鎖女の話をするな

鳥谷綾斗🎩🦉(たまに風花ユク❄️)

第6話/先輩とのしあわせなデート(脚本)

鎖女の話をするな

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〇ファストフード店の席
エミリ「莉々子のやつ、サイッアク!!」
エミリ「急に柏木先輩に近づいてさ!」
エミリ「あんな地味で、毎日つまんなさそうな顔して、そのくせ自分からは何もしようとしない子が〜〜〜!!」
エミリ「あっ、紙コップつぶれてジュースこぼれた! 莉々子め!!」
エミリの友達「落ち着きなって。はい、ティッシュ」
エミリの友達「でもキレるの分かる。 莉々子、まじチョーシ乗ってるもん」
エミリ「しかも明日、一緒に映画と買い物に行くって・・・」
エミリ「ふざけんなっての!」
エミリ「そもそも、なんで先輩は莉々子なんかに!? キッカケは何なのよ!」
エミリの友達「あーそれね、どうも『お化け』関連らしいよ」
エミリ「お化け?」
エミリの友達「鎖女」
エミリの友達「っていうのに、狙われてるんだって。 それが何かは知らないけど」
エミリ「鎖女?」
エミリ「調べてみよ・・・あ、あった」
エミリ「『鎖女』っていうのは──」

〇映画館の入場口
ユウナ「莉々子ー! こっちこっちー!」
莉々子「ユウナ、おまたせ!」
ユウナ「大丈夫だよ、上映時間まで余裕あるし」
ユウナ「あれ、柏木先輩は?」
柏木「莉々子!」
莉々子「はい!」
柏木「バイクを停めてくるから、俺が戻ってくるまで絶対に一人になるなよ」
柏木「すまないが、莉々子をよろしく頼む」
ユウナ「・・・はーい💕」
ユウナ「おいおい何ですか今のは〜」
ユウナ「バイクで送ってもらって? 一人になるなって言われて? さらに友達に「莉々子をよろしく」?」
ユウナ「彼氏では? まごうことなき彼ぴっぴでは〜〜〜???」
莉々子「ち、違うって」
莉々子「先輩はあたしを守ってくれてるだけで・・・!!」
ユウナ「あはは。てか、今日のコーデ可愛いじゃん」
ユウナ「私服、Tシャツデニムばっかなのにさー さては気合い入れたなー?」
莉々子「ま、まあね」
莉々子((ゆうべ必死で考えたんだもんね))
莉々子((先輩はどんな感じが好きなんだろ、とか。  考えるの、すごく楽しかった))
莉々子「誰かのことを想ってコーデ考えるのって、超楽しいんだね」
ユウナ「よっ、恋する乙女!」
柏木「待たせてすまない」
莉々子「大丈夫です!」
ユウナ「じゃ、シネマエリアに行きましょっか!」
莉々子「うん!」

〇アパレルショップ
ユウナ「はあー、映画最高だったー!!」
  映画が終わると、あたしたちはショッピングエリアに移動した。
ユウナ「若い方の刑事役の俳優さんが、あたしの推しなんですよ!」
柏木「脇役だったが、いい味を出していたな」
ユウナ「そーなんですぅ!!」
ユウナ「あたし、あの人の演技が大好きで、 いつか共演できたらなぁって夢見てます!」
莉々子「ユウナの夢だもんね」
莉々子「ユウナならいつか叶えられるよ!」
  これは、本心。
莉々子((ちょっと前までキラキラするユウナがまぶしくて、素直に応援できなかったけど・・・))
莉々子((今は、心からそう思えちゃう))
莉々子((柏木先輩の、おかげだ))
莉々子「(心に余裕があるって最高だなぁ)」
ユウナ「そんじゃ、あたしはこれでドロンします!」
莉々子「うん。午後から部活なんだよね」
ユウナ「そう。何やら重大発表があるらしいの。 どんなのかは分かんないけどね」
ユウナ「ではでは柏木先輩、失礼しまーす!」
柏木「今日はありがとう。 すまなかったな、邪魔して」
ユウナ「いえいえ❤️」
ユウナ「莉々子、デート楽しんできてね。 また報告よろしく!」
莉々子((もー、からかっちゃって!))
莉々子((・・・嬉しいけどっ))
柏木「この後は買い物だったか?」
莉々子「はい!」
莉々子「あっ、すぐ終わらせますんで!」
柏木「ゆっくり見ればいい。せっかくの休日だし」
柏木「ほら、どこの店に行きたいんだ?」
莉々子「(先輩は、あたしをキュンとさせる天才ですか?)」
莉々子「(あ──・・・好き)」
莉々子「先輩! このトップス、白と黒だったらどっちがいいですか?」
柏木「何故俺に訊くんだ・・・ 白か? 明るく見えるし」
莉々子「やっぱり白ですよね!」
ショップ店員「見て見て、すごいイケメン!」
ショップ店員「隣の子、彼女かな? うらやましい〜!」
莉々子((ふふふ♪))

