托卵む〜たくらむ〜

ゆきんこ

第一話 カッコウの托卵(脚本)

托卵む〜たくらむ〜

ゆきんこ

今すぐ読む

托卵む〜たくらむ〜
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇一戸建て

〇CDの散乱した部屋
百寿(もず)「雛、何故門限を守れないんだ!!」
百寿(もず)「そんなところだけは、別れたママにソックリだな!」
雛(ひな)「またそれ!? 怒る度に出ていったママを持ち出すの、やめてよ!!」
雛(ひな)「大体私、パパにもママにも似ていないじゃない!」
雛(ひな)「ホントに私、パパとママの子供なの!?」
  17年間男手ひとつで大切に育てた娘が、朝帰りした日
  俺の胸の中でずっと抑えていた
  ある疑念が、密かに蠢くのを感じていた。

〇店の入口
  17年前

〇おしゃれなレストラン
  クラブで一目惚れして、
  一晩を共にした郭子に呼び出されたのは
  その3ヶ月後だった。
郭子(かっこ)「アタシ妊娠しちゃったのよ〜。 コレ、胎内写真ね。 ねえ、どうするぅ?」
百寿(もず)「も、もちろん父親としての責任は取るよ!」
百寿(もず)「結婚、してください!!」
郭子(かっこ)「悪阻も酷いし〜 仕事は辞めて専業主婦になるわね」

〇汚い一人部屋
百寿(もず)「ただいま」
郭子(かっこ)「おかえり〜。 お腹空いた〜。 今日のお弁当何?」
郭子(かっこ)「アヒャヒャヒャヒャ!」
郭子(かっこ)「ありえな〜い!! 何この動画!」
百寿(もず)「郭子・・・ 働いてないんだから、少しは掃除したり、料理作ったりしてくれないかな?」
百寿(もず)「あと、アルコールは赤ちゃんに良くないんじゃないの?」
郭子(かっこ)「男には分からないでしょうね!」
郭子(かっこ)「悪阻の苦しさを紛らわすのに、アルコール入れないとやってられないわよ!」
郭子(かっこ)「掃除しろ? この部屋が狭すぎるのよ! もっと広い部屋に住ませてよ!!」
百寿(もず)「わ、分かったよ。 生まれてくる子供のためにも、 ローン組んで一軒家に住もう」
百寿(もず)(家に居る時間は減るけど、 副業でバイト掛け持ちすれば、 もう少し楽になるかも!)

〇一戸建て
郭子(かっこ)「中古だけど、まあまあ広いわね〜」
百寿(もず)(40年ローンだけど、買って良かった! 郭子の機嫌も直ったし、子供が産まれたら、良い家庭を作るんだ!!)
  だけどそう簡単には
  期待通りにはならなかった。

〇CDの散乱した部屋
雛(ひな)「オギャアオギャア」
百寿(もず)「郭子、雛が泣いているぞ!」
郭子(かっこ)「なんでだろう~ さっきミルクあげたのに〜」
郭子(かっこ)「てかぁ、 赤ちゃんって泣く生き物だからぁ 放っておいたらぁ?」
郭子(かっこ)「だいたい産んでから気づいたけどぉ、 アタシ赤ちゃん苦手かもぉ〜」
郭子(かっこ)「今夜、久しぶりにカナたちと推しのライブに行くから〜 後任せた〜」
百寿(もず)「そ、それでも母親かっ!」
郭子(かっこ)「ちょっと・・・ 家庭内モラハラはやめてよ!」
百寿(もず)「モ、モラハラ!?」
郭子(かっこ)「あーあ。 顔だけしか取り柄の無い、貧乏な百寿と、結婚なんてしなきゃ良かった!」
郭子(かっこ)「雛なんて、堕ろせば良かった〜」
百寿(もず)(育児ノイローゼってやつかな?)
百寿(もず)「ゴメンな 俺が悪いんだ。 もっと育休貰って、郭子を助けるよ」

