イレイザー・ホーマ

水木辿

読切(脚本)

イレイザー・ホーマ

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イレイザー・ホーマ
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〇荒廃した教会
  EH1
放間玲二「良さそうな綻び具合だ」
放間玲二「水の底に沈むには惜しいが・・・」
放間玲二「記憶を残すのは大事だ」

〇草原の道
放間玲二(こんなものかな さて、戻るか)
放間玲二(来たか!)
放間玲二「ううっ・・・」
放間玲二「押すな、押すな、押すな! ぐあああ!」

〇荒廃した遊園地
イレイザー・ホーマ(どこだ?PFは?)
イレイザー・ホーマ(手の反応・・・あっちか?)

〇荒廃したショッピングモール
イレイザー・ホーマ(近いな)
イレイザー・ホーマ「PF!!」
PF12「何だオマエは?」
PF12「はっ!?その手の穴は! SPXの操り人形が俺を消しに来たか!」
イレイザー・ホーマ「人間と融合したんだな?」
PF12「仕方ないだろう!生きるには」
PF12「俺だって人間だったんだ。 それがいきなりこんな得体の知れない怪物みたいになって・・・」
PF12「SPXの失敗作は細胞の分裂が早い。 生きるには別の個体と融合して細胞の分裂を遅らせるしかないんだ!」
イレイザー・ホーマ(PF12 執行許可OK)
イレイザー・ホーマ「PF12 SPXの命により掃討する」
PF12「そう簡単には!」
イレイザー・ホーマ「ハッ!」
PF12「ウググ!」
PF12「オマエだっていつかは!」
イレイザー・ホーマ「ウッ! これ以上人間を犠牲にはできないんだっ!」
PF12「何を!この」
イレイザー・ホーマ「QT!」
PF12「ああああ!」
イレイザー・ホーマ「すまない・・・」
放間玲二「俺だって、おまえと同じ人間だったんだ」

〇レトロ喫茶
「・・・ダム工事のためにまもなく沈むこの谷間の教会にも毎週多くの人々が山道を歩いて集まった」
「教会は移転地にも新設されたが、祈りはきっと深い水の底にも届くだろう。                放間玲二」
放間玲二「ふぅ、こんなもんか」
  オマエだっていつかは!
放間玲二(俺はまたこの手で 彼らも元は人間なのに、あの日から・・・)

〇岩山
  ー2年前
放間玲二「あと少しだ」
放間玲二「ハァハァ よし、これで」
放間玲二「登頂だ・・・」
放間玲二「や、やった!」
放間玲二「うっ、あああ!」

〇病院の廊下
(山頂で気を失った俺は運良く助けられ、病院に運ばれたが、ケガもなく身体に異常もなかった)
(あの時、俺は左手の掌が何かに貫かれるような痛烈な衝撃を確かに感じたはずだが)
(掌には傷ひとつなく、医者も興奮や疲労で気を失ったのではないかと言うだけだった)
(俺は退院後、帰国してライターの仕事に戻った)

〇大きい展示場
  ー数ヶ月後
放間玲二(こんなもんか しかし、宇海は面倒な取材は何でも俺任せだな)
放間玲二(ん?何だ? 体がおかしい)
放間玲二(何だ? 掌に黒い染みが拡がって行く)
放間玲二(穴、穴だ! 掌に穴が空いて、闇が奥へと渦巻くように続いている!)
放間玲二(血も出ず痛くもないが 俺は幻覚でも見てるのか)
放間玲二(掌の穴の奥から何かが迫って来る 体が押される、俺の存在自体が押されるようだ!)
放間玲二(押すな!押すな!押すな! ぐあああ!)
イレイザー・ホーマ(ん? 何だったんだ?)
イレイザー・ホーマ(PF(ピットフォール)1探知 セミオートモードで追跡)
イレイザー・ホーマ(頭に情報が流れて来る! それに体が引っ張られるように、勝手に動き出している!)
イレイザー・ホーマ(一体これは?)

