パンイチ冒険者ケンイチ

紅月桜

第八話 大人になってからそういう趣味に目覚めるよりも(脚本)

パンイチ冒険者ケンイチ

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〇寂れた村
  第八話 大人になってからそういう趣味に目覚めるよりも
  地上 東のはずれの村
ニュクス(学校では聞きそびれてしまったが 同級生のケンイチ君があのパンイチの彼と見てまず間違いないだろう)
ニュクス(──それも、今やどうでもいいことか。 もう彼らと同行することもない)
ニュクス(今夜、聖剣を手に入れる)
ニュクス(この村に現れるレベル八の多頭蛇。 満月の夜に村娘を喰らうこの怪物は 二年前に東の果てからやってきたという)
ニュクス(聖剣が奪われた時期と一致する上、 ダンジョンのモンスターより よほど強いことから一時期注目を集めた)
ニュクス(だがドロップするのはBランクの剣のみ。 倒しても次の満月にまた現れるが コスパが悪く敬遠された)
ニュクス(安全に倒すには霊櫛や神酒といった レアアイテムを消費する上、 八人以上の上級者で挑まねばならない)
ニュクス(今夜はそれらを用いず単独撃破を試みる ──おそらくそれが聖剣のドロップ条件)
ニュクス「現れたな・・・ヤマタノオロチ」

〇病室のベッド
  病室の窓からは
  市営グラウンドを見下ろせる
  アメフトの試合が好きだ。
  体を張って戦うラインマンに憧れた
  大男の突進にもひるまず、
  音が響くほどのぶつかり合いを耐え抜き、
  痛みをこらえて仲間をかばう
  そんな姿に焦がれた。
  いつか自分も──
太田ダイコウ(だけど・・・ だけど僕は)
  階段をあがるだけでパンクしてしまう肺。
  枯れ木みたいな細腕
  大事なボタンを最初から掛け違えて
  生まれてしまったような
  チグハグな身体
太田ダイコウ(慰めてくれたのはGFだけ)
太田ダイコウ(虚弱な僕でも、ゲームの世界なら グンマァの戦士オータなら 体を張って戦えた)
太田ダイコウ(けれど──)

〇城壁
プレイヤー狩り「引っ込んでなよォ 君がリアルでやり合えばどうなるか・・・ わかるよねェ?ダイコウ君?」

〇病室のベッド
  現実を突きつけられた
  偽りの体、偽りの戦士、偽りの冒険、
  偽りの仲間・・・
  ──僕の通うはずだった学校で
  友達になれたかもしれない同級生達が
  今日も校庭で本物の汗を流したのだろうか

〇古いアパートの部屋
朝日ケンイチ「全身の毛穴という毛穴から 冷や汗かいたわ!」
朝日ケンイチ「何で教えてくれなかったんだよ!パンイチで登校しちゃったじゃん!変態じゃん! 露出狂じゃん!パンイチ冒険者じゃん!」
母「ごめんね 気づいてはいたけど」
朝日ケンイチ「大事な一人息子が パンイチで学校に向かったら 止めるだろ普通!」
母「大人になってからそういう趣味に 目覚めるよりも、今のうちに 経験しておくほうがマシかなって」
朝日ケンイチ「トラウマになるわ!!」

