ネットロアの怪人

芳川見浪

ネットロアの怪人が産まれた日(脚本)

ネットロアの怪人

芳川見浪

今すぐ読む

ネットロアの怪人
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇サイバー空間
噂好きの子「ロアイーターて知ってる?」
噂好きの子の友人「なにそれ?」
噂好きの子「ネットロアを食べるネットロアなんだって」
噂好きの子の友人「ふ〜ん、ネットロアて?」
噂好きの子「そこから? ネットから産まれた都市伝説をネットロアと呼ぶんだよ」
噂好きの子の友人「つまりロアイーターてのは、ネットから産まれた都市伝説を食べるネットから産まれた都市伝説てこと?」
噂好きの子「そゆこと」
噂好きの子の友人「で、そのロアイーターがどうしたの?」
噂好きの子「昨日、街の公園にでたらしいよ」

〇公園のベンチ
公園に現れたネットロア「Gyaaaaaa!!」
  夜も更けて誰もが寝静まる頃、深夜の公園にて身も毛もよだつ程おぞましい怪物が姿を現した。
  耳障りな叫び声を上げるその怪物はじっと目の前にいる男性を見つめている。
夜更かし気味な男性「うわああああ!! ば、バケモノだ!!」
  この男性はただコンビニまでショートカットしようと公園を横切っただけなのだが、不運にもこの怪物とでくわしてしまったのだ。
夜更かし気味な男性「た、たす、たすけ」
公園に現れたネットロア「Husyurrrrr」
  本当なら悲鳴を上げたいところなのだが、どういうわけか声帯が機能せず断続的な言葉しかでない。
  その間にも怪物はゆっくり距離を詰めてくる。
夜更かし気味な男性「あ、あああ、逃げ・・・・・・足、足が」
  ようやく逃げるという選択肢が出てきた男性、しかし腰が抜けたのか全く足に力が入らない。
公園に現れたネットロア「Juru」
  最早食べる気なのだろう、怪物が舌なめずりをしたと同時に、男性との間に黒い影が落ちてきた。
ロアイーター「行って」
夜更かし気味な男性「え?」
バロッソ「聞こえなかったのか? さっさと行けと言ってるだろ!」
夜更かし気味な男性「うわあああ! 鳥が喋ったあああ!」
バロッソ「今更喋る鳥なんかにビビってんじゃねぇよ! 早くしねえとてめぇの尻にその辺の枝ぶっ刺して開発すっぞ!」
夜更かし気味な男性「ひぃぃ」
  目の前に現れた人型に神秘性を見出したのか、それとも尻のためなのかはわからないが
  いつの間にか動くようになった足を駆使して男性は公園から出ていった。
ロアイーター「バロッソ、口が悪いよ」
バロッソ「あーあー、鳥頭だからもう忘れたー」
  忘れてはいない。
バロッソ「それより早くアイツやっつけちまいな」
ロアイーター「わかってる。 速攻で終わらせるよ」
  突然現れた謎の人物に恐れを感じたのか、怪物が一歩後ずさる。
ロアイーター「今だ!」
公園に現れたネットロア「Bugyyy」
バロッソ「いいぞ、奴に物理は有効だ!」
バロッソ「殴れ殴れー」
ロアイーター「バロッソうるさい」
  文句を言いながらも殴る手は止めない、怪物は手も足もでないまま追い詰められていった。
バロッソ「よぉしトドメだ!」
  別にバロッソの声に呼応したわけではないが、ロアイーターは腰を下ろして拳を脇に付けて突き出す構えをみせる。
公園に現れたネットロア「Ga,ga」
ロアイーター「逃がさない」
  逃げる怪物を捉えるため、腰だめにした拳を前に突き出した。
  その瞬間、拳からエネルギーが放出され怪物をとらえる。
  拳から放出されたエネルギーは怪物を捉えてその身体を微塵も残さず消し飛ばした。
バロッソ「決まったな、必殺『拳キャノン』」
ロアイーター「え、あれそんなダサい名前だったの? いやだ」
  怪物が消えたあたりでノイズが走ったかと思うと、粒子が遅れて現れてバロッソの中へと吸収されていった。
バロッソ「ご馳走様でした。 中々美味いネットロアだったぞ」
ロアイーター「じゃあ帰ろうか、私もこの姿でいるの疲れたし」
相田 マカ「ふぅ」
  ほんの一瞬の光がロアイーターを包んだかと思うと、次の瞬間には一人の少女が現れた。
相田 マカ「早く帰ってテスト勉強しなきゃ」
バロッソ「一夜漬けなんてするもんじゃないぞ?」
相田 マカ「うるさいなぁ、バロッソが私をロアイーターにしたからこんな苦労してるんでしょ? 女子高生は大変なんです」
バロッソ「そこは有難いと思っているが そもそもお前は元から勉強してないだろ」
相田 マカ「ぐっ」
相田 マカ「とにかく帰るよ」
バロッソ「変身したままの方が早かったんじゃないか?」
相田 マカ「あっ」

