第1話 お母さんはママじゃない(脚本)
〇黒背景
紀子「ママ・・・!!」
紀子「どうして・・・」
紀子「どうして・・・ノリちゃんをおいていくの!?」
紀子「おいていかないで・・・」
紀子「ママ・・・」
紀子「ママ!!」
〇黒
ガ ラ ス の 靴 は 逃 げ て 行 く
〇学校の校舎
3 日 前
家 庭 裁 判 所
〇行政施設の廊下
孝紀「ふぅ・・・」
孝紀「行くか・・・」
〇小さい会議室
裁判官「それでは、判決を言い渡します」
裁判官「申し立て人の申し出通り 娘、紀子の親権は」
裁判官「父、孝紀が親権を有するものとします」
節子「どういう事ですか!!」
裁判官「奥様、お気持ちは、お察しします・・・」
裁判官「ただ・・・」
裁判官「奥様は最近、パートのお仕事を 始められたばかり・・・」
裁判官「旦那様は、会社員で安定した収入があられる」
節子「収入が無いと親権が貰えないと言ったから やっとの思いで、パートの仕事を見つけて 来たんじゃないですか!!」
節子「話が違うじゃないですか!!」
裁判官「・・・」
裁判官「法律と判例に基づき判決を 出させていただきました」
裁判官「まずは、生活の基盤をしっかりなされてから再度お話し合いをされてはいかがでしょうか」
節子「どうしてよ!?」
節子「私が一体、何をしたというの!!」
孝紀「・・・」
孝紀のほおを叩く節子
孝紀「・・・」
裁判官「奥様、暴力はいけません!!」
節子「奥様、奥様うるさい!!」
節子「離婚するんですから、奥様じゃない!!」
孝紀「・・・」
節子「あなた!!さっきから黙ってないで!!」
節子「何とか言いなさいよ!!」
孝紀「・・・」
孝紀「・・・・・・」
孝紀「節子・・・」
孝紀「・・・」
孝紀「すまない・・・」
部屋を後にする孝紀
節子「・・・」
節子「どうして、私だけ・・・」
節子「何もかも奪われなくちゃいけないの!!」
気を失い倒れ込む節子
裁判官「奥様しっかり!!」
裁判官「誰か医務室へ!!!」
〇学校の校舎
〇アパートの玄関前
大 西 家 仮 住 ま い
ア パ ー ト
〇和室
孝紀「紀子しばらくは、ここで暮らすぞ」
紀子「ママはどこにいったの?」
孝紀「・・・」
孝紀「ママは・・・」
孝紀「ママは・・・」
孝紀「ママは具合が悪いから 今、病院にいるんだ!?」
紀子「びょういん?」
紀子「ノリちゃん、びょういんにいく!!」
孝紀「・・・」
孝紀「い・・・今は無理かな!?」
紀子「どうして?」
孝紀「今は、無理なんだ・・・」
孝紀「ママが元気になったら、会いに行こうな!!」
紀子「うん!!」
孝紀「それまで、いい子にして待ってるんだぞ!」
紀子「うん!!」
〇和室
翌 日
孝紀「紀子、パパ仕事に行ってくるから いい子にしてるんだぞ」
紀子「うん!!」
紀子「・・・」
紀子「ひとりで、さみしいわ」
紀子「ママに、あいたいわ・・・」
紀子「きっとママやわ」
紀子「げんきになったんやわ」
紀子「は〜い!!」
配達員「おや、お嬢ちゃん一人でお留守番かな?」
紀子「うん・・・」
配達員「そっか、えらいね!!」
紀子「えらい!?」
配達員「うん、えらいよ」
紀子「えらい〜 えへへ」
配達員「大西紀子さんは、お嬢ちゃんの事かな?」
紀子「わたし、のりこ!!」
配達員「はい、これお手紙」
紀子「おてがみ」
紀子「だれから?」
配達員「前田節子さんて書いてあるね」
紀子「せつこ・・・」
紀子「ママ!!」
紀子「ママからやわ!!」
配達員「そっか、よかったね」
配達員「それじゃ僕はこれで」
紀子「やっぱりママやわ」
紀子「あたりやわ〜」
紀子「でも、まだノリちゃんじが、よめへんわ〜」
紀子「パパがかえってきたら、よんでもらえるわ!!」
紀子「それまでガマンやわ」
紀子「ノリちゃん、えらいわ」
紀子「きっとパパもママも、ほめてくれるわ・・・」
〇アパートの玄関前
〇和室
孝紀「只今、紀子いい子にしてたか?」
紀子「うん!!」
紀子「はい、これ!!」
紀子「ママからだゆ」
孝紀「紀子、字が読めるのか?」
紀子「よめないゆ」
紀子「もってきてくれた、おにいちゃんが せつこって、いってたゆ」
孝紀「そうか・・・」
紀子「なんてかいてあるの?」
孝紀「だいぶ良くなってきたから もうすぐ会えるって」
紀子「わーい、もうすぐママにあえるわ〜」
孝紀「・・・」
孝紀「紀子、ワンタン麺好きだろう」
紀子「うん!!」
孝紀「炊飯器にワンタン麺を入れて炊き込んだ」
孝紀「ワンタン麺混ぜご飯だ!!」
紀子「う・・・うん・・・」