〇城壁
ケンイチ「はぁ・・・ 月曜から学校サイアクだった・・・」
オータ「・・・何か嫌なコト、あったのカ?」
ケンイチ「思い出したくもない・・・」
オータ「そうカ」
ケンイチ「早く三億円ゲットして引きこもりたい!」
オータ「・・・ナゼ、引きこもル?」
ケンイチ「誰にも会わなくていいだろ? 学校だって行かずに済むし」
オータ「学校、そんなに嫌なのカ?」
ケンイチ「嫌に決まってる! オータだってわかるだろ?」
オータ「・・・・・・」
ケンイチ「いや・・・オータにはわかんないか いかにもスポーツマンって感じだし 運動できる奴は人気者だもんなぁ」
オータ「・・・・・・」
オータ「賞金で引きこもル、 それがケンイチの目的なのカ?」
ケンイチ「ま、まぁな」
ケンイチ(本当はゆきちゃんに 振り向いてもらうことだけど)
オータ「ソウイウ話ナラ 攻略、協力できナイ」
ケンイチ「はぁっ!?」
オータ「人と関わるコト、嫌なコト、アル デモ、それ以上のモノ、あるハズ」
ケンイチ「何だよそれ! 説教すんのかよ!」
オータ「そんな生き方、先細りするダケ」
ケンイチ「オータに何がわかるんだよ!」
オータ「・・・俺にハ、わからナイ」
ケンイチ「そりゃあ持ってる奴には 持ってない奴の気持ちなんて わかりっこないよ」
オータ「・・・わかっタ」
ケンイチ「いや今の流れで何がわかったの?」
オータ「冒険者パーティー「グンマァ」、 解散スル」
ケンイチ「はぁっ!?」
オータ「ケンイチ、好きなように、すればイイ」
ケンイチ「あ、ああ! もちろん好きにするさ!」
オータ「・・・世話になっタ さらばダ」
ケンイチ「おう!! 達者でな!!」
ケンイチ「何なんだ一体・・・ いきなり解散って・・・」
野次馬A「おい! ヴォロドィームィルが試合だってよ!」
野次馬B「マジ!?出場できんの? 連合の賞金首のくせに よく闘奴組が許したな?」
  「闘奴組」
  対人戦重視の最強派閥。
  闘技場での賭け試合を仕切る。
野次馬A「早く行こうぜ! また大暴れが見られるぞ!」
ケンイチ「ヴォロえもん? 試合って何だ?」

〇闘技場
ケンイチ「ここ・・・? すごい観客の数だ」
剣闘士A「召喚の隙を与えるな! 見せ場など要らん、 速やかに無力化しろ!」
ヴォロディームィル「召喚の隙が何だって? 召喚士が召喚獣より弱いとでも思ったか?」
組長「これはデスマッチじゃない! 殺すのは契約違反だ!」
ヴォロディームィル「わりぃわりぃ つい力加減を間違えちまった」
組長「有望な剣闘士達を死なせたのだぞ! 契約通り違約金を支払え」
ヴォロディームィル「払うわけねぇだろバーカ」
組長「貴様っ・・・!」
ヴォロディームィル「間違いは誰にでもある。 大切なのは自分が間違えたとき、 正しい連中をねじ伏せる力だ」
組長「自惚れも大概にしろ。 この場に私の配下が何人いると思っている」
ヴォロディームィル「知るか 今すぐゼロ人にしてやるぜ」
ヒカリン「はーい、ちょい待ち」
組長「貴様らは・・・!」
ニュクス「ヴォロドィームィルへの攻撃は認めない。 彼の力はダンジョン攻略に必要だ」
ニュクス「召喚士ヴォロドィームィル」
ニュクス「魔導士ヒカリン」
ニュクス「そしてリーダーである僕、 聖騎士ニュクス」
ニュクス「僕達「三天」は、次に島が現れる三日後の正午に地上を発つ。そして同日中に迷宮を 完全攻略するとここに宣言する」
組長「完全攻略・・・!?」
ケンイチ「あの三人グルだったのか!? シンの奴、よりによってヴォロえもんと 仲間なのかよ!?」
ヒカリン「攻略の様子はワイの動画で配信するでー! チャンネル登録よろしくね!」
組長「寝言はそこまでだ。 貴様ら一度でもこの私のレーティングを 上回ったことがあるか?」
組長「真の最強を見せてやる」
組長「局中法度五条に基づき 「三天」に対するプレイヤーキルを ここに解禁する」
組長「三人まとめて極刑に処す!」

次のエピソード:第九話 カバディカバディカバディ!

コメント

  • いいですねー!こういう展開は燃えます!大好きです!
    なのにケンイチは仲間割れしちゃって大丈夫なの?
    オータとの仲が心配です😱

  • あららー。シンくーん? まあ、怪しいとは思ってたけどー

  • オータ…お前にそんな境遇が…。オレ、知らなかった。『グンマァの戦士』やってる時も、ケンイチ支えてくれてた時も。どんな気持ちでゲームプレイして、仲間と交流してくれてたのか…。今回はケンイチと仲違いしちゃったけど、互いに互いを見つめ直す、きっと良い機会になるよ…。そして、また会った時さ、『最高の相棒』として、またケンイチの傍で一緒に戦ってくれねェか?互いに強くなって帰ってくるって、皆、信じてるからさ。

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