週末カウンセラー はっちゃん

笑門亭来福

第六話(接点)(脚本)

週末カウンセラー はっちゃん

笑門亭来福

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〇エレベーターの中
子供は風の子「止まらない、はっちゃんの幻覚に」
子供は風の子「頑じぃは苦しみ、逃げ出し」
子供は風の子「他の人との接触で」
子供は風の子「欲望の実験や、分析を試みますが」
子供は風の子「自分を見失うような」
子供は風の子「激しい感情が起こりません」
子供は風の子「頑じぃは問います」
子供は風の子「この得体の知れないものは何かと」
子供は風の子「教えて和尚さん!」

〇広い和室
和尚さん「そりゃ、恋じゃ」
頑じぃ「・・・」
和尚さん「恋じゃ」
頑じぃ「・・・」
和尚さん「恋じゃよー」
頑じぃ「・・・」
結ちゃん「恋・・・知らないのぉ?」
頑じぃ「知ってます」
和尚さん「知っとるよな・・・って、結ちゃん!」
頑じぃ「情報として」
頑じぃ「まさか、自分に巡ってくるとは・・・」
和尚さん「なるほど・・・」
和尚さん「まさに、今のお前さんの状態になる」
和尚さん「それが恋じゃ」
結ちゃん「それが恋、こいぃー」
和尚さん「うぉっほん!! わしも、修行時代に」
和尚さん「妻と知りおうた」
和尚さん「修行なんぞ、ふっとんだ」
和尚さん「今までの厳しい修行は、何だったのか!」
和尚さん「怖くなって、情けのうて、悔しくて」
和尚さん「認めたくなかったが、身をまかせてみた」
和尚さん「思い出したんじゃ」
和尚さん「今まで、何一つ無駄なことはなかった」
和尚さん「なんで、こうなるんじゃ?」
和尚さん「と、言うことも、後々必ず」
和尚さん「あぁ、このためじゃったか!」
和尚さん「と、思い当たる」
和尚さん「『今、ここ』」
和尚さん「今の気持ちを大切にしようと思った」
和尚さん「縁じゃな。もちろん、当たり外れはある」
和尚さん「結果、結(ゆい)も授かった」
和尚さん「長ーい目で見ると、時に煩悩、万々歳じゃ」
結ちゃん「子は宝ぁー、宝くじぃー」
頑じぃ「煩悩の結果が、目の前に形として在る」
頑じぃ「と、自分を責めるかも・・・しれません」
頑じぃ「恋が分からないのと同じで」
頑じぃ「いや、それ以上に、自分がどうなるか」
頑じぃ「想像がつきません」
結ちゃん「もったいない、こんな可愛い子かもよー」
和尚さん「わはははは、腹がへったな」
和尚さん「結ちゃん、おむすび頼まれてくれんか」
結ちゃん「はーい」
和尚さん「庫裡(くり)にある、汁も一緒にな」

〇狭い畳部屋
和尚さん「おむすびは、やはり梅じゃ」
和尚さん「真ん中に梅があるもの」
和尚さん「梅の実をシソと混ぜたもの」
和尚さん「梅が悟りで、ご飯が煩悩じゃ、と見る」
「真ん中の梅を目指すように」
和尚さん「ひたすら悟りに向かってきたが・・・」
和尚さん「実は、悟りも煩悩も渾然一体ではないか」
和尚さん「抑制し、排除するのではなく」
和尚さん「あるがままに受け入れる」
和尚さん「受け入れる自分を、受け入れる」
和尚さん「煩悩即菩提(ぼんのうそくぼだい)じゃな」
結ちゃん「漢字が多すぎぃー」
頑じぃ「そうなのかも、しれません」
頑じぃ「ただ、理で理解しても、本能が邪魔をする」
頑じぃ「心の奥底に積み重なった」
頑じぃ「煩悩を否定する気持ちが・・・消えない」
頑じぃ「どうしても、修行した自分を否定したくない」
頑じぃ「・・・」
和尚さん「啐啄同時(そったくどうじ)じゃ」
和尚さん「言葉を尽くしても」
和尚さん「求めない時には、届かない」
和尚さん「どうじゃ、しばらく、ここにおらんか」
和尚さん「自分の身で煩悩を追求しても」
和尚さん「成果はあがらんじゃろう」
和尚さん「恋じゃからな、代理は効かん」
和尚さん「ここで人の煩悩を観察してみたらいい」
和尚さん「ここには、煩悩を抱えた人が訪れる」
和尚さん「人の話を聞き、時に、話を聞かせる」
頑じぃ「ありがとうございます」
頑じぃ「和尚さんと、結ちゃんが、よろしければ」
結ちゃん「よろしい、よろしいー」
結ちゃん「みんなも喜ぶよー」
結ちゃん「・・・」
結ちゃん「おっ!テレビか? って集まるよー」
結ちゃん「名物、甲冑おじさん!」
和尚さん「まぁ、食べよう・・・」