〇コミケの展示スペース
イレイザー・ホーマ(ここに引き寄せられるように来たが、一体俺は何を)
モブ1「おお!よくできたバトルスーツだ!」
モブ2「完全オリジナルかな!あの材質なんか地球の物じゃないみたいだ!」
モブ3「お兄さん、カッコいい! 一緒に写真撮って!」
イレイザー・ホーマ(何だ? 顔に何か付いてるのか?)
イレイザー・ホーマ(PF1発見 チュートリアルモード発動 スピードラーニングモード発動 セミオートにて対PF掃討執行)
PF1「あっ!その穴あきの手は・・・SPXのイレイザーか! 変装してるのに何でバレた!」
イレイザー・ホーマ(SPXとは系外銀河のどこかにあるspacexの仮称である)
イレイザー・ホーマ「PF1、SPXの命により掃討する!」
イレイザー・ホーマ(掃討?何でこんな言葉が出る?)
PF1「やっと融合できたんだ!僕は消されたくない!」
イレイザー・ホーマ(PFも俺もSPXからの一方的な介入によって変異させられた地球人だ)
イレイザー・ホーマ(どちらも量子シューティングで系外銀河からピンポイントに変異装置を埋め込まれた存在)
イレイザー・ホーマ(俺はPFを探知すると意思に関わらず変異して、セミオートで掃討活動を実行する操り人形)
PF1「僕は、こんな怪物みたいになってもいつも楽しみしていたここへ今年も来たかった!」
イレイザー・ホーマ(変異装置を埋め込まれた人間は、これから起こる人類の厄災を解決するはずだった)
イレイザー・ホーマ(だが弾丸のように次元を飛んだ変異装置は、その過程で損傷して人間に埋め込まれた)
イレイザー・ホーマ(彼らはSPXが意図しなかった変異を起こし、自分を制御できず凶暴化した)
イレイザー・ホーマ(暴れるほどPFの細胞分裂は加速するが、 PFには生物を原子分解して取り込む能力がある)
イレイザー・ホーマ(PFは自らが生きる為の本能に抗えず、人を襲って細胞を取り込んだ)
イレイザー・ホーマ(その状況を収拾する為にイレイザーが必要になり、伝説の量子スナイパーは任務を成功させる)
PF1「あんたも僕と同じSPXの被害者なのに、何で戦うんだ!」
イレイザー・ホーマ(そう、好戦的でもない、巻き添えのような俺が正統性はあるとは言え、誰かの後始末の為に同じ境遇の同類を消す?)
警備員A「おーい!そこのお二方! 気合い入ってるのはわかるが、ここは販売ブースなんで、外でやってくれないか?」
「すみません!」
警備員A(むっちゃ熱い奴らだったな 嫌いじゃないわ)

〇展示場
PF1「ハァ、細胞分裂が進むよ でも、楽しみに来た人を巻き込んじゃいけない」
イレイザー・ホーマ「PF、ところで俺は今、どんな見た目なんだ? 実は自分の姿をまだ見てないんだ」
PF1「ああ、コスプレってよりはバトルスーツだな 結構イケてるよ、僕なんかよりは」
イレイザー・ホーマ「えっ」
イレイザー・ホーマ(PF 1掃討継続)
PF1「消してくれ 早く」
イレイザー・ホーマ「なんだって?」
PF1「もう僕の短い延命のために他の人の長い人生を奪いたくない」
イレイザー・ホーマ(PFの掃討は、掌の穴からQT(クォンタムトリガー)発動によって収束する)
イレイザー・ホーマ(QT発動OK)
PF1「イレイザー、その手で落とし穴に落ちた僕のような人達を助けてあげてほしい」
PF1「みんな苦しいはずなんだ」
PF1「君ならきっと」
PF1「さぁ!」
イレイザー・ホーマ「QT!」
PF1「んんん! これでやっと」
イレイザー・ホーマ「すまない・・・」
放間玲二(こうして俺はイレイザーになり、12人のPFを消した・・・)

〇レトロ喫茶
放間玲二(宇海からか さっき送った記事のことかな)
  放間君 お疲れさま
  ダム湖に沈む教会の記事
  とてもよかった
  遅くなってすまない
  いつも助かってるわ
  それで次の取材先なんだけど、ちょっと・・・
  今さら遠慮してるのか?
  行くよ
  どこ?
  放間君・・・
  刑務所に入ってくれない?
  ええっ!?

