鎖女の話をするな

鳥谷綾斗🎩🦉(たまに風花ユク❄️)

第7話/ずっと一緒にいたいだけ(脚本)

鎖女の話をするな

鳥谷綾斗🎩🦉(たまに風花ユク❄️)

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〇SNSの画面
  『#鎖女』でタグ検索する、と。
ツイッター「#鎖女 ヤバない? 最初に鎖女の投稿した(たぶん)ツイ主、 最後のつぶやきから音沙汰ないんだけど」
ツイッター「#鎖女 ツイ主のリア友なんだけど、DMも LINEも返ってこない」
ツイッター「#鎖女 マジでやられちゃった、とか」
ツイッター「#鎖女 死んだってこと?」
ツイッター「#鎖女 いやわからないよ。 だって話では、『恐ろしい目に遭う』だけだったし」
ツイッター「#鎖女 その『恐ろしい目』って、具体的に何なの?」
ツイッター「#鎖女 さあ・・・」

〇女の子の部屋
莉々子「・・・どーでもいいよ」
莉々子「鎖女の『恐ろしい目』なんて、どうでもいい・・・」
莉々子((・・・だって))
莉々子((もっとずっと恐ろしい予感がしてるから))
莉々子「・・・柏木先輩」
莉々子((あの後、先輩はエミリと一緒に帰った))
莉々子「一応『一人で帰れるか?』って訊いてくれたけど、明らかに困り顔だった」
莉々子「(あんな顔されたら、『一人じゃ帰れません』なんて言えないよ・・・!!)」
莉々子「・・・」
莉々子「やだよ・・・」
莉々子(『先輩、明日の朝は』)
莉々子(・・・『あたしを迎えに来て、くれますか?』)
莉々子「・・・!!」
莉々子((ダメだ、こんなライン送れないよ))
莉々子「・・・」
莉々子「眠れない・・・」
  ベッドからむくりと起き上がって、部屋を出た。
  深夜2時。家族はもう寝ている。
  スマホ片手に部屋から出た。

〇シンプルな玄関
莉々子の母「きゃあ! 莉々子!?」
莉々子の母「びっくりした、なんで玄関で座っているのよ! 何時からここにいるの!?」
莉々子「・・・2時」
莉々子の母「はあ!?」
莉々子((先輩・・・迎えに来ない))
莉々子「せっかく可愛い部屋着、買ったのにな・・・」
  胸が潰れそうだ。

〇学校の校舎
莉々子((ああ、やっぱりなぁ))
柏木の友人「おっ、柏木ー!」
柏木の友人「新しい彼女かー? 美人じゃん!」
柏木「だから、そういうのやめろって!」
エミリ「・・・ッ!」
莉々子((先輩、バイクの後ろにエミリを乗せてる・・・))
莉々子「(昨日までは、あたしだったのに・・・)」
  バイクが走り去る。
  柏木先輩は、あたしに気づかなかった。

〇教室
ユウナ「莉々子!」
ユウナ「さっき見ちゃったんだけど、何あれ!? なんで柏木先輩がエミリといるの!?」
ユウナ「昨日報告なかったけど、あの後何があったのよー!」
莉々子「ユウナ・・・」
  説明する前に、エミリが教室に入ってきた。
エミリの友達「エミリ、顔色悪いけど大丈夫?」
エミリ「うん・・・」
エミリの友達「元気出しなよ! 確かに怖いだろうけど、そのおかげで柏木先輩とお近づきになれたんだからさ!」
エミリの友達「もしまた鎖女が現れても、柏木先輩が守ってくれる──」
エミリ「ダメ!!」
エミリ「・・・鎖女の」
エミリ「話を、しないで・・・」
エミリの友達「ごめん・・・」
ユウナ「えぇ・・・」
ユウナ「マジで・・・そんなことある?」
莉々子「ユウナ、理解早い・・・すごい」
ユウナ「いいの? 莉々子」
莉々子「いいも悪いもないよ・・・」
莉々子「先輩は、ただ、狙われている人を守ってるだけだもん」
莉々子「(・・・そう、『あたしだから』守ってたわけじゃない)」
  それが柏木先輩の、『使命』だから

〇赤(ダーク)
  鎖女に関する調査書
  話をした者の前に現れる
  あくまで『話す者』だけ。
  『聞いただけ』では現れない。
  話をした者に強い怒りを示す。
  浄化は可能。
  だが何度も戻ってくる。(何故?)
  ネットや遭遇した者の証言によると、
  一度話しても、口に出さなければ、
  二度と現れなかった。
  逆に言えば、
  話さえしなければ、鎖女は現れない。
  引き続き、
  鎖女の話を広めないよう警告しつつ、調査を続行する。