〇本屋
莉々子((服買ったし、コスメ買ったし、可愛いルームウェアも買った! 最後は本屋!))
莉々子((よーし、参考書を選んで、先輩に『勉強熱心な子』アピするぞー!))
莉々子「先輩、数学の参考書でオススメありますか?」
柏木「ああ、それなら」
莉々子((・・・ん?))
莉々子((あの雑誌コーナーにいる子たちって・・・))
莉々子「(ウソ!!)」
莉々子((エミリたち、なんでいるの!?))
莉々子((うわぁ・・・今日もすっごいニラんでくる))
莉々子((なんでここにいるの? まさか尾行してきたとか!? 怖!))
莉々子「(どうしよ・・・)」
柏木「莉々子、数学ならあれがいいぞ 俺も使っているが分かりやすい」
莉々子「あっ、ありがとうございます。 よいしょ・・・」
莉々子「(あー、一番上の棚だから届かない・・・)」
  難儀していると、先輩が参考書を取ってくれた。
  背が高いから余裕で届く。
柏木「ほら」
莉々子((あーーもう!))
莉々子((今日中にキュン死にしちゃうかも・・・!!))
  後ろでエミリたちがブチギレる気配を感じながら、この幸せをかみしめた。

〇デパートの屋上
  買い物が終わって、屋上に来た。
  暑いせいか、ひとけは少ない。
  先輩はジュースを買いに行ってくれている。
莉々子((エスコートの仕方が完璧です・・・💕))
莉々子((はー、ダメ、顔がにやけちゃう!))
莉々子((・・・ずっと))
莉々子((ずっとこんな日が、続けばいいのに──))
エミリ「──莉々子」
莉々子「エミリ!?」
莉々子((ウソ、まさか直接話しかけてくるなんて・・・))
エミリ「ずいぶん楽しそうじゃない?」
エミリ「柏木先輩、一見ぶっきらぼうだけど、紳士的で優しいものね」
エミリ「そんな人に大事に扱われて、サイコーの気分でしょ?」
莉々子((それはまあ・・・はい))
エミリ「でもね 勘違いしないでよ」
莉々子「えっ・・・」
エミリ「先輩があんたを守るのは、 『鎖女』に狙われているからよ!」
エミリ「そのこと、忘れんじゃないわよ」
莉々子「・・・」
  指の先が、一瞬で冷えた。
柏木「莉々子、待たせた」
柏木「どうした? 顔色が悪いが」
柏木「まさかまた『鎖女』が・・・?」
莉々子「あ、違うんですっ」
莉々子「・・・ただ・・・」
莉々子「あたしには何もない、 ってことを・・・思い出して」
柏木「え?」
莉々子((・・・バカ、あたし))
莉々子((こんな暗いこと口にしたら、先輩を困らせちゃうのに・・・))
莉々子((でも・・・))
莉々子「あたしって、つまんない子なんです」
莉々子「帰宅部だし、見た目も勉強も運動も普通で」
莉々子((ユウナみたいにまっすぐ『好き』って言えるものも、  エミリみたいに貫ける『我の強さ』も))
莉々子((・・・あたしは持ってない))
莉々子「もうほんと平凡そのもので、 中身とか空っぽだな──って・・・」

