エピソード6(脚本)
〇CDの散乱した部屋
よしお(初めて・・・初めて 俺の描いた漫画が評価された)
よしお(評価の為に描いてきた訳じゃないけど 誰かに楽しんでもらえたってことでもある)
よしお「よっしゃぁあああああ!!!」
足塚おさむ「浮かれているな」
よしお「先生!」
足塚おさむ「よしお、俺は気づいたことがある」
よしお「はい」
足塚おさむ「俺が幽霊になったのは、 強い心残りがあったからだ」
よしお「心残り・・・」
足塚おさむ「おこがましいかもしれんが、 俺は自分の漫画が祈りとなって・・・」
足塚おさむ「人々の未来を変えると思っていた」
よしお「事実、先生の物語は 死後100年近く経っても残っています」
足塚おさむ「残ることは大事だ」
足塚おさむ「だが、人は変わらなかった」
足塚おさむ「100年経ってもなお戦争を続けている」
足塚おさむ「俺はまだ漫画を描かなければならない」
よしお「いつでも俺の体を借りてください!」
足塚おさむ「いや・・・」
足塚おさむ「お前の体を寄こせ 未来永劫に・・・だ」
よしお「え?」
足塚おさむ「お前より俺が漫画を描いたほうが、 世のためになる」
よしお「・・・」
よしお「先生の作品は多くの人に影響を与えました 俺だってそうです」
よしお「俺より先生が描いたほうが・・・ 確かに良いのかもしれないっすね」
よしお「ど、どうしたんすか? いきなり壁殴って・・・」
足塚おさむ(いままですり抜けていたのに・・・ やはり想いがこもっていると違うのか)
足塚おさむ(こいつは未だに阿呆なことを・・・ いつまで経っても変わらないな)
足塚おさむ「次の足塚おさむ賞で俺と勝負しろ」
よしお「え?」
足塚おさむ「そこで俺が勝てば、 お前の身体は俺のものだ」
よしお「・・・」
足塚おさむ「分かったか?」
よしお「分かったも何も俺は・・・ 先生の提案には賛成で・・・」
足塚おさむ「やれ」
足塚おさむ「俺と勝負しろ」
よしお「・・・」
よしお(すごい気迫だ)
足塚おさむ「じゃないと俺は悪役じゃないか 白黒つけて身体を乗っ取らせてくれ」
よしお「・・・」
よしお「分かりました、 それで先生が納得するならやりましょう」
足塚おさむ「お前の最後の漫画になるかもしれん 全力で描けよ」
よしお「・・・はい」
〇テーブル席
銀二「ここのケーキマジでうまいんすよ!」
よしお「さすが良い店知ってるね」
銀二「ところで相談って何すか?」
よしお「次の足塚賞に挑戦するんだ」
銀二「いっすねー!」
よしお「もっと俺の漫画をおもしろくしたい」
銀二「読みあいやりますか?」
よしお「お願いできるか?」
銀二「もちろんすよ!」
よしお(銀二、何か吹っ切れたのか?)
よしお(いつものツンツンより全然いいじゃん)
銀二「クソつまんないっすね★」
よしお「根っこ変わってねぇ!!」
〇テーブル席
よしお「なるほど・・・ ギャップを作るといいのか」
銀二「エンタメの基本は 読者の感情を振り回すことすからね」
銀二「ギャップを使えば、 人の心は動くっす」
銀二「でも、注意点があるっす」
よしお「注意点?」
銀二「ギャップは大きいほど人の心を 動かしますが納得感が小さくなるっす」
よしお「大きいギャップほど、 綿密に伏線を張る必要があるのか・・・」
銀二「さすが三十年以上生きてると 察しがいいっすね!」
よしお「俺は二十代だ!!」
銀二「またまたぁ」
よしお「もはやわざとだよね?」
〇CDの散乱した部屋
よしお「よし! 銀二のお陰でよくなったぞ!」
よしお「もっと練っておもしろいものを描くぞ」
足塚おさむ「描いているようだな」
よしお「先生! 読んでみてください!」
足塚おさむ「・・・」
足塚おさむ「この程度の漫画で・・・ 俺の全力に勝てると思ったのか?」
よしお「え?」
足塚おさむ「クソの足しにもならんな」
よしお「え?」
よしお「何で破いたんですか!?」
足塚おさむ「クソだからだ」
よしお「本当にそんな理由で・・・」
よしお「先生・・・ 今回ばかりは俺・・・許せないっす」
よしお「川に原稿落とした時は 怒ったじゃないですか!」
よしお「そのあんたが原稿を粗末に扱うなんて 支離滅裂ですよ!」
足塚おさむ「・・・」
よしお「何とか言ったらどうなんだ!」
足塚おさむ「ふん・・・」
よしお「ち・・・ちくしょう!」
〇公園のベンチ
よしお「・・・」
よしお(俺は先生を誤解していた・・・)
よしお(何だかんだで 悪い人じゃないと思っていた)
よしお(思いたかった!)
よしお(それが何だ・・・ あの敬意のない態度は・・・)
よしお(人間の愚かさに怒ってると言いながら、 俺の身体乗っ取ろうとしてるし)
よしお「くそっ! 何か腹が立ってきたぞ!」
よしお「相手は自分勝手なクソ野郎だ」
よしお「絶対に負けてやるか!」
〇CDの散乱した部屋
よしお(もうこんな時間か・・・)
よしお(描くのに夢中で気づかなかった・・・)
よしお(もうそろそろ限界だ・・・ 寝るか・・・)
よしお「いや・・・」
よしお(あの人の顔思い出したら 怒りがふつふつと・・・)
よしお(一度だけでもあのクソ漫画家を ぎゃふんと言わせてやるんだ!)
銀二「まだ描いてるんすか!?」
よしお「お、銀二か?」
銀二「まさか2日前のあの時から?」
よしお「3日目だよ」
銀二「・・・」
銀二「もう休みましょう!」
銀二「効率も落ちますし」
よしお「離せ・・・」
銀二「え?」
よしお「俺は描く・・・」
よしお「描かないといけないんだ!!」
銀二「一体、どうしちゃったんすか?」
よしお「ごめんな・・・」
よしお「でも、俺のことは心配しないでくれ」
銀二「いやいや、これ以上やったら 倒れちゃいますよ」
よしお「絶対に・・・絶対に負けない漫画を 描かないといけないんだ!!」
よしお(あのエロボケじじいの足塚に!!)
銀二(俺との再戦、 そこまで真剣に考えてくれてたんだ・・・)
銀二「じゃ、俺もここで描くっす」
銀二「ライバルに倒れられちゃ 困るっすからね!」
よしお「勝手にしろ」
〇田舎の駅舎
よしお(先生は俺が寝ている間に俺の体を使い、 漫画を描き上げたと言っていた)
よしお(だからどんな漫画を描いたのかは 分からない・・・)
よしお(でも、知ったことか!)
よしお「どんな漫画だったとしても負けない」
よしお「・・・」
よしお(それだけのおもしろい漫画が描けた!!)
よしお(だから・・・自信を持て・・・!)
よしお「でも・・・」
よしお(何かがおかしい・・・)
よしお(一体、何が・・・)
よしお「まさか・・・」
つづく
先生にはきっと考えあっての行動!だから、よしおも先生を信じて‼︎