エピソード4(脚本)
〇風流な庭園
天上美月「連続殺人鬼って言ったの、副島さん?」
副島隆一「あ、いや・・それは」
副島隆一(ヤバっ! 余計なコト、言っちまった・・)
天上美月「誰なの? 殺人鬼って」
副島隆一(翔さん! の名前は絶対出したらマズイ!)
天上美月「男? 女?」
副島隆一(黙ってなきゃ! 男、とか答えちゃいけない!)
天上美月「鷹王氏との関係は?」
副島隆一(えっと、確か弟さんの長男・・?)
天上美月「どこにいるの? そのひと」
副島隆一「座敷牢! それも、すこぶるつきの スゲえヤベえカラクリのある座敷牢!」
菊梁善意「副島さん、知ってるなら黙ってないで ちゃんと話した方がいいですよ」
副島隆一(言えねえ。 言ったらゼッテー追い出される)
副島隆一「え、えとですね。そんな噂があるような 気がしないでもない・・的な今日この頃」
副島隆一「みたい、な感じっつーか、なんつーか」
菊梁善意「あんた、いったい何が言いたいんだ?」
天上美月「いいわ、もう」
菊梁善意「え? いいんですか?」
天上美月「ええ。知る方法は他にもあるわ」
天上美月(てか、もう知っちゃったから。 サンクス正直者!)
〇大樹の下
天上美月「ここでちょっと」
天上美月「あたしの、心を読む能力について 説明しておこうかな」
天上美月「「心を読む」というと」
天上美月「いわゆるテレパシーを思い浮かべるひと が多いと思うけど」
天上美月「私のは正確に言うと」
天上美月「「意識の表面に浮かぶ考え」を読める力」
天上美月「でも、心の奥底までは覗けない」
天上美月「過去の記憶は、本人に「思い出して」 もらわないと見えない」
天上美月「だから「正しく質問すること」が とっても重要!」
天上美月「そんなわけで「テレパシー」とは ちょっと違う力という気がする」
天上美月「だから、あたしは この力を「思念解析」って呼ぶことにした」
天上美月「どうしてこんな力を 持つことになったのか? それはまた次回」
〇風流な庭園
天上美月(翔という人のことは もっと調べる必要があるわね)
天上美月「副島さん、ありがとう」
副島隆一「よ、よくわかんないッスけど お役に立てて良かったッス」
外浦知里「副島さん! また、こんなところで油を売って!」
外浦知里「あなたは吉祥子《よしこ》お嬢様の お供のはずでしょ?」
副島隆一「ちょ、ちょうどいま出かけようと・・」
外浦知里「早くなさい。もう列車は駅に着く頃よ」
副島隆一「は、はい」
副島隆一(チキショー! うるせえババアだ)
副島隆一「わ、わかりました。すぐ向かいます」
外浦知里「はじめまして。 天上様と菊梁様でございますか?」
天上美月「はい。警察に協力させていただいている 探偵の天上です」
菊梁善意「県警捜査一課の菊梁と申します」
外浦知里「申し遅れましたが、私は当家の家政婦長の」
外浦知里「外浦《とのうら》と申します」
外浦知里「田滝上様がお呼びですので 食堂の方へおいでください」
菊梁善意「わかりました。 ありがとうございます」
頭上で木々を揺らす音がした
ロープにつかまって
ひとりの男の子が降りてきた
高天神護国「長いよ~ いつまで話してるの」
天上美月「きみ、もしかして、いままでずっと 木の上に隠れてたの?」
高天神護国「そうだよ 外浦さんに見つかるとうるさいから」
高天神護国「ホント! うっせえババア」
天上美月(誰かさんの、よくない影響ね。 そんな言葉、口にしちゃダメよ)
菊梁善意「きみは、ここの子かい?」
高天神護国「うん、高天神護国《もりくに》! みんな、モーくんって呼ぶよ」
高天神護国「でも、パパも「モーくん」なんだけどね」
菊梁善意「じゃ、お父さんは持国さんか」
高天神護国「うん。パパが持国、ママは真知子、 お姉ちゃんは優子、四人家族だよ」
天上美月「ところで、よく登るの? 木には」
高天神護国「そうだよ。だって、ここの木の上には いろんな仕掛けがあって面白いんだ」
高天神護国「縄ばしごとか、空中ブランコとか、 吊り輪とか、ジップラインとか」
菊梁善意「アウトドアのテーマパークみたいだね」
天上美月「または、サーカスの練習設備?」
高天神護国「よくわかるね、そうだよ 梨香子おばさんのトレーニング用なんだ」
高天神護国「お姉さん、美人なだけじゃないんだね」
天上美月「やだ、モーくんったら、正直ね!」
高天神護国(って言っとけば 女のひとはだいたい機嫌がイイんだよね)
天上美月(く・・食えねえガキ!)
菊梁善意「モーくんは 梨香子さんとは仲がいいのかい?」
高天神護国「うん。 美人で優しくて面白いし、大好きだよ!」
高天神護国(おこづいもたくさんくれるし・・)
天上美月(だと思った)
高天神護国「それに木の上は すっごく見晴らしいいんだよ」
高天神護国「遠くの山や街まで、いろいろ見えるんだ」
天上美月「お屋敷の中も、よく見えるの?」
高天神護国「うん。運転手の副島さんがサボってる トコとか、居眠りしてるトコとか」
高天神護国「早苗お姉ちゃんを口説こうとしてるトコ とか、カツアゲしてるトコとか・・・」
菊梁善意(副島・・クズ過ぎる)
天上美月(・・右に同じ)
天上美月「じゃ、ゆうべも何か見た?」
高天神護国「夜は登らないよ、危ないから」
高天神護国「梨香子おばさんにも言われてるし」
高天神護国「パパやママにバレたら大変だもの」
高天神護国「でも、夜、トイレで起きたとき」
高天神護国「森の方がすごく明るくなっている のが見えたんだ」
天上美月「お部屋の窓から?」
高天神護国「うん。でも一瞬だけどね」
〇後宮の廊下
護国少年と別れ
美月たちは食堂に向かった
既に高天神家の主だった人々が
集まっているらしい
菊梁善意「さっきの護国くんの話。 森の中で何か起こってたんですかね?」
天上美月「森の中、とは限らないわ」
天上美月「護国くんの部屋から見て森の方角 って理解すべきね」
菊梁善意「あ、鷹王さん!」
菊梁善意「わわ!? 危ない!」
菊梁善意「な、何するんですか? 鷹王さん!」
高天神鷹王「鷹王? 誰じゃ、それは」
高天神鷹王「我が名は梟王《きょうおう》!」
高天神鷹王「関東管領上杉定正公より、この地を預かる 高天神家、第六代当主なるぞ!」
天上美月(って、もしかして室町時代か 戦国時代のひと?)
高天神鷹王「見るからに奇態な装束よ。 こやつら、いずこより現れた?」
天上美月「違う、このひと! さっきとは、まるで別人」
天上美月「そして・・嘘はないわ。 語る言葉すべて、偽りのない真実」
天上美月「言葉どおり、彼は梟王! 戦国乱世の高天神家の当主なんだわ」
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