恩暮呂堂の 貧乏絵師

福山 詩(フクヤマ ウタ)

7千羽の恩返し(脚本)

恩暮呂堂の 貧乏絵師

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〇古びた神社
  茶器の包紙を使って
  店の宣伝と彫師を募集した 惣七
  
  はてさてどうなることやら
惣七「あの包紙 を見た人達が うちに来てくれるといいな!」
縁(えにし)「楽しみだね」
惣七「ん?雀だ!迷い込んで来たのか? 罠に引っ掛かっている!」
雀「ちゅんちゅん!」
惣七「足を怪我してる! 誰が こんな罠を さ、もう大丈夫だよ」
「ちゅん」
縁(えにし)「良いことしたね」
惣七「へへ もしかしたらべっぴんな 女になって恩返しに来たりして! "鶴の恩返し"みたいに!」
縁(えにし)「"鶴の恩返し"ってなんだい」
惣七「子供に読み聞かせる 作り話さ」
惣七「さ、中に入ろう」

〇祈祷場
惣七「ここ最近働きっぱなしだ もう誰が邪魔しようと俺は寝る!」
「あの・・・ごめんください」
惣七「こんな夜中に誰だよ!?」
「先日 茶器を買いましたら 梱包されていた紙に こちらで彫師の募集をしていると書いてあったのですが」
縁(えにし)「おや 早速効果ありだねぇ」
縁(えにし)「開けたほうが良いじゃないのかい? 腕の立つ彫師かもしれないよ」
惣七「え〜??」
惣七「全く何時だと思ってんだよ・・・」

〇古びた神社
惣七「・・・」
縁(えにし)「惣七?」
惣七「・・・べっぴんだ」
千羽「夜分遅くにすみません」
「・・・」
縁(えにし)「ちょっと失礼」
縁(えにし)「惣七!」
惣七「いっっっって!! 何すんだよ縁!」
惣七「あ、アハハ えーと、彫、師・・・ ですよね?えへへぇ」
惣七「はい、募集してますよ」
千羽「良かった 私を 掘師として雇って頂けませんか」
惣七「あはは」
惣七「え! 女の彫師!? あんな力仕事を!? この白くて細い腕で!?」
千羽「いけませんか? 女だから、雇って頂けないのでしょうか」
惣七「え!?いやいやいや!? むしろ嬉しいというか そんなことになったら 有頂天になるというか」
千羽「はい?」
惣七「いや! いやいや!? 助かりますぅ!ほんと!」
縁(えにし)「鼻の下が伸びきってるよ」
縁(えにし)「しかし どこの誰ともわからない娘を 雇って良いものかね?」
惣七「縁!彼女に聞こえてないからって 茶々を入れるな! 勿論、彫師としての 力量があるか試させてもらう!」
惣七「仕事というのは 甘くないんだ! べっぴん と言えどな!」
千羽「あと 炊事や洗濯もします」
惣七「ぜひ うちに!」
惣七「じゃあ 早速境内を案内します アッ、布団は別々にするんで安心して 下さい(強調)」
千羽「・・・」
千羽「(ニコ)」
惣七「わ 笑った」
縁(えにし)「気持ち悪いね惣七」
「それじゃあ ここから入って♡ あ、えーと名前は」
「千羽です」
縁(えにし)「やれやれ」
縁(えにし)「厄介な事にならなけりゃ良いがね」

〇祈祷場
惣七「この辺が寝心地良いんで 千羽さん どうぞ あ、勿論好きなとこで寝てください」
千羽「惣七さん」
惣七「はいぃ! (名前呼ばれたぁ幸せぇ!)」
千羽「空き部屋は ございますか?」
惣七「え? あぁ~ありますけど 小さいし、掃除してないですよ?」
千羽「構いません」
惣七「そこの部屋なんですけど ほんとにそこで 良いの?」
千羽「はい」
千羽「早速ですが 私の仕事を見てほしくて 版画を作りますので 石鎚 縁さんの描いた浮世絵はございますか?」
惣七「あ、はい・・・ この絵で良ければ」
惣七「あの、そんな 急がなくても」
千羽「これが・・・石鎚 縁の肉筆画・・・」
千羽「惣七さん」
千羽「あっ」
惣七「あ!危ない!」
惣七「大丈夫ですか? ! 怪我、してるんですか?」
千羽「すみません 足を痛めておりまして 躓きました あの、それで」
千羽「お願いがございます」
惣七「は、はいぃ (え?何?え?俺達、夫婦になるの?)」
千羽「私が部屋で仕事をしている間 絶対に部屋を覗かないで下さい」
惣七「の、のぞ? いやいや!?勿論!そんな嫌らしいことしませんよ!」
千羽「ありがとうございます」
千羽「では、私はこれで」
惣七「え? えーと」
千羽「まだ何か?」
惣七「どうして 覗いたら駄目なんだ?」
千羽「それは」
千羽「恥ずかしいからです♡」
「うわアァああ何笑顔最高可愛いぃい! (分かりました。絶対に覗きません。)」