〇オフィスのフロア
百寿(もず)「ハイ、お待たせしました株式会社〇〇石油の百寿です」
???「アンタの奥さん、 私の婚約者と浮気しているよ」
百寿(もず)「何のイタズラだ?」
百寿(もず)「毎日、雛の世話に追われている郭子が浮気なんてする暇は無いよ」
  そのイタズラは毎日続き、いよいよ俺も郭子に疑いの目を向け始めた時に、事件は起きた。
百寿(もず)「ハイ・・・」
百寿(もず)「エッ、警察!? ハイ、郭子は私の妻ですが・・・」
百寿(もず)「雛が、車内で熱中症!?」

〇病院の待合室
百寿(もず)「どういうことだよ! ラブホテルの駐車場の車内に雛を3時間も残して、熱中症にさせただなんて!!」
百寿(もず)「医者から虐待の通報されて、警察から電話が来たんだぞ!?」
史也(ふみや)「も、申し訳ありません!」
郭子(かっこ)「謝る必要ないわよ」
郭子(かっこ)「そうやって貴方が毎日モラハラするから、息苦しくて浮気したのよ!」
百寿(もず)「話しをすり替えるな! 雛を殺すところだったんだぞ!? アタマおかしいよ、お前は!」
郭子(かっこ)「ウウッ・・・ もう愛の無い生活はたくさん。 別れましょう」
百寿(もず)「ああ、勝手にしろ! その代わり慰謝料と親権は貰う。 お前なんかに雛は渡さないからな!!」
史也(ふみや)(俺は、ただの遊びのつもりだったのに!)
郭子(かっこ)(ラッキー! これでまた、自由の身ね〜)

〇CDの散乱した部屋
雛(ひな)「今日のご飯は?」
百寿(もず)「遅くなって、ゴメンな。 ほら、いつもの・・・」
雛(ひな)「パパの作るカップ麺、ひなだ~いすき♥」
百寿(もず)(雛は素直に育っている)
百寿(もず)(だけど、雛って俺に似ている所がまるで無いんだよな)
百寿(もず)(どちらかといえば郭子に似ているところもあるかもしれないが、郭子のように美人ではない)
百寿(もず)(アイツ、まさか整形美人だったのか・・・?)

〇幼稚園の教室
保育士「何度もお電話したんです! 雛ちゃんが38℃の熱出してるって・・・」
保育士「連絡はちゃんと取れるようにしてくださらないと、今後の保育預かりは難しいですよ、お父さん!」
百寿(もず)「も、申し訳ありません・・・ 商談中は電話に出られなくて・・・ 急いで来たんですが、スミマセン!」
雛(ひな)「パパを怒らないで!!」
保育士「雛ちゃん・・・!」
雛(ひな)「パパ、お仕事たいへんなのに、 お迎え来てくれて、ありがと!」
百寿(もず)(ゴメンな、雛。 もっと、俺がしっかりしなきゃ)

〇飾りの多い玄関
雛(ひな)「パパ、今日も遅いの?」
百寿(もず)「悪いな。 お客様が遅い時間にしか家に居ないというから、しょうが無いんだ」
雛(ひな)「仕事だもんね!頑張ってね!!」
百寿「行ってきます」
雛(ひな)「・・・今日は居て欲しかったな」

〇CDの散乱した部屋
百寿「ただいまー」
百寿(もず)「さすがに寝ているかな」

〇部屋のベッド
百寿「雛が居ない!!」
百寿(もず)「ど、どこへ行ったんだ?」
百寿(もず)「電話もLIN●も通じない!」
百寿(もず)「一体、何処に・・・まさか、郭子が?」
百寿(もず)「オイ、雛は何処だ!」
郭子「なによう。 久しぶりに電話してきたと思ったら・・・相変わらずなのね〜」
郭子「悪いけど、私が雛を連れていくワケないでしょ〜? あんな父親に似て、ブサイクな娘を!」
郭子「あの子ももう、高校生なんだから朝帰りくらいするでしょ? アナタは心配しょ・・・」
  ガチャ
百寿(もず)「相変わらず胸糞悪いオンナだ!」
  そうして一睡もできずに、俺は雛を待って夜を過ごした。

