君と桜の樹の下で

ちぇのあ

侵略者達と剣姫の英雄譚(脚本)

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〇古い畳部屋
  聴きたくも無い耳障りな音が外から聞こえる
  騒々しいな・・・朝から祭行は禁止されているだろう
優樹「ん・・・?」
  未明が終わりかけの明け方と言うには早い空模様だ
  特筆すべきは尋常じゃない煙・・・何か不味い気がする
優樹「桜花、起きて」
桜花 「んぅ~こんな朝から、優樹くんに襲われる~♪」
優樹「いや、そんな場合じゃないんだって!」
桜花 「え~、こんな美少女が受け身で待ってるのに~」

〇城下町
  平和過ぎる桜花に起きてもらい、身支度を整え共に外へ出る
  逃げ惑う民に大火・・・聞こえるのは怒号と喚声
  思い当たる節が無い事は無いが、まさかこんなに行動が早いとは・・・!
桜花 「え・・・!?」
  遠くに見えるのは衛兵同士が争い、断末魔と共に首級が高々と挙げられる光景
  俺がけしかけた内応者か・・・今は桜花の保護が最優先だ!
優樹「ここは危ない、早く逃げよう!」
桜花 「う、うん!」

〇山道
  大火の反対側は都合良く永世的な中立国へ繋がっている
  桜花が元から安全な場所に居るなら、王宮へ攻め入って首級をあげたいぐらいなのだが・・・口惜しい
  不意に暴徒化した衛兵がこちらに刀を握り迫って来る
優樹「・・・!」
  次の瞬間閃光のように何かが駆け抜け内応者を次々と切り伏していく
桜花 「あなたは・・・!」
守姫「ここは危ない、一斉にほぼ全員が争い初めて・・・、まるで何かに操られているような・・・」
桜花 「・・・えいっ!」
  遠くで倒れた衛兵が宙を浮き足元に置かれる
  寝かせてから腕の裾をめくったり、兜を外したり何か無いか確認しているみたいだ
桜花 「あった!」
守姫「これは・・・!」
優樹「なんだ、この紋様は・・・!?」
  その不気味な紋様はまるで生きているかのように脈打ち、紋様のすぐ裏を血肉が鮮明に巡っている
桜花 「これは酷い・・・寄生型の魔獣に侵されているよ」
守姫「どうすれば助かるの!?」
  切羽詰まった焦りの顔を見せる
  国は腐っても仲間意識は残っているのか
桜花 「聖水か、それに近い清らかな水があれば・・・」
優樹「ちっ!」
  不知浄というそれなりの容量の清水と貴石の欠片でこしらえた装飾品がある
  高く売りさばくつもりだったのに・・・なんでこんなやつの為に使わなきゃいけないんだよ
  桜花が初めて見る魔法式を施している
桜花 「あとは休んでいればこの人は大丈夫だよ!」
守姫「ありがとう!他の者達は・・・」
  周りを見るが見渡す限り息の根のある者は見当たらない

〇城門沿い
守姫「ボクは王都へ鎮圧に向かう、君達も早く逃げ延びてくれ」
  怒号と悲鳴は強くなる一方で、新たな火柱が轟々と立ち昇り空を黒く染めていく
  剣姫は少し躊躇うがすぐに逡巡を掻き消し王都に駆けていく
優樹「僕達も行こう」
桜花 「・・・そうだね!」
  何を勘違いしたのか、守姫の後に続く桜花
  冒険の時のゆっくりな歩きとは比べ物にならない程の俊足を、風に舞う優雅なワンピース姿と共に見せつけられる
優樹「・・・なんでこうなるんだよ!」
  桜花の後ろを全速力で疾風の如く駆ける

〇荒廃した街
  魔導具で身体を強化しているのに先駆者のどちらにも追いつけない
  幸い王都の方向はわかるので二人を見失わずに済んでいる
優樹「あっちに逃げろ!」
  逃げ惑う民に逃げるべき方向を指し示す
  絶対に仕留めるべきはあの護衛

