君とキスがしたい

咲良綾

ep8:無垢な身勝手と君の我慢(脚本)

君とキスがしたい

咲良綾

今すぐ読む

君とキスがしたい
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇学校脇の道
須崎秋夜「もうすぐ期末テストだね。 勉強してる?」
川波静音「まだ全然・・・」
須崎秋夜「俺も。家にいるとだらけちゃってさ。 ね、明日から図書室で一緒に勉強しない?」
川波静音「うん」
  秋夜くんと一緒の帰り道。
  並んで歩けたら手繋ぎイベントでも
  発生するのかもしれないけど、
  わたしたちは自転車通学です。
  自転車専用レーンを、
  ゆるゆると並走しながら喋ってる。
  これはこれで楽しいけど、
  狭い道になれば一列になって、
  ろくに喋れない。
  ああ自転車通学。
須崎秋夜「あ。懐かしいな、この公園。 いつもこっちの道は通らないから久しぶり」
須崎秋夜「小学生の頃、この近くに友達がいて、 よく遊びに来てたんだ」
須崎秋夜「ちょっと寄っていい? 自販機あるし、ジュース飲もう」
  そっかー!
  寄り道イベントという手があった!
  乙女ゲームで見たことある、好感度高い人と
  一緒に帰ると公園に寄ってお話するやつ!
川波静音「うん!」

〇田舎の公園
須崎秋夜「わー! ブランコめっちゃ久しぶり!」
  自転車を止めるなり、秋夜くんは
  ブランコに駆け寄って飛び乗った。
須崎秋夜「たのしい!たのしい!ブランコたのしい!」
  ほんとに、犬みたい・・・
川波静音「ふふ、かわいい」
須崎秋夜「えっ、今、かわい・・・」
須崎秋夜「わあぁ!!」
川波静音「秋夜くん!!大丈夫!?」
須崎秋夜「いてー・・・」
川波静音「ひじ、怪我してる!」
須崎秋夜「大丈夫、ちょっと擦りむいただけだよ」
川波静音「水道で洗おう」

〇グラウンドの隅
  ザー・・・
須崎秋夜「これでいいかな」
川波静音「待って、傷、見せて」
  小さな石が食い込んでる。
川波静音「砂、残ってるよ」
須崎秋夜「少しくらい大丈夫だよ」
川波静音「でも・・・」
  消毒液もないのにこのままじゃ心配だ。
  ・・・そうだ。そういえば昔、お母さんが
川波静音「ちょっと、ごめん」
須崎秋夜「!?」
  傷に口をつけ、小石を吸い出した。
須崎秋夜「うっ・・・」
川波静音「取れた!」
須崎秋夜「・・・・・・」
  秋夜くんは、じっと顔を伏せている。
川波静音「あ・・・痛かった?」
  歯をくいしばって、耳が真っ赤になっている。
  心配になって、肩をさするようになでながら
  覗き込んだ。
川波静音「大丈夫?」
須崎秋夜「大丈夫じゃねぇよ・・・」
  聞いたことのない低い声。
須崎秋夜「何やってんだよ」
  顔を上げた秋夜くんの目は
  うっすら赤くて涙目だった。
須崎秋夜「困るんだけど」
川波静音「えっ」
須崎秋夜「ほんと、困る・・・」
  秋夜くんの手のひらが回り込み、
  ドン、と背後の壁を突いた。
  目を合わせないようにしながら、
  肩が震えている。
須崎秋夜「俺は触っちゃダメなのに、そんなのずるい」
  それで初めて、とんでもないことを
  やらかしたことに気づいた。
川波静音「ごめんなさ・・・い」
須崎秋夜「・・・・・・」
  秋夜くんはゆっくりと腕に力を込め、
  壁から離れた。
須崎秋夜「・・・ごめん。俺、怖いね。ごめんね」
須崎秋夜「今日はちょっと、先に帰る。 また連絡するから」
  去って行く背中を見ながら、へたりこむ。
  今のは、いわゆる壁ドンだろうか。
  ・・・違う。なんか違う。
  そんな薄っぺらい言葉にしたらいけない。
  そんなんじゃない。
  わたしを追い詰めたんじゃない。
  わたしのために自分を止めてくれた。
  考えなしのわたしにちょっと怒りながら、
  触らないって約束を守ってくれた。
川波静音「あー・・・」

〇図書館
須崎秋夜「俺は、川波さんと恋愛したいんだけど」
川波静音「解 釈 違 い で す ー っ !!!」

〇教室
須崎秋夜「静音。 俺と付き合って」
川波静音「命が危ないから無理ですーーー!!!」

〇学校の廊下
須崎秋夜「教室に戻ろ」
川波静音「手・・・繋・・・っ」
川波静音「無理ぃーーーっ!!!」

〇グラウンドの隅
  わたしはバカだ。
  恥ずかしがって保身のために突き放して、
  そこには自分の気持ちしかなくて
  秋夜くんが苦しいかもしれないなんて、
  そんなの全然

〇学校の廊下
須崎秋夜「俺は必要以上に困らせないよう頑張るから」

〇センター街
須崎秋夜「手を繋いだら安心できるんだけど・・・ 触ったらダメなんでしょ」

〇センター街
須崎秋夜「ぶつけたところ、痛くない? ハンカチ越しなら触ってみていい?」

〇教室
須崎秋夜「現実でもキスしたい!」

〇グラウンドの隅
須崎秋夜「俺は触っちゃダメなのに、そんなのずるい」

〇グラウンドの隅
川波静音「うっ・・・」
  思い出せばたくさん、苦しい顔させてた。
  こんな身勝手なままじゃ隣にいられない。
  もっとちゃんと向き合いたい。

〇学校脇の道
川波静音「・・・・・・」
  秋夜くんが、好きだ。
  妄想じゃなくて、本人に触れたい。
  もっと近づいて、笑顔にしたい。
  次回へ続く

次のエピソード:ep9:君と繋ぐ未来

コメント

  • あぁああぁああ、切ない!!
    相手を思いやることは必要だけど、自分が思っていることはちゃんと伝えていいんだよ!無理しなくていいんだよ!ってなります。

  • うわああああ、
    ピュアピュアな、ピュア故のせつなさーーー!!
    静音ちゃんも、応急処置のためとはいえ
    恥ずかしさはなかったのかな…?

成分キーワード

ページTOPへ