怪人コンテスト

シタゴコロ

エピソード1(脚本)

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〇黒
  年に一度の祭典、怪人コンテストが、今始まる──

〇コンサート会場
司会者・ロルム卿「皆様、お待たせいたしました! わが結社の年に一度の祭典、『怪人コンテスト』がいよいよ行われます!」
司会者・ロルム卿「司会進行役は私、ロルム卿と!」
司会者・奉仕構成員メイデン「同じく司会進行役の奉仕構成員・メイデンがお送りします!」

〇黒
  その頃、舞台裏では──

〇地下に続く階段
骸骨忍者セドレツ(出番までいよいよか・・・ うぅ・・・緊張してきた・・・)
骸骨忍者セドレツ(大丈夫・・・ 今までやってきたことを、みんなの前で見せるだけだ。 何も心配はいらない)
骸骨忍者セドレツ(今回のこの戦いは負けられない・・・ いや、負けない! 絶対優勝する!! 今日来ている”あの人”だって、そう信じている!)

〇黒
「そんな所でボサッと突っ立ってんなら、さっさと優勝候補に道を譲れ、この脳なし骸骨」

〇地下に続く階段
骸骨忍者セドレツ「その声は・・・ お前か! 骸騎士エグゾ!!」
骸騎士エグゾ「久しぶりだなぁ、ロルム。 最近任務で忙しくてよぉ、本部に帰ってくるヒマがなかったぜ」
骸騎士エグゾ「あまり本部に戻ってないんで、お前の噂も聞かねぇし、てっきり何とかレンジャーにやられたのかと思ってたぜ」
骸骨忍者セドレツ「・・・相変わらずだな、お前は」
骸騎士エグゾ「あ? 何だよ、いつもキャンキャン吠えてかかってくるくせに、今日はビビって何も言えねぇのかよ?」
舞台スタッフ「・・・あの〜、そろそろ出番です」
骸騎士エグゾ「チッ、時間かよ じゃあな、脳無し野郎 ──ビビったからって、尻尾巻いて逃げんじゃねぇぞ」
骸骨忍者セドレツ「──逃げも隠れもしない。 するわけがない。 やらなきゃならないんだよ──必ず」

〇コンサート会場
  そして、彼の出番となり──
司会者・ロルム卿「いよいよ最後の出場者となりました! エントリーナンバー12番、骸骨忍者セドレツ!!」
司会者・奉仕構成員メイデン「今年、初出場となるセドレツさん! 今の感想を一言!」
骸骨忍者セドレツ「えぇと、はい・・・ 非常にありがたいというか・・・ 本当に嬉しくて、正直なところ戸惑ってます・・・」
骸骨忍者セドレツ「ですが・・・絶対に負けないです オレを応援してくれる人に誓ったんです 『誰にも負けない怪人になる』、と」
司会者・奉仕構成員メイデン「・・・素敵なお話ですね それではステージ中央へ進み、特技を披露して下さい」
骸骨忍者セドレツ(オレは怪人としては、オリジナル技や決め手に欠ける攻撃能力しかない だけど、オレにしかない『擬態』を応用すれば──)
骸骨忍者セドレツ「えっと、今から擬態──観客の方お一人に変身させてもらいます そうだな──あ、ちょうど真ん中の席の人」

〇劇場の座席
観客その1「おっ、おれ!?」

〇コンサート会場
骸骨忍者セドレツ「そう、あなたです あ、個人情報がもれないようちゃんと処理するので、安心して下さい」
骸骨忍者セドレツ「それでは──『有為転変』!」
「どうです?少し髪型とかは違いがあるかもしれませんが、同じ姿になったと思います」
司会者・ロルム卿「おっと、早速『擬態』を披露しましたね! 相変わらず、精密に再現しますね── っと、失礼。個人的感想でした」
司会者・奉仕構成員メイデン「本当に、対照相手の身体だけでなく、服から帽子まで再現するのは、凄い技量ですね〜」
観客その1に変身したセドレツ「ありがとうございます。 ここまでは、今までの能力の限界でした。 次は、新しく生み出した技をお見せします」
司会者・ロルム卿「なんと、更に続きがあるんですか! それは拝見したい!」
観客その1に変身したセドレツ「この姿をお借りした方には、少々ショックを与えるかもしれません 精神的に耐えられないと判断されたら、手でバツを作って下さい」
司会者・奉仕構成員メイデン「ショックを与える・・・? あの、どんな技になるんでしょうか?」
観客その1に変身したセドレツ「それは── この姿で、前の出場者の能力を再現することです」
観客その1に変身したセドレツ「それでは、いきます── 『有為転変』!」
司会者・ロルム卿「こっ、これは・・・ デスガイストの斧!」

