走れるなら走れ(脚本)
〇魔法陣
菓子屋「日持ちする焼き菓子やキャンディ、 クッキーも詰め合わせやした! 砕いてミルクに混ぜれば栄養満点っす!」
リュート「・・・有りがたい」
菓子屋「離乳食としてもイケまっす! 召し上がってくだせえ!」
ワイズ「あーい」
リュート「ありがとう」
パン屋「こちら乾パンにしたクロワッサン こちら乾パンにしたバターロール こちら乾パンにした乾パンです」
リュート「・・・ふむ?」
パン屋「包みを開くとこの通り大きくなりますので お二人分以上、数ヶ月は持つ量です」
ワイズ「あー」
リュート「なるほど、ありがとう」
布屋「ワイズ君を背負ったり抱っこするのは 大変でしょう、これからますますと重く なりますしねえ!」
リュート「ああ、そうだな」
布屋「そこでコチラ! この布をこう巻いてリングで止めると 簡単にオンブが出来ます!」
リュート「ほう」
布屋「こうすると抱っこも両手が空きます! そしてなんと! 今なら荷物を全て包める大きな布付き!」
リュート「布屋か」
布屋「引っ張れば家も包んで持って歩けます! 普段はお布団代わりに出来ますよ! ワイズ君のお名前も刺繍しておきました!」
ワイズ「わー」
リュート「とても助かる、ありがとう」
布屋「いえいえ、また寄って下さいね!」
リュート「ああ、必ず」
服屋「はーい、抱っこの実演をした私が お洋服屋さんでーす!」
リュート「ああ・・・その、大丈夫か?」
服屋「何がですか? 何もかも大丈夫ですよ! お着替えをご所望でしたね! 後ろを向いて下さい!」
リュート「ああ、はい」
服屋「ちぇーんじ!」
リュート「・・・」
服屋「・・・よいしょ、うんしょ」
服屋「あ、腕上げて下さい」
リュート「・・・人力で『ちぇーんじ』か」
服屋「今は余計な魔力は使えませんし」
服屋「はい! どうですか?!」
リュート「ほう?」
服屋「マントで後ろも前もワイズ君を隠せます! サイズも良さそうですね!」
リュート「ああ、動きやすい ・・・良い腕だな?」
服屋「よっしゃー! あ、今まで着てたのは包んでおきますね! ワイズ君のお着替えとオシメ一式も!」
リュート「ありがとう、助かる」
服屋「あー、あの・・・ ほっぺた触ってみてもイイですか?」
リュート「どうぞ」
服屋「ああー・・・可愛い! 柔らかい!」
服屋「・・・どうか危ない目に遭いません様に ・・・幸せになってね」
ワイズ「だ!」
リュート「ありがとう」
服屋「・・・はい、あの、ううっ・・・ お気をつけて・・・」
水屋「美味しいお水は包んでおきます 皆と同じく、蓋を開けると大きくなります」
水屋「ワイズ君用に果汁100パーセントの瓶も サービスです」
ワイズ「ま!」
リュート「ありがとう、飲ませてみる」
水屋「ああ可愛いですね、いい匂いするし」
ワイズ「だあ」
リュート「ありがとう」
ロゼ「・・・初めまして、ロゼと申します」
リュート「ああ・・・」
宿屋の主人「はい、連れて来ちゃいましたよ」
リュート「ああ、もしや・・・」
宿屋の主人「娼館のロゼです 迎えに行く暇もありませんからね」
ロゼ「よろしくお願いいたします」
リュート「連れて・・・」
宿屋の主人「行って下さい!」
リュート「しかし、ここを離れ・・・」
宿屋の主人「連れて行って下さい! 大丈夫です、ロゼは娼館に居ますが 客は取ってませんし!」
リュート「そうではなく・・・」
宿屋の主人「ロゼ! 道案内を! このお二人を 無傷で町を抜けさせるのが貴女の仕事!」
ロゼ「はい!」
〇岩の洞窟
ロゼ「急ぎましょう! 急げと言われてますし!」
リュート「ああ、まあ・・・本当にいいのか?」
リュート「ろくに別れの挨拶も無しに・・・」
ロゼ「そのうち帰ってくるんですから、 そんな大袈裟にしなくて大丈夫です!」
リュート「・・・そうか」
ワイズ「わー」
ロゼ「あ、ご機嫌ですね」
リュート「こちらが焦ると喜ぶらしい 駆け足の揺れを面白がっているようだ」
ロゼ「まあ、可愛いらしい」
ロゼ「嘘?! こんなに早く?!」
術師「こんにちわ」
術師「んー・・・?」
術師「もしかして、その赤ちゃん?」
術師「なにそれ? すごくない?」
術師「コッチで『教育』し放題じゃない」
術師「はい、ケガする前に赤ちゃん渡して?」
ロゼ「・・・どうしましょう?」
リュート「どうもこうも無いな 一か八か、俺に身を寄せろ」
ロゼ「はい!」
リュート「・・・ワイズ!」
ワイズ「む!」
術師「あれ?」
術師「気配まで消されちゃったかな すごいな、あの子」
術師「・・・でも、うーん・・・」
術師「・・・そこだ」
ロゼ「(・・・んっ!)」
リュート「(大丈夫か、走れ!)」
ロゼ「(・・・はいっ)」
術師「あれ? 外した?」
術師「・・・ちょっと甘く見過ぎちゃったかな」
術師「・・・はあ、また怒られちゃう・・・」