〇巨大な城門
  黒く爛れた城壁を視認しつつ城門を潜る

〇地下倉庫
優樹「相当荒れているな・・・」
  倉庫は開け放たれ中の宝物は軒並み盗られている

〇謁見の間
  やっと二人に追いつくと財宝のみに飽き足らず、宮仕えの子女達も質にしようとする賊の姿が映る
  無言で駆けて背中に短刀を刺す
守姫「な・・・!」
守姫「おい!今回のも操られているだけかもしれないだろ!」
守姫「・・・!?」
桜花 「え・・・え・・・!?」
  桜花には見えない背中越しに彼は一体如何なる情念を隠しているのか・・・
優樹「腐ったやつは消すしかないだろ?」
優樹「そもそも寄生されていたとして本当に操られていたのか? 最終的に判断したのはこいつ自身じゃないのか?」
守姫「いや、そうだとしてもこれは・・・」
  残りの残党も有無を言わさず処刑する
  根から絶たねば再生しかねない、残さず息の根を止める
優樹「これでとりあえずの安全は確保された」
桜花 「お爺ちゃんの件の恨みが出ちゃっただけで、優樹くんは悪くないの・・・」
守姫「そ、そうか・・・子女の救出や衛兵の保護をしてくれた事には感謝している」

〇城の廊下
  城内を一周したが肝心のやつが見当たらない、この機に仕留めて起きたかったのだが・・・
守姫「私では全員を守り切る自信が無い、悪いが同行させてもらえないか?」
桜花 「良いよね?優樹くんっ」
優樹「・・・移動が済んだら即解散だからな」
  ホッとした二人を見納め王宮を去る
  交戦の義務をさぼり略奪に走るやつの多さに反吐が出る

〇荒廃した街
優樹「中立国は受け入れてくれるだろうか」
桜花 「この情勢だから検問はできてるかも・・・」
守姫「過去に亡命を受け入れてる国だから・・・きっと大丈夫」
優樹「逃げる方向は敵側も承知のはず・・・そううまくいくのか・・・」

〇土手
優樹「・・・あいつ!」
  国境の橋の前に立つのはあの護衛
  周りの死屍累々と鎧の返り血で大義名分は立った、切り捨てる!
誠「おやおや、優樹様・・・!?剣姫様と・・・なぜあの小娘まで生きている?」
桜花 「あぁ、細道で絡んできた人達・・・あんなの・・・」
  桜花がチラリと僕を見ると僕の後ろに駆け寄る
桜花 「突然囲まれてすっごく怖かったの」
  首を向ければ潤んだ瞳で僕を見上げる、危ない目に合わすなんてこの僕が許さない!
守姫「この状況・・・何か弁解はあるか?」
誠「違うんです守姫様、混乱した民が橋の耐久も考えずに渡りだしまして・・・」
  溜息を吐いてとある魔導具を置く
  数刻前の橋の頭上が映し出される
優樹「すげえ生き生きした顔して切り捨ててやがるな、すげー串刺しじゃねーか、やるじゃん」
誠「・・・ちっ!」
  後ずさるやつに襲い掛かろうとするが、何か風が通ったと思うと剣姫がやつと刃を交えている
守姫「何故だ! この国と民を想い続けて居たのは私以上だったはずだ!」
誠「確かにこの桜の樹の国は善者にしか辿り着けません」
誠「・・・今は私の過去などどうでも良い、問題はこの状況をどう乗り切るかだ」
優樹「おまえのこの先などあるわけないだろう」
  横から斬り付けるが二つ目の刀に防がれる
桜花 「あの刀が無ければ勝てるかな」
誠「・・・!」
  刀の柄がみるみる氷結し手から離される
優樹「手甲ぐらい付けろや、ばーか」
  胴体の中心を突くが・・・掠り傷か、意外に器用だな
  剣姫が俺を制止する
守姫「僕の部下だ・・・僕が勝負を付ける」
誠「おい、まだか!早くしろ!」
  何を喚き散らしているんだ?
桜花 「!!離れて!!」