〇研究施設の玄関前
放間玲二(ここが 新たな矯正プログラムを始めた刑務所か)

〇校長室
放間玲二「・・・つまり、再犯率や常習性の高い受刑者に対して、凶暴性や他害を抑制するためのプログラムをこちらでは推進している?」
亜甕所長「ええ、自らの罪深い欲動に苦悩する受刑者の力になれればと、希望者にこのプログラムに参加頂いてます」
放間玲二「具体的にはどんなプログラムを?」
亜甕所長「人は、自分では制御できないことについては、何かの助けを借りるしかありません。 一度、何かの操り人形になるしかないのです」
放間玲二「それは、誰かの教えに従ったり、行動を律することで、考え方を変えていくと言うことですか?」
亜甕所長「それももちろん従来から行なっている更生プログラムです」
亜甕所長「しかし我々が今、力を入れているのはこれです」
放間玲二「薬物療法、ですか?」
亜甕所長「この薬の場合は治療というよりは、精神を安定させ、より良い人生を歩むためのスイッチといえるかもしれません」
放間玲二「スイッチ? これにはどういう効果が?」
亜甕所長「この薬は体内の細胞を利用して、恒久的に欲動や気持ちの持ち方を作り変えることができます」
放間玲二「では、向精神薬のように日常的に服用する必要はない?」
亜甕所長「はい、改善性、即効性、効果共に画期的な薬です。 これで受刑者は望めば惑わされずに豊かな社会生活を送れるようになるのです」
放間玲二「危険性や副作用は?」
亜甕所長「ほぼ、ありません。 出所してそれぞれが社会生活を送り、再び罪を犯した者もまだいません」
放間玲二「それは素晴らしい。 詳しい話を聞かせてください」

〇レトロ喫茶
放間玲二(受刑者を変えるスイッチか・・・ 書き込まれたとおりに人を変える、操り人形)
放間玲二(自ら望んだとしても、もう元には戻れない、か)
  放間君
  刑務所長から紹介してもらった創薬ベンチャーの取材アポ取れたからよろしく!
  了解
  行ってくるよ

〇港の倉庫
放間玲二(住所はこの辺りだけど?)
亜甕所長「放間さん」
放間玲二「所長さん どうしてここに?」
亜甕所長「わかりにくいので、私がご案内しようと思いまして」
放間玲二「そんなご丁寧に でも助かります」
亜甕所長「こちらへ」

