおうと交渉中だよ」
粟島研究員「・・・そうか 楽しそうでなによりだ」
粟島研究員「じゃ、この辺で僕は失礼するよ 時間をとって悪かったね」
魚沼准教授「出口まで送ろう 何なら施設見学でもするかい?」
粟島研究員「いや、遠慮しておく 僕もやるべきコトが残ってるから・・」
魚沼准教授「そうか」

〇施設の廊下
粟島研究員「え〜っと、出口までは・・」
魚沼准教授「突き当たりを右だ エレベーターがあるからね」
魚沼准教授「あの腕はさておき・・ 何か忘れ物はないかい?」
粟島研究員「特に忘れ物は・・・」
粟島研究員「あっ、そういえば話の流れで 聞きそびれたんだが」
魚沼准教授「なんだい?」

〇研究所の中
魚沼准教授「ああ!隕石少女か! テレビのニュースで見たな」
魚沼准教授「最近も週刊誌で見かけたぞ またちょっと話題になってて・・」

〇施設の廊下
粟島研究員「週刊誌で最近見かけたって・・ どんな記事だったんだ?」
魚沼准教授「う〜ん最近というか・・ 粟島が来る直前だな」
魚沼准教授「言っておくが紙の方じゃないぞ 週刊芸秋が出したネットニュースだよ」
魚沼准教授「芸秋砲・・だったかな? 見出ししか読んでないが・・」
魚沼准教授「あったあった、コレだよ」
魚沼准教授「記事リンクを送っとく 帰り道にでも読めばいいさ」
粟島研究員「おっ、ありがたい」

〇おしゃれな大学
粟島研究員「げ、もう日没!? 時間かけ過ぎたな」
粟島研究員「魚沼さんもお変わりないようで ちょっと楽しかった・・」
粟島研究員「・・・・・・」
粟島研究員「結婚・・してたのか」
粟島研究員「・・なにガッカリしてんだ! そんな状況じゃないだろ!」
粟島研究員「そうだ、芸秋砲! ちょっと目を通しとくか」
粟島研究員「えーっと・・コレだな」
粟島研究員「『隕石少女の正体は詐欺師か?  愛ゆえにとった悲劇の選択・・』」
粟島研究員「おいおいおい だいぶ攻めてないか?」
粟島研究員「書いた記者は・・・『妙高新太』か しかしこの内容、どこかで聞いたような」
粟島研究員「ん?まさかこの妙高新太って・・」

〇病院の待合室
妙高新太「治療費のため隕石に賭ける姉! だがネット上では疑惑の声!」
妙高新太「キレイ過ぎる隕石!重なる疑問! 「あの隕石はニセモノなのでは?」」
妙高新太「哀れな被災者?それとも詐欺師? 隕石少女の謎に迫る!」
妙高新太「ハハハ!これは見出しが 映える記事になるぞ!」
粟島研究員「ヤバイ記者だな・・ 人間として終わってやがる」

〇おしゃれな大学
粟島研究員「あの時、病院にいた ヤバイ記者の記事か!」
粟島研究員「流し読みした限り、どうも長岡茉莉を・・」
粟島研究員「『妹の治療費のために隕石をでっちあげ 高額で売ろうとする“詐欺師”』」
粟島研究員「・・に仕立てあげたいらしい」
粟島研究員「節々から記者の品性が伝わる・・ ある意味、スゴい記事だ」
粟島研究員「しかし『詐欺師』とはね 刺激の強い見出しだな」
粟島研究員「コレ、長岡茉莉にとって かなりキツいんじゃないか?」
粟島研究員「世間でニセモノ疑惑が強まるのは コチラとしてはありがたいが・・」
粟島研究員「──信頼を得るなら今が好機か」
粟島研究員「うまくコトが運べば・・盗まずとも 安く買い叩けるかもしれないぞ?」

〇お台場
  一方、その頃

〇テレビスタジオ
  TNテレビ、第三スタジオ
佐渡トキ子「──母ゴリラとワニの対決 衝撃的でしたね」
佐渡トキ子「映像は中央アフリカの国立公園で 自然保護官が撮影したそうです」
佐渡トキ子「例え相手が獰猛なワニであっても 子を守るためなら一歩も引かない──」
佐渡トキ子「その親子愛は我々ヒトと なんら変わりありません」
佐渡トキ子「そう思わせられるほど、微笑ましくも たくましいゴリラの親子でした」
佐渡トキ子「今晩もTNニュース21にお付き合い いただきありがとうございました──」

〇オフィスの廊下
佐渡トキ子「ふー、終わった終わった!」
佐渡トキ子「さ〜て次はオークション番組の 企画を詰めないとね〜」
佐渡トキ子「佐渡トキ子企画の初番組 『逆転Bidder!』」
佐渡トキ子「コレが成功すれば・・」
佐渡トキ子「私はリポーター『佐渡トキ子』から マルチタレント『スーパートキコさん』 へ進化するッ・・!!」
佐渡トキ子「ふふっ・クククッ・・!」
柏崎ディレクター「あ〜〜いたいた! トキコちゃ〜ん!」
柏崎ディレクター「今日もお疲れ様、イイ声だったよ!」
佐渡トキ子「柏崎さん! ありがとうございます!」
柏崎ディレクター「うん!やっぱりボクは カメラの前でハキハキ喋る姿が いちばんキレイだと思うな!」
柏崎ディレクター「まさに佐渡トキ子の天職! いや〜花があるよトキコちゃんは!」
佐渡トキ子「ちょっと、何ですか急に〜〜!」
柏崎ディレクター「うん、だからね」
柏崎ディレクター「トキコちゃんはもっと自分の 得意分野を磨くべきなんだろうな」
佐渡トキ子「え?それはどういう・・」
柏崎ディレクター「うん、ゴメンねトキコちゃん」
柏崎ディレクター「上から急きょストップがかかった なので製作は中止」
柏崎ディレクター「例の「隕石オークション企画」は お蔵入りということでヨロシク!」
佐渡トキ子「お蔵入りですか! お蔵入り・・・・」
佐渡トキ子「・・・・・・・・・・・・はい?」

〇撮影スタジオのセット
佐渡トキ子「えぇぇ〜〜っ!? お蔵入りですかぁ〜〜っ!!!?」
カメラマン「・・・・・・」
カメラマン「佐渡さんの絶叫、初めて聞いたぜ・・」

次のエピソード:7.子飼いの私兵

コメント

  • こんばんは!

    冒頭に出てきたキャラクター達の行動がどんどんお話を展開していって面白いです!唾液採取・・・って本当にどうなっちゃうんでしょうか(笑)

    魚沼さん、お綺麗だと思っていたらやはり結婚されていましたか^^(笑)旦那様が出て来るのかどうかも気になりました!

  • 片腕を受け取る、そんなお手を拝借はイヤだ😂
    マインドワンダリングは、心の迷走。ボーッとしている状態のこと
    オートプシー・イメージングは、死亡時画像診断のことですか、なるほどー(居眠りはマインドワンダリングに含まれるのかな?🤔)

  • 腕の謎にネット記事、オークション番組…どんな展開に!?
    唾液入手、頑張って…!!🤣
    (すごい今さらですが、長岡姉妹以外も名前が新潟縛りなことに気づきました🤣)

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