姫様は冷徹王子の溺愛をご所望です

朝永ゆうり

第11話 戦況悪化(脚本)

姫様は冷徹王子の溺愛をご所望です

朝永ゆうり

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〇貴族の部屋
  ジークの部屋からとぼとぼと
  自分の部屋に帰ってきたカレン。
  ハンナはその後ろを、
  そうっとついて歩いた。
ハンナ「姫様・・・何があったのです?」
カレン「ハンナ・・・」
  カレンは振り向くと、無理やり笑顔を作った。
カレン「ジークは、冷徹非道なんかじゃなかった」
ハンナ「ええ」
カレン「誰よりも愛に満ちた、王子様だった」
ハンナ「・・・ウェルナーさんに聞きました」
カレン「そっか。 じゃあ、フレディが言ってたことも──」
ハンナ「納得してます。 でも、どうして“氷王子”なんて──」
カレン「守るためだよ」
  カレンの声が震えた。
ハンナ「守る・・・?」
カレン「国を、私を、守るため──」
カレン「ジークは自ら“氷王子”の仮面を被ってる」
カレン「でもそれは、王子である限り、外せない仮面──」
ハンナ「ちょ、ちょっと待ってください!」
ハンナ「それじゃあ、姫様は・・・」
カレン「いいの。私、愛されてるって分かったし──」
カレン「今夜は一緒に過ごそうって、言ってもらえたし・・・」
カレン「だから・・・」
  カレンの目から、一粒の涙がこぼれ落ちた。
ハンナ「姫様・・・」
カレン「何で私、待つことしかできないんだろう?」
ハンナ「待つ・・・ですか?」
カレン「ブルートの戦況が悪化してるって」
カレン「ブルートの街が、壊されようとしてるって!」
カレン「なのに、私は何もできない・・・」
ハンナ「仕方がないですよ、姫様・・・」
ハンナ「軍や争いのことに関しては、私たちでは何とも・・・」
カレン「私は、ジークの心を受け止めることしかできない」
カレン「一緒に、幸せな王国にしたいのに・・・」
カレン「私は、何もできないの。 プリンセスなのに・・・」
ハンナ「姫様・・・」
  ポタポタと、涙が止めどなく流れ落ちていく。
カレン「愛だけじゃ、ダメだったんだ」
カレン「愛があったって、何も変わらない」
カレン「愛されてた。誰よりも」
カレン「守られてたんだよ?私。なのに・・・」
カレン「愛と幸せに満ちた王国、なんて──」
カレン「絵空事って、怒られちゃった」
カレン「・・・皆が幸せになる道は、ないのかな」
  握りしめた拳が、プルプル震えた。
  肩が、わなわなと震えた。
ハンナ「姫様・・・?」
ハンナ「ジーク王子は愛に溢れた王子なんですよね?」
カレン「うん」
ハンナ「なら姫様も、愛に溢れた姫様ですよ?」
カレン「え・・・?」
ハンナ「誰よりも、ジーク王子のことを考えていらしゃる」
ハンナ「それって、誰でもできることじゃない」
ハンナ「私は、そんな姫様なら、いつか──」
ハンナ「絵空事なんかじゃない、愛と幸せに満ちた王国を実現できるって、信じてます」
カレン「ハンナ・・・」
ハンナ「なんて、なんの根拠もないですけどね!」
ハンナ「笑っていらしてください、姫様」
ハンナ「きっと、ジーク王子もそれをお望みです」
カレン「そうだね。・・・ありがとう、ハンナ」
  カレンはキュッと口角を引き上げながら ──
  自身から流れ落ちた涙を、そっと袖で拭った。

〇西洋の円卓会議
ジーク王子「オスカー!」
ジーク王子「大佐自ら戻ってくるとは・・・」
オスカー現大佐「それだけ有事ということです、ジーク王子」
オスカー現大佐「戦況は4年前とほぼ同様、」
オスカー現大佐「一度怯んだと見せかけて、援軍を入れ後から奇襲を仕掛けてくるものと」
オスカー現大佐「ブルートの街も、今度は制圧されてもおかしくないです」
ジーク王子「やはり、4年前と同じか・・・」
オスカー現大佐「ジーク王子、私は──」
ジーク王子「分かっている」
ジーク王子「4年前のやり方は、私ももうしたくない」
オスカー現大佐「・・・」
ジーク王子「援軍の到着まで、どのくらいだ?」
オスカー現大佐「明日の夕刻には」
オスカー現大佐「早ければ、明日の夜にでもしかけてくると思われます」
ジーク王子「そうか・・・」
ジーク王子「現地はどうなっている?」
オスカー現大佐「帝国兵を街に入れずに、なんとか兵士たちが持ちこたえているものの──」
オスカー現大佐「やはり、ディルクなしでは今の現状維持が精一杯かと」
ジーク王子「・・・」
オスカー現大佐「王子、ご判断を」

