17歳、夏、片思いを叶える。

卵かけごはん

#7:告白のチャンス到来!?(脚本)

17歳、夏、片思いを叶える。

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〇海岸線の道路
  ブーン・・・
  8月11日、山の日、快晴。
浅井 貢(あさい みつぐ)「わあ、見えた!」
西野 柊也(にしの しゅうや)「めっちゃ海の匂いだぜ!」
  咲兄の車で、海に連れて来てもらったのだ!
西野 咲也(にしの さくや)「よし、車はこの辺で。お待たせ。 後ろの荷物運ぶの手伝ってくれる?」

〇海水浴場
西野 柊也(にしの しゅうや)「う~みだああああ!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「柊也!パラソルとかお弁当とか持ってよ!」
西野 柊也(にしの しゅうや)「うおっ!?」
西野 柊也(にしの しゅうや)「いってえ・・・」
西野 咲也(にしの さくや)「くっ・・・」
浅井 貢(あさい みつぐ)「うふっ・・・」
浅井 貢(あさい みつぐ)「あははははは!普通来た直後に転ぶ?」
西野 咲也(にしの さくや)「顔まで砂まみれ!」
西野 柊也(にしの しゅうや)「うっせえ! 海来たらどうせ砂だらけになんだろ!」
西野 柊也(にしの しゅうや)「くっそー、2人とも、 後で生き埋めにしてやるっ!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「パラソル、これで大丈夫ですか?」
西野 咲也(にしの さくや)「うん、ばっちり!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「え、もう脱いでる」
西野 柊也(にしの しゅうや)「ひと泳ぎしてくるわ! 俺は動いてないと気持ち悪いんだよ、 貧弱なお前と違ってな!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「柊也、身体鍛えてるな。 あれで性格がよかったら、 女子にモテたんじゃなかろうか」
浅井 貢(あさい みつぐ)「腹筋バキバキ、無駄肉も無い。 綺麗な逆三角形―って僕、 何であいつに見とれてんの!」
西野 咲也(にしの さくや)「浅井君おいで。影入ろ。ここ」
浅井 貢(あさい みつぐ)「咲兄! 隣を手でポンポンしてくれるなんて! しかも並んで座れる―」
浅井 貢(あさい みつぐ)「これはもしや、 神様がくれた告白のチャンス―?」
西野 咲也(にしの さくや)「はい、お茶。 凍らせてきたから冷えてるよ」
浅井 貢(あさい みつぐ)「あ、はいっ!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「うっ、ゲホゲホッ!」
西野 咲也(にしの さくや)「浅井君、大丈夫!?」
浅井 貢(あさい みつぐ)(わあ、背中トントンされたら もっと緊張してっ!)
浅井 貢(あさい みつぐ)「ゲホッ、ゲホッ・・・ す、すみませんでした──」
西野 咲也(にしの さくや)「ううん、今日はゆっくりしよう」
浅井 貢(あさい みつぐ)(隣に座っただけでバクバクするなんて・・・ 告白なんてほど遠いな―)
西野 咲也(にしの さくや)「仕事はどう? いきなり色々させちゃってるけど、きつくない?」
浅井 貢(あさい みつぐ)「大丈夫です!むしろ毎日楽しいです」
西野 咲也(にしの さくや)「ならよかった。 今日も突然誘って悪かったけど、少しでも二人に夏の思い出作ってもらえたらって思って」
西野 咲也(にしの さくや)「まあ、一緒にいるのが私と柊也だから 悪いけど」
浅井 貢(あさい みつぐ)「何言ってるんですか!」
浅井 貢(あさい みつぐ)(あいつはともかく、 咲兄の隣にいられるなんて夢みたい・・・)
西野 咲也(にしの さくや)「柊也の面倒見させちゃって悪いね。 お客さんの対応でも浅井君がフォローしてくれてるんでしょ」
西野 咲也(にしの さくや)「柊也、学校ではどう?」
浅井 貢(あさい みつぐ)「ええ、体育はクラス1で」
西野 咲也(にしの さくや)「体育は、か。あとはお休みタイムかな」
浅井 貢(あさい みつぐ)「はい!」
西野 咲也(にしの さくや)「隣の席だったよね。迷惑かけてない?」
浅井 貢(あさい みつぐ)「迷惑ってほどじゃないですけど・・・ 教科書見せても寝ちゃうし。 起こすと悪態吐かれるしで、 大っ嫌いです!」
西野 咲也(にしの さくや)「あはははは!・・・それ大迷惑じゃない!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「もう慣れました。 でも柊也、初日に掃除の仕方を詳しく教えてくれたり、品物の名前を僕の方法で覚えようとしたり・・・」
浅井 貢(あさい みつぐ)「真面目なとこもあるんだって知って、 びっくりしました」
