托卵む〜たくらむ〜

ゆきんこ

第ニ話 モズの早贄(脚本)

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〇シックなリビング
百寿(もず)「郭子のお腹に赤ん坊が・・・?」
百寿(もず)(俺は、どうしたら・・・)
百寿(もず)「その赤ん坊は・・・今一緒に暮らしている男との子供なのか?」
百寿(もず)「まさか、また托卵しているわけじゃないよな!?」
郭子(かっこ)「だとしても、百寿には関係無いわよ」
???「関係あるからッ!」
雛(ひな)「私みたいな可哀想な子供を増やすなんて、許さない!」
百寿(もず)「雛、どうしてココに!?」
雛(ひな)「今朝はパパの様子がヘンだったから、学校を早退して帰って来たの」
雛(ひな)「そうしたら、台所から包丁が無くなっていたのに気がついたわ」
雛(ひな)「絶対ココだと思って来たら、玄関の外まで揉めている声が聞こえてきて・・・」
雛(ひな)「全部、聞いたわ」
雛(ひな)「やっぱり私、パパの娘じゃなかったんだね・・・」
百寿(また雛を悲しませてしまった)
百寿(もず)「俺は本当に情けない父親・・・ いや、父親ではないんだよな」
百寿(もず)「だが、聞いてくれ。 この17年間、必死にお前を育ててきたのは、血の繋がりのためだけじゃない」
百寿(もず)「お前が、この世の何よりも大切で、 この世で1番愛おしいから」
百寿(もず)「そんな雛をもう2度と悲しませたくはないんだ!」
百寿(もず)「ママを殺して、パパも死ぬつもりだ」
雛(ひな)「こんな女のために、パパが殺人犯になるなんて駄目よ!!」
雛(ひな)「わたしは17年間、パパが大好きだった」
雛(ひな)「養子だから私のことを愛してないのかと誤解していたけど、 今ならハッキリ言うね!」
雛(ひな)「他人でも、パパは雛にとって、世界で1番の大切なパパだよ! 死ぬなんて、簡単に言わないで!」
百寿(もず)「ひっ、雛・・・」
  雛の言葉に、俺の17年間の全てが報われた気がした。
  いつの間にか力が抜けた
  俺の手の中の包丁は、
  スルリと抜け落ちて床に転がった。
郭子(かっこ)「ちょっとちょっと〜! 親子愛はイイけど、アタシを巻き込まないでよぅ!!」
雛(ひな)「ママ、本当に自分が関係無いと思っているなら質問するわ」
雛(ひな)「私の本当の父親は、誰なの?」
郭子(かっこ)「ハアッ 本当にしつこいわね」
郭子(かっこ)「それ言えば、帰ってくれる〜?」

〇ホストクラブ
  高校中退してキャバ嬢をしていた
  アタシを毎週指名してきた男が居たわ
  それが雛の本当の父親ね。
  ブサイクだけど、毎週金を注ぎ込んでナンバーワンにしてくれた男に、まだウブだったアタシは心酔していた。
  ヤクザ者で既婚者だと知ったのは
  何度も夜を過ごしてからだった。

〇ナイトクラブ
郭子(かっこ)(ハアア。 アイツが既婚者だったなんて・・・)
郭子(かっこ)(結婚しようと思っていたから、避妊なんてしたこと無かった)
郭子(かっこ)(もし、妊娠してたらどうしようかなぁ・・・)
百寿(もず)「君1人? 俺も連れ居ないんだけど、 一緒に飲まない?」
  顔だけはタイプの百寿に、声をかけられた時に思ったの。
  ──使えるってね。

〇シックなリビング
郭子(かっこ)「気は済んだかしらぁ〜? 百寿と雛には悪いけど、当時、未成年で妊娠したアタシも必死だったわ、」
郭子(かっこ)「そして今回はこのお腹の子のおかげで、何不自由無い生活が約束された、完璧な結婚をするのよ」
郭子(かっこ)「邪魔は、させないわ!」
百寿(もず)「・・・ッ!」
郭子(かっこ)「正当防衛よ。 国が違えば、2人共、有無を言わさず撃ち抜かれているわよ?」
郭子(かっこ)「アタシを殺そうとしたけど雛が止めに入って、誤発射で2人共死んじゃうって筋書きはどう〜?」
郭子(かっこ)「家族ごっこは、もう終わりにしましょ」
百寿(もず)「郭子は本気だ。 雛、俺の後ろに隠れて!」
雛(ひな)「全部聞いていましたか葦雀さん!? これがママの正体です!!」
雛(ひな)「すぐにこちらに来てください!!」
百寿(もず)「え・・・?」