〇畳敷きの大広間
  今日は、頑じぃのお披露目式
檀家1「ホンマなんか?」
檀家2「らしいですわ」
檀家3「せっかく、ですから」
檀家4「しかし、こんな田舎に・・・」
美井(びい)さん「ポツンと田舎の方が、ダーツで乾杯で・・・」
檀家5「生まれて初めてよ、テレビなんて・・・」
「こんにちは、ようこそのお運びで」
「出たぁ! ホンマモンや!」
「時代劇ね! 戦国よ、きっと!」
頑じぃ「あのぉ、テレビでも、映画でもありません」
「またまたぁー」
頑じぃ「ただの甲冑兄やんです・・・残念ながら」
「えぇーっ、みんなに声かけてしもたがな!」
和尚さん「せっかくですから、後で記念写真でも」
和尚さん「その後、サイン会を・・・」
頑じぃ「しません」
結ちゃん「記念講話とか」
頑じぃ「大学でやってた話でよければ・・・」
「大学の先生やて、やっぱ違うな」
美井(びい)さん「そ、そ、作麼生(そもさん)」
「よっ! 美井(びい)さん!」
「待ってました!!」
頑じぃ「せ、せ、説破(せっぱ)!」
美井(びい)さん「僧侶に肉食あるべきや?」
「おぉォォォォーっ」
頑じぃ「肉・・・ダメですか?」
「うちらに聞かれてもねぇ・・・」
「戒律とかで、禁じられてんじゃないの?」
頑じぃ「米や野菜なら、抵抗ないんですね?」
「そりゃ、何か食べんと死んでまうがな!」
頑じぃ「じゃ、肉だけにしたら、どうでしょう?」
「とにかく、殺生はダメなんでしょう?」
頑じぃ「米も野菜も殺生ですよ」
頑じぃ「植物だって叫んでます」
頑じぃ「ぐぎぎぐぐ・・・殺さんといてくれぇーって」
頑じぃ「我々には聞こえませんけど」
「そやろ、そんなん・・・聞いたことないわ」
頑じぃ「想像してください」
「動物も、植物も、感謝していただきましょう」
「食べない訳には、いきませんから」
頑じぃ「確かに戒律は必要です」
頑じぃ「人間は弱いので・・・」
頑じぃ「でも、それ自体が目的じゃないんです」
頑じぃ「それに、いろんな人がいますから」
頑じぃ「弱い人に、強すぎる戒律は」
頑じぃ「それは、もう、自分への、いじめです」
頑じぃ「自分自身へのDVです」
「・・・」
頑じぃ「誰も、自分からは逃げられない・・・」
頑じぃ「時に仏となり、自分を包み」
頑じぃ「時に鬼となり、自分に厳しくもする」
頑じぃ「このバランスが難しい・・・中庸です」
和尚さん(恋の煩悩に翻弄されとんのは、誰じゃ?)
頑じぃ「大切なのは、前向きな心です」
頑じぃ「それが、悟り。菩提心(ぼだいしん)です」
頑じぃ「それでは、話にも出ましたので」
頑じぃ「動物への感謝をささげたいと思います」
頑じぃ「結ちゃん、皆さんに警策(きょうさく)を」
結ちゃん「はーい、おひとつ、どうぞ」
頑じぃ「それでは、このように構えて」
頑じぃ「ゆっくりと動かしながら」
頑じぃ「色んな動物のヨガのポーズをとります」
頑じぃ「輪になって、回りながら、ご唱和ください」
和尚さん「わしの! わしによる! 鷲のポーズ!!」
「わしの! わしによる! 鷲のポーズ!!」
  ニワトリやないかい!
美井(びい)さん「たてがみが、パンチパーマな、ライオンの ポーズ」
「たてがみが! パンチパーマな! ライオンのポーズ!」
  逃げられとるやないかい!
「あらゆる困難をすり抜ける、うなぎのポーズ」
「あらゆる困難をすり抜ける、うなぎのポーズ」
  あーっ、つかみにくい! って
  タコやないかい!
  嘘でしょ! うなぎって、魚類なの?
  ♪ えーらいやっちゃ、えーらいやっちゃ
  ♪ よいよいよいよい
  ♪ 踊る阿呆に、見る阿呆
  ♪ 同じ阿呆なら、踊らにゃ損々

