メタリアルストーリー

相賀マコト

エピソード22(脚本)

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〇荒廃した街
  アイリの壮絶な過去に、ニルとエルルは言葉が出なかった。
  アイリが若くしてコレクターとして活躍している理由の根本には、あせることのない復讐心があったのだ。

〇荒廃した街
アイリ「アンタのその腕の力に・・・私がこの世で一番憎んでいる相手の力と、よく似たものを感じたから」
アイリ「だからアンタもアイツの仲間なんじゃないかって、そう思ってニルに近づいたのよ」
アイリ「もし本当にそうなら、この手で殺すために」

〇荒廃した街
  あのとき、アイリが言っていたことの意味を理解し、ニルは心がぎゅっとなるのを感じた。
アイリ「そして今回の、アーティレに襲来したギアーズの大群・・・」
アイリ「私が昔体験したことと重なって、いてもたってもいられなくなったの」
アイリ「・・・結局、なにも得られなかったけどね」
  アイリはひとつため息を吐いた。
  それから、しばらく誰も言葉を発しない。
  沈黙に痺(しび)れを切らしたアイリは、苦笑いを浮かべて口を開いた。
アイリ「急にこんな話をしても、反応に困るわよね!」
アイリ「誰かに昔の話をしたのって初めてで・・・その、なんていうか・・・」
  アイリは徐々に顔を俯(うつむ)ける。
アイリ「ごめ——」
エルル「・・・アイリさん」
  突然エルルがぎゅっとアイリを抱きしめた。
  アイリは驚いて目を見開く。
  そんなふたりの頭に、ニルはそっと手を伸ばした。
ニル「アイリがそんな顔してるの、ほっとけないよ」
エルル「そうですよ! しおらしいのなんて、アイリさんらしくないですっ!!」
  エルルはアイリを抱きしめる手を強める。
  豊満な胸に押し潰されそうになり、アイリは慌てて声を上げた。
アイリ「ちよ、ストップ・・・っ!」
  苦しむアイリを見て、エルルは「ごめんなさい!」と胸の力を緩める。
  ぷはっ、とアイリが顔を上げると、微笑むニルと目が合った。
ニル「俺たちは仲間なんだから。 話してくれて、ありがとう」
アイリ「・・・!」
  笑顔を浮かべるニルとエルルに、アイリは安心したように目を伏せた。
アイリ「・・・ありがとう、ふたりとも」
  その言葉にニルとエルルは頷(うなず)いた。
  アイリはパチン、と一度自分の両頬を強く叩いてから口角を上げる。
アイリ「・・・よし」
  すくっと立ち上がるアイリに、先ほどまでの気弱な影はなかった。
アイリ「それじゃ、とりあえず戻りましょうか。 またギアーズたちが襲ってくる可能性もゼロじゃないわ」
  いつもの気丈な瞳でアイリがそう投げかけると、ニルとエルルも立ち上がる。
  そして3人は防衛戦線のテントの方へ歩き出した。

〇荒廃した街
  その後しばらく様子を見たが、結局ギアーズが再び攻めてくることはなかった。
  なにもないまま2週間が経ち、3人はメルザムに戻ることを決めた。
ニル「カラカルさん、お世話になりました」
カラカル「やあ、アイリくん、ニルくん、エルルくん。 3人とも、お疲れ様」
カラカル「今回は本当にありがとう。 君たちのおかげで、アーティレがなくならずに済んだよ」
  カラカルは手を差し伸べ、3人それぞれとしっかりと握手を交わした。
カラカル「メルザムに向かう馬車が準備を終えたようだから、乗っていくといい」
アイリ「ありがとうございます、お言葉に甘えます」

〇荒廃した街
  カラカルの指差した馬車に向かう。
  慌ただしい声が響く中で馬車に乗り込むと、その中にはライザーがいた。
  ライザーは露骨にゲッという表情を浮かべ、すぐさま3人から視線を逸らす。
アイリ「ライザーじゃない。 アンタもメルザムに?」
ライザー「ああ・・・ちょっと野暮用でな」
ライザー「お前らは、メルザムに戻るのか」
アイリ「ええそうよ。 アンタには関係ないけど」
ライザー「・・・そうだな」
アイリ「・・・いつもの嫌味はどうしたのよ」
ライザー「いや・・・」
  ライザーはちらりとニルを見る。
  小さくため息を吐いたかと思うと、ガシガシと後頭部を掻いた。
ライザー「・・・別に、いつもと変わらねえよ」
  そう言うと、ライザーは身体ごとそっぽを向いてしまった。
  そんなライザーにずんずんとエルルが近づく。
エルル「せっかく一緒の馬車なんですし、お話しましょうよ!」
ライザー「は・・・?」
  エルルのキラキラした目を正面から受け、ライザーは苛立(いらだ)たしげに腕を組んだ。
ライザー「俺のことはほっとけって! お前みたいな女が一番苦手だ!」
エルル「そんなことおっしゃらず!」
  エルルは引かずに、しつこくライザーに話しかける。
  一気に騒がしくなる車内に、ニルとアイリは顔を合わせて笑った。

〇西洋の城
  次の日。
  ニルたちはメルザムに戻ってきた。
  ギルド前の噴水を眺めていたニルのそばに、エルルが駆け寄る。
エルル「ニ〜ルさんっ」
ニル「ああ、エルル。 おはよう」
エルル「おはようございます! 聞きましたか? あの噂について!」
ニル「なんのこと?」
エルル「アーティレのですよ!」
エルル「あるコレクターが一瞬で何百ものギアーズを消し炭にしたっていう噂で、街中もちきりじゃないですか!」
エルル「これって、ニルさんのことですよね? もう私っドキドキしちゃいました!」
ニル「あはは・・・」
  ニルの苦笑をよそに、エルルはきょろきょろと辺りを見る。
エルル「あれ? そういえば、今日アイリさんは一緒じゃないんですか?」
ニル「うん、なんか、評議会に呼び出されたみたいでね」
エルル「そうなんですか? おじいちゃんもそんなこと言ってました」
ニル「ふうん・・・? どうしたんだろうね」

〇西洋の円卓会議
  そのころ、アイリとメイザスはギルドの評議会に出席していた。
議長「この度、お主らを呼び寄せたのはアーティレを襲ったギアーズの大群についてである」
議長「押し寄せるギアーズに前線で立ち向かい、アーティレ防衛戦線に活気を与えた」
議長「また、突如押し寄せた数百のギアーズを一刀両断し、アーティレの危機を救った」
議長「今回の功績を認め、アイリ・バラーシュ上級コレクターを特級コレクターへ昇級させることが決定した」

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