いじめられっこ、魔王軍に転生する

坂井とーが

4話 フローラ島(脚本)

いじめられっこ、魔王軍に転生する

坂井とーが

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〇空
アマデウス「争いをやめろ、同族たち!」
アマデウス「魔王アマデウスが、ここに帰還したぞ!」

〇荒野の城壁
  あれが、魔王・・・。
ヴィオ「魔王様! この襲撃の黒幕は人間です!」
ヴィオ「フローレスたちはみな、肉親を人質に取られているのです!」
アマデウス「何だと? それは本当か?」
ヴィオ「はい。この娘が証言しております」
???「ッ──」
アマデウス「フローレスの娘、本当か?」
???「は、はい。魔族の首を持って帰らなければ、妹が殺されるんです」
アマデウス「・・・そうか」

〇空
アマデウス「聞け、フローレスたちよ!」
アマデウス「魔王アマデウスはすべての魔族の味方だ!」
アマデウス「魔王軍は不幸な同族に手を貸そう! 真の脅威は人間だ! それを見誤るな!」
アマデウス「数の力に立ち向かうには、我らが団結するしかない!」
アマデウス「お前たちは、この戦場で散った命に報いろ! 俺とともに立ち上がれ!」

〇荒野の城壁
「おおおおおお!!」
???「嘘でしょ!? 助けてくれるの? 私たちは魔王の仲間を襲ったのに・・・」
  一瞬でこの場を収めてしまった。
  あの雷を見たら、戦う気にもならないか。
ヴィオ「魔王様、いかがいたしましょう?」
アマデウス「フローレスの動ける者は、死体の首を切り、持ち帰れ!」
アマデウス「我ら魔王軍は、別の方角から島に向かい、人質を奪還する!」
魔族「そんな、仲間の体を──」
アマデウス「死者がよみがえることはない。生きている者を救うのが優先だ」
魔族「御意」
アマデウス「フローレスの娘。名を何という?」
???「私は島の長の娘、リーナです」
アマデウス「お前の父は知っている。ここにいるのか?」
リーナ「いいえ。父は人間の手に落ちました・・・」
アマデウス「そうか。お前は俺たちと共に来い。案内を頼む」
リーナ「わかりました」

〇闇の要塞
フローレス族「魔王軍の者、すまない・・・」

〇荒野の城壁
アマデウス「そこにいるのは人間族・・・いや、ゴーストか?」
宿利ユウ「は、はい。宿利ユウです」
ヴィオ「魔王様、こやつらは異世界から召喚された者たちです」
アマデウス「異世界の勇者が本当に呼び出されたのか」
ヴィオ「ですから申し上げたでしょう! 人間の召喚術は侮れないと!」
アマデウス「その者たちが、なぜここにいる?」
ヴィオ「私が召喚の妨害を行い、召喚者の約3分の1を打ち落としました」
  なんだ、それ!? 聞いてないぞ!
  ヴィオが邪魔をしなければ、僕は白崎たちと一緒に召喚されていたということだ。
  つまり、僕はヴィオのおかげで命拾いした。
ヴィオ「落ちた異世界人にとどめを刺そうと探しに行ったところ、このユウという人間が──」
宿利ユウ「僕を魔王軍に入れてください!」
アマデウス「何?」
宿利ユウ「異世界から召喚された人間の中に、僕の敵がいます」
宿利ユウ「そいつを倒すためなら、僕は何だってします!」
アマデウス「――ほう」
ヴィオ「魔王様、この者たちの処刑のご指示を。元人間族の言葉など、信じるに値しません」
宿利ユウ「僕は本気です! 魔王軍とともに戦わせてください!」
アマデウス「いいだろう」
宿利ユウ「ええっ!?」
  そんな、あっさり?
ヴィオ「魔王様あぁ・・・」
アマデウス「魔王軍は来る者を拒まない」
ヴィオ「それは慎重さに欠けますぞ!」
アマデウス「ヴィオ、お前は保守に傾きすぎだ」
ヴィオ「年長者の知恵でございます!」
アマデウス「そこに隠れている者たちは──」
ヴィオ「彼らこそ、人間。排除すべきです!」
アマデウス「保護する」
ヴィオ「何を!?!?」
アマデウス「これは俺たち魔族と、この世界の人間族の戦いだ」
アマデウス「異世界人を巻き込むべきではない」
  あれ? この人もしかして、この世界の人間たちよりまともなんじゃないか?
ヴィオ「危険因子は排除しておくべきかと思いますがね!」
アマデウス「フフ・・・」
ヴィオ「何がおかしいのですか、魔王様!?」
アマデウス「ヴィオ。お前は俺がこう言うとわかっていて、召喚者たちをここにつれてきたのだろう」
アマデウス「ありがとう」
ヴィオ「・・・!」
ヴィオ「そ、そんな言葉で納得しませんからねっ」
  ・・・こいつ、駆け引きが下手ってレベルじゃない。
アマデウス「誰か、異世界人を城の中へ案内しろ。 彼らを客人として扱う」
ヴィオ「まったく・・・」
ヴィオ「異世界人から絶対に目を離すでないぞ」
アマデウス「フローレスたちは行ったようだな。 俺たちも移動を始める」
アマデウス「空を飛べる者は俺たちと共に来い! 残るものは城の守りを固めろ!」
アマデウス「順に転移させるぞ!」
  僕は飛べない。リーナのことは気になるが、力にはなれないようだ。
宿利ユウ「え?」

