P10・闇オークション(脚本)
〇宝石店
キオル「微妙」
キオル「微妙」
キオル「微妙」
キオル「微妙」
キオル「お前、ほんと何着ても似合わねーな」
ルカード「ひどいっ!」
ローレット「可愛い!」
ローレット「可愛い!」
ローレット「可愛い!」
ローレット「可愛い!」
ローレット「何着ても可愛いから どれにしようか迷う〜!!」
ヴィエリゼ「一つに決めてもらえると助かるんだけど」
キオル「ルカードはお嬢サマの色と合わせるのが 無難そうだな」
キオル「よし、これでどうだ!!」
ローレット「普通」
キオル「普通だな」
ルカード「普通でいいじゃん!!」
キオル「今までの中で一番マシだから これでいいか」
ルカード「マシって・・・」
ヴィエリゼ「大丈夫、似合ってるよ!」
ルカード「・・・ありがとう」
キオル「あとは仮面か──」
キオル「支配人、合う物を適当に見繕ってくれ」
衣装店支配人「かしこまりました」
ローレット「何で仮面がいるの?」
キオル「仮面があれば身分や素性を隠せるからな。 ま、形だけだけど」
ローレット「ふーん」
ローレット「にしても驚いたわー。 あんた、貴族のボンボンだったのね」
キオル「一応ね」
キオル「つっても、用済みの養子だけどな」
ローレット「え・・・?」
そこへ、目元だけのハーフマスクをつけたルカードが戻ってくる。
ルカード「キオル〜、これ変じゃない?」
キオル「それを渡されたって事は、 それが一番マシだったんだろ」
ルカード「さっきからマシ、マシって・・・」
キオル「特徴のない顔のお前が悪い」
ルカード「ひどっ!!」
キオル「いつも通り、冒険者ギルドを介して 俺に直接請求してくれ」
衣装店支配人「承知いたしました」
キオル「お前にも何か買ってやらないと 不公平だよな」
ローレット「えっ!?」
キオル「支配人、そこの変な仮面もつけてくれ」
ローレット「いらないんですけど!!」
〇中東の街
ゴーレム「準備できた?」
ヴィエリゼ「ローレン!?」
ゴーレム「えへへ、そうだよ~」
ゴーレム「ゴーレムさんを通じてオークション会場の様子を見てきたんだけど、思ったより魔獣の数が多いみたい」
ゴーレム「今、ゲン様とフェゴ様とダー様、 それにミアさんがそっちに向かってるよ!」
キオル「全員集合じゃねえか!」
キオル「逆に不安・・・」
ヴィエリゼ「ゲンティムたちは人間界では移動魔法が使えないから、到着まで少しかかると思うの」
ヴィエリゼ「それまでに、 私とルカードで何か作戦を考えるわ」
ルカード「よし、行こう」
ヴィエリゼ「ええ!」
〇大広間
ルカード「・・・・・・」
ヴィエリゼ「ルカード、きょろきょろしすぎ!」
ルカード「ごめん!」
ルカード「高そうな人ばっかりだと思って・・・」
ヴィエリゼ「高そうな人?」
ルカード「服が高そうだったり、 爵位が高そうだったり」
ヴィエリゼ「ふふっ、何それ」
ヴィエリゼ「それを言ったらルカードだって 高そうな称号を持ってるじゃない」
ヴィエリゼ「ね、勇者サマ?」
ルカード「ここで勇者はまずいって!」
ルカード「それに──」
ルカード「この仮面をつけている間は、 身分も素性もないんだろ?」
ルカード「今は勇者も魔王もお休み!」
ルカード「向こうで舞踏会やってる! 一曲踊ろう!」
ヴィエリゼ「遊びに来たんじゃないのよ?」
ルカード「一曲だけ!」
ヴィエリゼ(『勇者と円舞曲を踊りたい』を 叶えてくれるつもりなのね)
ルカード「踊っていただけますか、レディ?」
ルカードが膝を折って私の手を取る。
ヴィエリゼ「踊れるの?」
ルカード「王宮に喚ばれる事もあるからね」
ヴィエリゼ「じゃあ、仕方ないから付き合ってあげる」
ルカード「ありがとう」
ホールの中央へと導かれ、胸がどきどきと高鳴っていく。
ルカード「足踏んだらごめんね?」
ヴィエリゼ「絶対許さない!」
ルカード「怖いなぁ」
曲に合わせてステップを踏みながら、ルカードに聞きたかったことを投げかける。
誕生日に血液型、家族の話や子供の頃の話、好きな食べ物や嫌いな食べ物・・・
話したいこと、聞きたいことがたくさんあった。
ヴィエリゼ「そうだ、Twitterやってる?」
ルカード「俺はやってないんだけど、 俺の偽者はたくさんいるらしいよ」
ヴィエリゼ「なにそれ」
ぎこちなかったステップも、会話とともに徐々にスムーズになっていく。
ダンスも会話もどんどん楽しくなっていって、気が付いたら、二人でくすくすと笑い合っていた。