西野 咲也(にしの さくや)「ふふ。決めたことには一途かもね。 芯があるっていうか、時に頑固だけれど」
  「芯」―そういえば、
  柊也と咲兄の話をしたとき、同じことを言っていた
浅井 貢(あさい みつぐ)「きっと、「芯」というか、真摯な所は、 お兄さん譲りだと思います」
西野 咲也(にしの さくや)「えっ?」
浅井 貢(あさい みつぐ)「店長の作るお菓子が、それを物語ってる気がして。 どれも優しい味がして、食べるとじんわり癒されて・・・」
浅井 貢(あさい みつぐ)「全部大好きなんです」
浅井 貢(あさい みつぐ)「それはやっぱり、 一途に作ってらっしゃるからだろうって・・・」
西野 咲也(にしの さくや)「──」
浅井 貢(あさい みつぐ)「あ、すみませんっ! 僕なんかが偉そうに・・・」
西野 咲也(にしの さくや)「ううん! 不意にすっごく嬉しいこと言われたから。 ありがと、浅井君」
浅井 貢(あさい みつぐ)(ほんとは、お菓子だけじゃなく 咲兄も大好きなんだけど・・・ うぅ、折角のチャンスなのに!)
浅井 貢(あさい みつぐ)「勇気が出ない、 それに突然そんな事言って変な雰囲気にしちゃったら・・・ああ、言えない―!!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「!?」
西野 咲也(にしの さくや)「浅井君、服脱いで、寝転がってみて」
西野 咲也(にしの さくや)「砂熱いけど気持ちいいよ、夏って感じ」
浅井 貢(あさい みつぐ)「え、あ、はい・・・」
浅井 貢(あさい みつぐ)(脱いで隣で横になるなんて・・・)
浅井 貢(あさい みつぐ)「わあ・・・ 空、広い―」
西野 咲也(にしの さくや)「ほんと、雲が高いねえ」
西野 咲也(にしの さくや)「二人にはさ、 今しか感じられないものを沢山味わってほしいんだよね」
西野 咲也(にしの さくや)「海の匂いとか、陽射しの熱さとか、 砂の感触とか、海水の温度とか、 落ちてる貝殻の鋭さとか、誰かと何かする楽しさとか・・・」
西野 咲也(にしの さくや)「お菓子づくりにも、自分の感覚が、 自分で確かめたことだけが生きるんだ」
浅井 貢(あさい みつぐ)「?」
西野 咲也(にしの さくや)「僕が浅井君と同じ年頃の時、 それを言ってくれたお客さんがいたんだ。 小さなお客さん」
西野 咲也(にしの さくや)「当時あの店でアルバイトしてたんだけど、 誕生日ケーキを買いに来た親子がいた」
西野 咲也(にしの さくや)「息子さんが食べたかったケーキを、 お母さんはダメって言って、 ケンカになったみたいだった」
浅井 貢(あさい みつぐ)「え、その話―」
西野 咲也(にしの さくや)「そしたら、その息子さんが、 床に寝転がって駄々こねたんだよ」
西野 咲也(にしの さくや)「「食べなきゃ美味しいかどうかわかんない」 「僕が食べて決める」ってね」
浅井 貢(あさい みつぐ)(そ、それ―7歳の僕だ! 覚えていてくれたんですね? 10年も前のことを―)
西野 咲也(にしの さくや)「私、その言葉聞いてハッとした。 作り手として一番大事なのってそこだ、 自分を信じられるかどうかだって」
西野 咲也(にしの さくや)「当時の私は八方美人で、周りの顔見て動いちゃう人間でさ。 自分で決められなかったんだ」
浅井 貢(あさい みつぐ)「そう・・・だったの?」
西野 咲也(にしの さくや)「その子の言葉聞いて、自分を信じられるとこまで突き詰めようって生きてたら―」
西野 咲也(にしの さくや)「私の青春終わってた」
西野 咲也(にしの さくや)「だから、二人の若さが羨ましい。 私ももう1回、やり直したいね」
浅井 貢(あさい みつぐ)「店長、まだ28・・・って聞きましたが」
西野 咲也(にしの さくや)「二人より10年も長く生きてるんだよ? その間何してたのかな」
西野 咲也(にしの さくや)「ずっとお菓子作って、 ここ3年毎日店の切り盛りして・・・」
浅井 貢(あさい みつぐ)「店、長―」
西野 咲也(にしの さくや)「10年、毎日よくなりたいって思ってやってきた。 けど、今の自分が真っ当な方向に向かえているのかもわかんなくて─」
西野 咲也(にしの さくや)「私は、何のために生きてるんだろうって思うんだ、 生きる意味っていうか―」
浅井 貢(あさい みつぐ)「咲兄!?」
西野 咲也(にしの さくや)「あ、ごめん! どうしようもない愚痴言っちゃった。 忘れて」
  咲兄の横顔は、笑っていたけれど陰を湛えていた。
  そんな顔、見たことなかった―
西野 柊也(にしの しゅうや)「おい子犬! 泳げねえなら波打ち際でちゃぷちゃぷくらいしろよ~! 折角来たのに勿体ねえ」
浅井 貢(あさい みつぐ)「うるさい!ずぶ濡れの野良犬!」
西野 咲也(にしの さくや)「浅井君、悪いけど構ってあげて」
浅井 貢(あさい みつぐ)(咲兄、一人になりたいのかも)
浅井 貢(あさい みつぐ)「はい、行ってきます!」

