竹田くんのお昼ごはん

あいざわあつこ

第五話 悲しい塩むすび(脚本)

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〇男の子の一人部屋
松岡春斗(明日は課題提出か・・・)
  風呂上がりに明日の学校の準備をする。
  教科書を入れ替えて、課題のプリントをカバンにしまったところで、不意にスマホが鳴った。
松岡春斗「ん?」
  もしかして、たけか? と確認する。
  だが、淡い期待は速攻で崩れ去った。
うめ「『○×公園、今すぐ来い』」
松岡春斗(『は?』)
うめ「『来ないと後悔しますよ』」
松岡春斗(メッセの文面ですらイラつかせるとかある意味すごい才能だよな)
うめ「『とりあえず待ってるんで』」
  指定されたのは俺の家からチャリで10分程度の場所。
  普段なら当然行くはずもないが・・・。
松岡春斗(嫌な予感がする・・・)

〇住宅街の公園
梅村千秋「遅いんですけどぉ!」
松岡春斗「うっせぇ。これでも急いだほうだ。ていうか来てやっただけありがたいと思え」
梅村千秋「ふんっ、まあいいでしょう」
  ぶうぶう言いながら、梅村は乗っていたブランコを漕ぐ。
  俺はブランコを囲っている柵に腰をおろした。
梅村千秋「単刀直入に言いますよ」
松岡春斗「お、おう」
梅村千秋「・・・竹田センパイに、彼女ができました」
松岡春斗「は?」
  梅村の一言で、一瞬息が止まる。
  そして次の瞬間、心臓がバクバクと激しく脈を打ち始めた。
松岡春斗(・・・マジか)
  いや、いずれこうなることは予測できていたことだ。
  だけど、こんなに急に・・・。
梅村千秋「許せないッスよねぇ。ねえ、センパイ」
松岡春斗「・・・そんな子供じみたこと言うつもりはねえよ」
梅村千秋「へーえ?」
松岡春斗「だけど、その女がたけにふさわしいかどうかは見極める」
梅村千秋「まあ、そうッスよね。ふさわしくなかったら・・・」
  梅村と顔を見合わせる。
  すると、奴はにんまりと悪い笑みを浮かべた。
松岡春斗(たぶん・・・俺もおんなじような顔してんだろうな)

〇学校の屋上
梅村千秋「でも、具体的にはどうするんスか?」
  翌日の昼休憩にも、たけは現れなかった。
松岡春斗「とりあえず、お前の知ってること全部話せ」
梅村千秋「はいはーい。ていうか、そろそろ・・・ん?」
松岡春斗「なんだよ」
梅村千秋「お弁当が手抜きだなぁと思って。塩むすびだけじゃないッスか」
松岡春斗「俺しか食わねえのに、ちゃんとしたもん作るつもりはない」
松岡春斗「っていうか、何平然と俺の分、食ってんだよ、お前」
梅村千秋「え? 僕に食うなっていうんです? 可哀想だと思わないんですか? 思いますよねぇ。それに、一人分よりは多く見えますけど」
松岡春斗「・・・うっ」
梅村千秋「竹田センパイがくるかも? とか、思っちゃったんですかぁ? へえ、健気ですねぇ」
松岡春斗「うるせえ、バカ」
梅村千秋「うっわ、そのうちセンパイにチクッてやろっと」
梅村千秋「暴言吐かれた上に、手抜き弁当食わされましたって」
松岡春斗「お前だってたけの前でしか、猫を被る気ないだろ? おあいこだ、おあいこ」
梅村千秋「まあ、たしかに〜」
  言いながら、梅村は塩むすびを頬張る。
梅村千秋「あれ、結構美味しい」
松岡春斗「米、土鍋で炊いてるからな」
梅村千秋「どなべ!?」
松岡春斗「だからこれだけで十分ごちそうだ。あと、塩をつけるときには、つけすぎないよう事前に手側に塩をつけておくといい」
松岡春斗「米側につけて握るとしょっぱくなりやすいからな」
梅村千秋「・・・え、センパイ、僕とのお昼のためにわざわざ土鍋・・・」
松岡春斗「お前のためなわけねえだろ。自分が美味いもん食いたいからだ。引くな、バカ」
梅村千秋「あ、よかった。貞操の危機かなって思っちゃった」
松岡春斗「お前なんて死んでも無理」
梅村千秋「気が合いますね、僕もです」
  表面上はにこやかに言い合っているがその刺々しい空気は隠せていない。
  と 、不意に梅村のスマホが鳴る。それも一度ではなく、立て続けに何度も、何度も。
梅村千秋「あ、来た来た!」
  そう言って梅村がスマホを見る。ちらっと横から見た感じ、どうやらメッセージがいろんな相手から一気に入ってきたらしい。
梅村千秋「ふむふむ、なるほど?」
松岡春斗「なんなんだよ」
梅村千秋「リサーチの結果が届いたんですよ」
松岡春斗「え?」
梅村千秋「竹田センパイに近づく、害虫の」
  こともなげに言って、梅村が手に持っていたおむすびの残りを口に放り込んだ。
松岡春斗「なんなんだよ、お前」
梅村千秋「嫌だな、普通の可愛い後輩ですよ。 ただちょっと人の弱みをたくさん握ってるだけです」
松岡春斗「いや、もうその時点で普通じゃない」
梅村千秋「んふふ、握られる方が悪いんですよ」
松岡春斗「・・・お前をいじめてた奴らって、今どうなってんだろうな」
梅村千秋「さあ、どうでしょう。でも、幸せな人はひとりもいないでしょうね」
松岡春斗「最初からたけに守られる必要なかったじゃねえか!」
梅村千秋「やだなぁ、あの頃はまだピュアで戦い方を知らなかったんですよぉ」
松岡春斗「・・・はあ、お前最低だな」
梅村千秋「褒め言葉サンキューです♪」
  にっこり笑った梅村が、一件のメッセージに目を留める。
梅村千秋「んークロですね、この女」
松岡春斗「どういう意味だ?」
梅村千秋「原田佳苗、2−Cで有名な性悪だそうですよ」
梅村千秋「ああ、松岡センパイのファンクラブに入ってるとか」
松岡春斗「は? ファンクラブ?」
梅村千秋「あるらしいですね、趣味が悪い」
松岡春斗「おい」
梅村千秋「まあ、それは置いといて。 見た目は可愛いみたいです。 竹田センパイのほうが可愛いですけど」
松岡春斗「たけは面食いだからな・・・」

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