竹田くんのお昼ごはん

あいざわあつこ

第二話 しらすたっぷりおにぎり(脚本)

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〇教室
  ピコン。
たけ「『これが終わったら』」
たけ「『めしばい』」
松岡春斗(『あーめしだな』)
教師「で、ここの部分に公式を当てはめるとだな」
  ピコン。
たけ「『はらへりむり』」
松岡春斗(『おまえ毎日言ってね?』)
たけ「『せーちょーき』」
松岡春斗(『それ昨日も聞いた』)
たけ「『そいやさ』」
松岡春斗(『ん?』)
教師「だから、ここは大事なんだ」
松岡春斗(『たけ?』)
教師「テストに出るからなー」
松岡春斗(『もしもーし』)

〇学校の屋上
松岡春斗(おせえな、たけ)
  ドスドスと重たい足音が聞こえてくる。
  もうその音だけで、たけが苛ついていることがわかった。
竹田夏樹「はあああああ・・・!」
松岡春斗(ため息、でかすぎだろ)
松岡春斗「どったの?」
竹田夏樹「聞いて・・・つか聞け、まっちゃん! さっきさー、まっちゃんとメッセしてたばい?」
松岡春斗「ああ」
  言いながら、たけが俺の隣に腰を下ろす。
  そして、不機嫌そうに唇を尖らせた。
竹田夏樹「したらさー、バレて。しかも保体の鈴木 ! あいつ、俺のこと目のカタキ? にしてるけん・・・」
松岡春斗「途中で来なくなったのはそういうことか」
竹田夏樹「っかー、ハラタツばい! あいつ以外だったら、無視できんだけどな」
松岡春斗「いや、無視すんなや」
竹田夏樹「あームカムカする! あのゴリラ! まっちゃん、はよ! はよ、メシ!」
  俺に向かって手を出し、くれくれと動かす。
  その催促する仕草はまるでひな鳥みたいで、冗談抜きで餌付けだな、と思う。
松岡春斗「へいへい。あ、でも今日はちょうどよかったかもな」
竹田夏樹「なにが?」
  弁当箱をかばんから取り出して、たけに渡す。
  中身は少しのおかずと・・・。
竹田夏樹「コメぇ!! おにぎりだ、おにぎり!」
  例のごとく、俺からひったくると、たけはにんまりと笑い手を合わせる。
竹田夏樹「いっただっきまーす!」
松岡春斗「しらすたっぷりのおにぎりだ。ありがたく食えよ?」
竹田夏樹「ふあい! んぐもぐっ! うめぇ!」
  ニコニコと笑うたけの顔には、さっきまでの苛立ちの影はもうない。
松岡春斗(自分のメシで、好きなやつが笑うって最高だな)
  思わず、つられて俺も笑う。
竹田夏樹「んだけどさ・・・んぐっ。どこが、ちょうどいい、なん?」
松岡春斗「ああ、しらすにはカルシウムが豊富に入っているんだ。 たけも聞いたことあるだろ? カルシウム」
竹田夏樹「バカにすんな! 牛乳に入ってるやつばい?」
竹田夏樹「・・・しらすって牛乳なんか?」
松岡春斗「んなわけあるか。もういいや」
竹田夏樹「あ、俺を見捨てたな!?」
松岡春斗「見捨てたくもなるわ、バーカ」
竹田夏樹「ひでぇ。あっ!? これ、わかめ入ってるー」
松岡春斗「ああ。わかめは食物繊維やミネラルが豊富だからな、身体にいい」
竹田夏樹「ほへぇ・・・わかめは身体にいい」
松岡春斗(繰り返されるとさらにバカっぽい)
竹田夏樹「俺さぁ、わかめご飯って好きなんだよな。給食でたまに出たばい?」
松岡春斗「あ、わりぃ。給食、食ったこと無い」
竹田夏樹「はああ!? なんで!?」
松岡春斗「いや、なんでって」
竹田夏樹「そういや、まっちゃんって、小中、頭いーとこだったんだっけ」
  たけの言葉に、一瞬思考が止まる。
松岡春斗「・・・ん。うん、まあ」

〇教室
  胸をよぎるのは、入学してすぐのこと。
  周りからの奇異の目が刺さって・・・。
女子生徒1「松岡君、明城中かららしいよ」
女子生徒2「え、超名門じゃん。なんで冬校に?」

〇学校の屋上
松岡春斗「・・・・・・」
竹田夏樹「っかー、まっちゃんて可哀想なんだな」
松岡春斗「え?」
竹田夏樹「お前、知らないんだろ」
松岡春斗「何を?」
竹田夏樹「あのな、プールの後の給食のカレー。 ・・・あれは、世界一の食いもんばい」
  真剣な顔で言って、たけが俺を見る。
  その頬には、米粒がたくさんついていた。
松岡春斗「ふっ、ふふ・・・。ガキかよ」
竹田夏樹「んあ? なんだよ!」
松岡春斗「別に? たけは、ガキでいいなってそう思っただけだ」
竹田夏樹「意味わかんねぇ。んぐ、もぐ・・・」
  不満げに言って、たけがおにぎりを頬張る。だが、一口食べれば・・・。
竹田夏樹「あっ、こっちには梅! すっぱ!」
松岡春斗「カリカリ梅、美味いよな」
竹田夏樹「美味いっ!」
松岡春斗(単純だな)
松岡春斗「・・・梅にはクエン酸だけでなく、鉄分なんかも豊富に含まれてるんだ」
松岡春斗「だから、自称成長期のお前には、必要な食い物なんだよ」
松岡春斗「あと、しらすと一緒に摂取することによってカルシウムの吸収効率を上げるとも言われているんだ」
竹田夏樹「・・・ん」
松岡春斗「だから、今回のおにぎりには・・・。たけ?」
竹田夏樹「・・・・・・」
  ふと視線を向けると、おにぎりを持ったままたけが寝こけていた。
松岡春斗(マジか。食ったまんま寝るとか、ある意味器用だな)
  そっと起こさないように、手からおにぎりを取る。
  すると、たけの口がむにゃっと動いた。
松岡春斗「・・・・・・」
竹田夏樹「ぐう・・・ぐう」
  盛大な寝息をこぼすたけ。
  その頬に、指を伸ばす。
  そして、ぷに──
松岡春斗「やらけぇ・・・」
梅村「ああああ!?」
  でかい声がして振り返る。
  すると、そこには昨日の「梅」と呼ばれた男子生徒がいた。
梅村「・・・ちょっと、センパイに何触ってんスか! ああ?」
松岡春斗「お前、昨日とは態度違くね?」
梅村「センパイが寝てんのに、かぶる猫なんてないッスね」
松岡春斗「お前ってそういう」

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