よしおの漫画

明里灯

エピソード7(脚本)

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〇CDの散乱した部屋
足塚おさむ「遂にこの日が来たか・・・」
よしお「足塚おさむ賞の結果発表です」
足塚おさむ「さっさと開いて結果を見せろ」
よしお「その前にいいっすか?」
足塚おさむ「何だ?」
よしお「先生! どうか!!」
よしお「俺の身体を乗っ取ってください!!」
足塚おさむ「まだ言うか!!」
足塚おさむ「俺はお前の大切な原稿を破った」
足塚おさむ「クソ野郎だ」
足塚おさむ「俺のことが・・・ 嫌いになったんじゃないのか?」
よしお「・・・」
よしお「俺・・・気づいてしまったんです」
よしお「俺には足りないものがあった」
よしお「だから先生は悪役を演じた・・・」
よしお「原稿を破ったのも・・・ 全部俺の為で・・・」
足塚おさむ「うぬぼれるのも大概にしろ!」
よしお「でも、俺・・・ 今回出した漫画・・・」
よしお「すげぇおもしろくなったんです」
よしお「原稿を破られなければ・・・ 先生を恨まなければ・・・」
よしお「描けなかったんです」
よしお「あなたはまだ死んではいけなかった」
よしお「人類にとって、子供たちにとって、 いなくてはならない存在なんです」
足塚おさむ「・・・」
足塚おさむ「お前の為なんかじゃない」
よしお「え?」
足塚おさむ「俺の為だ」
足塚おさむ「お前が助けを求める子供を 見捨てられなかったように」
足塚おさむ「俺もお前を手助けしたいと思った」
足塚おさむ「俺自身の為なんだよ」
足塚おさむ「仮にお前から見たら善行に見えても、 ただのエゴで偽善だ」
よしお「先生・・・」
足塚おさむ「気づいただろうが・・・」
足塚おさむ「突き抜けたものは、 殺すか呪うほどの想いで描かねばならない」
足塚おさむ「それほどの強い想いがあって 初めて人の心を強く動かす」
足塚おさむ「ルックアットって漫画が人の心を打つのも 根底に事件に対する怒りがあるからだ」
足塚おさむ「お前には才能がある」
足塚おさむ「だが、想いが全然足りていなかった」
足塚おさむ「俺を恨んでいい」
足塚おさむ「殺したいほど憎め」
足塚おさむ「その感情を爆発させ、 俺を殺す気で描いた漫画・・・」
足塚おさむ「めちゃくちゃおもしろかったぞ」
よしお「・・・」
よしお「先生は俺が寝ている間、 俺の身体で漫画を描いてると言いました」
足塚おさむ「・・・」
よしお「あれも嘘なんですよね 俺に足塚賞を獲らせる為に・・・」
よしお「ほら見てください・・・」
よしお「第70回足塚賞受賞者は・・・」
よしお「足塚おさむ」
よしお「って・・・え?」
足塚おさむ「よっしゃ! リベンジ果たしたぜ!!」
よしお「嘘だろ!!!」
足塚おさむ「よしおは準大賞じゃないか」
足塚おさむ「やったな!!」
よしお「いやいやいや!!」
よしお「嘘でしょあんた!」
よしお「本当に俺の為じゃなかったんだな!」
よしお「いや、でもまぁ・・・ 先生らしいっすね」

〇CDの散乱した部屋
よしお「・・・まったく先生は 本当に子どもっぽいですね」
足塚おさむ「子どもでいいんだよ 青くていんだよ!」
足塚おさむ「人は現実をの鉄槌を受け続け、 大人になっていく」
足塚おさむ「だが、鉄槌を受けても立ち上がり続け、 最後まで青いことを言い続ける者」
足塚おさむ「それが天才なのだからな」
よしお「先生が言うと納得感あって嫌ですね」
足塚おさむ「天才だからな!」
足塚おさむ「さて、俺が勝ったから・・・」
足塚おさむ「お前は俺のものだ」
よしお「い・・・言い方気を付けてください」
よしお「それから、嫌です!」
足塚おさむ「ほぅ」
よしお「先生にしか描けない漫画は あると思います」
よしお「残念ながら今は俺より 先生の漫画を読みたい人も多いでしょう」
足塚おさむ「ふむ」
よしお「でも、俺にしか描けないものもあります」
よしお「俺は・・・ 自分の漫画を描き続けたいです!」
足塚おさむ「よしおのくせに生意気だな!」
よしお「もう慣れて全然痛くないっすよ!」
足塚おさむ「ふん」
よしお「これからも・・・ 俺に漫画のことを教えてください」
足塚おさむ「呆れたものだ 約束を守らないどころか催促とはな」