紀子(おいしくなさそうやわ・・・)
孝紀「どうだ紀子、美味しいか?」
紀子(あんまりやわ・・・)
紀子(でも、パパつかれてそうやわ)
紀子「おいしいゆ」
孝紀「そうか!!」
孝紀「じゃあ遅いから、もう寝なさい」
紀子「はーい」
孝紀「・・・」
孝紀「どうして住所が分かったんだ・・・」
孝紀「出張を早めるか」
〇アパートの玄関前
数 日 後
インターホンを鳴らし続ける節子
近所のお婆さん「どうかしましたか?」
節子「大西さんのお宅は、こちらでしょうか?」
近所のお婆さん「そうだね〜」
近所のお婆さん「でも、居ないよ」
節子「居ない?」
近所のお婆さん「何だったけ?1ヶ月か2ヶ月かな? 北海道に出張に行くっていってたよ確か?」
節子「ありがとうございます!!」
節子「お婆さん、すみませんが これを紀子に渡してくれませんか」
近所のお婆さん「あ〜そう言えば、今月ノリちゃん誕生日 とか言ってたね〜」
節子「そうなんです」
近所のお婆さん「えぇですよ、預かりましょう」
節子「失礼します」
近所のお婆さん「お姉さん名前は・・・」
近所のお婆さん「行ってしもうた・・・」
〇雪に覆われた田舎駅(看板の文字無し)
北 海 道 某 駅
節子「紀子、必ずママが迎えに行くからね!!」
〇アパートの玄関前
1 ヶ 月 後
近所のお婆さん「あ、大西さ〜ん」
孝紀「隣のお婆さん」
孝紀「1ヶ月も留守にして、すみません」
近所のお婆さん「そら、えぇねんけど、荷物預かっとるよ」
孝紀「荷物ですか?」
孝紀「えっと〜これは誰からの!?」
近所のお婆さん「私も名前を聞こうとしたんだけど すぐ帰っちゃってねぇ」
孝紀「・・・・・・」
近所のお婆さん「たしか、ノリちゃんの誕生日プレゼントって いってたよ」
紀子「それ、ノリちゃんの!!」
近所のお婆さん「よかったね〜」
近所のお婆さん「じゃあ、私はこれで」
孝紀「紀子、なんでそれが 自分のだってわかったんだ?」
紀子「ノリちゃんがママにおねがいしたから」
孝紀「・・・・・・」
孝紀「そうか・・・」
孝紀「紀子、来週引っ越しするぞ」
紀子「ひっこし!?」
孝紀「あぁ、広くて綺麗なお家だ」
紀子「ママもくる?」
孝紀「あぁ・・・」
孝紀「ママも来る」
紀子「わ〜い、あたらしい おうちにママもくる〜」
〇雪に覆われた田舎駅(看板の文字無し)
1 ヶ 月 後
〇田舎駅の待合室
節子「すみません、お電話貸して いただけますでしょうか・・・」
駅員「なんも」
節子「なんも?」
駅員「はは・・・構いませんよ」
節子「ありがとうございます・・・」
節子「女将さん、入ったばかりなのに 2ヶ月もお休み頂いて申し訳ございません」
「せっちゃん、えぇんよ 気にしんといて」
「そんな事より、娘さんには会えたん?」
節子「・・・・・・」
「・・・・・・」
「分かった、早く京都に帰っといで」
「仕事は・・・」
「せっちゃんの居場所はあるから」
節子「・・・・・・」
節子「ありがとうございます」
〇一戸建て
大 西 家
〇一軒家の玄関扉
紀子「わ〜い」
紀子「あたらしい、おうちやわ〜」
紀子「しゅごいわ〜」
紀子「おおきいわ〜」
孝紀「新しいお家は気に入ったか?」
紀子「うん!!」
紀子「ママはいつくるの!?」
孝紀「・・・・・・」
孝紀「夕方には来るよ」
紀子「わ〜い」
紀子「たのしみやわ〜」
紀子「しあわせやわ〜」
〇明るいリビング
紀子「ママおそいわ!!」
紀子「ゆるせへんわ!!」
紀子「ママいつくるの?」
孝紀「ははは」
孝紀「もうすぐだよ」
インターホンの音が鳴る
紀子「きたわ」
玄関に駆け出す紀子
孝紀「・・・」
〇シックな玄関
紀子「おそいわ! おそすぎるわ!!」
ドアが開く
紀子「ママ!!あいたかったゆ!!」
〇シックな玄関
幸子「ママ・・・」
幸子「そんなダサい呼び方しないでちょうだい」
幸子「お母さんと呼びなさい!!」
〇黒
紀子「ママじゃない!!」
新しい母親登場。紀子ちゃんの運命は如何に。
シンデレラの如く最後は幸せになって欲しい所です。
ラストシーンでサブタイトルの意味が判明し、二重に驚きました。
始終シリアスな雰囲気の中、ノリちゃんの可愛さに癒されました。彼女にはこの先も辛いことが起こりそうで、心配になる反面、継母の傍若無人な活躍にも期待してしまったり(すみません)。
早く幸せになってもらいたいです。
紀子さん、幼くして人生ハードモードですね。彼女が真っ直ぐピュアな分、大人のドロドロした事情が浮き彫りにされてますね。親は親なりの事情があったのでしょうけど。