〇一戸建て
  雛は、朝方帰ってきた。

〇CDの散乱した部屋
雛(ひな)「パパ・・・ ホントに私、パパとママの子供なの!?」
  その言葉は、俺の心の奥を鋭い刃で
  エグり出してきたかのようだった。
雛(ひな)「やっぱり・・・私は養子? だからパパは、私の誕生日のお祝いをしてくれないんだ」
百寿(もず)「あ・・・」
百寿(もず)(仕事が忙しくて、一度も誕生日をお祝いしたことがない・・・)
雛(ひな)「昨日はユキたちがお祝いしてくれて、スゴク、スッゴク楽しかったの!」
雛(ひな)「でもさぁ、楽しい気持ちで居ても、誰もいない家に帰って1人になったら」
雛(ひな)「余計に寂しくなると思ったら、帰りたくなくなっちゃったんだよ」
雛(ひな)「ウワァァァ〜ン!!!」
百寿(もず)「良い父親になりたくて、 男手ひとつで娘を育てて、郭子を見返してやろう──そう思っていたのに」
百寿(もず)「ごめん、 仕事ばかりして、雛の気持ちに気づいてあげられなかった」
百寿(もず)「父親失格だよ」

〇部屋のベッド
百寿「泣き疲れてよく寝ている」
百寿(もず)「本当に、ゴメンな」
百寿(もず)「このDNA検査薬」
百寿(もず)「これで、雛が本当に俺の娘かハッキリする」
  俺はずっと、最後に郭子と話した内容が気になっていた。
百寿(もず)(あの時、郭子は 『父親に似てブサイク』って言ったんだ)
百寿(もず)(俺は郭子に『顔だけね』と言われてきたのに、何故かあの時は違う表現だったのかが気になる)

〇タワーマンション

〇シックなリビング
郭子(かっこ)「あら、慰謝料以外で私に会いに来るなんて、珍しいじゃない」
郭子(かっこ)「何よ、この手紙」
百寿(もず)「俺と雛の親子関係が、 90%無いという診断書だ」
百寿(もず)「俺と雛は他人ということさ」
郭子(かっこ)「ワザワザ調べる〜? 性格悪っ・・・」
百寿(もず)「17年前、俺と一夜を過ごした時期に、違う男の子供を妊娠したのに、」
百寿(もず)「あたかも俺が妊娠させたように振る舞って、俺と結婚したんだな!?」
郭子(かっこ)「それで?」
百寿(もず)「それでって、お前!?」
郭子(かっこ)「だから何よ?」
郭子(かっこ)「雛を引き取れとでも言う〜? 嫌よ〜!今のアタシの彼は、初婚の資産家なのよ」
郭子(かっこ)「雛ももうすぐ高校卒業だし、1人暮らしでもさせなさいよ」
百寿(もず)「俺が、この17年間どれだけ悩んで、苦しんで子育てしてきたと思ってるんだ・・・!?」
百寿(もず)「許せないッ!!」

〇シックなリビング
郭子(かっこ)「も、百寿? 私を殺すつもりなの?」
郭子(かっこ)「やめてよ── アタシ今・・・」

〇血しぶき
  お腹に赤ちゃんがいるの──

次のエピソード:第ニ話 モズの早贄

コメント

  • 郭子のトリプルレッドカードばりの悪女っぷりが逆に清々しいですね😆徹底的に仕返ししてほしい✊

  • こんばんは!
    まずは雛のインパクトが凄すぎて効果音のドーン!がフライングして頭の中で流れました(笑)

    そこからどんなお話なんだろうと思って面白くて気づいたら終わってました^^

    ネーミングとタイトル、メッセージ性が強そうでわくわくです

  • こ、これは!誰がどういう設定で使っているところに出会うんだろう、と思っていた衝撃の立ち絵とまさかここで出会うとは。しかも良い子~!ネタに使われる未来しか見えなかったので、なんだか「良かったね」という気持ちです。
    百寿さんが「ブサイク」自体は気にせず育てている様子なのが良いですね。
    最後、刺してないですよね!?続き読んできます。

コメントをもっと見る(13件)

成分キーワード

ページTOPへ