ヴィエリゼ(このまま時が止まればいいのに──)
ヴィエリゼ(なんて考えたら、罰があたるかな)
〇黒背景
ダンスで火照った頬に両手を当てて、深呼吸を一つ。
ヴィエリゼ「──行きましょう」
私とルカードは、ホールの奥のオークション会場へ足を踏み入れた。
〇劇場の舞台
オークショニア「──19番をご紹介します」
オークショニア「聖剣エルセイド」
オークショニア「刀身の美しさから 精霊剣とも呼ばれております」
オークショニア「500万ディールから始めます」
オークショニア「520、540、560・・・600・・・」
ルカード「あれ欲しい!」
ヴィエリゼ「精霊に頼んで創ってもらったら?」
ルカード「そんな簡単なことじゃないからね!?」
オークショニア「おめでとうございます! 2800万ディールで落札です!」
オークショニア「20番をご紹介します」
オークショニア「紅き宝石」
オークショニア「コカトリスというドラゴンが 死ぬと石化するのはご存知ですか?」
オークショニア「そこから採掘したのが こちらの美しき鉱石です」
オークショニア「1000万ディールから始めます」
ヴィエリゼ「コカトリスが石化するのは 苦しんで死んだ時だけ」
ヴィエリゼ「あれを採取するために わざと痛めつけたんだわ──」
ルカード「エリゼ・・・」
オークショニア「3800万ディールで落札です!」
オークショニア「続きまして21番をご紹介します」
オークショニア「風の妖精」
オークショニア「剥製に仕立てた妖精を香水瓶に組み込んだ、愛らしくも繊細な一品です」
オークショニア「後ほど生体の出品もございますよ」
ヴィエリゼ「・・・っ」
ルカード「ひどいことを・・・」
ルカード「大丈夫? 一度外に出ようか?」
ヴィエリゼ「・・・うん」
〇洋館のバルコニー
ダンスの余韻を打ち消すように、冷たい雨が容赦なく頬に吹きつける。
ヴィエリゼ「・・・剥製だなんて、ひどい」
ルカード「今日のところは引き上げようか」
ヴィエリゼ「いいえ」
ヴィエリゼ「生きている子たちは必ず助ける」
ルカード「全部競り落とすっていうのは現実的じゃないし、根本的な解決にはならないな・・・」
ルカード「俺がロビーで騒ぎを起こして、その隙に きみが捕らわれている子を逃がすのは?」
ヴィエリゼ「私は人間界でも移動魔法が使えるけど、 あまり数が多いと一度では無理だわ」
ルカード「捕らえられている子が制御魔法を かけられている可能性もあるか」
「うーん・・・」
ヴィエリゼ「何かしら・・・」
ルカード「もしかして、 例の希少な魔獣が出てきたのかも──」
ヴィエリゼ「戻りましょう!」
〇劇場の舞台
オークショニア「さあ、本日の特別商品の登場です!」
ヴィエリゼ「あの子は──!!」
オークショニア「歌声で人の心を惑わせると言われる セイレーンです!」
オークショニア「歌の効力は魔具で制御されておりますのでご安心を」
オークショニア「歌声を楽しむのも、 美しさを味わうのも思いのまま!」
ヴィエリゼ「・・・ッ」
ルカード「落ち着いて、エリゼ」
オークショニア「風切羽と足の腱は切ってありますので 逃げ出す心配もございません」
ヴィエリゼ「何てことを・・・」
オークショニア「では、1000万ディールから始めます」
ヴィエリゼ「・・・・・・」
ヴィエリゼ「ルカード ごめんなさい」
ルカード「エリゼ、何を──」
オークショニア「さっそく手を挙げたご婦人が いらっしゃいますね──」
ヴィエリゼ「その子をこちらに寄越しなさい」
ルカード「エリゼ、ここで魔法は──ッ」
オークショニア「なっ、何だ!?」
セイレーン「魔王様・・・っ」
セイレーン「助けにきてくださったのですね」
オークショニア「魔王!?」
ルカード「魔王・・・?」
ヴィエリゼ「・・・・・・」
ヴィエリゼ「──私はヴィエリゼ・レイヤール・ヴァンダドラル」
ヴィエリゼ「全ての魔族を従えし魔王、 魔界ヴァンダドラルの統治者」
ヴィエリゼ「眷族たちを返してもらう!!」
1話からぐいぐい引き込まれる展開で、最新話まで一気に読んでしまいました。
どのキャラクターも強さだけでなく、優しさに溢れてるのもとても魅力的でした^^特にルカードのイケメンぶりは、男性でも惚れてしまいますね。笑
今話のラストは、エリゼが人間界の敵と認識されてしまいそうな不穏な雰囲気・・・ルカードの今まで以上の活躍に期待したいと思います!