ゴリラと流れ星と願い事

ぐらっぱ

第四話 ゴリラと漆黒の大草原(脚本)

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〇黒
  時間は無情に過ぎていく。

〇おしゃれなリビングダイニング
娘「もー! お父さんの服と一緒に洗濯しないでよ!! くっさいんだからー」
妻「文句があるなら自分で洗いなさいよ」
娘「・・・えー」
ツルッチ「かあさん 飯は・・・」
妻「あぁ!? 冷蔵庫から適当に出して食べなさいよ あたしゃ忙しいんだよ!」
ツルッチ「・・・」
娘「近寄んないで くっさいんだから」
  この頃、妻と娘が冷たい。
  毎日毎日、妻と娘の為に働いてきた。
  それなのになんでだろう。
  昔はこうではなかった。
  昔はもっと・・・。

〇黒

〇古いアパートの部屋
若き日のツルッチ「ただいま」
幼い頃の娘「ぱぱー おかえりー」
若き日の妻「おかえりなさい、あなた ご飯にします? それとお風呂先に入りますか?」
若き日のツルッチ「そうだなぁ 先にお風呂で・・・」
幼い頃の娘「ぱぱー 今日ねー先生に絵を褒められたの みてみてー」
若き日のツルッチ「チェンソーが上手に描けてるなぁ まるで写真のようだ すごいぞぉ、将来は画家かな」
幼い頃の娘「えへへー」
  あの頃はよかった
  いつから変わってしまったのだろう

〇草原
  そう、あの頃の自分の頭皮は
  どこまでも広がる豊かな大草原。
  自分は考えた。
  どうしたら昔のように戻れるのか。
  妻と娘が自分に微笑みかけてくれる。
  ただそれだけでいい。
  他は何も望まない。
  何がきっかけで変わってしまったのか。
  自分はふと思い出した。
  娘が自分を避けるようになった頃。
  そうだ、あの時から・・・
  異変はある日唐突に訪れる。
  枕に残る髪の毛の量がいつもより多いな
  その時はただそれだけで
  深くは考えていなかった。
  しかし、それはあっという間だった。

〇魔界
  自分の頭皮から次々と髪が旅立っていき
  あっという間に黒々とした大草原が
  枯れ果てた荒野へと変貌していった。

〇黒

〇古民家の居間
かあちゃん「いいかぁ 将来髪には気をつけるんだぁ とーちゃんは薄毛家系だからな」
  幼い頃の母の言葉が
  ふいに脳裏をよぎった。

〇黒

〇不気味
  そうだ、自分に髪があれば・・・。
  あの頃のようにフサフサな毛髪があれば
  妻も娘も微笑みかけてくれるのではないか。
ツルッチ「しかし、どうしたらいいのか・・・」

〇線路沿いの道
  そう悩んでいたある日の夜。
怪しい風貌の男「ヘーイ! そこのオニイサン 元気ナイネー」
ツルッチ「な、なにかねキミは!?」
怪しい風貌の男「オーゥ! 悩めるラム肉、じゃなくて仔羊サン ミーは分かってマスヨー」
ツルッチ「・・・」
怪しい風貌の男「ユーに必要なのはコレ!」
ツルッチ「これは・・・カツラ!?」
怪しい風貌の男「イェース! 高級ウィッグね コレで100歳若返りモテモテよ」
ツルッチ「ほ、欲しい! コレを譲ってくれ!」
怪しい風貌の男「オーケイー! ただコレは見本ねー サイズ測って相応しいウィッグ作るヨ」
ツルッチ「因みにお値段は・・・?」
怪しい風貌の男「キッカリ100万円・・・のところ 今ならナント! 半額の50万円ダー」
ツルッチ「うむむ・・・ 高いなぁ」
怪しい風貌の男「50万円でアナタのこれからの人生 バラ色、豚バラ、パラダイスね! ヤスイ、ヤスーイ!」
ツルッチ(確かに髪があれば もしかしたら人生変わるかもしれない)
ツルッチ「分かった! 買おう」
怪しい風貌の男「オーライ! これ契約書ねー サインヨロシク」
ツルッチ(これからの人生の為なら こんくらい安いもんだ)
怪しい風貌の男「オッケーイ! 出来上がりは3ヶ月後にナルヨ もし何かあればココに連絡を」
ツルッチ(高級ウィッグ専門店『ヅラ・バレナイ』 最近CMで見た事あるな しっかりした会社なのかも)
怪しい風貌の男「では、完成を楽しみにしててヨー アディオース!!」
ツルッチ「自分に髪が・・・」
ツルッチ「そういえば今日は流星群が見えるって TVで見たのぉ 良い結果になるよう願掛けでもしようかの」
  この後出会う事になる流れ星が
  まさか願いを叶えるなどとは
  想像もできなかった。

