後日談 銀二の漫画1(脚本)
〇屋敷の大広間
じじい「金一よ・・・ そろそろ目を醒ましたか?」
金一「何の話だよ」
金一「おいおい、おいおいおい」
金一「正気か? クソジジイ」
じじい「俺は正気だ」
じじい「お前が正気ではない」
金一「俺は三元豚じゃねぇ あんたのかわいい孫だ」
金一「頼むから落ち着いてよく見てくれ」
じじい「漫画を描けない豚は・・・」
じじい「ただの豚だ」
金一「孫に放つ言葉とは思えねぇぜ」
金一「いいか、今すぐに 全国のぽっちゃりさんに謝るんだ」
じじい「お前は分かっておらぬ」
金一「じゃあ教えてくれよ」
金一「陽気な豚さんでも分かるように 簡単な言葉でな」
じじい「・・・」
金一「どうした、こいよ」
じじい「いや、止しておこう」
じじい(何言うか忘れた)
銀二「じいちゃん、早く包丁研いできてよ」
じじい「おぉ、そうじゃった!」
金一「バイオレンスに包丁 持たせるんじゃねぇ!」
金一「まったく、うちの家族はよぉ」
〇旅館の和室
金一「銀二、おめぇ まだあのボロに住んでるのか?」
銀二「まぁね」
金一「漫画のプロになったんだっけ?」
銀二「だな」
金一「プロになったからか? お前、変わったな」
銀二「って言いながら俺の鮭取るんじゃねぇ!」
金一「悪りぃ・・・」
銀二「兄貴は漫画描かねぇのか?」
金一「興味ねぇからな」
銀二「興味ないであれだけ描けるなら ホント天才だよ兄貴は」
金一「500円やろうか?」
銀二「意外と嬉しいのかよ」
銀二「って言いながら鮭また取ったな!」
金一「悪りぃ どさくさに紛れて卵焼きもいただいたぜ」
銀二「俺、ご飯とみそ汁だけじゃねぇか!!」
銀二「たまに実家帰ったと思ったら これだもんなぁ・・・」
〇CDの散乱した部屋
よしお(今日は先生が気を使って 一人にしてくれる日だ)
よしお「羽伸ばすぞー!」
じじい「お」
よしお「え?」
じじい「俺は・・・」
よしお(足塚先生みたいに少し浮いてる?)
よしお「まさかあなた幽霊ですか?」
じじい「バカ野郎!!」
じじい「俺はまだ生きている」
じじい「恐らく生き霊だろう」
よしお「生き霊!?」
じじい「俺の強い想い・・・ つーか、苦悩が生霊を飛ばした」
じじい「そんなとこだろう」
よしお(しかし、うちのエロ本は 霊の溜まり場なのか!?)
足塚おさむ「お前は・・・!!」
足塚おさむ(誰だっけ?)
じじい「え、ちょっと待って」
じじい「お前は足塚おさむか?」
足塚おさむ「いかにも」
じじい「俺だよ、葛西銅だよ」
足塚おさむ「あぁ!」
足塚おさむ「漫画家の」
よしお「知り合いなんですか?」
足塚おさむ「バカ野郎!!」
足塚おさむ「生前の俺のライバル・・・ は言い過ぎだがなかなかの漫画家だ」
足塚おさむ「まだガキだったはずが ずいぶん老いぼれたな」
よしお「葛西・・・ もしかして、銀二のお爺さん?」
じじい「銀二を知っているのか?」
じじい「なるほどな、 俺がここに現れた理由が分かった」
〇CDの散乱した部屋
足塚おさむ「つまり、孫の金一を漫画家にしたい そういうことだな」
じじい「そうだ」
よしお「描きたくない人に無理に 描かせなくてもいいんじゃないですか?」
じじい「バカ野郎!!」
よしお「いだ!!」
じじい「人類の未来を変える才能だ! そうやすやすと手放せるか!」
よしお(サイドから殴られるとか マジで勘弁願いたいんだけど!!)
足塚おさむ「しかし、そんな厄介ごと持ち込まれても 俺らは俺らの問題があるしだな」
じじい「500万円でどうだ?」
足塚おさむ「作戦を立てよう」
よしお(勝手に話を進めるな!!)
