生きている事は当たり前じゃなくて、安心感は大切で(脚本)
〇古民家の居間
優樹「採集依頼の分に残しておいた香木も献上できて、おかげで冒険者の格も昇格したよ~」
桜花 「あの辺りは魔物が危険だからね、今日はたまたま見当たりなかったけど~」
優樹「濃度の濃い魔石も取れたし良い魔導具が作れそうだよ」
桜花 「優樹くんの新しい装飾品楽しみ♪」
魔石の純度の低い部分は割り、余分な成分を取り除く事で小ぶりになるが純度の高い魔導具の触媒として錬成していく
桜花 「代々受け継がれた技術はすごいね」
優樹「まぁ後継者がいないんだけどね~」
桜花 「あたしたちで後継者つ・・・つく・・・」
優樹「ん?つくしご飯を食べに行きたいの?」
桜花 「・・・接客は零点だよ」
なぜか不機嫌になっている桜花に粗茶を置き、魔導具を作りに励む
ふてくされていたかと思えば改良を加えた自然の甘草を加えた味が良かったみたいですぐに飲み干してくれている
桜花 「わぁ、ずらりと並んでる~!」
優樹「これだけあれば十分かな」
「この首飾りちょーだい?」
優樹「まいどあり~」
一定以上の太さの大樹に巣を作るレアな鳥が集めた青に近い翠色の貴石をそのまま使った逸品だ
その魔物の鳥の嘴に込められた魔力が鉱石を研磨し輝かせている
生涯かけても見つからないとされる希少性の高い奇跡の宝石だ
桜花 「優樹くん、似合ってるかな?」
優樹「首飾りも桜花も光輝いているよ」
桜花 「今の接客は満点♪」
樹の卓席に静かに佇む桜花と談笑して過ごす
ワンピース姿も新鮮で可愛らしい
・・・十分に療養できた
優樹「用事があるから、また遊びに来てね」
桜花 「えー!こんな美少女を放っといて用事なんて信じられない~」
桜花 「冒険で眠たくなっちゃったから、休憩室で休んでてもいーい?」
優樹「良いよ~」
〇古い畳部屋
桜花が休憩へ行ったのを確認して
〇市場
今日手に入れた品を持ち街の中央へ姿を消す
〇巨大な城門
情報屋で仕入れた伝手で城兵に接触を図る。
優樹「こんな夕暮れまでご苦労なこったな」
意外そうに驚く城兵に肝要を伝える
優樹「この国の新しい税金のせいで、家を手放すのは嫌だろう?」
魔導具や売上金を利用して一人ずつ城兵に渡りを付ける
この無能なやつらでも国を滅ぼす時に役立つだろう、しっかりと内応を取り付けた
いざ用が済んだ後の処分もすでに決まっている
優樹「よし、次の場所にいくか」
〇おしゃれな受付
ギルドの転移陣を利用しダンジョンへは行かず、他国へ向かう
〇林道
目的は一貫していて全てその為に行動している
道行く行商人があの狂った国へすれ違い赴いていく
そろそろ領内との境界か
〇レンガ造りの家
大きな道に沿い住宅街、
〇商店街の飲食店
商店街
〇港の倉庫
工場など人の多い所ならどこでもこの足で行く
やる事はあの憎いやつらへの流言、桜の樹の国への不信感を強める事が目的だ
優樹「商店街のやつらは敏感に反応していたな、不信から武力での糾弾までは時間がかかるが・・・まだ手段はある」
〇西洋の城
この翠の樹の国はお爺ちゃんの親の代から家業としての付き合いがある
〇新緑
名前の由来は新緑の森のあまりの綺麗さに偉い客人が感銘したからだと言う
〇謁見の間
さっそく店から持ち出した分を納品しに行き、流言を流す
あの国はもう終わりだ、攻めるなら今だと・・・
〇商店街の飲食店
優樹「手応えはあったな、三代目は野心が強い、そこをうまくつけこめた」
〇林道
幻艶はお爺ちゃんの徒党員だった兵士に使い魔族の干渉があったと言質を取った
なすべき対象が増えた
納品で得た大量の資金と、忌々しいやつらの敵を作る事の二つの目的は十分成し遂げた