〇コンサート会場
  ゲスト席
特別ゲスト・死神デスガイスト「えっ! ウソぉ!?」

〇コンサート会場
観客その1に変身したセドレツ「続けていきます 『有為転変』──エグゾ!」
司会者・奉仕構成員メイデン「ぎゃ〜! 腕が生えてきましたよ!? しかも、生える所じゃない所から!!」
司会者・ロルム卿「これは──エグゾさんの『外骨格』?」
観客その1に変身したセドレツ「ご明察です。 オレの能力『擬態』の応用で、別の人物に成りすましても、怪人達の能力を使えるようになりました」
観客その1に変身したセドレツ「だからこんな風に── 『有為転変』!」
司会者・奉仕構成員メイデン「生えた腕が、エグゾさんの武装形態に!」
観客その1に変身したセドレツ「更に能力同士を掛け合わせて── 『有為転変』!エグゾ!デスガイスト!!」
司会者・ロルム卿「凄い──2人の武装が合わさった、もう一つの腕が・・・」
観客その1に変身したセドレツ「潜入任務で、闇組織にいた時に思ったんです もしこの姿で襲撃されても、怪人の技が使えたら──って」
観客その1に変身したセドレツ「そこから民間人に成りすましても怪人としての能力が使えるよう特訓し、今では1時間くらいなら使えるようになりました」
司会者・ロルム卿「1時間── 変身したまま怪人能力を、ですか かなり負担もあるのでは?」
観客その1に変身したセドレツ「最初の頃は、翌日に起きられなくなるくらい身体に負荷がかかりましたが、今では5分くらいの休憩で動けるまでになりました」
観客その1に変身したセドレツ「それもこれも、オレの特訓に付き合ってくれた、グレンさんのおかげです」
司会者・ロルム卿「グレンさん──妖鬼姫グレンさんのことですね」
観客その1に変身したセドレツ「はい、オレの恩人で──オレの命より大切な人です」

〇劇場の座席
妖鬼姫グレン「セッくん・・・」

〇コンサート会場
司会者・ロルム卿「えぇっと・・・なんて言うか・・・ ご馳走様です・・・」
司会者・奉仕構成員メイデン「つまり、愛の力──ということですね 素晴らしいです!」
観客その1に変身したセドレツ「あ、ありがとうございます。 こんな自分を見捨てず、付き合ってくれた彼女に、今大会の勝利を捧げたいと思います」
司会者・ロルム卿「えぇっと、実演、ありがとうございました。それでは投票と審議時間となりますので、発表まで控室にてお待ちください」

〇黒
  そして、結果発表──

〇コンサート会場
司会者・ロルム卿「──大変長らくお待たせいたしました。 それでは、結果発表に参ります」
司会者・奉仕構成員メイデン「優勝者にはヒーローへの挑戦権と、幹部クラス昇格資格が与えられます」
司会者・ロルム卿「それでは、発表いたします。 第5回怪人コンテスト、栄えある優勝者は──」

〇コンサート会場
  舞台後方・出場者待機場所
骸骨忍者セドレツ「選ばれますように・・・ 選ばれますように・・・」

〇コンサート会場
司会者・ロルム卿「エントリーナンバー2番! 鬼者(おにんじゃ)キガンティック!!」
司会者・奉仕構成員メイデン「キガンティックさん、どうぞ前へ!」

〇黒
  終わった・・・終わってしまった・・・
骸騎士エグゾ「なぁ、おい、しっかりしろよ! ショックなのは分かるけどよ、いきなり崩れ落ちるなよ──」
骸骨忍者セドレツ「約束したのに・・・ 次はないのに・・・」
骸騎士エグゾ「次はないって・・・ 怪人コンテストは来年もあるだろうが──」
骸骨忍者セドレツ「来年じゃダメなんだ! 今年の、今回のコンテストじゃなきゃ意味がないんだ!!」
骸騎士エグゾ「──どういうことだよ、今回じゃなくちゃダメだってのは」
骸骨忍者セドレツ「・・・最近ヒーロー達に、新たに仲間と武器が加わったのは、知っているか?」
骸騎士エグゾ「まぁ、なんとなくはな。 それがどうした?」
骸骨忍者セドレツ「・・・先日、ヒーロー達の勢力が増す前に襲撃しろと、グレンさんに辞令が出た」
骸騎士エグゾ「おい、それって──」
骸骨忍者セドレツ「ああ、間違いなく相手の戦力を測るための、ただの特攻戦だ。 相手がそれで打撃を受けるならよし、仮にこちらに損害が出ても──」
骸騎士エグゾ「・・・敵の攻撃に関わるデータがとれる、ってわけか」
骸骨忍者セドレツ「・・・オレには辞令を覆すだけの力はない。 ならせめて挑戦権を得ることで、グレンさんの側で守ることができれば、と思ったんだ」
骸騎士エグゾ「お前・・・そこまで・・・」
骸骨忍者セドレツ「お前の言う通り、オレは戦闘力の低い、能無しの役立たずだ。 だからせめて、最期の時まで彼女を守り、役に立って死にたかった」
骸骨忍者セドレツ「なのに・・・オレは・・・」
  泣かないで、セッくん──
骸騎士エグゾ「グ、グレンさん!なんでここに!?」
妖鬼姫グレン「セッくんが落ち込んでるの見て、観客席から飛んで来ちゃった」
妖鬼姫グレン「セッくんが私のために頑張ってくれたのは、結構・・・いや、かなり嬉しかったよ」
骸骨忍者セドレツ「でも、オレ・・・」
妖鬼姫グレン「大丈夫!そんな簡単に、アイツらにやられないって! それに──」
妖鬼姫グレン「セッくんは、役立たずなんかじゃないよ。 潜入調査だって危険と隣り合わせなのに、いつも私達のために命を懸けて調べてくれる」
妖鬼姫グレン「それって、スゴイことなんだよ?」
骸骨忍者セドレツ「グレンさん・・・」
骸騎士エグゾ「ああ、そうだ。 お前はスゲェ奴だ。 自分の見栄なんかじゃなく、大事な人のために命を懸けるなんてな。 俺には真似できねぇよ」
骸骨忍者セドレツ「エグゾ・・・お前・・・」