〇CDの散乱した部屋
足塚おさむ「で、どうする?」
よしお「俺は正直乗り気じゃないっすけど」
よしお「それだけ漫画描けるのに、 何故、描かないのかは気になりますね」
足塚おさむ「一度話をしてみるか」
よしお「銀二にお願いしますか」
銀二「呼びました?」
よしお「心臓に悪いな!」
銀二「すんませんっす 俺の名を呼ぶ声に反応したっす」
よしお「えと・・・」
よしお(何かいい理由はないか・・・)
よしお(あ、そうだ・・・)
よしお「銀二のお兄さん 足塚賞獲ってたよな?」
銀二「そうっすね プロになるの断ったらしいっすけど」
銀二「ホントよく分からない兄貴ですよ」
銀二「ジイイに無理やり描かされただけなんで 仕方ないんすけどね」
よしお「すごい漫画だったから 一度話を聞きたいなって・・・」
銀二「いっすよ!」
銀二「悔しいっすけど、 兄貴いい漫画描きますからね」
よしお「あぁ、すぐ人気漫画家になれる 相当な実力者だと思うよ」
銀二「じゃ、明日にでもうちに行きますか」
よしお「ありがとな!」
銀二「これくらいどうってことないっす」
〇旅館の和室
銀二「兄貴!」
銀二「この人がよしおさん 俺の世話になってる人だ」
銀二「足塚賞で準大賞獲って、 今は連載準備中のプロ」
よしお「どうも」
金一「うちの銀二が世話になっているようで」
銀二「コンビニで茶とか菓子とか 買ってくるよ」
金一「おう」
よしお「それであの・・・」
よしお「金一さんはあれだけ漫画描けるのに、 連載は断ったと聞いています」
金一「あー、まぁそうだね」
よしお「絵は相当練習されたんですよね?」
よしお「いくら天才でもあれだけの絵は描けない 努力があっての賜物です」
金一「・・・」
よしお「ぶしつけかもしれませんが 聞かせてください」
よしお「金一さんは何故、 漫画を描かないのですか?」
金一「やれやれ・・・」
金一「銀二には言わないで欲しいんだが・・・」
よしお「はい、口外はしません」
金一「客観的に見ても、 俺は銀二よりも漫画がうまいと思う」
よしお「・・・」
金一「俺が漫画を描くと、 あいつは苦しそうなんだ」
金一「圧倒的な差に苦しみ、 いつか筆を折るかもしれない」
金一「俺はあいつに漫画を描き続けてほしい」
金一「その為には・・・ 俺は描かない方がいいんだ」
よしお(天才は強い光・・・)
よしお(でもだからこそ、濃い影を落とす)
よしお(俺も身内が圧倒的な才能を持っていたら その分野を諦めるかもしれない・・・)
よしお(でも・・・)
銀二「おい・・・」
金一「銀二! お前、聞いてたのかよ!」
銀二「財布忘れてな」
銀二「んなことはどうだっていい」
銀二「おい、兄貴・・・」
金一「・・・」
銀二「ふざけるな!!!」
金一「うぐッ!」
銀二「俺の為に漫画を諦めただって!?」
銀二「確かに俺は兄貴の漫画を見る度に 傷ついたし、苦しんだ」
銀二「でもよぉ・・・ その度に立ち上がってるんだぜ」
銀二「俺は本気でプロになるんだ!」
銀二「絶対にクソ兄貴にも負けない!!」
銀二「いつまでも・・・ 俺のことを見下してるんじゃねぇよ」
銀二「これからも・・・何度でも 俺を叩き潰してくれよ!!」
金一「銀二・・・」
銀二「月例賞で勝負だ!!」
銀二「そこで兄貴をボコボコにしてやる!!」
銀二「俺が勝ったら、 安心して漫画を描けよ!!」
金一「銀二!!」
金一「・・・」
金一「俺は・・・間違ったのか?」
よしお「人は誰しもが間違います」
よしお「間違いにどう向き合うか、 それが人生ではないでしょうか?」
足塚おさむ(俺の言葉じゃん)
金一「ぐぅのねも出ねぇぜ」
金一「よしおさん、 一つ頼みたいことがある」
よしお「何でしょうか?」
金一「『月例賞で待っている』 銀二にそう伝えてくれ」
よしお「分かりました!」
つづく
開幕刃物でめっちゃ笑いました😂
そして銀二と金一の熱いドラマが始まった…!続きが楽しみです!
金一がここまで弟想いだったとは!
漫画を描かない理由は、漫画より食べるが好き!とかだと勝手に思っていました…笑
銀二にフォーカスが当たった第二部、よしおとは異なる創作への想いが垣間見れそうで楽しみです^^
新たな展開の第二章楽しみです😆
兄さん、そこまで考えてプロデビューを断ってたんですね😭