〇シックなリビング
郭子(かっこ)「葦雀・・・ どうしてこんな時間に家に居るの?」
葦雀(よしきり)「僕の家に、僕が居ると不都合なことでもあるのかい?」
葦雀(よしきり)「たまたま家に書類を取りに戻ったら、家の前に居る雛さんに会ってね」
葦雀(よしきり)「全部、今の会話は繋がっていた雛さんの携帯から聞いていたよ」
葦雀(よしきり)「君のこと、信じていたのに・・・ お腹の子供のDNA検査は必須だな!」
葦雀(よしきり)「しかも銃を向けて正当防衛? 僕には君に騙された百寿さんの方が、立派な正当防衛に見えるけどね?」
葦雀(よしきり)「録音もしてある。 今すぐに警察に連絡するのもいいかもな!」
郭子(かっこ)「そ、そんなそんな・・・ アタシの完璧なシンデレラストーリーが」
雛(ひな)「シンデレラは、人を騙して幸せになったわけじゃないわ」
雛(ひな)「ママ、私分かったわ。 自分はずっと両親に似ていない、可哀想な醜いアヒルの子供だと思っていた」
雛(ひな)「でも、私には私をどんな状況でも愛してくれる、バパが居る」
雛(ひな)「逆にママには愛してくれる人が1人も居なくて、本当に可哀想だわ」
郭子(かっこ)「妊娠した時だけは、百寿も葦雀も優しくて、幸せを感じることができたのに・・・」
郭子(かっこ)「もぉ、人生詰んだ」
百寿(もず)「郭子!? よせ、早まるな!」

〇手術室
看護師「急患は拳銃で自分の頭を撃った34歳女性。脈はありますが、バイタルは不安定で、多量の出血が認められます」
救命救急医「しかもお腹に8ヶ月の胎児が・・・」
救命救急医「産婦人科医を呼べ! 頭の手術と同時に、帝王切開をして胎児を取り出す必要があるッ!!」
救命救急医「あと、家族に特殊緊急オペの承諾書を」
看護師「そ、それは母体が危険では・・・!?」
救命救急医「私は神様ではない」
救命救急医「母親に万が一のことがあっても、胎児には何の罪もない。 助かる命は助けたい!!」
救命救急医「責任は、私が取る!!」

〇病院の待合室
葦雀(よしきり)「まさか郭子が自殺を選ぶなんて・・・ 追い詰めてしまった僕の責任です」
葦雀(よしきり)「録音した証拠があるし、百寿さんと娘さんは潔白です」
葦雀(よしきり)「後日、警察から調書を取られるかもしれませんが、今日のところはどうぞお引き取りになって、体を休めてください」
百寿(もず)「いえ、僕らの家庭の事情に葦雀さんを巻き込んでしまうつもりはありませんでした」
百寿(もず)「警察にも事実を話して、責任はきちんと取るつもりです」
雛(ひな)「パパ・・・」
百寿(もず)「あと・・・こんな時に差し出がましいようですが、償うということで、葦雀さんにお願いがあるんです!」
葦雀(よしきり)「な、何だって!?」

〇一戸建て
  半年後──
雛「パパァ! パパァ!! 助けて〜!!」
雛(ひな)「パパ!早く来てよ!!」

次のエピソード:第三話 葦雀の習性

コメント

  • あ…気になるところで次回ですか!
    雛ちゃんがいい子すぎて、外見が不憫です😅

  • 括子が自殺して、主人公が後味が悪い展開にならなくてホッとする反面、波乱の幕開けのような感じでざわざわしますね😳
    あとは雛は見た目があれだけど良い子👍

  • 悲しい思いをさせたくないから殺して死ぬ!には違うだろー!ってドロップキックしたくなりました。雛ちゃんがいて否定してくれて良かった。お互い愛されてる自信を持てて良かったですね。
    今の旦那さんが出てきて一瞬爽快でしたが、かっこさんあんなことするなんて……悪女というよりただの短絡思考な人なのかもと思いました。
    百寿さんが何を申し出たのか気になります。

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