〇黒

〇星
  流れ星には髪が欲しいと願った。
  3ヶ月後に出来上がるはずの
  高級ウィッグを代償に。
  3ヶ月後、出来上がったブツを手に
  自分は流れ星を呼び出し・・・
  願いに見合う物を持ってきたんだね
「持ってきたぞぉ! 3ヶ月待って出来上がった この高級ウィッグを!!」
  確かに受け取ったよ
  では、キミの願いを叶えよう
「これで自分に毛髪が・・・」
  そうそう、最初に伝えていたけど
  願いを取り消したい時は
  あの日願い事をした全員が
  願い事をキャンセルする必要があるからね

〇黒

〇一戸建ての庭先
ツルッチ「と、いうわけでなぁ」
ツルッチ「・・・」
ツルッチ「って、寝るなぁ!!」
ケンタ「えー、寝てませんよ先生」
マサル「えーっと・・・ 先生のアフロは高級ウィッグ?」
ツルッチ「違う!!」
マサル「先生の話長すぎるんです もっと端的に要点まとめてくださいよ」
ツルッチ「ええい! 要は流れ星の願い事は願った全員が キャンセルしないといけないってわけだ」
マサル「じゃあ、先生もそんな変なアフロは キャンセルするし問題無いな」
ツルッチ「自分はキャンセルせんぞ! 妻と娘に優しくされる為に アフロは必要なんじゃあ!!」
マサル「それは違う!!」
マサル「俺は、アフロじゃない先生が好きだ 髪があるかないかは問題じゃない 気持ちの問題なんだ」
ツルッチ「しかし妻と娘は・・・」
マサル「アフロなんてなくたって先生は ちょっと加齢臭するけど かっこいい先生ですよ」
マサル「もっと奥さんや娘さんに 自分の気持ちを正直にぶつけるべきです 話し合えば通じるはず」
ツルッチ「話し合い・・・ そうか、そういえば ずっとまともに会話していなかった」
マサル「先生がいくらアフロ爆発しようが 中身も変わらないと何も変わらないんだ」
ツルッチ「そうだな、自分が間違っていた アフロが全てを解決するわけじゃない 自分の気持ちが大事なんだ」
マサル「先生・・・」
ツルッチ「帰宅したら妻と娘に話をしてみるかの」
マサル「気持ちはきっと伝わるぜ」
ツルッチ「すまんかったのぅ ゴリラ達には迷惑をかけてしまって」
マサル「いいってことよ」
ツルッチ「そうだ、願い事をキャンセルするなら あの時の場所へ向かい 流れ星を呼び出すといい」
マサル「あの時の場所・・・?」
ケンタ「ああ、学校の裏山だ 昔から流れ星が良く見えるって有名で そういやマサルんちから近いよな」
マサル「よーし、じゃあ向かってみるか」
ケンタ「行こう!」
ツルッチ「自分は家に帰って妻と娘に話をしてくる 2人とも、本当にすまんかったのぅ」
ケンタ「ぼく達は裏山へ行こう」
マサル「その前に一度俺んち帰って 荷物置いてくる」
ケンタ「・・・」
マサル「どうした?」
ケンタ「いや・・・」
マサル「? 早く行こうぜ」

〇ジャングル

〇川沿いの道
ケンタ(ぼくは部屋が女子の部屋になっていた もしかしたら・・・)
ケンタ「まさかお前んち森になってないだろな」
マサル「何言ってんだよケンタぁ そんな事あるわけないだろ」
ケンタ「そ、そうだよな」
マサル「そんな事あるわけが・・・」
「・・・」

〇黒

〇ゴリラの飼育エリア

〇川沿いの道
ケンタ「ゴリラ園・・・だよなあれ」
マサル「いや、まさか・・・」
ケンタ「確かめよう!」
マサル「お、おう・・・」

〇ゴリラの飼育エリア
金持ちそうな男「・・・」
ケンタ「ん? 今、知らないおっさんがいたような」
マサル「・・・」
ケンタ「おいおいおい 見てみろよ、マサル」
マサル「こ、これは・・・!!」

〇動物
  まさかマサルの家がゴリラ園に!?
  一体何がどうなっているのか
  深まる謎、ゴリラが先祖? 嘘本当?
  謎のおっさんも気になるマサル達だが
  果たして彼らは流れ星に無事出会い
  願い事をキャンセルできるのか
  第五話へ続く・・・!

次のエピソード:第五話 ゴリラと花のゴリラ園

コメント

  • 担任の娘さんの画力が……!?
    伐採するお仕事の若い青年に恋をしてたのかもしれません(という解釈にしておこうガタガタガタ)
    背景で表現された髪の毛の情景描写が禿逸…いや秀逸でした!
    自宅がゴリラ園……見事に伏線回収でしたね💦
    盛大に笑ってしまいました笑
    謎のチャラそうな男、気になりますね。次回も楽しみにしてます!

  • 2話目で「俺んちは動物園になってるんじゃ」って予想するセリフありましたけど、ホンマになってた〜😂
    あと若き日のツルッチの娘よ、なんで学校でチェンソー手にした男の絵、描いてんの〜😂

  • 自室ゴリラ園!予想を大きく上回る展開に吹き出しました!😂😂

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