〇歌舞伎町
足塚おさむ「人は変わった・・・」
足塚おさむ「確かに戦争は続いている」
足塚おさむ「それでも、俺が生きていた頃より 少しはマシになっているんだ」
足塚おさむ「俺がやったことなんて 些細なことかもしれない」
足塚おさむ「でも、それをよしおや他の漫画家が 引き継いでくれている」
足塚おさむ「くくく・・・」
足塚おさむ「祈りは波及していき、 人類は少しずつ善くなっている」
足塚おさむ「ゆっくり、亀の歩みのように・・・」
足塚おさむ「過去生きた人たちの想いは、 必ず遠い未来で結ばれる」
足塚おさむ「よしおも俺のバトンをつないでくれる」
足塚おさむ「そう、信じている」
足塚おさむ「だから、心配は何もないさ・・・」
足塚おさむ(身体が維持できない・・・)
足塚おさむ(未練はなくなった・・・ということか)
足塚おさむ「よしお・・・」
足塚おさむ「俺はまだお前の漫画を 読んでいたかったよ」
足塚おさむ「・・・時間がきたようだ」
足塚おさむ「さよなら・・・」
足塚おさむ「そして」
足塚おさむ「ありがとな!」

〇CDの散乱した部屋
よしお「先生?」
よしお(なんつー夢見たんだ俺は・・・)
よしお「先生!」
よしお「おかしいな・・・ 一人でどっか行ったのか?」

〇CDの散乱した部屋

〇学校脇の道

〇土手

〇歌舞伎町
よしお「おかしい・・・ どこにもいない」
よしお「嘘だろ・・・」
よしお「本当に消えちまったのかよ!!」
よしお「お礼だってまともに言えてないのに」
よしお「あのクソエロガンコ親父!!!」
よしお「ちくしょう・・・」
よしお「ちくしょう!!!」

〇CDの散乱した部屋
よしお「・・・」
よしお「漫画?」
よしお「先生が描いたのか?」
よしお「タイトルは・・・」
よしお「『よしおの漫画』・・・か」
よしお「って、俺?」
  そこには──
  俺と足塚先生の出会いが描かれていた
  ただただ俺たちの出会いと
  日常が──描かれていた
よしお「ははっ 出会いはエロ本だったんだよな」
よしお「落選して八つ当たりして・・・ この頃の俺は本当に未熟だった」
よしお「銀二もちゃんと出てきてるよ」
よしお「月例賞で努力賞獲ったお祝いで、 焼肉したんだったな」
よしお「先生、食べられないからブチギレて めちゃめちゃ不機嫌だった」
よしお「夜中まで語り合う 漫画談義もおもしろかったなぁ」
よしお「そういえば、先生は何で急に アイスを好きになったんだっけ?」
よしお「そうだ、お詫びにって 銀二が持ってきたんだ」
よしお「初めて現代のアニメ観たときのあの顔 アゴが外れそうだったなぁ」
よしお「・・・」
よしお「先生・・・」
よしお「俺はもっと先生と・・・!」
足塚おさむ「呼んだ?」
よしお「え?」
足塚おさむ「ん?」
よしお「は?」
足塚おさむ「お?」
よしお「どゆことー!!!!」

〇CDの散乱した部屋
足塚おさむ「いや、そのアレだ・・・」
足塚おさむ「未練なくなったから消えるんかなと 思ったんだけど」
足塚おさむ「新しい未練ができちゃった」
よしお「ようやく気楽な 独り暮らしに戻ると思ったのに」
足塚おさむ「そんなこと言って泣いてたじゃないか 寂しいって・・・」
よしお「言ってません」
よしお「でも、新たな未練って何すか?」
足塚おさむ「あ?」
足塚おさむ「ア、アイス食いたい・・・ 100本ほどな!」
よしお「先生も大概バカっすね!!」
足塚おさむ「アイスを舐めるな!!」
足塚おさむ「いや、アイスは舐めるものか・・・」
銀二「どしたんすか? にぎやかっすね!」
よしお「いやぁ、何でも!」
足塚おさむ「お、ちょうどいい」
足塚おさむ「よしお、身体貸せ!」
よしお「え?」
よしお「バカ野郎!」
銀二「いだッ!!」
よしお「100万円賭けて勝負だこの野郎!!」
銀二「はぁ!?」
足塚おさむ「よし!」
銀二「望むところっすよ!」
銀二「今度は負けないっすからね!」
よしお「えぇええええええ!!!」
足塚おさむ(新しい未練・・・)
足塚おさむ(まさか「よしおの漫画を読みたい」とは 本人には口が裂けても言えんな)
  おしまい

次のエピソード:後日談 銀二の漫画1

コメント

  • イッキ読みしちゃいました!色んな創作論など知れてタメになりました&こういうタイトル回収、大好きです!🤣

  • リズミカルに読めて一気読みしました!お疲れ様でした✨
    先生の願い、いつか叶うといいなあと思いました!ストーリーの作り方も学べて楽しい作品でした😊

  • 完結お疲れ様でした!
    先生とよしおの掛け合いが面白く、何日かにかけて読むはずがテンポが良くて一気に読んじゃいました!
    楽しい時間を過ごせたことに感謝します!

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