〇空
宿利ユウ「あ・・・」
ユウ「うわぁぁぁ!」
リーナ「ユウ!?」
ヴィオ「何!? ゴースト族だというのに飛べぬのか!?」

〇空
宿利ユウ「ゴーストって、飛べるの!?」
ヴィオ「能力の低いゴーストは地を這うというが・・・」
ヴィオ「仕方あるまい」

〇沖合
ヴィオ「運んでやろう。貴様を送り返すMPが勿体ない」
宿利ユウ「溺れ死ぬところだった・・・」
ヴィオ「呼吸を止めて死ぬゴーストなど聞いたことがないぞ」
宿利ユウ「そうなの!?」
  ためしに息を止めてみた。
  いつまでたっても苦しくはならない。
  ・・・本当に、死んでるんだな。
ヴィオ「もっとも、溺れるまでもなくサメや魚竜の餌食になるだろうが」
宿利ユウ「・・・落とさないよな?」
ヴィオ「貴様の働き次第だ」
アマデウス「そろったな。これより、幻影魔法で全員の姿を隠す! 臆せずに進め!」
  すごい・・・。
  空を飛ぶ軍勢数千名の姿が消えていく。
  これが、魔王の力・・・!
アマデウス「リーナ、先導を頼むぞ」
リーナ「わかりました」

〇海
  速い・・・!
  速すぎて、気絶しそうだ。
  でも、気絶したら捨てられるだろうな。
リーナ「もうすぐ島が見えてきます!」
  あれがフローラ島か
ヴィオ「ん?」
ヴィオ「砲撃魔法だ!」
宿利ユウ「うわ、危ない──」
ヴィオ「ユウ、打ち返せ!」
宿利ユウ「ええええ!?」
  『射程範囲外です』
宿利ユウ「ダメだ! 遠すぎて防ぐことしかできない!」
魔族「ギャアア!」
ヴィオ「砲撃を防げない者は後ろに下がれ!」
アマデウス「なぜだ? 幻影魔法で姿は隠したはず──」
ヴィオ「・・・魔王様。砲撃魔法を撃ってきているのは、フローレス族です」
  あんな遠くが見えるのか!?
ヴィオ「彼らから情報が漏れたのかと」
リーナ「どうして!? 魔族の首を持ち帰った者の家族は解放してくれる約束よ!」
ヴィオ「・・・人間どもが裏切ったのであろう」
リーナ「そんな・・・」
ヴィオ「・・・人間とは、そういう種族だ」
リーナ「ミーア──」
ヴィオ「待て、早まるな!」

〇海
リーナ「ミーア、待ってて! 今助けるから!」

〇海
ヴィオ「我々も行きましょうぞ!」
アマデウス「人質はどこだ? ヴィオ、見えるか?」
ヴィオ「島には見当たりませぬ!」
ヴィオ「ユウ、人間はこういうとき、どこに人質を隠すのだ?」
宿利ユウ「僕に聞かれてもっ──」
  人質事件なんて、テレビでしか見たことがない。
宿利ユウ「でも、近くにはいると思う。 ・・・たとえば、船とか!」
ヴィオ「バカ者! 船などあれば見逃すはずが──」
ヴィオ「・・・」
宿利ユウ「ヴィオ?」
アマデウス「海に何かあるのか?」
???「――!」
リーナ「今、声が!?」
ミーア「――お姉ちゃん!」
リーナ「ミーア!? そこにいるの!?」
ヴィオ「待て! この海域は危険だぞ!」

〇水中
ミーア「お姉ちゃん、助けて・・・!」

次のエピソード:5話 海の彼方へ

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