第七話 魔法決戦(2)魔女の秘密(脚本)
〇暗い廊下
天羽春乃「ディアナさんの声がしたのは、この部屋の中だ」
〇貴族の部屋
ディアナ「フフッ、いらっしゃい。よくここまで来られたわね」
ディアナが、ベッドに寝そべって待ち構えている。
天羽春乃「いた! ディアナさん、お覚悟!!」
天羽春乃「パーリル マクテク・・・あれ!?」
ディアナ「あら、何がしたいのかしら?」
天羽春乃「左手の腕輪がなくなってる!! なんで!?」
ディアナ「地下牢のところで、アヤメにこっそり奪わせておいたのよ」
ディアナ「姿を消す魔法を使ってね」
天羽春乃「あ、ほんとに消えた!!」
ディアナ「彼女の特技よ。だから誰にも気づかれずに子供をさらって来られるの」
ディアナ「見た目も綺麗だし、ほんとに役に立つ娘だわ。フフッ・・・」
アヤメ「ありがとうございます、ディアナ様」
ディアナ「ところで、春乃」
ディアナ「あなた、あの腕輪で私を消滅させる気だったんでしょ」
ディアナ「あんたたちの手口はお見通しよ」
天羽春乃(だからずっと隠れてたのか・・・)
天羽春乃(そうだ・・・!!)
天羽春乃「パーリル マクテク ポーナパルト♡ ディアナさんもカワイイ動物になっちゃえー!!」
ディアナ「あら、ちょっとくすぐったかったわ」
天羽春乃「がーーん・・・!!」
ディアナ「これを見て」
小棚の上を指し示す
天羽春乃「・・・え? あれ!?」
ディアナ「フフッ・・・炎を目にしたとたん、体が固まって動けなくなったでしょ」
ディアナ「それは絞首刑になった罪人の右手を死蝋にして、それを材料にして作った魔法のアイテム〈栄光の手〉よ」
天羽春乃「フー!フー!」
ディアナ「そんなもので消せるわけないでしょ、ほら」
ディアナは指でつまんで見せるが、炎はビクともしない。
ディアナ「痺れ薬はあまり効かなかったけど、これなら間違いないわ」
ディアナ「アヤメ、もうここはいいわ。おまえは明日の準備を進めて」
アヤメ「かしこまりました、ディアナ様」
天羽春乃「ディアナさん!! 弥生ちゃんと千尋ちゃんを返してください!!」
ディアナ「言ったでしょ、彼女たちは大事な生贄なの」
天羽春乃「そうだ! 他にも誘拐した小さい子たちがいっぱいいるんでしょう!?」
ディアナ「そうね、全部で十三人よ」
天羽春乃「どこにいるんですか? その子たちも返してください!!」
ディアナ「それはもっと無理な話よ。生贄にしたからとっくに死んでるもの」
ディアナ「死体でいいなら、庭の花壇のそばにまとめて埋めてるけど」
天羽春乃「・・・・・・許せぬ! 人間じゃない!!」
天羽春乃「ディアナさん! あなたには、お天道様の下を歩く資格がない!!」
天羽春乃「どうしてそこまでして、魔力が欲しいんですか!?」
天羽春乃「今のままでじゅうぶんでしょ!」
ディアナ「そんなこともわからないの、お嬢ちゃん? きまってるでしょ」
ディアナ「魔力が強くなれば、それだけ大きな依頼がこなせるようになる」
ディアナ「つまりそれだけ報酬がたんまり入って、私の貯蓄が増えるのよ」
天羽春乃「え、貯金?」
ディアナ「そうよ、 贅沢もできるし──」
ディアナ「老後も安心でしょ!!」
ディアナ「逆に訊きたいわ。 それ以外に何の目的があるっていうの?」
ディアナ「侮辱した奴らを血祭にあげる? そんなのはとっくの昔にすませてるから」
天羽春乃「ええと・・・」
ディアナ「あら、もうこんな時間だわ」
ディアナ「私も明日の儀式のために準備しないと。あなたとはここでお別れね」
ディアナ「死になさい。 ヴィリディス ベネヌム!」
天羽春乃「呪文!? わ、なんか防御!! パーリル マクテク ポーナパルト♡」
天羽春乃「・・・・・・」
ディアナ「チッ、さすがにこんな小魔法では仕留められないわね」
天羽春乃「あ、だいじょうぶだ」
ディアナ「大魔法ならイチコロだけど、大事な儀式の前に、余計な消耗をするわけにはいかないし・・・」
ディアナ「しょうがないわね。あなたは儀式が終わってから、ゆっくり息の根を止めてあげるわ」
ディアナ「たっぷり拷問にかけてね」
ディアナ「泣き叫ぶまで鞭でお尻を打つか、飢え死ぬまで放置するか・・・フフッ」
ディアナ「そうそう、あの白猫ちゃんなら、今頃は花壇の肥料にでもなってるでしょうね」
天羽春乃「そんな・・・」
ディアナはベッドから立ち上がり、春乃にむかって香水のようなものを吹きかける。
〇黒
春乃の視界はたちまち真っ暗になる。
〇黒
つづく
次回予告
第八話 魔法決戦(3)生贄の儀式
またみてね!
肝心の腕輪を奪われて劣勢……。
ハルノちゃんの運命は如何に。
楽しみにしてます。