黒いキューピット

平家星

#8 ステップアップ・サイリウム(後編)(脚本)

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〇ライブハウスのステージ
  光輝の目線の先、テツオがサイリウムを持っている。
加藤光輝「や、やめろーッ!」
テツオ「コハルーッ!」
金子ハル「!」
加藤光輝(そ、そんな! コハルがサイリウムを見てしまった・・・!)

〇ライブハウスの入口
金子ハル「テツオさん! サイリウム、振ってくれてるの、見えたよ!」
テツオ「へへへ・・・。コハル、これ作ってきた。・・・テツオ特製のサンドイッチだよ」
スタッフ「食べ物のプレゼントはダメです!」
金子ハル「え~。いいじゃん。テツオさんが作るサンドイッチなら、私、食べてみたいな」
加藤光輝「!?」
加藤光輝(ファンから食べ物を受け取ったことなんてないのに・・・。やっぱり、二人の間に、サイリウムの力が働いてる・・・)
  光輝は、満足そうに会場を後にするテツオの後ろ姿をじっと見ている。
加藤光輝(テツオのアカウントはすぐわかる。何とかして、サイリウムを取り返さないと)

〇ファミリーレストランの店内
  数日後
テツオ「連絡してきたと思ったら、サイリウムを返せだぁ?」
加藤光輝「はい・・・。それ、俺のなんです。この前のライブで落としちゃって・・・」
テツオ「はあ? 何だと? 証拠あんのかよ?」
加藤光輝「そ、そんなのないけど・・・」
テツオ「じゃあダメだな。あれは俺とコハルの思い出の品、手放すわけには行かねぇ」
加藤光輝「・・・思い出の品?」
テツオ「俺を尊敬するお前だから教えてやるよ」
テツオ「これを拾ったライブのあと、コハルのやつ、俺に、SNSで連絡してきたんだよ。『会いたい』ってな」
加藤光輝「は・・・?」
テツオ「俺たちは雰囲気のいい店で食事した。 ・・・びっくりしたよ。まさか、コハルの方から告白してくるなんて」
加藤光輝「告白!?」
テツオ「もちろん、俺の返事はイエス。俺たちは晴れて、カップルになったわけだ」
加藤光輝「う、嘘だろ・・・」
テツオ「ま、信じたくない気持ちは、わかる」
加藤光輝「ふざけんな! サイリウム、返せよ! 俺のだって言ってるだろ!」
テツオ「・・・ずいぶん偉そうな口を利くじゃねえか? ああん?」
加藤光輝「ひっ、ひぃ・・・」
テツオ「生意気なんだよ。二度と俺の前に現れるな!」
加藤光輝「本当に二人が付き合うことになるなんて・・・。『友達』、『恋人』と来たら、次はまさか・・・『結婚』!?」

〇ライブハウスのステージ
加藤光輝(コハルがテツオと結婚なんて、絶対にあり得ない)
加藤光輝(誰よりコハルを思っている俺なら、結婚相手にふさわしいのに・・・)
加藤光輝「もうすぐ開演。なんとかテツオを見つけて、サイリウムを取り上げないと・・・」
テツオの声「コハル~ッ! 今日も俺のために歌ってくれよ~ッ!」
加藤光輝「!? 今の声!」
  光輝は声の方へ、人をかき分け進んだ。
加藤光輝(・・・いた!)
テツオ「コハル~ッ!」
加藤光輝「サイリウムは返してもらうぞ!!」
テツオ「!? お前か! やめろ!」
加藤光輝(何としても、サイリウムを俺の手で・・・コハルに見せるんだッ!)
  光輝は、体制を崩したテツオから、ついにサイリウムを奪う。
加藤光輝「コハルーッ!」
金子ハル「!」
加藤光輝(こっちを見た! 成功だ・・・!)

〇ライブハウスの入口
テツオ「ふざけんな! 俺のこと好きって言ったじゃねえか!」
金子ハル「・・・ごめんなさい。どうしてあんな気持ちだったのか、わからないの・・・」
テツオ「いいから来い! デートするぞッ!」
金子ハル「や、やめて!」
加藤光輝「その手をはなせ!」
加藤光輝「コハル、嫌がってるだろ!」
テツオ「またお前か! いちいち絡んで来るんじゃねえ!」
加藤光輝「・・・俺は、コハルが好きなんだ! コハルはずっと、俺が守る!」
金子ハル「光輝さん・・・」
テツオ「俺を馬鹿にするんじゃねぇ!」
  暴れ出しそうなテツオを、スタッフが取り押さえる。
テツオ「放せッ! くそぉ! 放せぇ~!」
金子ハル「光輝さん・・・ありがとう。今の、本当?」
加藤光輝「え?」
金子ハル「私を、守ってくれるって言ってた」
加藤光輝「・・・う、うん。本当だよ」
金子ハル「光輝さん、私と・・・結婚しよ!」
加藤光輝「!?」

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