〇廃墟の倉庫
亜甕所長「さぁこちらへ どうしました?放間さん?」
放間玲二「ここは?」
放間玲二「ぐっ!何で?」
亜甕所長「放間さん? いや、イレイザーホーマ」
放間玲二「そうか、あなたがPFか! それなら」
放間玲二「押すな!押すな!押すな! ぐぁぁぁ!」
亜甕所長「ならば私も・・・」
イレイザー・ホーマ(PF13#イレイザー1 掃討対象として確認)
PF13「私は掃討対象のようだな それはそうだ イレイザーのプロトタイプでありながら、」
PF13「PFの細胞を使ったスイッチという薬物を作って受刑者に使命を与えているからな SPXにとってはPFと同じく失敗作だ」
イレイザー・ホーマ「なぜ、そんな?」
PF13「SPXは困難な量子シューティングをして人間に何をさせようとしたと思う?」
イレイザー・ホーマ「人類を脅威から救うためでは?」
PF13「ああ、SPXは将来脅威となる概念を生み出す地球人2人を排除するために、操り人形となる暗殺者を仕立てようとしたんだ」
PF13「しかし失敗が続き、それを収拾するために、掃討者まで必要になった」
PF13「イレイザー、その第一弾が私だ」
イレイザー・ホーマ「PFの細胞を受刑者に投与して何をしているんだ?」
PF13「凶暴化する力と人間の細胞を取り込む力、この力を操れれば、地球人もSPXに反抗できるかもしれないんだ」
PF13「今はその力を試しながら来るべき未来のために邪魔な者を細胞として取り込んでいる。 それを邪魔するなら君も敵だ!」
イレイザー・ホーマ「なぜSPXに反抗する必要がある?」
PF13「SPXの地球への介入はこれが初めてじゃない それどころか、地球人がここまで文明を築いて来られたのは、」
PF13「彼らの介入による可能性が高いんだ 人類の発見、発明、着想、啓示、これら全てがSPXによって操られているとしたら?」
PF13「私はそれを覆したいと思っている組織の一員だ」
イレイザー・ホーマ(PF13 執行許可ok)
イレイザー・ホーマ「PF13 イレイザー1! SPXの命により執行する!」
PF13「仕方ないだろう 君は操り人形だからな!」
PF13「まだまだ!」
イレイザー・ホーマ「うっ!」
PF13「その手の穴をこの刀で!」
イレイザー・ホーマ「あなたのやり方は間違っている!」
PF13「PFを掃討した後、君は暗殺者になって人類の進化を阻止することになるんだぞ!」
イレイザー・ホーマ「何だって!?」
PF13「さぁどうする?」
  イレイザー
  その手で落とし穴に落ちた僕のような人達を
  助けてあげてほしい
  みんな苦しいはずなんだ
  君ならきっと
イレイザー・ホーマ(そうだな)
イレイザー・ホーマ「QT!」
PF13「んっ!」
イレイザー・ホーマ「イレイザー1 俺は自分の方法で抗う すまない・・・」
PF13「そうか、だがまだ」
PF13「これは?」
PF13「ああ・・・」
放間玲二(阿甕所長 俺はPFを倒し尽くすまでに、何ができるだろう?)

〇港の倉庫
放間玲二(記事はボツだな 宇海になんて言おうか・・・)
宇海渉「放間君!」
放間玲二「宇海! どうして?」
宇海渉「あの後、調べたらこの創薬ベンチャーどうも怪しい噂がたんまり。 それで気になって来てみたの」
放間玲二「そりゃどうも この通り何ともないよ」
放間玲二「ダミー会社なのかこの住所には何もなかった 取材できなくて すまない」
宇海渉「いいのよ」
放間玲二「じゃ飯でも食って帰るか?」
宇海渉「そうね、行こう」
放間玲二「よし!」
宇海渉(PF13 掃討確認)

〇道
  EH 1 END

コメント

  • ラストのあの人のどんでん返しには唖然としました。善と悪の境界線が曖昧な立場を強いられる怪人たちの心の葛藤が切なかったです。PFもイレイザーも元々は人間であるという点が残酷でもあり、一縷の望みでもありますね。それにしても押すな押すな、はダチョウ倶楽部の熱湯風呂みたいな展開を想像したら全然違いました。実写化したらこのセリフは流行りそうですね。

  • 警備員Aのキャラが好きです😄
    仕事上、注意しないといけなかったけど心の底では
    あの2人の輪の中に入りたいのかな?と思いました😂
    ほっぺたが少し赤くなってるのとかおもしろかったです!笑
    受刑者を更生させる薬が現実にあったら素晴らしいのでは?と思っていたけど、怪しい系だったんですね!
    騙されるところでした😂

  • 押すな!押すな!でいつも変身するところが個人的にツボにハマってしまいました!笑
    なんとなく変身するときの心情がわかるようで…。

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