#3 ソウル・ブレスレット(前編)(脚本)
〇学校の屋上
新井直哉(あらいなおや)は、屋上で一人、お弁当を食べていた。
???「直哉! いた、いた~!」
そこへ、倉本小夏(くらもとこなつ)が駆け寄ってくる。
倉本小夏「いつも教室にいないんだから~」
新井直哉「ああ、倉本さんか・・・。じゃ、俺は予定あるから・・・」
倉本小夏「もう! 夏休み入ったら全然会えなくなっちゃうんだから、もっと構ってよぉ~」
新井直哉「どうして俺が、倉本さんを構わなきゃいけなんだよ」
倉本小夏「どうしてって・・・。私たち、付き合ってるじゃん!」
新井直哉「は? 付き合ってないだろ?」
倉本小夏「なんでよ~。いいじゃん! 彼女いないんでしょ? 夏休みどっか行こうよ!」
倉本小夏「私、考えとくからね~!」
〇大学病院
新井直哉(悩みの無さそうな高校のクラスメイトたち。あいつらに、俺と琴美のことを話してわかってもらえるとは思えない)
〇病室
直哉と、ベッドに横たわる西田琴美(にしだことみ)が話している。
西田琴美「本当は学校の友達と遊びたいんじゃないの・・・?」
新井直哉「え? 全然。高校の奴とは、あんまり気が合わなくてさ」
西田琴美「そう・・・」
新井直哉「・・・どう? 具合は」
西田琴美「・・・いつも通り。良くないけど、最悪ってほどではない」
新井直哉「そっか・・・」
西田琴美「ゴメンね・・・。直哉。いつも病院に来てもらって、気が滅入るでしょ?」
新井直哉「琴美の顔が見れたら、それでいいって」
西田琴美「本当は無理してるんじゃないの・・・?」
新井直哉「無理なんてしてないよ」
新井直哉「前までこんな卑屈なこと、言わなかったのに。よっぽど、弱ってるんだな・・・」
〇商店街
新井直哉(琴美、もう1年以上、病室から出られてない・・・。代われるもんなら、代わってやりたいよ・・・)
〇リサイクルショップ
ふと気が付くと、直哉は路地裏に迷い込んでいた。
目の前にはリサイクルショップ『ブラック・アロー』がある。
新井直哉(いつの間にこんなところに・・・。リサイクルショップ・・・?)
〇リサイクルショップの中
新井直哉(へぇ~。結構いろんなものが売ってるんだな・・・)
直哉は商品の中から、ペアのブレスレットを手に取った。
新井直哉「これあげたら、琴美、元気出してくれるかな・・・」
天海愛「それ、あなたの役に立つと思いますよ」
新井直哉「・・・彼女にプレゼントしてみようかな」
天海愛「きっと、喜んでもらえると思います」
〇病室
西田琴美「せっかくの夏休みなのに、ここにいていいの・・・?」
新井直哉「またそんなこと言って・・・。いいに決まってるだろ?」
新井直哉「今日は、良いもの持って来たんだ」
西田琴美「良いもの?」
新井直哉「これ、開けてみて」
琴美は直哉から包みを受け取り、開ける。
西田琴美「綺麗・・・!」
新井直哉「じゃ、俺も」
新井直哉「お揃いでつけよう」
西田琴美「・・・嬉しい」
その時、二人の間に、電撃のようなものが走った。
「・・・!?」
西田琴美「今、何が起きたんだ・・・?」
新井直哉「え・・・? わ、私?」
西田琴美「は? 俺が立ってる? あれ・・・?」
西田琴美「俺が琴美に・・・!?」
新井直哉「嘘・・・私たち、入れ替わった!?」
西田琴美「そ、そんなバカな!?」
新井直哉「でも、そうとしか・・・」
西田琴美「だ、だよな・・・」
新井直哉「このブレスレットのせいかな? すぐに外さないと・・・!」
西田琴美「待って!」
新井直哉「えっ?」
西田琴美「琴美、俺の身体なら、外に出られるだろ・・・? 久々に楽しんでこいよ」
新井直哉「何言ってるの? こんなとんでもないことが起こってるのに・・・」
西田琴美「・・・俺、ずっと思ってた。『琴美と、代わってやりたい』って。奇跡が起きたんだ」
新井直哉「奇跡・・・」
西田琴美「そう。こんな奇跡、無駄にしちゃだめだよ。俺のことは気にせず、行ってこい」
新井直哉「じゃあ・・・6時までには絶対に戻るから!」
西田琴美「おう。思いっきり、楽しんできてな」
〇街中の道路
新井直哉(嘘みたいに身体が軽い・・・!)
直哉の体を借りた琴美は、思わず走り出した。
新井直哉(すごい! すごい! 私、走ってる!)
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