〇銀閣寺
  dear 一遍上人(いっぺんしょうにん)様

〇屋敷の門
  初めて手紙をお送りします

〇路面電車のホーム
  あなたが亡くなられてから、千年近く

〇山間の集落
  この国もずいぶん、変わったんでしょうね

〇牧場
  命をいただいている動物を供養しました

〇築地市場
  これも、一種の踊り念仏なのでしょうか

〇街の全景
  あなたが今の世で起こす
  踊り念仏が見たい

〇エレベーターの中
子供は風の子「こんにちは! 風の子です」
子供は風の子「ついに、美井さんと頑じぃが出会いました」
子供は風の子「一方、はっちゃんは、オンラインバーで」
子供は風の子「今日も、お客が1-2時間待ち」
子供は風の子「スリーアミーゴす、が放っとくはずがなく」

〇魔王城の部屋
学生1「きゃあぁぁぁぁ」
学生1「茶柱がー」
学生1「茶柱がーっ・・・スタンダーップ!」
学生2「もー、なんなのよー」
学生2「返しなさいよっ、最初の3コマ!」
学生2「ねぇ、模様替えした? この部屋・・・」
学生3「客が全く来ない・・・けど丸儲け」
学生3「課金は、この部屋だからでーす」
学生3「複雑だわ・・・」
学生1「客は来る、でも、素通りなんよ」
学生2「それなー」
学生3「そりゃ、部屋の模様も変えるわなー」
学生2「長年連れ添った亭主みたいに」
学生1「全然気づかんかったけど」
学生3「いじけた気持ちまんまに、魔王の部屋風」
学生3「あ、いらっしゃーい」
学生2「あ、はっちゃんの部屋は奥デスよー」
学生1「・・・ねー、入ってみる?」
「???」
学生1「奥の院よー」
「あー! それなー」
学生2「どうやって?」
学生3「見学させくださーいって、言う?」
「なんかねー、抵抗ありー」
学生1「模様替えで新しく買ったカーテン!」
学生2「やっちゃう?」
学生3「均等にね、三分割」
学生1「どうしても、指が出ちゃうねー」
学生2「細かいことは、気にしない」
「どう? どうなのよ?」
「ひょっとして、完璧なのでは」
「見えてますかー?」
「・・・」
「忍法! 壁カーテンの術!」
「痛っ! 足踏んでるし」
「ごめん、ごめん」
「ねー、忍法壁カーテンって・・・」
「この部屋で成立するとさー」
「あっちじゃ、ダダわかりじゃない?」
「細かいことは気にしない」
「じゃ、このまま、蟹の横ばいで移動!」
  カーテンに隠れたスリーアミーゴす
  奥の、はっちゃんの部屋へ潜入します

〇個人の仕事部屋
「シンプル 伊豆 ベスト」
はっちゃん「基本は天然ツッコミ、略してKY、週末カウンセラー はっちゃんです」
  えっ?
  何なん?
  アイドルなん?
はっちゃん「よろしく」
美井(びい)さん「お願いします」
「ワタシらって・・・何なん?」

〇エレベーターの中
子供は風の子「次回予告」
子供は風の子「美井(びい)さんの悩み!」
子供は風の子「見てね、きっとだよー」

次のエピソード:第七話(美井さんの悩み…予告編)

コメント

  • ニワトリやないかいっ!
    戒律って難しいですねー!とても殺生しないと生きていける自信がありません...

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