〇学校の廊下
  相田マカがロアイーターに初めて変身したのは夏の暑さが残る秋の事だった。
学校の先生「相田さん、ちょっといいかしら?」
相田 マカ「はい、何ですか?」
学校の先生「4時限目が始まる前に美術準備室から資料を持ってきてもらいたいの」
相田 マカ「え、はい。いいですよ」
学校の先生「ごめんなさいね、資料は入ってすぐ目の前の箱にあるから」
相田 マカ「重いやつですか?」
学校の先生「そんなに重くないわよ」

〇美術室
相田 マカ「めちゃくちゃ重いやつじゃん!!!」
相田 マカ「先生の嘘つき!」

〇教室
クラスメイト「あ、ねえ相田さん」
相田 マカ「なに?」
クラスメイト「悪いんだけど掃除当番変わってくれないかな?」
クラスメイト「私この後バイトでさ」
相田 マカ「ああ、うん。いいよ」
クラスメイト「ありがと、じゃーねー」
相田 マカ「バイバイ」
相田 マカ「はぁ」
相田 マカ「(私は知ってるよ、遊びに行くってこと)」

〇明るいリビング
相田 マカ「ただいまー」
お母さん「おかえり」
お母さん「丁度よかったわ、買い物に行ってきて欲しいんだけど」
相田 マカ「えぇー」
相田 マカ「仕方ないなあ」
お母さん「ありがと、お釣りはそのままあげるから」
  少しでもお釣りを稼ぐために、安いところを走り回ったのは言うまでもない。

〇ファンシーな部屋
  マカは頼まれると断れない性格をしている。
  別にどの頼みも喜んでやっているわけではないが、どうにも断りづらいのだ。
相田 マカ「はぁ」
相田 マカ「寝よう」
  趣味のゲームを終わり、ベッドへ寝転がる。
  そのままスマホを弄り、SNSをチェックする。
  最近SNSではネットロアが話題になっている。
  ここしばらくは、話題になったネットロアを調べてから寝るというのが習慣化しており、今夜もそのつもりだった。
相田 マカ「ええと、今日はロアイーターが話題と」
相田 マカ「ほうほう、ロアイーターとはネットロアを食べるネットロアなのね」
相田 マカ「いるよねぇ、この手の話題だとこういうカウンター的なやつが絶対でてくるんだよ」
相田 マカ「しかも結構雑な解説、設定が固まってないんだね」
バロッソ「うむ、どうせ作るならちゃんとしてほしいものだ」
相田 マカ「だよねぇー」
相田 マカ「・・・・・・」
バロッソ「・・・・・・」
相田 マカ「・・・・・・」
バロッソ「・・・・・・」
相田 マカ「鳥が喋ったあああ!」
バロッソ「インコは喋るだろ? それと同じ理論だ」
相田 マカ「いやそんなので騙されないからね!」
相田 マカ「ていうかどこから入ってきたの!?」
バロッソ「そこの窓から」
  言われて窓を見るとなるほど、確かに開いている。
  そういえば帰ってきたときに換気をしたのだが、どうやらそのままにしていたようだ。
バロッソ「ところで君、吾輩とパートナーにならないか?」
相田 マカ「突然だね!」
バロッソ「吾輩、今君が調べていたロアイーターなのだが」
相田 マカ「そうなんだ」
バロッソ「現実世界に発生したネットロアを食べるには人間の力が必要なのだ」
バロッソ「だから吾輩と協力してネットロアから現実世界を守ってほしい」
相田 マカ「わ、私が?」
バロッソ「うむ」
相田 マカ「ネットロアから世界を?」
バロッソ「そうだ」
相田 マカ「寝ていい?」
バロッソ「起きたら返事を頼む」
相田 マカ「わかった、多分もう寝てるし、これは夢だから」
  そうしてマカは眠りについた。
  既に眠っているのに眠るのはなんとおかしいものか。