日没後は活発になる魔物が多く危険だ、急ぎ足で転移陣まで元来た道を歩く
優樹「魔物の足跡も見る限り無いし、無事に着きそうだ」
僅かな道行く者達はまばらにいる程度だが、居ないよりは心強く感じる
〇魔法陣2
・・・着いた
魔法陣に入り暗さに慣れた目を細めつつ、俺を包む光に身を委ねる
〇西洋風の受付
ギルドは報告に戻る冒険者達で賑わいを見せる
喧噪をよそにまだやるべき事を成す為に寂れた刈宿まで歩みを止めない
〇城下町
のどかな虫の音色も月明かりの美麗さも感じる事ができない、この恨みを晴らすまでは
〇ボロい家の玄関
優樹「明かりは消えたままか・・・まだ寝ているのかな」
〇古民家の居間
腰掛けて作業する、これは店売りの商品には向かない
優樹「錬成した魔石同士に負荷をかけて濃くして行く事で、理論上えげつない効力の魔導具を作る事ができる・・・」
慎重に不要な石を取り除き純度と密度と濃度をあげていく
問題は使用者が内包する魔法式を維持して魔導具を制御できるかが鍵だ
優樹「ただでさえ多くは作れないが、試用もしなきゃいけないのか・・・」
損耗品にならないように耐久性を改良する必要もありそうだ
超えなければならない山は多い
優樹「かなりの巨石だったから、思ったより多く作れたな」
その漆黒さはまるで濃縮された負のオーラそのものだ、俺の期待に応えてくれよ
物音がして特殊な袋へ粗方収納する
桜花 「やっと帰って来た~!」
優樹「あぁ、手間がかかる事が多くて・・・んっ」
不意に抱きしめられる
僕を見上げる彼女の瞳は潤む
桜花 「今日危ない目にあったばっかりなのに、あたしの前からいなくなっちゃ・・・やだ」
優樹「ごめんね、大丈夫だよ・・・」
堅い氷河が融解するように、桜花に心をときほぐされる
こんなに心の優しい桜花を狙ったあの男はやはり一刻も早く処刑しなければならない
優樹「帰る前になったら、しっかり送っていくからね」
桜花 「ぐすっ・・・えへへ、ありがと~」
限られた時間を彼女と有意義に過ごす
あまり寝れなかったのかそれとも寝たりないのか、僕の肩に小さな顔を預けて目を閉じている
優樹「寝たら帰れなくなっちゃうぞ~」
桜花 「安心するまで、ずっと撫でて?」
彼女の瞳は真っ直ぐに僕を見据え躊躇わずそう話す
全ての責任は僕にある、断る理由など無い
静かだと思って見おろすと静かに眠っている
このままおぶって帰そうかと思ったが、にわか雨が降っている
優樹「うーん、帰せそうに無いな」
〇古い畳部屋
買っておいた寝具を床に敷き桜花を寝かせる
温かい気候だが夜なので風邪を引かないようにしっかりと毛布を被せる
優樹「今日の進捗は悪く無い、この速度で頑張るしか無い」
桜花 「ん~・・・」
寝ぼけているのか、毛布の厚みで熱いのか寝苦しそうだ
大事な日に使いこなせないと意味が無いので、魔導具の試用に行かなければならない
訓練が済んだら別の部屋・・・いや、刺客に備えて仮眠室で桜花を守るしかない
優樹「実証済みの索敵探知して知らせる道具は使っておくか、信用できる人間なんてもう桜花しかいない」
桜花 「嬉しい・・・」
驚き振り向くとこちらを見つめる桜花がいつの間にか起きている
それより魔導具の事をうっかり喋らなくて良かった
桜花 「あたしが優樹くんをずっと守ってあげるね?」
優樹「うーん、それは男として情けないような・・・」
桜花 「そんな事気にしなくても、あたしは優樹くんがす・・・す・・・」
優樹「・・・・・・」
桜花 「すてき・・・だよ」
優樹「え、ステーキを食べたい?」
桜花 「優樹くんの天然朴念仁・・・」
暗くてよく表情が読み取れないのが少し困る
何か失言でもしてしまったのだろうか?