〇海辺
  1週間バイトしてて、
  あんな咲兄を見たのは初めてだった。
  弟にはなかなかこぼせない、
  心に溜まった何か。
  柊也も昨日言っていた。
  お菓子の道に入った咲兄は、お母さんとも険悪な関係になってしまったと。
  そのお母さんも最近亡くなり、
  一人で兄弟の生活を支えてる。
  たかがアルバイト、たかが弟のクラスメイトの僕に、何かできることは―

〇海水浴場
西野 柊也(にしの しゅうや)「兄貴、腹減った~!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「柊也! 人の海パンに砂入れんのおかしくない?」
西野 柊也(にしの しゅうや)「いいじゃねえか、 たまにはアソコ刺激してやれよ」
浅井 貢(あさい みつぐ)「はああ?柊也殺すっ!!ほんっと最悪!」
西野 咲也(にしの さくや)「二人とも、おにぎりあるよ!」
西野 柊也(にしの しゅうや)「兄貴また?飽きたんだけど~」
浅井 貢(あさい みつぐ)「それじゃあ、頂きます!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「ん~、塩昆布美味しいです! おにぎりがこんなに美味しいなんて─」
西野 咲也(にしの さくや)「平凡なおかずだけど、 卵焼きと唐揚げもあるから、よかったら」
西野 柊也(にしの しゅうや)「だから兄貴、 それも俺のいつもの弁当じゃん!」
西野 柊也(にしの しゅうや)「海の家でなんか買ってくる!」
西野 咲也(にしの さくや)「はいはいどうぞ、 じゃラムネでも3人分買ってきてよ」
西野 柊也(にしの しゅうや)「はあ~?俺の金で?」
浅井 貢(あさい みつぐ)「店長、柊也の分のおかず、僕が頂きます!」
浅井 貢(あさい みつぐ)「うわ、うま~!」
西野 咲也(にしの さくや)「全部食べていいからね!」
浅井 貢(あさい みつぐ)(柊也と3人で居る時は いつもの咲兄だけど・・・)
浅井 貢(あさい みつぐ)(何かあるかな、僕にできる事)
  それから、スイカ割りしたり、
  砂に埋め合いっこしたり、
  水の掛け合いしたり、
  川の字で昼寝したり・・・
  楽しい休日はあっという間だった。

〇トラックのシート
西野 咲也(にしの さくや)「二人とも、PA寄る?」
西野 咲也(にしの さくや)「あれ?寝てる。 全く、柊也はちゃっかり 浅井君の膝枕・・・」
西野 咲也(にしの さくや)「可愛いねえ、あれだけ嫌い合ってるのに」
西野 咲也(にしの さくや)「浅井君、愚痴、聞いてくれてありがとう。私が逆に息抜きしちゃってごめんね」
西野 咲也(にしの さくや)「柊也、隣にいてくれる人を信じて、大事にするんだよ」
西野 咲也(にしの さくや)「私みたいに、人を好きになることを諦めないで」
西野 咲也(にしの さくや)「今が、一番幸せかもしれない」
西野 咲也(にしの さくや)「君たちを見守ることで、 私が支えてもらっているから」
西野 咲也(にしの さくや)「私の人生― お菓子作り続けて、この子たちの成長見届けられたら、十分、 十分すぎるかもね―」
西野 咲也(にしの さくや)「人をうまく愛せない、私には―」
西野 咲也(にしの さくや)「さて、明日は果物のジュレとレアチーズケーキを作らないと。 味見してね、柊也、浅井君―」

次のエピソード:#8:お菓子作りって楽しい!

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