〇コンサート会場
司会者・ロルム卿「ええっと、優勝者インタビューをしたいんですが・・・」
司会者・奉仕構成員メイデン「流石に話を進めづらい・・・」
鬼者キガンティック「優勝しても、嬉しくねぇ・・・」

〇黒
  この、たわけが!

〇コンサート会場
司会者・ロルム卿「だ、大首領! 進行が滞り、申し訳ございません!!」
司会者・奉仕構成員メイデン「す、すぐに再開いたしますので、今しばらくお待ちを──」
大首領「お主らではない! その後ろで泣き崩れている、そやつに申しておるのだ!!」

〇コンサート会場
骸騎士エグゾ「だ、大首領様!何卒お許しください!! コイツにもワケが──」
大首領「お主には聞いておらん! セドレツよ! 敗北に涙するとは、何事か! それでも結社の誇る怪人なのか!!」
骸骨忍者セドレツ「大首領、申し訳ございません・・・ 自分を見失うあまり、このような醜態を晒しました・・・ いかようなる処分も承ります・・・」
大首領「そのように申しておるわけではない! お主が最善を尽くしたことに、誇ることはあれど悔やむことはないと申しておる!!」
骸騎士エグゾ「それって・・・」
大首領「セドレツよ、お主の『擬態』、見たものであれば再現ができる能力で間違いはないか?」
骸骨忍者セドレツ「ええ、よほどの桁違いの力でなければ、再現可能ですが・・・」
大首領「ならば問題あるまい。 お主にヒーロー達に対する、能力調査の指令を課す!」
骸骨忍者セドレツ「!それでは──」
大首領「妖鬼姫グレン、骸骨忍者セドレツ両名に、敵主力調査任務を命ずる! 必ず我らが結社に有益な情報をもたらせ!!」
骸骨忍者セドレツ「ありがとうございます、大首領! 必ずや我らの結社に、吉報をお届けします!!」
骸騎士エグゾ「やったな、セドレツ! お前の能力が役に立ったじゃねぇか!!」
大首領「ただし、今日の様な醜態は晒さぬ様、肝に命ずるように!」
骸骨忍者セドレツ「は、はい・・・ 肝に命じます・・・」
大首領「話は以上だ! 会の進行を続けよ!!」

〇コンサート会場
司会者・ロルム卿「は、はい!かしこまりました! 大首領に代わり、再び私が進行致します!!」
司会者・奉仕構成員メイデン「そ、それでは、優勝のキガンティックさんにインタビューしたいと思います!」
鬼者キガンティック「・・・え? あ、ハイ、どうも・・・」

〇施設の入口
  コンテスト終了後・会場外
観客その2「・・・いや〜、本当色々あったな、今日。 怪人がコンテストに出たり、怪人が男泣きしたり、大首領が説教したり・・・」
観客その2「・・・さっきから黙って、どうした? アイツらに一泡吹かせてやるって、あんだけ息巻いてたのに──」
観客その1「──おれ・・・やめる・・・」
観客その2「・・・え?」
観客その1「ヒーロー、辞める」
観客その2「な!? 急にどうしたんだよ!辞めるって!!」
観客その1「だってヒーローやってても感謝されるどころか、さっさとしろよって言われるんだぞ!? オマケに忙しすぎて彼女できないし、」
観客その1「気になった子は、ブルーに取られるし!? お前にも彼女できて、できていないのおれだけだし!? 一番弱すぎって言われるし!?」

〇黒
  こうして幕を閉じた、怪人コンテスト。
  次はどのような展開が、待っているのだろうか──
(オレ、影薄かったな・・・)

コメント

  • まさか観客にヒーローが混じっていたとは、一捻りあって面白いラストでした。怪人たちがいい人ばっかりでいつの間にかジュノンボーイコンテストみたいに見えてきましたが、彼女思いのセドレツが報われてよかったです。

  • ステージの幕内でのそわそわ感、怪人も人間も同じなんだというところにとても好感もてました。勝つことに意義があるコンテストや試合も、こういった結果をもたらすことがあること、これから何かに参加しようと思っている人へのエールになりますね。

  • 様々な大会やコンテストに出場するには並大抵の努力をしなくては勝てないでしょう。でも、個人の能力は普段の行いが大切だという事を教わりました。

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