#4 ソウル・ブレスレット(後編)(脚本)
〇病室
二人がブレスレットを外すと、再び電撃のようなものが身体に走った。
新井直哉「外、楽しかった?」
西田琴美「・・・うん」
新井直哉「良かった」
西田琴美「・・・ねぇ、直哉。高校で友達できたの?」
新井直哉「友達って呼べるほどの奴はいないけど」
西田琴美「女の子とか・・・かわいい子いないの?」
新井直哉「なんだよ急に。考えたこともないなぁ」
西田琴美「・・・そっか」
新井直哉「ん? どうかした?」
西田琴美「・・・ちょっと疲れちゃった」
新井直哉「大丈夫か?」
西田琴美「うん、心配しないで。ごめん・・・。今日はもう、帰って」
〇大きい病院の廊下
新井直哉(様子がおかしかったけど、大丈夫かな。琴美)
琴美の母「ああ、直哉くん。来てくれてたの」
新井直哉「あ、おばさん。こんにちは」
琴美の母「・・・少し、話せるかしら」
〇中庭
琴美の母「実はね・・・。薬、効いてないの」
新井直哉「えっ・・・?」
琴美の母「これ以上、受けられる治療がなくて・・・」
琴美の母「頑張ってるあの子には、伝えにくくてね。このままじゃあの子・・・」
琴美の母「ごめんなさいね。あなたにこんな話をすべきじゃないのに・・・。つい・・・」
新井直哉「いえ・・・」
琴美の母「あの子、あなたが来た日は、いつも機嫌がいいから。 これからも、仲良くしてあげてね」
新井直哉「・・・ええ。もちろんです」
〇川に架かる橋
新井直哉(受けられる治療がないなんて・・・)
新井直哉(・・・俺が泣いてどうする。あいつを元気づけられるのは、俺だけだってのに!)
〇病室
西田琴美「・・・・・・」
新井直哉「どうした? つけないの?」
西田琴美「もう・・・いいよ。入れ替わったら、直哉も辛いでしょ」
新井直哉「何言ってんだよ。大丈夫。少しの間だけでも、気晴らしした方がいいんだから」
西田琴美「でも・・・」
新井直哉「俺の事は気にすんなよ! ほら、早く!」
西田琴美「・・・うん」
直哉に促され、琴美はブレスレットを腕につけた。
西田琴美「楽しんできてな!」
新井直哉「・・・ありがとう」
西田琴美「うっ・・・。強がってはみたけど、琴美の身体、今まで以上に悪くなってる・・・」
〇街中の道路
直哉の体を借りた琴美が歩いていると、目の前に小夏が飛び出してきた。
倉本小夏「わっ!」
新井直哉「!」
倉本小夏「うふふ、びっくりした?」
倉本小夏「ってか、何でこんなとこにいるわけ?」
新井直哉「えっ・・・何でって・・・」
倉本小夏「今日、約束の日じゃん!」
〇堤防
倉本小夏「まったく、ひどいよね。せっかくの海なのに、水着すら持ってないなんて。 直哉はやる気なさすぎ!」
新井直哉(かわいい子・・・。もしも私がいなくなったら、直哉はこの子と・・・)
倉本小夏「・・・ねぇ。私のこと、どう思ってるの?」
新井直哉「・・・え?」
倉本小夏「好き?」
新井直哉「・・・そんなの分からないよ」
倉本小夏「しつこいと思われるかもしれないけど、私は、好きだよ。ずっと、一緒にいたい」
新井直哉「・・・いいね。ずっと一緒にいられるなんて」
倉本小夏「直哉もそう思ってくれてたんだ! そうだね。ずっと一緒にいようね!」
新井直哉「・・・・・・」
〇病室
西田琴美(ヤバい・・・苦しい・・・)
西田琴美(これ・・・発作・・・まずいよな・・・)
琴美の体を借りた直哉は、ナースコールに手を伸ばすが、段々と意識が遠くなっていく。
西田琴美「琴美・・・」
〇堤防
新井直哉「・・・・・・」
新井直哉「あれ・・・? ここは・・・? 俺、ベッドにいたはずだよな・・・」
あたりを見回したあと、自分の身体を触り、確認すると、ブレスレットがない。
新井直哉「琴美がブレスレットを外して、身体を戻した・・・?」
新井直哉「マズい! 発作を起こしたんだ・・・琴美が危ない!」
〇大きい病院の廊下
直哉が走ってくると、ストレッチャーに乗せられた琴美が、看護師に運ばれている。
新井直哉「琴美!」
西田琴美「・・・直哉・・・ごめんね・・・」
そのまま琴美は、治療室へと運ばれていった。
新井直哉「そんな・・・」
〇葬儀場
新井直哉(琴美のお母さんは、琴美がつけていたブレスレットを、形見として俺にくれた。 ・・・実感がなさ過ぎて、涙も出ない)
新井直哉「琴美…・・・。俺、もっとお前のそばにいたかった・・・。 あまりにも早すぎる・・・」
〇一軒家
新井直哉「・・・琴美」
男「新井直哉くんだね? 倉本小夏さんの同級生の・・・」
新井直哉「そ、そうですけど」
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