〇崩壊した道
  !?いきなり立ち位置が変わり、先程まで立って居た場所には底無しの裂け目が出来ている
  剣姫も同じように桜花に座標を変えられている
  いつの間に後ろに見えるのは・・・魔族?
誠「あの小娘魔導士か・・・ほぼ準備時間も無く・・・賊共じゃ手に負えない訳だ」
  剣姫がすごい脚力で裂け目を飛び越え斬りかかるが刃が空中で止まる
  見えないバリアでもあるのか!?
誠「もう少し人斬りを楽しみたかったが・・・もうあの国に未練は無い、ここが引き際みたいですな・・・」
守姫「待て!」
  距離を詰めるが剣先が届く前に誠と魔族の姿が消えていく
桜花 「魔法術・・・今のは正真正銘の魔族で、まだ魔王も魔法樹も健在だよ」
優樹「桜花の博学には敵わないな、ということは転移先は・・・魔界か」
守姫「誠と魔界が手を組んだのか・・・」
  重苦しい雰囲気を醸し出している
守姫「樹の件、申し訳なかった・・・」
桜花 「国の中枢に意見するなんて、貴女じゃなくても難しいと思うの、だから・・・」
守姫「国の復興も大事だが・・・災いの芽を断ちに行くのだろう? 僕も加わらせてくれ」
優樹「・・・」
  桜花が僕を見るが、気にしてないとか許してやるとか安請け合いをするつもりは無い
優樹「今その話をしてもお爺ちゃんは生き返らない、成すべき事は国の復興と亡命者達の保護と、そのあとに奴への復讐だ」
桜花 「ちゃんと助けてあげるんだぁ~♪」
  にまにまする桜花の後ろで剣姫も微笑んでいるように見える
優樹「決闘でやり直す機会や代わりの店を用意してもらったからな・・・それだけだ」
桜花 「・・・亡命している場合じゃないね」

〇土手
  橋の向こうの安寧を一瞥し再び戦乱の中を駆ける

〇荒廃した街
  足場の悪さにも慣れてきた
守姫「恐らく多くの民は王族と共に地下室に匿われているはず」
優樹「廃墟のようになっていたが・・・目星は付くのか?」
守姫「剣客から始まり長く務めてきた、僕の庭みたいなものだよ」

〇巨大な城門
  再び門を潜り、それらしい辺りを瓦礫をどかしながら探す

〇後宮の一室
守姫「入口は見つけた、・・・少し下がっていてくれ」
  桜花と並んで剣姫を見守る・・・直後油絵の瞳の中心を正確に貫く
桜花 「あ、空いたよっ!」

〇地下室
  中を三人で覗くと多くの人々が身を寄せ合っている
  剣姫が中に入り安全を確認する
守姫「念の為追加の備蓄を運んでくる、少しここで待っていてくれないか」
桜花 「治安が安定するまで多いに越したことは無いから私と優樹くんも一緒に運ぶよ♪」
優樹「それにしても肝心の王が見当たらないが・・・」
守姫「最近足を悪くしたみたいだから・・・もしかしたら逃げ遅れたのかもしれない」
  生き残りの王族に聞くと敵兵に攻め込まれ逃げるので精一杯だったようだ、その時に攫われたと言う結論に至る

〇後宮の一室
守姫「このままでは奴らの要求を呑みこの国は属国と成り下がるだろう」
守姫「周辺の危険は排除し捕虜を懐柔し城壁警護に付けた」
守姫「暫くは持つはずだ、僕は行く」
優樹「おい、行くってどこに!」
守姫「今が功績をあげる絶好の機会だろ?」
  そう言い笑うと何の迷いも無く遠く見える若葉の旗印の方角へ真っ直ぐに駆け出す
優樹「いやいや、何やってんのあいつ」
桜花 「私の想う優樹くんはあの子を無駄死ににはさせない・・・よね?」
優樹「あーもう!これもすんげー貸しだからな!」
優樹「・・・着いて来れる?」
桜花 「おうちでもダンジョンでも戦場でも、どこでもずっと優樹くんと一緒に居るよ?」
  澄んだ瞳に恐怖も迷いも焦りも何の負の感情も見えない
  これだけ力強い仲間は桜花と、あの駆け出した馬鹿しか居ないだろう
桜花 「ちょうどここは城、布陣を見ておこっか」

〇草原
  先陣と次鋒が左右に広がるようにして前進している・・・鶴翼の陣か
優樹「・・・正面から突っ込んでやがる」
桜花 「囲まれる前に助けに行こう!」
優樹「あ~もう・・・助けた後死ぬまでコキ使ってやるからな!」
  轟く鬨が駆け抜く左右で響くのも気にせず、降り注ぐ矢雨を払い力強く踏み締めた足跡を頼りに僅かに見える本陣へ向けて駆ける

次のエピソード:枯れる若葉と暗い闇への糸口

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