〇デパートの屋上
  あれ、おかしいな
  先輩と一緒にいるのに、
  世界に色が無い。
莉々子((・・・分かってる))
莉々子((あたしの毎日がつまんないのは、あたし自身のせい))
莉々子「(ちゃんと分かって──)」

〇デパートの屋上
柏木「平凡の、どこが悪いんだ?」
莉々子「・・・え」
柏木「・・・俺はよく、この能力(ちから)と家柄のせいで」
柏木「非日常的な出来事に遭遇する人たちを、たくさん見てきた」
莉々子「・・・」
柏木「その人たちは口をそろえて言ったよ。 「平凡な日常こそが一番尊い」、と」
莉々子「とうとい・・・」
柏木「『空っぽ』なのだって、ちっとも悪いことじゃない」
柏木「これから何でも、いくらでも中身を入れられるということなのだから」
莉々子「・・・!」
  先輩の満開の笑顔なのに、
  キュンってするのも忘れた。
柏木「・・・いい天気だ。空が綺麗な色だな」

〇空
莉々子「(ほんとだ・・・綺麗)」
莉々子「・・・」
莉々子「(・・・今、自分の中身が空っぽでも)」
莉々子「(これから何でも入れられる、か・・・)」
  先輩の言葉が、
  あたしの心の、柔らかいところに沁み込んでいく。

〇デパートの屋上
莉々子「そうですね」
莉々子「変なこと言って、すみませんでした」
  先輩が微笑み返した、
  その時だった。
  ・・・ジャラッ

〇デパートの屋上
莉々子((聞こえた! 鎖の音!))
莉々子((ウソでしょ、こんな真っ昼間から現れるの!?))
莉々子「(鎖女!!)」
柏木「莉々子、俺から離れるなよ!」
莉々子「は、はい」
莉々子「(大丈夫、先輩が守ってくれる──)」
  遠くで女の子の悲鳴が聞こえたと同時に、

〇デパートの屋上
莉々子((景色が元に戻った・・・!?))
莉々子「鎖女が現れない・・・!?」
  また悲鳴。
  周囲を見回す。
エミリ「きゃあああああ!!」
  エミリ!?
エミリ「いやっ、来ないで!!」
エミリの友達「どうしたの、エミリ!!」
エミリ「鎖が・・・!!」
エミリ「鎖をつけた女がぁ!!」
莉々子((今、なんて・・・))
莉々子((エミリのところに鎖女が!?))
莉々子「! 先輩──」
  ダッ
  
  先輩がエミリの元へ走り出す。
莉々子「あ・・・」
  あたしは反射的に先輩へ手を伸ばしたけど、
  届かなかった。
  ──先輩が、行ってしまう──
柏木「鎖女!!」
エミリ「えっ、柏木先輩!?」
柏木「下がっていろ!!」
  先輩はエミリの前に立つと、
  笛を吹いて小瓶の水を空中に撒いた。
  そこにいる『鎖女』に向かって。
  あたしには、何も見えない。
  あたしには、もう『鎖女』は見えなかった。
柏木「大丈夫か? もう浄化したが・・・怪我はないか?」
エミリ「はい、あの・・・ さっきのが鎖女って・・・」
柏木「そうだ。 今度はおまえの元に現れたようだな」
エミリ「ど、どうしよう」
エミリ「ただの噂だと思って、私・・・!!」
柏木「大丈夫だ」
柏木「俺が必ず、鎖女からおまえを守る!」

〇デパートの屋上
莉々子「え・・・?」
莉々子「せん、ぱい・・・?」
莉々子((今・・・なんて言ったの?))
  あたしは、一歩も動けなかった。

次のエピソード:第7話/ずっと一緒にいたいだけ

コメント

  • 柏木先輩、彼氏だとしたら完璧な言動ですね!莉々子ちゃんじゃなくてもトキメキますね!でも、このラストは、、、次回は莉々子ちゃんの傷心の様子を見ることになりそうですね

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