桜花 「外着に冒険袋・・・?」
優樹「あっ・・・明日の準備をしてたんだ」
桜花 「そうなんだぁ、・・・・・・おいで?」
優樹「あ、あぁ・・・」
普段は茶化してくるのに、表情から照れと真剣さが伝わってくる
最近急加速で桜花との距離が縮まって来ている気がしてならない
特別に何かしてあげたわけでもないし・・・
桜花 「考え事しないであたしを見て?」
優しく顎クイをされて間近に見える桜花
優樹「男女が逆になっているような・・・」
桜花 「あー!そんなこと言って~!」
桜花 「優樹くんの性差別表現におしおきしちゃうよ?」
まるで昼下がりの大樹に支えを求めて巻き付く植物のように桜花が僕に文字通り絡み付く
フィールドの森より遥かに美艶を含めた四肢を僕の胴体に巻き付かせる
優樹「さ、さ、さっきまで暑がっていたのに大丈夫なの?」
桜花 「そんな暑さより桜花を取るに決まってんだろ?って言って?」
優樹「いやいや、僕達は冒険者仲間であって・・・」
桜花 「え~、あたしは・・・それだけでじゃないよ?」
優樹「え、え・・・」
桜花 「ん~本だとこのまま猪突猛進されてるのに、何が足りないんだろう・・・」
優樹「今日はちょっと頑張りすぎて疲れてるし・・・」
すると不意に何か思い付いたような笑みを浮かべる
桜花 「じゃーん♪」
優樹「ちょっ!」
はだけさせた箇所に目が釘付けになる
彼女はまるで石化したまま、どんどん頬を染めていく
桜花 「も、もう終わりっ!」
優樹「まだ艶霧の幻惑が残ってるのか・・・?」
むっと怒る表情を見せ、また絡み付けば僕に先程見せた部位を押し付ける形になる
桜花 「ちゃんと感触あるよね!?あたしは夢や幻なんかじゃないもん」
優樹「ある、ちゃんとあるから!」
桜花 「じ~~・・・」
桜花 「うん、ちゃんと現実だって受け止めた顔だ♪」
やっと濃密な絡みが緩み、柔らかい感触が遠のいていく
敢えて現実と気付かないフリをしてもっと堪能したい気持ちが強くなっていく
優樹「すぐ気付かなければ良かった~・・・」
桜花 「えっ!?」
桜花が照れと驚きの表情を見せた後に、にまにまとした小悪魔な顔付きで僕を見る
桜花 「優樹くんは気付かないまま、どうしていたかったの~?♪」
優樹「うぐ・・・」
桜花 「ずっと気付かなければ良かった~」
優樹「ちょ、めっちゃ似てる声と顔で真似しないで!」
桜花 「あはは」
豊かに艶色を含む花顔は十分な陽射しを浴びて鮮やかな恋色を見せる
桜花 「・・・優樹くんのえっち」
優樹「幻艶より凄い魅力で誘惑されてしまった」
桜花 「あたしを構い忘れて考え事したら、また誘惑してあげる♪」
満足してくれたのか寄り添い可愛らしい瞳を閉じた顔が間近に映り、その表情からは何の警戒心も感じられない
僕は動悸が激しくなって寝れないのに・・・やっぱり理不尽だ
桜花 「優樹くんの心音聴くの好き♪」
優樹「桜花は僕に懐いてるだけ、桜花は俺に懐いてるだけ・・・」
桜花 「優樹くんだけだよ?」
細めた笑みと共にそう言うと、また絡み付いて僕に甘える
桜花 「こうしたいって思うのも優樹くんだけ」
優樹「わ、わかった!もう寝よう!」
桜花 「うん、一緒に寝る~♪」
まさかの予想外の事態だ
実際の冒険では無くある意味就寝前の夜の冒険が突如始まる
幻想的な濃艶さと現実的な肉感を伴う魔界最強の小悪魔に心と体を乗せた好色の猛攻を受け続けさせられる
優樹「もう十分だよね、寝よう?」
桜花 「え~!このまま夜更かしして、明日はお店おやすみしよう?」
優樹「なんでそこまで積極的に・・・」
桜花 「今までは命は始まった時からゆっくり終わってゆくって思ってたけど」
桜花 「そうじゃないんだって気付いて後悔したくないって思ったからだよ」
合点が行った
僕が不甲斐ないせいで不安が強くなって後悔させたからか
肝要は強くなって安心させる事であり、そうなれば桜花も落ち着くのかもしれない
優樹「不安にさせた責任はちゃんと撫でて可愛がるから、安心したら寝るんだぞ?」
桜花 「んふー♪もっといっぱい撫でて?」
半刻程撫で続けると次第に目を閉じたまま静かな寝息を奏でて、美麗で仄かな喜色を浮かべて見せてくれる
僕も・・・この温もりの中で少しだけ・・・休もう・・・