黒いキューピット

平家星

#5 ラブ・パフューム(前編)(脚本)

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〇教室
  放課後の教室。
  篠原香織(しのはらかおり)、本庄ミサキ(ほんじょうみさき)、田辺志穂(たなべしほ)の三人は、
  机にファッション雑誌を並べて、楽しそうにおしゃべりしていた。
篠原香織「私、次どんなトップス買ったらいいと思う?」
本庄ミサキ「見せて見せて~」
田辺志穂「ダメダメ香織。 ミサキに聞いても参考にならないよ。 ミサキは何着ても似合っちゃうから。」
田辺志穂「人のことはわかんないって」
本庄ミサキ「えっ? そんなことないよ~」
田辺志穂「そんなことあるよ。香織もそう思うでしょ? ミサキは、顔面レベル違うんだから」
篠原香織「え? うん。そうかもね・・・」
篠原香織(志穂、中学の時まで私のことをやたらと褒めまくってたくせに。今はミサキのことばっかり・・・)
  そこへ、一人の男子生徒がやってきて、香織に話しかけた。
男子生徒1「あ、あのさ・・・。香織、ちょっといいかな?」
篠原香織「・・・え? 私!?」
男子生徒1「うん。ちょっと来て」

〇体育館裏
篠原香織「な、なに?」
男子生徒1「あのさ・・・その~・・・」
篠原香織(この雰囲気・・・。まさか、告白!?)
男子生徒1「ミサキって、好きな人とかいるのかな・・・」
篠原香織「へっ?」
男子生徒1「いや、お前なら知ってるかなぁって。ミサキと仲いいだろ?」
篠原香織「知らないよ! そんなこと、自分で聞いてよ!」
篠原香織(もう! ドキドキして損したっ!)

〇学校の昇降口
田辺志穂「なんだぁ。香織が告白されるのかと思った。いつもの『探り』ね。 私たちは、いつもそんな役割ばっかり」
篠原香織「・・・そうだね~」
篠原香織(あんたのことは知らないけど、私はここまでの屈辱は初めてだよ)
本庄ミサキ「ごめんね。変なことに巻き込んじゃって」
男子生徒A「ミサキ~。じゃあね~」
男子生徒B「ミサキちゃん、また明日!」
本庄ミサキ「うん。バイバ~イ」
篠原香織(・・・私だっているのにさ。あからさまにミサキにだけ挨拶して)
田辺志穂「モテる女は、違いますねぇ~」
本庄ミサキ「もう。茶化さないでよ」
篠原香織(・・・どうせ私は、ミサキの引き立て役ですよっ)

〇商店街
篠原香織「確かに、ミサキは綺麗だよ。それは認めるけどさぁ~」
篠原香織「あ~あ、男子からも女子からもチヤホヤされてた中学の頃が懐かしい・・・」
  ふと気がつくと、香織は知らない路地に足を踏み入れていた。
篠原香織「あれ? こんな道あったっけ?」

〇リサイクルショップの中
篠原香織「へ~。こんな店あったんだ」
  たくさんの物の中から、香織は何気なく香水を手に取った。
篠原香織「香水・・・。年季入ってるなぁ。ヤバい臭いになってるんじゃないの?」
天海愛「いい匂いですよ。それ」
  香織が振り返ると、天海愛が、肩にピーチを乗せて立っていた。
篠原香織「あっ、すみません・・・」
天海愛「お気になさらず。あなたが手に取ったその商品、きっと役に立つと思いますよ」
ピーチ「キュー!」
天海愛「あら。ピーチもそう思うって」
篠原香織「香水か・・・。たしかに、気分転換に良いかもなぁ」

〇リサイクルショップの中
天海愛「あの子にふさわしい香水だと思ったけど、どうかな?」
ピーチ「ああいう、クイーンに憧れるワナビー体質の女子には、ぴったりだろう」
天海愛「そんな言い方しないの! 女の子はみんな、お姫様扱いに憧れるものなんだから」

〇女の子の一人部屋
篠原香織「そろそろ出なくちゃ。・・・あっ」
篠原香織「ちょっとだけ、使ってみよう」
  香織は香水をワンプッシュ、体にかけた。
篠原香織「へぇ~。いい匂いじゃん」

〇電車の中
他校男子生徒1「あの子、可愛くね?」
他校男子生徒2「マジだ。お前声かけろよ」
篠原香織「ん?」
  香織が視線を向けると、他校男子たちはモジモジし、目をそらした。
篠原香織(えっ? あの人たち、私のこと話してた?)
篠原香織(・・・そんなわけないか)
  その時、目の前のサラリーマンの男がハンカチを落とす。
篠原香織「落ちましたよ」
サラリーマン「えっ・・・あっ」
篠原香織「あなたのですよね?」
サラリーマン「はっ、はい・・・えへへ」
篠原香織(何? お礼ぐらい言ってもいいのに)

〇教室
篠原香織(なんか今日は、やけに男の人の視線を感じた気がしたな・・・)
男子生徒4「香織、おはよ」
篠原香織「お、おはよう」
男子生徒4「お前、今日なんか、いつもと違うな。 何か変えた?」
篠原香織「えっ? 私なんか変!?」
男子生徒4「いや。・・・なんつーか、良いよ。雰囲気が」
篠原香織「は?」

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