〇祈祷場
  千羽は それから 
  部屋から 出てこなくなった
惣七「もう三日も経ってる! 大丈夫かな!?本当!!」
ヤマブキ「摺師の 仕事 まだか」
惣七「なぁ 俺ずっと不思議に思っていることがあるんだ」
惣七「千羽さんはもしかして」
惣七「あのとき助けた雀なんじゃねえかと 思ってる!」
「・・・」
ヤマブキ「ッフフ」
惣七「お前ら”鶴の恩返し”知らないの!? 怪我してる場所も一緒だし 絶対あのときの」
縁(えにし)「こうも 部屋に籠もりきりでいられると」
縁(えにし)「部屋に まだ居るのか気になるねぇ」
ヤマブキ「てことは とんずら? 縁の 絵を持って?」
「・・・」
惣七「うわあぁー---! 千羽さあぁああぁん! 居ますかぁああぁ!? 裏切ってないよね!? 俺のこと騙してないよねぇえぇえ!?」
縁(えにし)「・・・ 開けてみればぁ?」
惣七「縁!なんてこと言うんだ! 開けるなと言われてるんだぞ!?」
縁(えにし)「でも 当の本人が部屋の中に居るのか 分からないじゃないか」
惣七「うわあぁー---! 分かってるっての! 俺は見たくないんだ、現実を!」
ヤマブキ「開けよ」
縁(えにし)「あいよ」
惣七「え?」
「危ない!!」
千羽「惣七さん! 伏せて!」
惣七「え?え?」
千羽「はよ 伏せんか!」
影文「千羽 里に戻ってこい お前は一族の習わし通り暗殺者になるんだ」
千羽「兄さん 私は彫師になる もう里へは戻らない!」
影文「お前が嫌だというのなら力づくだ」
影文「こいつは人質だ 殺されたくなければ 言うことを聞け」
千羽「その人は関係ないから 離して」
惣七「いつのまにか刃物が喉元に!」
影文「嫌だと言ったら?」
千羽「力づくで奪い返すだけよ!」
惣七(千羽さんが くノ一? 雀じゃなくて? いや、雀でくノ一?)
千羽「なぜ私の邪魔ばかりするの! 自分の夢を追うことがそんなに悪い?」
影文「お前は自分の立場を分かっていない! ここでのうのうと生きていても 暗殺者である以上 お前の命を狙う者は大勢いる!」
影文「その証拠に見ろ! 関係のない人間が 人質にとられている!」
影文「お前には・・・ 俺達には!生まれた時から 自由などない! あるのは」
影文「使命だけだ! 恨むなら この生まれた境遇を 呪え!」
影文「帰ってこい 一族で生きてゆく方が お前の為だ」
千羽「・・・」
影文「お前と関わった  人間が死ぬところを見たくないだろう? おかしな夢は見るな」
千羽「わかったわ」
「あのーすみません」
惣七「あ、どーも 何か人質が首を突っ込んじまって 悪いんだけども」
惣七「俺は別に 命狙われても大丈夫ですよ?」
影文「さては お前も忍びの」
惣七「いや 一般の町民です」
惣七「殺すとか、命狙われるとか 血筋とか色々言ってるけど つまりさ」
惣七「千羽さんは、家出をしたんだよね? 夢を叶えたくて」
惣七「だったら 納得いくまで やれば良いんじゃないか?」
惣七「千羽さんの人生は 千羽さんだけのものだと 俺は思うよ」
惣七「で、お兄さんは 引き留めに来たんですよね?寂しくて」
影文「口出しするな! 我々は代々将軍様の為に命を張ってきた誇り高き暗殺一族! お前なぞに 何が分かる!?」
惣七(まずい! 斬られる!)
「うわあぁー---!」
「・・・」
惣七「え?」
惣七「いや、え? 床 抜けたぞ!?」
縁(えにし)「まあ あんだけオンボロ堂で暴れりゃ 当たり前っちゃ 当たり前だよねぇ」
惣七「縁!!!」
千羽(縁?)
