⑩最終ステージ・出典紹介(ア)(脚本)
〇おしゃれな教室
山里先生「最終ステージは出典紹介のステージ。 いよいよ、選んでもらったフレーズが載っていた本について語ってもらいます!」
山里先生「紹介役は、「書名と著者名」、「実際にはどんな文脈で使われていたフレーズだったのか」ってことを中心に語ってみてください」
山里先生「本を読まずに選んだ、って場合でも大丈夫。フレーズの前後や目次、裏表紙や帯に書いてある紹介を参考に、分かる範囲で語ってね」
山里先生「話し終わったらディスカッションに入りま す。 紹介役から「何か質問ありますか?」と問いかけて、自由に質疑応答していこう」
山里先生「それじゃ、(ア)のフレーズから。 戸橋の代わりに紹介役を務めてくれた崎本だけど、出典の本は・・・」
山里先生「お、さすが! 読んでるみたいだね!」
めぐる「はい・・・実は。 まだ途中までですけど」
めぐるは手にした本を、みんなに見えるように動かした。
厚いハードカバーの単行本だ。教室じゅうの視線が集まるのが面映ゆい。
めぐる「戸橋くんがフレーズを見つけたのは図書室の文庫本ですが──その本はいま貸出中なので、同じ内容の本を市立図書館で探したんです」
まだ読んでいる途中なので、鞄に入れて持ち歩いていた。
もし機会があれば、友達や先生には見せようかな、くらいに考えていた。
まさかこんな形で発表することになるとは思わなかった。
めぐる「えーと・・・著者名は寺山修司、書名は『寺山修司 少女詩集』です」
教室じゅうがどよめいた。
「少女」とか「詩集」といった言葉と、戸橋くんのキャラクターとの取り合わせが意外だったのだろう。
めぐる「うん。戸橋くんが「少女詩集」って、びっくりですよね・・・ でもほんと、本人はタイトルも見ないで選んだ本なんです!」
めぐる「戸橋くんが、ぱっと開いたページを指さして選んだフレーズは、「魔法」っていう詩の、はじめの2行でした」
(ア)
その宝石を見ただけで、
少女は魔女にかわってしまった
めぐる「選んだ戸橋くんより、私の方が気に入っちゃって・・・その時はちらっと見ただけだから、本全体を読んでみたくなりました」
めぐる「まだ読んでる最中ですけど、宝石や魔女の他にもいろんなイメージが溢れてて──詩集だから読みやすいし、すごく楽しい本ですよ」
めぐる「・・・っていう感じでいいですか? じゃ、何か質問ありますか?」
何人かの手が挙がった。
誰の質問を受けるかは、紹介役が選んでいいらしい。めぐるは森さんを指名した。
森「詩集とは関係ないかもしれないけど・・・ 図書室の本が貸出中っていうのは、戸橋が借りてるってこと?」
めぐる「えっと・・・ごめんなさい。 誰がどんな本を借りてるか、って話は個人情報だから、図書委員は他の人に教えちゃいけないんです」
森「あ、そーなの? ゴメン、変なこと聞いて。 (ア)のフレーズを選んだ後で、戸橋がこの詩集を読んでるとこを想像しちゃってさー」
森「でも、そんな場面を考えると、なんかかわいいよね。 『少女詩集』ってw」
山田「その詩集を見ただけで、戸橋も魔女に変わっちゃったりしてね」
山田「俺からの質問! さっき「宝石や魔女の他にもいろんなイメージ」とか言ってたけど、たとえばどんなのがあんの?」
めぐる「えっと・・・いま読んでる感覚だと、海のイメージの詩が多い気がします。 あと猫! 猫も出るし、猫目石って宝石も出てました」
小板橋「他にはどんな宝石が出てくるの? ていうか、このフレーズの、少女を魔女にしちゃう宝石って何の宝石なんだろ?」
めぐる「それ、私も気になったんですけど、書いてないんですよ。「少女を魔女にしちゃうような宝石」っていう、たとえ話みたいな感じで」
めぐる「でも何の石なのかなってページをめくったおかげで、宝石にはたくさん気付きました。ヒスイとかダイヤとかガーネットとか!」
めぐる「それぞれの宝石のイメージが詩になってるから、これからその宝石を見る時に思い出しそうだなーって思って・・・すごく楽しみです」
小板橋「いいねー。私も読みたくなってきちゃった」
森「あ、私も! その本、見せてもらっていい?」
山里先生「はいはい、読みたくなった気持ちは大切だけど、ここで本を読み始めちゃうと時間かかっちゃうから、授業が終わってからなー」
山里先生「それじゃ、次は(イ)のフレーズだな。 紹介役の島津、出典を紹介してくれるかい?」