〇ファンシーな部屋
  朝になった。
相田 マカ「ふわ、むにゅ」
相田 マカ「ふわぁぁ。 おはよう」
  誰にともなく呟いた朝の挨拶。
  まだ少し頭は覚醒してないが、寝起きはスッキリしている。
相田 マカ「うーん、昨日は変な夢見ちゃったなあ」
相田 マカ「なんか私が世界を守るとか」
相田 マカ「あはは、ほんとにそんな事できたら私OKしちゃうよぉ」
バロッソ「それは素晴らしい!」
バロッソ「今日から君はロアイーターだ!」
相田 マカ「え?」
  驚くのも束の間、頭がそれを理解する前にマカの視界が緑色の光で覆われていく。
相田 マカ「え? 夢じゃない?」
相田 マカ「何が起きてるのぉ???」
  今度は数字が現れた。
  映画で見たことあるマトリクスコードによく似ている。
  そしてそれらの光が収まるとようやくマカの視界が元に戻った。
ロアイーター「な、何がおきたの?」
バロッソ「ほれ」
  と鳥がマカに全身鏡を向けた。
  そこには
ロアイーター「な、なにこれええええ」
バロッソ「成功したようだな!」
バロッソ「君は今からロアイーターだ!」
ロアイーター「う、嘘でしょ、バケモノになってる」
  どちらかと言えば怪人、まだ人型なので怪物よりは怪人と呼称した方がいいだろう。
バロッソ「お前はネットロアから産まれたロアイーターとなったのだ」
バロッソ「言わばネットロアの怪人とも言うべき存在」
ロアイーター「怪人て」
ロアイーター「私は元に戻れるの!?」
バロッソ「戻りたいと思えば」
相田 マカ「あ、ほんとだ」
バロッソ「では早速ネットロアを食べに行こうではないか」
バロッソ「この街の河原でネットロアが実体化しているらしい」
相田 マカ「い、今から?」
バロッソ「その通り! 急がねば一般人に被害がでるぞ」
相田 マカ「私も一般人なんだけど!?」
相田 マカ「なんでこうなるのぉ!?」
  こうして、ロアイーターこと相田マカの、ネットロアを駆除する活動は始まったのだ。

コメント

  • ロアイーターが倒したネットロアを美味しく食べるバロッソの正体が気になる。可愛いインコは仮の姿で、最後は中からとんでもないものが出てくるんじゃないかと睨んでいます。取り越し苦労だといいのですが。鳥だけに。 

  • 頼まれたら断れない、なんとなくわかります。
    自分もそんな性格なので…。
    それに私はインコを飼っていて、マカちゃんと共通点を感じてしまいました笑

  • ごくごく普通の女の子、それも少し気の弱そうな子がこんな些細なきっかけから怪人になるなんて、本当に夢物語のようです! 彼女の人の良さが、きっと良い結果を生んでいくんだと信じたいです。

コメントをもっと見る(4件)

成分キーワード

ページTOPへ