〇教室
柏木「──莉々子」
莉々子「せっ、先輩!?」
莉々子((うそ、先輩があたしのところに来た!))
莉々子((戻ってきてくれたの!?))
  隣にいるユウナが、ぎゅっと手を握ってくる。
  でも、
柏木「おそらく、もうおまえは大丈夫だ」
莉々子「・・・へ?」
柏木「鎖女は、莉々子の前にはもう現れない。 標的が変わったからな」
莉々子((・・・何言ってるの、先輩))
柏木「今の標的は、彼女だ」
莉々子「エミリ・・・」
エミリ「・・・」
莉々子((どうして?))
莉々子「(どうしてエミリが、先輩の隣にいるの?)」
莉々子「(だって昨日まで先輩の隣にいたのはあたしで、・・・あたしだったのに!)」
柏木「だからもう安心していい。 数日間だったが、世話になった。ありがとう」
莉々子「──!!」
エミリ「先輩、そろそろ・・・」
柏木「ああ、帰ろう」
  何ひとつ言葉を返せないまま、
  先輩はエミリと教室を出て行った。
ユウナ「莉々子、えっと、なんて言ったらいいか・・・」
  ガタン!
  
  足から力が抜けて、椅子に座り込んだ。
莉々子((・・・今のエミリ、笑ってなかった?))
莉々子「(え、笑ってたよね?  柏木先輩が自分のところにいったから)」
莉々子((・・・はあ?))
  ギュッとスカートを握りしめる。
  頭の中で、さっきのエミリの表情がどんどん得意げになっていく。
莉々子「(あたしが先輩に見放されたから! 笑ったの!?)」
ユウナ「莉々子、ねえ大丈夫?」
莉々子「ああ・・・うん」
ユウナ「あのさ、昨日の部活のことなんだけど」
莉々子((何? こんな時に))
ユウナ「うちの演劇部、映画のエキストラに出ることになったの」
ユウナ「それで主演がね、私の推しなんだよ!」
莉々子「えっ!?」
ユウナ「すごくない? エキストラだけど、私の夢、叶ったんだ」
ユウナ「共演自体も嬉しかったけど、今までの自分の頑張りが、報われたような気がしたんだ」
ユウナ「だからさ、莉々子からも行動してみるのって、アリだと思うんだ」
莉々子「行動・・・」
ユウナ「うん。結局先輩は、使命だから今はエミリを守ってるんでしょ?」
ユウナ「だったらそれ以外のところで仲良くなればいーじゃん!」
ユウナ「何かしてくれるのを待つんじゃなくてさ、 莉々子の方から行動起こしてみたら?」
莉々子「・・・」
莉々子「あたし、・・・ちょっと行ってくる」

〇学校の駐輪場
莉々子((先輩は、鎖女の標的が変わったから安心しろって言った))
莉々子((でも、あたしは──))
莉々子((そんなのいらない!!))
  校舎裏の駐輪場。
  先輩とエミリは、すぐに見つかった。
エミリ「柏木先輩、すみません。 送ってもらって・・・」
柏木「気にするな。俺が心配なだけだ。 バイトは何時からだ?」
エミリ「四時半です」
柏木「じゃあ急ごう」
莉々子「!?」
  先輩が、エミリにヘルメットを被せる。
  あたしの時と同じように。
  先輩の優しい指が、あたしじゃない女に触れ、て。
柏木「バイトは何時までだ? 終わったら迎えに行く」
エミリ「そんな、申し訳ないです」
エミリ「・・・8時です。 ごめんなさい、やっぱり怖くて」
柏木「だから気にするな。 承知した。終わったら、さっき教えた番号に連絡をくれ」
エミリ「はい・・・」
莉々子((・・・今すぐエミリをぶん殴りたい))
莉々子((でも、動けない))
  バイクが遠ざかっていく。
  立っていられなくて、あたしは地面に膝をついた。
莉々子((・・・やだ))
莉々子((いやだよ、先輩!))
莉々子((エミリを──あたし以外の女を守らないで))
  先輩はあたしの、──なのに
莉々子「どうしよう、どうしたらいいの・・・」

〇学校の廊下
  柏木先輩のそばにいたい。
  また一緒に登校して下校したい。
  ずっとそばにいてほしい。
  だって柏木先輩がいないと、あたしの世界はこんなにも暗くて色がない。
  そのためには、
莉々子「ねえねえ、面白い話があるの」
クラスメイト「えっ、なあに?」
  そのためなら──
莉々子「『鎖女』っていう話なんだけど」
  もう一度遭遇すればいい、鎖女と。

次のエピソード:第8話/広まってしまえ、鎖女

コメント

  • ユウナちゃん、心優しいところも一生懸命なところも、最高の子ですね!莉々子ちゃんよりも(小声)
    そんな莉々子ちゃん、傷心のあまりまた‥‥、柏木先輩>鎖女の恐怖 なのですね

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