竹田くんのお昼ごはん

あいざわあつこ

第四話 ハムキュウリのサンドイッチ(脚本)

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〇教室
  ピコン。
たけ「『授業だる』」
  ピコン。
うめ「『お疲れ様でーすっ、センパイ♪授業、だるいですよねぇ』」
たけ「『だるねむ』」
うめ「『寝ちゃったらあとで起こしに、教室行ってあげますね!』」
たけ「『ねむ』」
松岡春斗(まったく噛み合ってねえし。ていうか、なんでグループに梅村がいるんだよ)
  授業中。あいも変わらず届く、どうでもいい内容のメッセージ。
  梅村が入ったことで、回転率は倍くらいになっている。
松岡春斗(『もう寝れ』)
たけ「『寝たい』」
松岡春斗(『なら寝れ』)
たけ「『留年ダメゼッタイ』」
松岡春斗(『留年?』)
たけ「『おかんマジギレ案件』」
松岡春斗(そういや、この間たけの母さん、学校に来てたよな。なるほど・・・そういうことか)
うめ「『大丈夫ですよ、僕がセンパイにお勉強教えてあげますから』」
たけ「『まじか救世主』」
松岡春斗(『おい待てこいつは後輩だぞ』)
たけ「『あ、そうか騙したな』」
うめ「『僕、もう大学受験分くらいは網羅してますので』」
たけ「『やべえ天才現る』」
松岡春斗(『どこ大だ? 俺のほうが絶対有能』)
たけ「『こっちにも天才いた』」
  ピコン。
たけ「『あ、そいやさぁ』」
うめ「『なんですかぁ?』」
  ピコン。
たけ「『今日昼飯いらねえわ』」
松岡春斗「!?」
  ──ガタン!
  思わず立ち上がり、注目を浴びる。
松岡春斗「あ・・・」
教師「松岡ー、席つけー」
松岡春斗「あ、ハイ」

〇学校の屋上
梅村千秋「うぇえ・・・本当にいないぃ」
松岡春斗「わかってただろ、なんで来んだよ」
梅村千秋「それ、すごい勢いでブーメランなの、気づいてないんスかぁ?」
  昼休憩。
  あまりに手持ち無沙汰で、俺は結局屋上へとやってきていた。
梅村千秋「友達、いないんスね。松岡センパイ」
松岡春斗「それも特大ブーメランじゃないのか」
梅村千秋「僕はほら、まだ入学したてですし」
松岡春斗「あっそ。じゃあ一応聞くが、バスケ部主将にダチ、いないと思うか?」
梅村千秋「思わないッスけどぉ」
  あーあ、とぼやきながら梅村が腰を下ろした。
  こいつもやっぱりやることがないらしい。
松岡春斗「・・・いただきます」
  小さくつぶやいて、持ってきていた弁当の包を開く。
梅村千秋「中身、なんなんですか?」
松岡春斗「ハムときゅうりのサンドイッチ」
梅村千秋「シンプルー」
松岡春斗「こういうのが一番美味いんだよ」
  と、不意にぎゅるると腹の虫が鳴る。
松岡春斗「お前かよ」
梅村千秋「すみませんね! 寝坊してお昼持ってくるの忘れてきちゃったんで!」
松岡春斗「学食行けよ」
梅村千秋「だって・・・もしかして、やっぱり来るかも知れないって思ったんスもん」
松岡春斗「あっそ」
  梅村を見ると、ふてくされたような顔で唇を尖らせている。
松岡春斗「・・・俺もお前も大概だな」
  俺はぽいっと包を一つ、梅村に放った。
梅村千秋「わっ!?」
松岡春斗「食えよ。そもそもたけの分もあるんだから、俺一人じゃ多い」
梅村千秋「・・・情けなんて」
松岡春斗「いらないなら食うな」
  ぐーきゅるきゅる。
梅村千秋「要らないなんて言ってないです! いただきます!」
  乱暴に言って、梅村が包を剥く。
松岡春斗「ありがたく食えよ?」
松岡春斗「ちゃんときゅうりは苦味をとるために、水にさらして皮を剥いたし、ハムはサッと焼いて香ばしさをプラスしてる」
梅村千秋「へえ」
松岡春斗「作るときのコツとしては、パンの厚さと比例する形でマヨネーズやソースの類の量を調整すること」
松岡春斗「今回は10枚切で薄いから、マヨネーズも少量だ」
  俺が話している間に、もくもくと梅村はサンドイッチを頬張る。
松岡春斗「美味いだろ?」
梅村千秋「ぐぬぬ・・・腹立つんですけどー! 不本意なんですけどー!」
梅村千秋「・・・不味くはないです」
松岡春斗「可愛げないな、お前マジで」
梅村千秋「可愛げは竹田センパイ用に 、ストックしているんです。 こんなところで出すなんてもったいない」
松岡春斗「まあ・・・俺に出されてもキモい」
梅村千秋「なら最初から可愛げないなんて話し、しないでくれますぅ?」
  人を苛立たせる言い方をしながらも、梅村の手と口は忙しなく動いている。
  味自体は気に入ったようだ。
松岡春斗(何が不味くない、だ。ざまあみろ)
梅村千秋「・・・んぐ、もぐ。それにしてもセンパイ・・・」
松岡春斗「・・・・・・」
梅村千秋「いったいどこで何してるんスかね」
松岡春斗(それは俺も気になる)
梅村千秋「うう・・・誰とご飯食べてるんだろ」
梅村千秋「松岡センパイ、なんか知らないんですか!?」
松岡春斗「知らねえよ。あんまりたけは友達が多い方じゃないし彼女だっていない」
  たけ自身は人懐っこいほうだと言える。

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