惣七「お前が やったのか? 貧乏の力を発動して?」
縁(えにし)「ン~ まぁ アタシが、というか あのお兄さんが勝手に落ちたんだよ」
惣七「え、ちょ だ、大丈夫ですか~」
千羽「気配が消えています もう 引き上げたのでしょう」
惣七「え?そうなの?」
千羽「惣七さん」
千羽「ありがとう」
千羽「私が 兄に伝えたかったこと あなたが変わりに 言葉にして堂々と言ってくれた」
千羽「すっっきりしたわ」
惣七「いや、俺は別に (びびって漏らすかと思った)」
惣七「そうだ!千羽さん! こうゆう大事なことは先に言っておいてくれないと!」
惣七「あなたを雇うと言ったんですから もう関係ないとは言わせませんよ!」
千羽「兄も申し上げましたが 私の一族は代々暗殺者の家系でした だから当たり前のように私も暗殺者になるものだと思っていた」
千羽「でも、私は浮世絵が好きで 刃物を使って 家族に内緒で版画を彫るようになりました」
千羽「家族も当たり前のように 私が暗殺者として生きていくと思っていた そんな時」
千羽「石鎚 縁 の浮世絵に出会ってしまった 私は、 居ても立っても居られなくなりました」
千羽「どうしても 縁さんの作品を彫って見たかったんです どうしても」
惣七「それで、三日間も縁の絵を彫っていたのか」
千羽「何も説明せず 部屋に籠ってすみませんでした 絵が完成したら すぐに出ていこうと思っていたので」
惣七「どうして!?」
千羽「だって 聞いたでしょう? 兄だけじゃなく、暗殺者というのは人に命を狙われる仕事です」
千羽「ここにいれば 迷惑になる」
惣七「・・・」
惣七「いや、待って」
惣七「確認だけど、あの時助けた雀じゃないんだよね!?」
「・・・」
「はい?」
千羽「いや 私は雀・・・?ではないです・・・けど」
惣七「だよね!びっくりしたぁ! 正体がばれたから 男の前から姿消すってまんま鶴じゃん! え?鶴でもないよね!?」
千羽「はい・・・ 鶴でもないです」
惣七「なんだよも~! 偶然かよも~!!」
惣七「だったら ここに居ろよ! 雀でも鶴でもないんだから!」
千羽「んーと、 はぁ」
縁(えにし)「惣七、彫師も摺師も揃ったね これで恩暮呂堂が開けるじゃないか」
惣七「そうだな 縁!」
千羽「惣七さんてひどく変わってるわ でも私 嫌いじゃないわそうゆう人」
惣七「え?なんか言った?」
千羽「なんでもありません よろしくお願いいたします」
惣七「もう、敬語は なしだ! な!千羽!」
千羽「・・・うん 惣七」
  惣七の頓珍漢が
  役に立つこともあるんだねぇ
  
  まぁ これで 摺師と彫師が揃ったわけだ
  いよいよ
  
  恩暮呂堂の開店だよ
  
  続きはまたのお楽しみ

次のエピソード:8恩暮呂堂、開店

コメント

  • 妖怪がいるなら異類婚姻譚もあるだろう。
    からのカオス展開。
    ギリギリまでピュアな惣七がうれしい感じ

    とはいえ、このメンツで大丈夫なのか?
    気になります。

  • べっぴんさん入ってきたー!
    最初、まさか雀?と思いましたが、惣七が雀と言い出した時点で違うと確信する、謎の逆信頼感wでもくノ一だとは思いませんでした!
    賑やかになってきましたね😊

  • うまく言えないのですが、凄く良かったです。キャラかお話の構成の仕方? 兎に角好きなエピソードです❤

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