〇西洋の円卓会議
国王「覚悟があれば、争いは終わるさ」

〇西洋の円卓会議
ジーク王子「覚悟、か・・・」
ジーク王子(愛する者に託すのも、悪くない、かもしれないな・・・)
ジーク王子(カレン、お前ならきっと──)
ジーク王子(──守ってくれるだろう?)
ジーク王子(この国の国民を──)
ジーク王子(ブルートの街を──)
ジーク王子(愛と幸せで満ちた場所、に・・・)
ジーク王子「・・・覚悟はできた」
ジーク王子「この争いを、終わらせる」
オスカー現大佐「どうなさるおつもりで?」
ジーク王子「・・・・・・」
ジーク王子「・・・降伏する」

〇宮殿の門
  「降伏する」
  ジーク王子のその判断は、
  またたく間に城中に広がった。

〇貴族の部屋
カレン(あ、雨・・・)
ハンナ「姫様!!」
ハンナ「ここここ、降伏ですって!」
カレン(降伏・・・!?)
カレン(降伏の条件って、確か──)
カレン(一番若い王族の命を差し出すこと)
カレン(・・・まさか、ジーク!)
カレン「私、行ってくる!」
ハンナ(姫様・・・)

〇西洋の円卓会議
ルシャード国王「ジーク、どういうことだ」
ジーク王子「先程述べたとおりです」
ジーク王子「我が国はグロース帝国に降伏するべきだ、と」
ルシャード国王「我が国がグロース帝国に負けるというのか!?」
ジーク王子「我が軍では押さえきれないほどの援軍が押し寄せている模様です」
ジーク王子「早急に動かなければ、奇襲を仕掛けられどっちにしろ太刀打ち不能かと」
ルシャード国王「4年前・・・」
ルシャード国王「4年前と同じではダメなのか!?」
ジーク王子「あの策は、もう決行すべきではない!」
ルシャード国王「なぜだ!」
ジーク王子「4年もの月日が経っていることを考慮すれば、同じ策では向こうも対処を考えてあるはず」
ジーク王子「どっちにしろ同じことです」
ジーク王子「それに・・・」
ジーク王子「私は、ブルートの民にあの地での再建を約束しました」
ジーク王子「これ以上、ブルートの街を壊すわけには・・・」
ルシャード国王「ジーク、お前はブルートの街と、この国の行く末、どちらを案じるのだ!」
ジーク王子「どちらもです!」
ジーク王子「どちらも大切だから・・・」
ジーク王子「グロース帝国は捕虜に対する処遇も厚いと聞きます」
ジーク王子「街は活気に溢れ、イデアル王国の民もすぐに慣れるでしょう」
ジーク王子「イデアル王国が無くなっても、民が幸せであるなら──」
ジーク王子「私は、何も壊さずに民を守れる方法を選びたいのです」
ジーク王子「私一人の命で、この国の民が──ブルートの街が救われるならば、」
ジーク王子「それで、争いが終わるのならば──」
ジーク王子「私は、それを望むのです!」
ルシャード国王「ジーク・・・」
???「国王様!」
ジーク王子「カレン!」
ジーク王子「どうしてここに・・・」
カレン「旦那が命差し出して国守ろうとしてるのに、黙ってられないでしょ!」
カレン「国王様、帝国に降伏をするのなら、私を差し出してください!」
カレン「ジークは一国の王子。 ここで失っては血が途絶えてしまいます」
カレン「私は、嫁いで間もないですが・・・」
カレン「それでも、この国のプリンセスだから!」
ルシャード国王「カレン、お前は・・・」
カレン「お願いします!」
カレン「私一人の命で、皆が幸せになるなら・・・」
カレン「皆が愛に溢れて暮らせるなら・・・」
カレン「それに、ジークは失ってはいけない人です」
カレン「誰よりも強くて優しい王子様だから・・・」
ジーク王子「国がなくなれば王子などいらないだろ!」
ジーク王子「俺が行くんだ!」
カレン「ダメ!私が行く!」
ジーク王子「お前は残れ!」
ジーク王子「お前をそんな目に合わせるために、俺はお前を妻にした訳じゃない!」
カレン「知ってるよ・・・」
カレン「お城で、守ろうとしてくれたんでしょ?」
カレン「誰よりも優しいジークだから、でしょ?」
カレン「だから、私は・・・」
ジーク王子「カレン・・・」
  流れ出した涙を拭かず、カレンは国王を見上げた。
カレン「だからどうか・・・私を・・・」
ルシャード国王「お前たち・・・」
ルシャード国王「私は──」

次のエピソード:第12話 最初で最後の夜と朝

コメント

  • 戦争なんて戦争なんて戦争なんてーっ!
    いや、このお二人の愛があれば大丈夫!
    大丈夫に違いない!
    と、言い聞かせながら読みました。
    相変わらずハンナの存在がありがたいー!

  • ジークの決断…いろいろなことを考えた上での、そして覚悟を決めての決断だったのでしょう。前回もそうですが、ジークのやさしさと厳しさ、理想と現実…すべてを考えた上での行動と決断力には胸が打たれます。(カレンよりジークの感想ばかりですみません。ジークの言動がとても素晴らしいのでつい…)

  • 辛い展開ですが、カレンのパワーでハッピーエンド連れてくるって信じてる……!

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